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燃える大地

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ネコ獣人族の村の周りに防衛戦用兵器を
錬成して回ったセブンは、村の横に広がる
湖の上を流れてゆく波紋をぼんやりと眺めていた。

 (やってることは物騒なんだけど
  この風景だけ見てると平和だな。

  一仕事終えた後のビターチョコは
  ホッとするな。)

こっそり拠点から持ち出してきたビターチョコを
胸部の炸薬パックから一つまみ取り出して
じっくりと味わいながらそんなことを思っていた。

カイの提案してきた簡易ホバーユニット付きの
高速速射砲を1000機配備し終えている。
AIリンクでカイが全機体を拠点から操作する。
天翼族対策なのだが、これでも足りてはいない。

砲塔の周りには 不可視の盾 を固定してあるが、
獣人族のファイアボール10発で
破壊されるレベルの魔法攻撃の耐久性がある。
物理攻撃の耐久性は弱いようで、
高圧縮弾でもアサルトライフルでも2発で
破壊されてしまう。

不可視の盾 はイメージした大きさ、形状で
作り出せて、耐久性がある間は48時間経っても
消えることがなく、解除をイメージすると
瞬時に消せるようだ。 

神鋼の金剛陣 は外からの魔法、物理攻撃を防げるが
中からも攻撃できなくなるので使えなかった。 

魔法ランクが上がったのだが、
今回は種類が増えていなかった。

攻撃魔法の威力を確認したが、
海神の水弾 はファイアボール4発で相殺され、
極北の凍結 は2発でとろけていた。

ただ、この氷結はイメージした武器の形状で
固体化できるので、氷の剣が作れた。

村の雰囲気を変えようかと思い、
拠点の前で神龍様の氷の像を作ったら、
ファーラさんに不敬なのだと怒られた。

続いて、サラの像を作ろうかと思ったら、
氷漬けになってみたいのねと
背後から凍りそうな声をかけられた。

あきらめずにノルン様の像を思いながら
作ってみたら、急に虹色に輝きだして、
神秘的な氷像になってしまった。
今はその氷像前にチョコをお供えしている。
そのチョコの一部がここになる事は
まだばれていないようだ。

のんびりとしていると、アラートが
発報された。
バグドローンからの接近体ありと。

 『セブン、襲撃が来るのだわ!
  設置は完了したのかしら?

  私はカーラと出る用意をするわ。
  あなたは低空域での戦闘をお願いね。
  カイ、接近する数が少ないから
  まだ動かさないで様子を見ましょう。
  ホバーユニットだけ出して、
  魚人兵の牽制をお願いね。

  ファーラさん、フェイズさん、
  敵の襲撃ですわ。
  非戦闘員の方は拠点まで避難お願いします。

  クロ、魔法障壁の方お願いね。』

矢継早にサラが指示、伝達を出すと、
拠点に駆け込む子供達や、魔石矢や
セブンが錬成したバーニアを背負って
獣人族の戦士達が駆け出している。

フェイズもバーニアを背に固定して、
セブンのいる湖とは逆の小高い丘の方へ
ファーラと共に高速移動していく。

 『フェイズ様、ファーラ様、
  聞こえておりますでしょうか、カイです。

  そちらの方角からは、目視出来ない状態で
  降下してくる物体が感知されています。

  足止めさえして頂ければ、
  サラ様が浄化魔法をかけられますので、
  連携の方ご協力をお願い致します。

  ゴーグル内に表示されている方向へ
  移動をお願い致します。』

二人には一般兵と電脳兵の連携用に作られた
AIが搭載されたゴーグルが渡されており、
ゴーグルの強化プラスティックモニターに
周辺マップや移動方向を示す3Dベクトルが表示される。

フェイズの背負った専用のバーニアは、
カイからのリモート操作も受けれるが、
このゴーグルを通じて目線での操作も可能だ。

 「ファーラ様、
  飛行高度はフェイズ様に合わせて
  出来るだけ低空飛行をお願い致します。
  上空の敵は、速射砲でお出迎えしますので。」

その時、湖の方から凄まじい数の飛び込み音が響いてきた。

 「あちゃ~奴さん達やっぱ水好きだなぁ~
  魚だけに。

  カイ、お待ちかねの魚料理の大盤振る舞いだ。
  バグドローン急速展開!
  マイクロウェーブパルサー照射用意!
  
  蒸し魚なりやがれ!最大照射!!」

湖にはあらかじめセブンが仕込んでいたリフレクトモードの
バグドローンが多数展開しており、湖を取り囲むように
8か所の照射ユニットがセットされていた。
カイのAIリンクで連動するようにしてあるので、
セブンが戦闘中でも対応できる仕込みだった。

湖が一気に沸騰し、不可視の魚人兵が絶叫を放ちつつ
絶命していく。
濛々と立ち上る湯気の中には真っ白の変色した魚人兵の
蒸された姿があった。

 「これ見た後、魚食べれないよな。。
  さて、追加の魚料理はサラにお任せして、
  ハネ付きの方を何とかしますか。」

そう思い見上げた上空からファイアボールが降り注いできた。

 「距離も取って二手に分かれてくれてありがとうだな。
  さぁ、一緒に行水しようぜ!
   天空の瀑布 ! 
  姿を現しやがれ!」

黒い雲が沸き立ち、爆音と共に隕石のような大粒の雨が降り始め、
空中にいた天翼族の認識阻害魔法を洗い流していった。

ターゲット自動追尾システム付きの速射砲からの連射が開始され、
見る見るうちに半数以上の天翼族が破裂するように散っていった。

 「あれ?まだ空が暗いな。
  くそっ!これがサラが言ってた天空の島か!
  でか過ぎだろ!」

上空には直径10kmはあろうかという巨大な島が浮かんでいた。
セブンの水魔法で認識阻害魔法が切れたようだ。

その島から数えきれない数のファイアボールが打ち出され、
湖にも村にも情け容赦なく降り注ぎ始めた。

速射砲周りの不可視の盾はほぼ一瞬で破壊され、
砲座ごと燃やされていった。

村の方にはクロが行使する巨大な虹色の金剛陣が展開され
ほぼ全域を覆い隠していた。

 『セブン、島の大きさが違うのだわ。
  西の港街で戦った島とは桁違いの大きさなのだわ。
  でも、想定内ね。
  カイ、岩盤貫通弾に続けて改良型燃料気化弾を
  一斉発射お願いね。』

周囲30kmの範囲で点在していた砲塔から
大型ミサイルが発射されていく。
同時に、静止衛星軌道上からも巨大な岩盤貫通弾が
前面に耐熱シールドを展開しながら落下していく。

赤く燃えるミサイルが島に降り注ぐ様は、
天の裁きのように見えるのだった。

空気を震わす衝撃音に続き、独特の破裂音が連呼するように
響き渡った後、猛烈な熱風があたりを駆け回った。

天空の島の大地は、瞬く間に燃え盛る大地と化していった。

空に浮かぶ天翼族の兵士達は、攻撃を忘れ呆然としていた。

 (あー、何か一方的過ぎたかな。
  ごめんよ、でもお前らも悪いんだぜ、
  味方の魚人兵ごと攻撃するようなことするから。
  自業自得だな。)

戦意を失った相手を攻撃することなく、
どうするか思案するセブンであった。
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