真実の愛なんてクソ喰らえ

月宮雫

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第二章

愛しきΩへ

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火神 ロウside










この思いが語られる時、もう俺は世界に存在していないだろう。

ルビーに再会したあの日、俺は愛する者の手で、突きつけられたこの運命から解放されるのなら本望だと感じた。

身体に狼の匂いを染み込ませたアイツをこれ以上見ていたくはなかったから。

俺を殺しに来たルビー。

最期までお前の本当の名前を知る事は無かった。

半狂乱で俺に立ち向かってくるその姿はまさに強い憎しみを持つ人間そのものだった。





初めて出会った日、俺はお前に乱暴をした。

性の全てを叩き込んだ。

言う事を聞かなければ頬を叩き、お前を傷付けた。

そんな男に一切の同情を抱かせずに殺させるには、言葉で煽り続けるしかなかった。

最期にお前に会えて良かった、とでも言葉を添えておけばよかったか…?





嗚呼、サバイバルナイフを握らされたのが本当に意識を失う最期で良かったな。

血塗られたナイフに残るのは俺の血液と、指紋だけなのだから……。

お前はまだあの時、俺が微かに生きていると気づかなかっただろう?

ナイフを抜かれた感覚も、しっかり…。















「全く、貴方は最期まで……。」



主の訃報を聞き、駆け付けた片眼鏡を掛けた男は幸せそうに眠る彼を見て呟いた。



「事件に関与している可能性がある行方不明の少女を捜索しています。ご協力をお願い致します。」





渡された似顔絵には、彼が最後まで愛という感情を伝えられずにいた少女の顔があった。



「…何をしているんだっ、」

「すいません、固く握られているので取り出せず…っ」



サバイバルナイフの指紋を取ろうとした者達が口にしていたのは、それだった。

なんでも、証拠を集めようとしてサバイバルナイフを両手から引き抜こうとしたら、亡くなっているはずの遺体に固く握られ、取れなかったのだと。





そして数時間後、ようやく取れたサバイバルナイフに残っていたのはーー。

報われない獣の血液と、その指紋だけだったらしい。








火神 ロウside 終


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