真実の愛なんてクソ喰らえ

月宮雫

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第二章

夢と現実の狭間②+

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送られてきた写真に映っていたのは打ち合わせをした時、時雨の家に置いて帰った俺の上着を手で掴んで眠るルビーの姿だった。

……可愛い、癒される。写真を見ていてにやけそうになり、携帯を置いて左手で顔を覆う。

写真を見ていると、添い寝をしたら嫌がりながらも最終的には眠る彼女を思い出した。




「試しに置いてみたら、こうなってね。」

「…よくやった」

「それだけじゃないのよ。この上着を取ろうとしたら凄く泣きそうな顔して首を横に振るの。寝ながらね」

「…」





状況を説明されてもそれがちっとも頭に入らないくらいルビーが愛しすぎる。

しかも俺の上着を掴んで離さないのだと…。普段はあんなにツンケンしているのに、寝ると素直になる彼女を想像しては悶えている。

クソ…。

会ったら少しルビーを叱るつもりでいたが、こんな姿を見せられたらその気が失せてしまう。

むしろ会いたかったという思いを全面にぶつけてしまいそうで、暴走しないかが心配だ。




嗚呼、ルビーの声が聞きたい。

あの子に突き落とされてケガを負ったのは事実だが、憎しみよりも悲しみが勝っている。

それほどまでに俺は彼女を悲しませ、歪みを生ませてしまったのだと思い知った。

俺に対する憎しみをルビーに抱かせたのは、3年前の自分だからだ。

あの日、置いて行かれた事を凄く悲しんでいる彼女は、いつしかその悲しみを憎しみへと変えてしまったのだ。

連れて行けなかった理由も話せず、今の状況に流されている自分自身もどうかと思う。だが、いつかは話さなければならないと心のどこかで覚悟はできている。

まあ、あの手帳を見られたらほとんどの事を知られるのだろうな。




「ルビーは夢見が悪いと言っていたが、何か寝言を言っているか?」

「…言ってるわ。」




そう言えば、と。ルビーが捕まったあの日、時雨が夢の事について言及していたのを思い出し、俺は問い掛けた。

もしかしたらルビーはあの獣を手にかけた時の夢を見ているのではないかと心配している。

あの日の事を夢で繰り返しているのではないかと。

何故なら、俺もそうだったからだ。

間接的とはいえ、兄と母を死に追いやった時の事が今でも夢の中に現れる。

その度に言われるのは、ルビーの事を打ち明けた時と同じ言葉だった。





ーー…娼婦館育ちのΩを引き取る?、穢れた血をこの家に入れるというのか。親不孝なヤツめ。

ーー…お前は恥さらし者だ。その馬鹿げた発想を捨てるまで部屋から出てくるな。




中でも病気を患っていた父の言葉はかなり印象的だった。

幼い頃から厳しく当たってきた父親はそれから間もなく病気で亡くなり、ルビーを受け入れようとする俺の意見を反対するのは兄と母だけとなった。
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