森蘭丸外伝─果心居士

春野わか

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「御殿に戻れば、そちの負担は軽くなるか? 」

 六助は不思議そうに首を傾げ、少し間を置いて答えた。

「答えは否でごぜえます」

「御殿に戻った方が良いと申していたでは無いか」

「それは若様のお身体にとってはその方がええでしょう。じゃけんど上様の御側にいたって果心は若様を操ったではねえですか。なら儂の負担は変わんねえ。御殿にいたって結界も張らねえでぐうぐう寝てる訳にはいかねえんだから」

「何も聞かぬのか? 」

「何を……でごぜえますか?お話しされたい事があれば聞くけんど、お力になれるかどうか」

 これに関しては溜息しか出ない。
 御殿に戻りたくない理由を聞いて欲しいが、どう打ち明ければ良いのやら。

「障子を開けてくれ。今宵は中秋である」

 結局直ぐに話題を切り替えた。
 障子が開かれると、見事な中秋の名月が夜空を照らしていた。

 己の欠けた心とは対照的に、黄金色の完全なる円は美しく神々しくさえあった。

「明日も此方に? 」

「……うむ」

 まだ戻る気にはなれない。
 しかし何時までも戻らなければ信長に不審に思われてしまう。
 せめて後数日と思うが、御殿にいた方が身体が楽なのは確かであった。

 結界のおかげなのか妙に心地好くふわふわとして眠い。
 いつの間にか瞼を閉じていた。
 
 ──彼は目を開けた。
 つまり閉じていたのだと漠然と認識した。

 細やかな行為を一々確認する必要があるのは、己自身の身体に別物としての感覚があるからだ。

 眼球をギョロりと動かす。
 その先には人の姿があった。

 周囲は闇なのに、はっきりと見える。

 女──女──女

 甘い白粉の匂い、豊かな胸と尻の円やかな身体付き、遠目にも良く分かる。

 吐き気を覚えた。
 女など皆同じだ。
 淫らで下品で臭くて愚か。

 彼が忌み嫌う女らしい特徴のみに目がいったが、もう一人の彼は振り向いた女の顔を見て愕然とした。

 射干!

 その驚愕を圧倒する憎悪が身内で燃え盛り、『彼』の意思を支配し物凄い速さで突進していく。
 女の唇が縦に大きく開き、絶叫が闇を切り裂いた。

────

 まだまだ夜明けには遠い闇の中を軍勢はひたすら進んでいた。
 木々や草のざわめき、秋の虫達の鳴き声、小走りで道を踏み締める足軽達の甲冑の音。

 此処まで二回小休止している。
 然程急かされる事も無く腹も適度に満たされ、何方に向かうにせよ、行軍に慣れている者にとっては辛い道程では無かっただろう。

『本当に紀伊の方に向かってんだろうか』

 何度も射干の頭に同じ疑問が浮かぶ。 
 誰に問う事も出来ず、場所を示す道標は夜目が利く彼女でも見定める事は叶わない。

「これから坂道が続く!足元に気を付けて進め! 」

 その時、下知が飛んだ。
 軍勢の前方から激しい馬の嘶きが聞こえてくる。

「騎馬の者は下りて進め! 」

 どうやら難所に差し掛かったらしいと、元々歩行の者達は益々嫌がり微かにざわめく。
 指令を伝える為の使い番が前方で動いた。

 徐々に周囲が明るさを増していく。
 松明の本数を増やしたようだ。

 先刻までの闇に慣れた目には祭りのような明るさに思えた。

『貝塚に向かう道にこんな坂道は無い筈だ。やっぱり、もう奈良街道に入ってるんだ。こん畜生め! 』

 射干は軍勢の最後方に位置する小荷駄隊の少し前方にいた。

 隊列は旗持ち、鉄砲隊から始まり、中央に総大将や騎馬隊、後方に弓隊、小荷駄隊と続いて行く。
 各隊には指揮する頭や奉行がいるが、厄介なのは目付の存在である。
 目付には足軽小者の軍律違反を見張る為の歩行目付という役まであった。

 小荷駄隊にも小荷駄奉行がおり、軍の規律を保つ為の工夫が為されている。
 松明が増えた事で闇に乗じてというのが、やや厳しくなった感があった。

『そろそろ逃げ時だけどねえ。いやいや逃げるんじゃないよ。松永の謀反を知らせる為さ!さあて、どうするか』

 奇策を編み出す必要は無い。
 少しの油断を誘えば良いだけだ。

「あっっ! 」

 突然声を上げ、その場に踞る。
 
「何事じゃ! 」

 歩行目付が声を上げ射干の方を振り返った。
 部下に顎をしゃくって見に行かせる。

「どうした? 」

「すいません。足半の鼻緒が切れちまったようで」

 しおらしく訴える。

「どんな作り方したら、そんなに簡単に切れるんだ。仕方がない。此方に参れ! 」

 他の者達が進む邪魔にならぬよう射干の腕を引き、道の隅に連れて行く。

 皆が皆、息を切らし人の事を構っている余裕は無く、特に重い荷を数人で押しながら急な坂を登る小荷駄隊の者達は歯を食い縛り必死の形相であった。

 行きにも通った道なのに、闇夜のからくりもあってか来た道を戻ろうとしているとは露程も疑っていない。

『たくっ!何で気付かないんだろうねえ』

 これから強制的に謀反の片棒担がされる彼等を見ていると本当の事を叫んでしまいたくなる。

「草鞋を編むのは苦手か?これは切れたのでは無い。ほどけているだけじゃ」

「へ、は、はい! 」

 殆ど不要な感慨に耽っていたところ、話し掛けられ我に返る。

 男の声は湿り気を帯び、妙な含みがあった。
 射干の足元から脹脛を伝い、白い太股の間にあるものを求めて男の視線が何度も行き来する。

「すいません……中々上手く出来なくって……どうか結んではくれませんか? 」

 蜜の甘さをたっぷり含ませた色っぽい視線を送ってやる。

「仕方がない!さあ、足を」

 美しい脚を差し出すと男は頬擦りせんばかりに顔を寄せ、射干の足半を脱がせようとした。
 無防備に晒された男の項を射干の目が捕らえた。

 きらりと一閃、何かが空中で煌めいた。

「ぐ──!」

 次の瞬間、男は喉に籠る呻き声を上げ前のめりに倒れた。
 既に彼女達の前を通り過ぎた後方部隊も坂を上るのに必死である。
 男の身体を茂みに移動させると、暗い森の中に消えた。

───

 ヒョーヒョー キーキーキチキチキチ

 百舌に虎鶫《とらつぐみ》、妖怪じみた鳥達の鳴き声に追い立てられ、草を踏み締め闇の森を出口を求め移動する。

 いくら正体が分かっていても、鵺と呼ばれた虎鶫の声は、深奥に眠る本能的恐怖を呼び覚ます。
 並みの女のように闇を恐れはしないが流石に長居はしたくない。

 方向さえ間違っていなければ迷う事は無いと、慎重に草を踏み締めていく。

 秋の夜の冷たい森の中で、謝干の身体は汗ばんでいた。

 松永軍からどれくらい離れただろう。

 大事の前に女一人消えたとて大勢の追っ手を差し向けるとは思えない。

 焦る必要は無いと落ち葉の上に腰を下ろし竹筒の水を口に含んだ。
 途端に寒気を感じ、ぶるっと身震いする。

 僅かに動きを止めただけで、こんなにも身体が冷えるものか。

「少しでも動いてた方が暖まるかねえ」

 と、仕方無く腰を上げる。

 だが冷気はどんどん増す一方で、歯がカチカチと鳴り始めた。

 くくくく──

 笑い声に聞こえたが、鳥の鳴き声だろうと気にせず進む。

 前方に、ぼんやりと白い物が浮かんでいた。

 常に危険に身を置く本能から足を止め、即座に後方に飛び退いた。
 次の瞬間、立っていた場所から湯気が立ち上り異臭が漂う。

 間髪入れず何かが飛んでくるのを察知し、素早く木の陰に隠れる。

 じゅわぁと高熱で溶ける音。
 焦げ臭い匂いに白い湯気が立ち、木の幹の一部がぼろぼろと崩れるのを目の当たりにし、ぞっと肌が粟立つ。
 
「ぐぐ──女あぁ無駄じゃ。逃しはせぬぞ! 」

「果心! 」

「残念だったなあ。上手く逃げおおせると思っていただろうが、貴様を殺すと弾正(松永)と約束したのじゃ」

「ふん!良かったよ!あんたの口から聞けて!やっぱり、あんた等つるんでやがったのかい。これで堂々と逃げる口実が出来たってもんさ」

 そう言うや、恐れ気もなく木の陰から身を晒して挑発した。

「生意気な女が!!拈り潰し八裂きにしてくれるわ!獣の餌になるがいい」

「ぎゃあああーー」

 射干が今更悲鳴を上げたのは、蛇が嫌いな事に加え、突進してくる人面獣身の果心が余りにも気持ち悪かったからだ。

 木の枝を両手で掴み回転するや身軽に木の上に登り、ひらりと躱す。
 猛烈な勢いをいきなりは止められず、蛇体は木立を突き抜けていく。

『奴は幻じゃない!何故? 』

 果心の姿を見るのは此度で二度目。

 呪いや人心を操る間接的攻撃が得手という印象が強かったから、実体で現れた事が意外だった。

 射干は懐から長さ二寸程の鉄の棒を取り出した。
 それは両端の尖った二本の棒を重ね中央で止め、互い違いに鋏のように開くと十字手裏剣になるという携行に適した武器であった。

 得意なのは色仕掛だけでは無い。
 飛び道具の命中率は相当の腕で、自慢の色気と組み合わせれば、かなりの攻撃力を発揮する。
 但し接近戦の苦手な女性の腕力の無さを補う技であり、基本は逃げる為の手段で敵を倒す事を目的としていない。

 果心は突き抜けた木々の間を旋回し、余裕の笑みを浮かべ蛇体を畝らせながら迫ってくる。

 爛々と輝く血の色の虹彩は夜行性の利点を持つのだろう。

 だが、射干とてくの一。
 日頃の訓練ばかりか行軍中に暗闇にも慣れていたし、果心の紅の眼が目印になっていた。

 手の内に隠し持った手裏剣を、三間(6m弱)程の距離から投げ付ける。

「ぐお!! 」

 見事に眉間に突き刺さった。

「やった! 」

 果心が呻き、痛がる様子に快哉を叫ぶ。

 手裏剣には毒が塗られており、想像以上の打撃を加えたと思ったからだ。

 果心が人の痛みには酷薄であるのに、自身は掠り傷でも大騒ぎする事を彼女は知らなかった。

「うう……おぉのぉれーー臭い女の分際で!こんな手裏剣如きが利くものかあーー」

 その手裏剣が一発刺さったぐらいで大騒ぎした事は棚に上げ、恐ろしい形相で睨み付ける。

 虹彩は益々血の色と化し、全身から邪悪な気が陽炎い、以前よりも大きく膨れ上がったように見えた。

「こりゃあ駄目だ!奴は毒吐きだから毒は利かないって事か」

 射干は最悪の場合に備えて左手に猫爪、右手に角指を装備した。

 猫爪とは名前の通り鉄製の猫の爪のような形で指先に嵌める。
 角指は突起の付いた鉄の輪で、突起側を手の平に向け数本の指に通す。

 どちらも押さえ込まれた時に効力を発揮する武器だ。

 手裏剣を指の間に三枚挟み、今度は立て続けに放った。
 狙いは正確だったが、怒り狂った果心は当たる寸前に肋骨を広げ形を変え飛翔した。
 三枚の手裏剣が虚しく側を掠めていく。

「ちっっ! 」

 平たく伸びた果心は吐き気を催す程の醜悪さだった。
 その姿だけで敵の戦意を十分喪失させてしまいそうである。

 まともに闘う気が無い射干は、他の木に飛び移りざま目潰し玉を投げ付けてやった。
 これは見事に命中し、中に仕込んだ石灰がもうもうと飛散する。

 他に唐辛子や山椒等の香辛料を混ぜているので、並みの人間ならば鼻水と涙が止まらずに苦しむところだ。

 だが果心には効かなかった。

「くっそー!奴の弱点は!弱点は! 」

 万事休す。
 これ以上飛び道具を使えば相手を逆上させるだけだ。

 懐に潜り込み接近戦で倒せる自信も無い。
 逃げられるだけの時間稼ぎをする方法は無いのか。
 身軽に木の枝から枝へと移りながら必死に策を練る。

「あ──! 」

 如何に猿に劣らぬ身のこなしでも、相手が飛ぶ蛇では分が悪かった。

 体当たりされ地面に落下する。

 すかさず飛び起きようとした所に果心が襲い掛かった。

「ああーーちっくしょう」

 上から押さえ込まれ、身動き出来無い彼女を更に締め上げようと蛇体が畝る。

「拈り潰して肉塊に変えてくれるわ!くくく」

「こ──の蛇野郎!臭い身体をどけなあーー」

 力を込め窮地から逃れようと必死に足掻く。

「ぎっぎやーーうぐぁおうゥ」

 全身の筋肉に力を込め締め殺そうとしたところ、射干が角指と猫爪を嵌めた手で思い切り引っ掻き肉を抉ったのである。

 今回ばかりは果心の悲鳴は決して大袈裟とは言え無かった。

 蛇体の張り詰めていた筋肉が弛緩する。
 射干の身体にその分体重が掛かったが、締め付けが弱まった隙に何とか下から這い出す。

 ところが無情にも、蛇故の生命力なのか回復力なのか、既に鎌首を擡げ嫌らしい舌をしゅるしゅると蠢かせ、凶悪に目を細め狙いを定めていた。

 今度こそ進退窮まれり。
 毒液を吐き掛けようと真っ赤な口が大きく開いた。

 その瞬間、神が降臨した。

 射干は高く飛んだ。
 長く白い布が彼女の手からひらひらと宙に流れる。
 満月を背にした彼女は、まるで天女の如き麗しさだった。

「これでも喰らいな!下衆野郎!! 」

 艶やかな容姿に削ぐわぬ暴言だが、行動はもっと凄かった。

 果心に良く見えるように脚を左右に大きく開いて見せたのだ。

 弱点である女陰を──

「ぐげえェーー目があ!目があ潰れるぅーー醜いぃぐほう」

「此処まで効くとはね。それにしても全く失礼な男、いや雄だねえ」

 果心が女嫌いである事を思い出した事で命拾いしたものの、素直に喜べ無かった。
 更に止めを刺すべく射干は木の枝の上に仁王立ちした。

「そら!おまけだよ」

 そう言い放った彼女の股間から黄金の液体が迸り、果心の上に降り注いだ。

「うがが!ぐぐ──くっさいぃくっさいぃ止めろぉひいい」

 黄金の液体が月光に照らされ虹色に煌めく。
 木の枝に凛と立ち、果心を見下ろす射干の姿を見る者がいたら菩薩と見紛うたに違いない。

「ああ、すっきりした! 」

 当分追っては来れなさそうな大打撃を与え、射干は疾風の如く駆け去った。

───

「逃げろ射干──止めてくれ」

 最初は蚊が鳴く程の小ささだった。
 魘されるのは珍しい事では無い。
 わけても乱法師の場合は。

 故に六助は眉を潜めたものの余り気に止めなかった。

 張り巡らした結界に触れる邪な気配も今のところ感じない。
 しかし褥から聞こえる苦し気な呻き声は徐々に大きくなっていく。

 心配になり乱法師の顔を覗き込んだ。

 額には汗が浮かび、首をしきりに左右に振っている。
 余程の悪夢に魘されているのか。

「射干あーーあっあ止せえーー射干……」

「しゃが? 」

 何度も出てくる『しゃが』というのは人の名であると、六助が気付くのに少し時間を要した。

 会話の中にたまに出てくる名である事を漸く思い出す。

「うう果心……止めよ……」

 閉じた瞼からとうとう涙が零れ落ちた。

「若様! 」

 暫くして突然静かになった。
 静か過ぎるのも却って不安を誘うものである。

 すうすうと穏やかで正常な息遣いが漸く聞こえてくると、六助は肺に溜めていた息を吐き出した。

 射干という者が危険な目に合っている夢。
 どうやら彼女を襲っているのは果心らしい。

 果たして単なる夢なのか。
 何処かで起こっている出来事を、果心を通じて体感していたのではないか。
 果心に対しては、一時の油断もならぬ事を六助は改めて心の奥まで刻み付けた。

 


 

 

 

 






 

 

 


 
 

 





 

 
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