真実の愛なんてクソ喰らえ

第一章

崩壊の警鐘⑤

それから怪我をした私を売りに出すのはしばらく止めるとロウは言い残し、部屋を去っていった。

バタリと荒々しく閉まった扉をただ見届け、ふぅ、と小さく息を吐く。

この傷が治るまでαに抱かれずに済むと思うと、少しだけ安心して身体から力が抜けた。

いつも私を縛っている首枷も新しい物に替えるらしく、今は何もついていない。

久しぶりの開放感に心も安らぎ、ベッドの上で身体を伸ばしてリラックスしていた。





「…ルネさん達…元気かな…」





ふと、思い出すのは優しいお姉さん達の事だった。

全く会えていないあの人達は、今頃どうしているのだろうか疑問に思い、それが口から零れ落ちた。

元気にしてるのかな…。

皆、まだこの館の中には居るんだよね…？



ビュオオオオオ…ッ、

そう思いながらもベッドの上で寝転がっていると、窓から吹き込んだ風により、部屋の何処かにあった書類が宙を舞う。




「わっ、ぷ、」




まるでそれを知らせるかのようにして私の顔に被さってきた書類を痛む指先で剥がし、目を通すと…。




「……え？」





とても残酷で、悲しい感情を抱かざるを得ない内容であるその情報が入ってきた。










ーー ルネ。猫の獣人 Ω。ルビーの情報を月城ギンに流したとして、処罰を受ける。処罰方法は子宮を引きずり出し、永遠に子を産めない身体へと…。

ーーハル。人型Ω。ルネに加担したとして処罰を受ける。処罰方法は自慢である眼球と胸の片方を抉り、売り物以下の価値と扱う事。

ーーミント。兎の獣人Ω。二人を庇おうとした罪により、拷問部屋へと監禁させる。










「…ひ、ぁ、」








今の私は漢字だって読める。難しい漢字があったとしても文面を見れば多少の理解だって可能だ。これがどんなに酷い内容なのかも、分かるレベルなんだ。

私はそれを見て、言葉を失った。

しかもそれは、日付を見れば最近のもので。三人とも自害をしたと記されたその紙に、震えが止まらなかった。

月城ギンって、誰のこと…？

ねぇ、誰なの…？

その人に私の情報を流した所為で皆、酷い事をされて死んじゃったの…？

震えた身体を抱き締めながら、頭の中で冷静に考える。





「…っ、酷い…っ、」




処罰の執行人は、きっとロウだ。

この部屋にわざと書類を置いていったのは、これを私に見せる為だったのだろう。

何かのきっかけで見せるつもりだったからこそ、こんな事になったのだ。