3 / 16
3
しおりを挟む
「体型も上手く作ってくれるわ。凄い技術よ。私も彼女にして貰った事あるから」
「君も? 」
「そう、以前にね。あ、これ美味しそう」
丸く焼いたクッキーの中央の窪みにラズベリージャムやマーマレードを載せたハッロングロットル。
丸く捏ねたチョコレートにココナッツをまぶしたショクラッドボッレ。
チョコと緑色のマジパンで包んだダムスーガーレ。
手に持ったトレーの上にカラフルにラッピングされたチョコやハート型のヴァニリヤルタンも載せていく。
レジで量って貰って会計を済ませ、ぶらぶらウィンドウショッピングを楽しみながらリース通りを進むと、右手に広大なパークが見えた。
「あそこで食べながら一休みしよう」
パークに植えられた樹木の葉は鮮やかさを競い、葉の隙間から覗く空は青く澄んでいる。
ランニングやサイクリング、軽食を持ち込み噴水の回りで寛ぐ人々、ボールを投げたり蹴ったりして遊ぶ子供達。
遠くにある活気と身近な樹木が醸す静けさとのハーモニーが二人を和ませた。
銀杏の木の下のベンチに腰を下ろして伸びをする。
「サンタ役は諦めたって言ってたけど、クインもオーディション受けたらいいのに。メイクして体型作れば俺と同じだろ?あ、でも最強のライバルになっちゃうかな。はは! 」
クインは紙袋からダムスーガーレを取り出し一口齧った。
「もういいの。私には無理って分かったから。私では多くの子供達に夢を届けて上げられない」
「そんな事はないよ」
マシューはショクラッドボッレを口に放り込み噛み砕いた。
「サンタの格好でソリに乗ってみたら転倒してしまって。着膨れしてるから感覚掴めなくて、ただでさえ私ソリの操縦そんなに得意じゃないし」
「そんな。ソリの操縦練習すればいいだけだろ? 」
「マシューだってオペレーターは無理って言ってたじゃない。向き不向きがあるのよ」
「サンタのイメージが壊れちまえばいいのに。その癖、若い奴が選ばれるって変じゃないか」
「寒い冬の夜をソリで駆け抜け、夜明け前までにプレゼントを届けるには若さと体力とスピードが必要なのよ。あなたの曾お祖父さんの時代とは違うわ。自分がサンタ役をやりたいからってイメージを壊すのは何か違うし。あなたの操縦技術なら着膨れしててもスピードは落ちない筈よ」
四歳ぐらいの女の子が三輪車を漕ぎながら目の前を通り過ぎた。
「ふふ、あの子、サンタが今、目の前にいるの知らないのね」
「まだ受かってもいないよ」
「絶対受かるわよ。頑張って」
クインは顎を上向けてマシューを見詰めた。
二人の唇が重なる。
クインのスモーキーレッドのコートの裾がふわりと風で靡き、足元で銀杏の葉が手を繋いだように連なり、螺旋状に舞い上がった。
「君も? 」
「そう、以前にね。あ、これ美味しそう」
丸く焼いたクッキーの中央の窪みにラズベリージャムやマーマレードを載せたハッロングロットル。
丸く捏ねたチョコレートにココナッツをまぶしたショクラッドボッレ。
チョコと緑色のマジパンで包んだダムスーガーレ。
手に持ったトレーの上にカラフルにラッピングされたチョコやハート型のヴァニリヤルタンも載せていく。
レジで量って貰って会計を済ませ、ぶらぶらウィンドウショッピングを楽しみながらリース通りを進むと、右手に広大なパークが見えた。
「あそこで食べながら一休みしよう」
パークに植えられた樹木の葉は鮮やかさを競い、葉の隙間から覗く空は青く澄んでいる。
ランニングやサイクリング、軽食を持ち込み噴水の回りで寛ぐ人々、ボールを投げたり蹴ったりして遊ぶ子供達。
遠くにある活気と身近な樹木が醸す静けさとのハーモニーが二人を和ませた。
銀杏の木の下のベンチに腰を下ろして伸びをする。
「サンタ役は諦めたって言ってたけど、クインもオーディション受けたらいいのに。メイクして体型作れば俺と同じだろ?あ、でも最強のライバルになっちゃうかな。はは! 」
クインは紙袋からダムスーガーレを取り出し一口齧った。
「もういいの。私には無理って分かったから。私では多くの子供達に夢を届けて上げられない」
「そんな事はないよ」
マシューはショクラッドボッレを口に放り込み噛み砕いた。
「サンタの格好でソリに乗ってみたら転倒してしまって。着膨れしてるから感覚掴めなくて、ただでさえ私ソリの操縦そんなに得意じゃないし」
「そんな。ソリの操縦練習すればいいだけだろ? 」
「マシューだってオペレーターは無理って言ってたじゃない。向き不向きがあるのよ」
「サンタのイメージが壊れちまえばいいのに。その癖、若い奴が選ばれるって変じゃないか」
「寒い冬の夜をソリで駆け抜け、夜明け前までにプレゼントを届けるには若さと体力とスピードが必要なのよ。あなたの曾お祖父さんの時代とは違うわ。自分がサンタ役をやりたいからってイメージを壊すのは何か違うし。あなたの操縦技術なら着膨れしててもスピードは落ちない筈よ」
四歳ぐらいの女の子が三輪車を漕ぎながら目の前を通り過ぎた。
「ふふ、あの子、サンタが今、目の前にいるの知らないのね」
「まだ受かってもいないよ」
「絶対受かるわよ。頑張って」
クインは顎を上向けてマシューを見詰めた。
二人の唇が重なる。
クインのスモーキーレッドのコートの裾がふわりと風で靡き、足元で銀杏の葉が手を繋いだように連なり、螺旋状に舞い上がった。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
【完】あの、……どなたでしょうか?
桐生桜月姫
恋愛
「キャサリン・ルーラー
爵位を傘に取る卑しい女め、今この時を以て貴様との婚約を破棄する。」
見た目だけは、麗しの王太子殿下から出た言葉に、婚約破棄を突きつけられた美しい女性は………
「あの、……どなたのことでしょうか?」
まさかの意味不明発言!!
今ここに幕開ける、波瀾万丈の間違い婚約破棄ラブコメ!!
結末やいかに!!
*******************
執筆終了済みです。
夫から国外追放を言い渡されました
杉本凪咲
恋愛
夫は冷淡に私を国外追放に処した。
どうやら、私が使用人をいじめたことが原因らしい。
抵抗虚しく兵士によって連れていかれてしまう私。
そんな私に、被害者である使用人は笑いかけていた……
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる