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有無を言わせぬ強い口調に乱法師は承諾するしか無かった。
───
「家族に文は書いておるのか? 」
「はい、母には時折こちらでの様子を知らせておりまする」
乱法師が信長と二人っきりになる機会は意外と多く巡ってくる。
信長がそれを頻繁に望むからだ。
「そうか、こちらの水には慣れたのか?具合が悪いと耳にする事が多いように思うが、そなたはまだ年若い故、母や故郷を恋しく思う事もあるのだろう」
「折角召し出して頂いたのに何のお役にも立てず口惜しい限りでございますが、決して故郷に戻りたい、母を恋しいなどという柔弱な思いを抱えている訳ではございませぬ。度々具合が悪いのではと上様にお気に掛けて頂き心苦しく……真に役立たずめの泣き言と思われるのは覚悟の上で申し上げますが、それについては……その屏風……」
敬愛する主君に子供扱いされ、ややムキになる口調の裏で、真は故郷も母も恋しくて仕方が無かった。
ともかく万見に強要されたからとはいえ、体調が優れない原因は確かに屏風のせいと思うが故に、勇気を振り絞り訴えようとした。
「役に立っているかいないかは儂が判断する」
腕の中に抱き寄せられ、一旦口をつぐむ。
「私は初陣とてまだでございますし、小姓としたら未熟で出仕する度に具合が悪くなる軟弱者。何の役に立っているのか、ただ決して身体が弱い訳では無く、その屏ぶ……」
最後まで言い終わらぬ内に、彼の顔は信長の胸に押し当てられ、話しはまた中断されてしまった。
「どうすれば儂に気に入られるなど考える必要は無い。第一そなたには似つかわしくない。媚びへつらってばかりの薄汚い大人にはなるな!そなたは、その儘で良い! 」
力強く言うと彼の顔を両手で包み込み、真っ直ぐ見詰める。
「上様……」
「出仕する度に具合が悪いと申すのは儂の顔を見たく無いからでは無いのか?怒ったりせぬ故正直に申せ」
「そのような!上様の御側に毎日置いて頂いて、これに優る幸せはございませぬ。具合が悪くなるのは──何もかもがその屏──」
信長の手が頬に当てられ、ぐっと顔が近付く。
初夜の淫靡な記憶を想起させる熱に圧倒され、言葉が続けられない。
屏風の事はどうでも良くなってしまった。
「そなたは儂の事をどう思っている?乱──」
熱い情熱を湛えた瞳から視線を逸らせず鼓動が高鳴り、唇が震え言葉が勝手に零れ落ちた。
「お慕い申し上げておりまする……」
単に広義の意味合いであったのかもしれない。
しかしこの場面で口にすれば、信長の意に添う甘い蜜のような香りを放ち、案の定彼に向けられる瞳は愛しげに細められた。
彼の頬に置かれた手が髪に移り、優しく何度も梳き掻き上げる。
とんでも無い事を口走ってしまったと自覚した時には既に遅く、唇が塞がれていた。
今此処で先の行為に進みそうな予感に胸の音が鼓膜に響く。
どくん──どくん──どくん──
お…の……れ……おの…れ…ゆぅるぅ……さぬ‥…ゆる…さぁ…ぬ……
乱法師の身体が突然大きく仰け反った。
紛れもなく『あの男』の声だった。
悪寒、頭痛、息苦しさに襲われ、甘い部屋の空気が一変する。
信長の胸を押し退け、愛撫から逃れた。
「どうした──」
乱法師の顔は蒼白で額には汗の粒が浮かび目は見開かれ、がたがたと震えながら屏風を凝視していた。
「屏風が──屏風が──」
地獄の炎は憤怒しているかのように轟々と燃え盛り、血の玉が沸々と浮き出ては膨れ上がり流れ落ちていく。
特に彼を震え上がらせたのは、数多の鬼も亡者の目も爛々と輝き、その全ての視線が彼に注がれていた事だ。
ぎょろりぎょろりと動く目玉には、怒り、妬み、恨み、妄執、劣情、人のありとあらゆる負の感情が込められていた。
「屏風がどうした?ああ、怖がる事は無い。どのような仕掛けかは分からぬが日によって趣きが異なるのじゃ」
それにしても驚くべきは信長の豪胆さである。
「目が……鬼の目が、こちらを睨んで……」
主が全く動じていないのに己ばかりが怯え情けない限りだが、この手の現象に対する耐性には向き不向きがあるのだからやむを得ない。
けが……しい……うらぎった‥‥‥よくも……つなが…ておるのに……のぶながもそなたも……ゆる…さ…ぬ……
再び声が陰々と響き、頭骨を鷲掴みにされたように痛んだ。
「声が──」
「落ち着け!鬼の目は睨んでなどおらぬ。色合いは生き生きとしておるが、それだけじゃ。声?儂には何も聞こえぬ」
乱法師は漸く理解した。
信長は常人が気付かぬ事には勘が働く癖に、他の物事には鈍いのだという事を。
この感覚的な違いは大問題である。
他愛ない事を人と共有出来ない訳ではないが、霊魂や妖に関しては、信じてみようとか、もしかするとという考えすら沸かないようなのだ。
目の前で不可思議な現象が明確に起きたとしても、何か仕掛けがあるのではと満足いくまで徹底して調べる面倒臭い質である。
「そなたの前に屏風を広げるのは止めにしよう。確かに斯様な不気味な絵は好まぬであろうな。そなたは──」
「上様……」
有難い話しではあるが、根本的に言わんとする事が全く伝わっていないようだと感じ、どうすれば分かって貰えるかと悩んだ。
「どうか私の申す事を信じて下さいませ。果心とその屏風は未だに繋がっていて、上様を呪っているのではと心配でならぬのです。もし……もし上様の御身に良くない事が起こったらと思うと胸が苦し……」
そこで信長の指が優しく乱法師の唇に当てられ言葉を制した。
「そなたの気持ちは相分かった。なれど果心は死んだのじゃ。荒木はまだ見つかっておらぬが、果心が物言う事が出来たなら儂に対して怨み言の一つも言いたいやもしれぬ。だが恨まれる覚えは無い。乱、自身を責めるな。己は間違っていないという確固たる強い気持ちがあれば妖など恐れるに足りぬ。安土に来て間もない為、少し疲れているのであろう」
本来ならば涙が出る程嬉しい言葉であろう。
しかし手強い信長に打つ手は無いと悟り絶句する。
「休みが欲しくば遠慮無く申せ。戯れ言ではなく曲直瀬道三を遣わそう」
名医曲直瀬道三の名を再び出され、却って具合が悪くなりそうだった。
「この屏風の前で睦言を交わす気にはなれぬ気持ちは確かに分かるのう」
信長は、他の者に彼を盗られたくない一心で、初夜に強引な行為に及んでしまった事が、未だに彼を怯えさせているのではと内心案じていた。
信長が彼に異常な程甘いのは、美しく品があり利発で素直などの分かりやすい条件だけではない。
寧ろその愛を加速させているのは何よりも罪悪感である。
殊に性行為に関しては男性側の方が奪い、相手よりも多くを得ているという認識が強くあるからかも知れない。
況してや相手が若く美しく無垢であれば、男は大金を積んででもその初物を手に入れようとするものだ。
単なる性行為としてならば、男色における女性役の少年から奪うものは計り知れない。
欲情も愛も、禁忌であればある程燃え上がる。
忠臣、森可成の庇護すべき遺児を、私欲に負け抱いた事を正当化しようも無いし、信長の性格上言い訳しようとも思ってはいない。
父も奪い、彼の『初めて』をも奪った。
いずれにせよ、元々あった情けの気持ちが強引に抱いてしまった事で更に強まったのは確かである。
会話をしている最中に、乱法師ははたと気付いた。
屏風事態に心の臓があるかのように、どくどくと脈打っていたのが嘘のように鎮まっている。
息苦しさも、いつの間にか治まっていた。
漠然とだが、信長には此の世だけでなく、あの世の妖すら抑えつける力が備わっているのではないか。
天だけでなく、地獄の閻魔さえ信長に味方しているのではないか。
流石は天下の覇者たる者の強さ。
己の弱さとは何という違いだろう。
抱き締める腕には力が漲《みなぎ》り、怯懦な心を鼓舞してくれる。
屏風から発せられるのが陰の気ならば、信長からは、それを圧倒する陽の気が溢れていた。
自身の弱さを認め力強い腕に全てを委ねる事が出来たなら、さぞかし心地好いだろうと甘い誘惑に駆られそうになる。
信長の腕の中で、不安と恐れが霧散していくのを感じた。
───
「屏風の件、上様に御納得頂けたか? 」
単刀直入に切り出す万見を、どうにかして誤魔化せないかと悩んだ。
「はっ!上様には……申し上げました」
「して何と?処分されると?それとも祓いをなされるとか? 」
「その……屏風は広げぬと仰せ下さいました」
嘘は付いていないと心を強く持とうとした。
しかし信長流に納得しただけであって、皆が望む形での多分納得ではないのだろうと内心思ってもいた。
己といる時には広げぬと約束してくれたが、他の者達の前でもと確約された訳では無い。
「ふむ、やはり処分される御気持ちは無いのか。御側に置いておくだけで何れ毒気に中られてしまうやも知れぬ。呪いの類いでは曲直瀬道三殿ですら治せまい。何としてでも説得せねば」
万見はそこで言葉を切り、乱法師にちらりと視線を移した。
また己の口から言えと強いられるのではと、然り気無く視線を外す。
「自然な形でか。ふーむ、何かのついでという風を装い──そうじゃな、世間話の体で──うむ、よし!日向守殿に相談してみよう。筒井順慶殿も関わられているから話しは早い」
どうやら、乱法師を置き去りにして万見の考えはまとまった。
いくら寵愛されているからとて、いざというときの使い道が無くなってしまうと怜悧に頭を働かせる。
乱法師からすれば、他に伝《つて》があるなら始めからそちらを使えば良いのにと大いに不満だった。
───
古の暦は月の動きを基本とし、太陽の動きにも拠る太陰太陽暦であった。
その為、天正五年の今年は七月が二回あった。
四年に一度、二月に一日増やす現代の暦とは異なり、同じ月を二回繰り返すという調整方法だったのである。
通常の七月が終われば閏七月となる。
今の暦に直せば八月頃の夏真っ盛りといったところだ。
その閏七月初旬に信長は上洛を予定していた。
宿泊所となる二条の新邸の改築が完了した事と、前関白近衛前久の息子明丸の烏帽子親を引き受けたからである。
近衛家といえば公家の頂点五摂家の中でも最高の名家。
公家社会は何かと伝統しきたりとうるさい故に、摂家ともなれば宮中での元服式が慣例との理由を付けて断ってきた。
にも関わらず引き受ける事にしたのは、近衛前久とウマが合い、朝廷との以前の繋ぎ役の二条晴良よりも遥かに使える男と判断したからでもある。
新邸の御披露目と前の関白近衛前久の子息の晴れの元服式。
豪華な祝いの品を携えた都の近隣諸国の大名、小名、公家衆ばかりか、豪商、名だたる社寺からも使者が列を成す事だろう。
故に単なる新築祝いの身軽さは無く、それなりの人数の供を揃え、隊列は華やかにと考えると気忙しい。
万見は既に手を打っていた。
上洛の準備ではなく屏風の件である。
ついでに屏風を都に持ち込み、自然な形で祓いを済ませてしまおうと考えていた。
修験者、陰陽師を自称する者達は数多くいるが、誰でも良い訳では無い。
扱う物が物だけに、本当に効いているかいないかが曖昧なのは現代と同じである。
それ故に信長のように合理性を好み、白黒はっきり付けたい者達には煙たがられる訳なのだが。
そうした人間は圧倒的に少ない時代であったから、出陣前にも病に掛かっても祈祷、敵将や政敵に対する呪詛の依頼も含めれば、結構需要があったようだ。
そんな怪しい世界にも様々な流派があった。
有名なのは陰陽師だが、厳しい修行により験力を得る修験者や、遥か古に衰退してしまったが、病を祓うのが主であった呪禁師、その名の通りの看病禅師や悪霊に強い密教僧、歩き巫女等多数ある。
伝統ある歴とした陰陽道であれば、調伏の方法も秘伝化され受け継がれていく。
その中に仏教と同じく力を持つ大樹から枝分かれし、独特の形式を成す流派もある。
一口に祈祷と言っても得意分野はそれぞれなのだが、素人には見分けがつかない。
実は筒井順慶は明智光秀の口利きで信長への臣従が叶ったという経緯があり、室は光秀の縁者から迎えている為親しい間柄だった。
昨年、天王寺砦を囲んだ本願寺勢一万五千に信長が三千の兵で突っ込み、辛くも光秀は救い出された。
九死に一生を得た光秀は、今度は過労の為に死の淵を彷徨う事態となってしまった。
その時、病の祈祷を行ったのが親友の吉田神社の神官、吉田兼和である。
本当に祈祷のお陰かは分からないが、ともかく病は回復した。
一応回復しているのだから、兼和の祈祷は効果があったと見るべきだろうが、平癒祈願と悪霊退散とでは人を苦しめる邪気の具体性が異なる。
果たして悪霊や呪詛を返す程に攻撃力があるかは疑問だった。
ただ、この時点では万見も話しを持ち掛けられた光秀も、取り敢えず祓だけでもという軽い気持ちで、その手の話しに乗り気でない信長を納得させただけで満足していた。
そのような中、果心の闇の能力を知る筒井順慶には懊悩があった。
荒木が行方知れずである事と、嫌われ者の果心の死を悼む者がいなかったのが幸いして、今のところ騒動の責任を追及されずに済んでいるが。
自ら口を挟み、波風を立てたくなかった。
───
白い湯気に包まれた湯殿に歌声が響く。
「お湯加減は如何がでございますか? 」
「うむ、ちょうど良い」
湯殿の入り口に控える武藤三郎の問い掛けに、乱法師が明るく返す。
思わず今様を口ずさんだのは、あの事件以来 、三郎が必ず側に控えていてくれる安心感からであろう。
乱法師から言い出した事では無い。
出仕が決まってからは若様暮らしを卒業し、身の回りの事は極力自分で済ませるようにしてきた。
故に湯殿の入り口に家臣や小姓を控えさせる事も久しく無かったのだ。
だが先日の一件があり、三郎から申し出た。
「暫くの間、此処に控えている事を御許し下さい」と。
勇敢さを求められる武家の少年が、「怖いから側にいて欲しい」などと言い出せる訳が無い。
三郎はそれを感じ取り、自ら願い出て主の体面を守ったのだ。
乱法師より三つ四つ年が上なだけなのに、かなり老成している。
「六助と藤吉郎は元気かのう」
そんな三郎の思いやりを知ってか知らずか、大人びた外見とは裏腹に、鷹揚とした乱法師が問い掛ける。
都で猿引きを見てから、そんなに日が経っていないというのに、また会いたいという気持ちが、そんな事を言わせるのだろうと三郎は思った。
「何か言伝てがあれば私が使いをして様子を見て参りましょうか? 」
「うむ、そうじゃのう。たった一度とはいえ楽しく語らい親しみを覚えた。何かの縁やも知れぬ。都と安土はそう遠くない故、気軽に訪ねて参れと伝えて欲しい」
「承知致しました」
湯殿から上がると、汗が引くまで縁側で寛ぐ事にした。
夏の夜の涼風に当たっているうちに無心になる。
小姓勤めは常に忙しく、気配りも求められる中々の体力仕事だ。
十代の少年達なら体力面では問題ないが、何しろあの信長の側仕えでは繊細で神経質な者達は疲弊してしまう。
その点、乱法師は大らかで鈍く、嫌な事は直ぐに忘れてしまう質で意外と鬱憤を溜めずに済んでいた。
直ぐに床に入るのも物足りないので冷酒を嗜む。
先程まで涼しいと思っていた風が何やら生温く感じたのは酔いのせいなのか。
明日も勤め故、程々にしておこうと土器《かわらけ》を置いた。
ほんの少し開けた障子の隙間から微風が入り、コオロギやキリギリスの鳴き声も耳に届く。
夏虫達の合唱を子守唄として瞼を閉じると、いつの間にか眠りに落ちてしまった。
コロロロロローリーコロロロロロローリー ジージジージ ジージーー
シュゥーーシューーシュゥーー
乱法師の瞼が微かに開いた。
だが、はっきりと覚醒した訳ではないので前後不覚夢現の状態であった。
何に依って目覚めたのか。
虫の声がぱたりと止んで、シューシューという奇妙な音に代わり五月蝿いと感じたからかも知れない。
寝返りを打とうとして、上に掛けていた筈の薄い夜具が無い事に気付いた。
それに身体も仰向けの儘何故か動かない。
自ずと瞼が開いた──
紅い……紅い……
あっあぁーーああ──さ、ぶろ
乱法師は叫んだ。
いや、叫んだつもりだった。
悲鳴は音にはならず、ひゅーひゅーと微かで苦し気な呼吸として発っせられただけだった。
深更を過ぎた真っ暗闇に、紅い二つの点だけが浮かび上がっている。
その血のような紅さ、禍々しく纏わりつく淫らな眼差し。
ひゅーーひゅっうーーひゅーー
己を縛る者の正体を悟り、必死に声を出そうと試みるが空気が抜けたような弱々しい音が洩れるだけ。
助けを求めて唯一動かせる眼が部屋中をさ迷う。
だが助けになりそうな何かは見付けられ無かった。
身体の自由と声を奪われ、視線は嫌でも紅い点に吸い寄せられる。
紅が三つに増えた。
三つ目の紅は三日月を横にしたような形で、暗闇にいきなり出現した。
それは耳まで裂けた真っ赤な口だった。
目が慣れてくるに従い、詳細まで明瞭になる。
自身の置かれた状況を見れないのが唯一の幸いだったかも知れない。
頭の上で重ねられた両手首にも、褥の上に投げ出された両足首にも、黒い紐が絡み付き彼の自由を奪っていたからだ。
目を凝らせば、其れ等は蠢く無数の黒い蛇である事が見て取れた。
時折、彼等を使役する主人と同じく口を大きく開け、先端が裂けた赤黒い舌をちろちろさせシューシューと威嚇音を鳴らしていた。
乱法師は必死に気持ちを奮い起たせた。
しかし恐怖と悔しさで目に涙が滲み、紅い虹彩を睨み付けるのがやっとだった。
『睨んでも無駄じゃ。可愛いい顔をして淫らな振る舞いを良くも儂の見ている前でしてくれたものじゃ──そなたを見初めたあの日以来、我等には特別な絆が出来たというのに。誰よりも強い絆じゃ。信長よりもずっとずっと──そなたは裏切ったのじゃ!許さぬ! 』
聞き覚えのある声が頭に響いた。
───
「家族に文は書いておるのか? 」
「はい、母には時折こちらでの様子を知らせておりまする」
乱法師が信長と二人っきりになる機会は意外と多く巡ってくる。
信長がそれを頻繁に望むからだ。
「そうか、こちらの水には慣れたのか?具合が悪いと耳にする事が多いように思うが、そなたはまだ年若い故、母や故郷を恋しく思う事もあるのだろう」
「折角召し出して頂いたのに何のお役にも立てず口惜しい限りでございますが、決して故郷に戻りたい、母を恋しいなどという柔弱な思いを抱えている訳ではございませぬ。度々具合が悪いのではと上様にお気に掛けて頂き心苦しく……真に役立たずめの泣き言と思われるのは覚悟の上で申し上げますが、それについては……その屏風……」
敬愛する主君に子供扱いされ、ややムキになる口調の裏で、真は故郷も母も恋しくて仕方が無かった。
ともかく万見に強要されたからとはいえ、体調が優れない原因は確かに屏風のせいと思うが故に、勇気を振り絞り訴えようとした。
「役に立っているかいないかは儂が判断する」
腕の中に抱き寄せられ、一旦口をつぐむ。
「私は初陣とてまだでございますし、小姓としたら未熟で出仕する度に具合が悪くなる軟弱者。何の役に立っているのか、ただ決して身体が弱い訳では無く、その屏ぶ……」
最後まで言い終わらぬ内に、彼の顔は信長の胸に押し当てられ、話しはまた中断されてしまった。
「どうすれば儂に気に入られるなど考える必要は無い。第一そなたには似つかわしくない。媚びへつらってばかりの薄汚い大人にはなるな!そなたは、その儘で良い! 」
力強く言うと彼の顔を両手で包み込み、真っ直ぐ見詰める。
「上様……」
「出仕する度に具合が悪いと申すのは儂の顔を見たく無いからでは無いのか?怒ったりせぬ故正直に申せ」
「そのような!上様の御側に毎日置いて頂いて、これに優る幸せはございませぬ。具合が悪くなるのは──何もかもがその屏──」
信長の手が頬に当てられ、ぐっと顔が近付く。
初夜の淫靡な記憶を想起させる熱に圧倒され、言葉が続けられない。
屏風の事はどうでも良くなってしまった。
「そなたは儂の事をどう思っている?乱──」
熱い情熱を湛えた瞳から視線を逸らせず鼓動が高鳴り、唇が震え言葉が勝手に零れ落ちた。
「お慕い申し上げておりまする……」
単に広義の意味合いであったのかもしれない。
しかしこの場面で口にすれば、信長の意に添う甘い蜜のような香りを放ち、案の定彼に向けられる瞳は愛しげに細められた。
彼の頬に置かれた手が髪に移り、優しく何度も梳き掻き上げる。
とんでも無い事を口走ってしまったと自覚した時には既に遅く、唇が塞がれていた。
今此処で先の行為に進みそうな予感に胸の音が鼓膜に響く。
どくん──どくん──どくん──
お…の……れ……おの…れ…ゆぅるぅ……さぬ‥…ゆる…さぁ…ぬ……
乱法師の身体が突然大きく仰け反った。
紛れもなく『あの男』の声だった。
悪寒、頭痛、息苦しさに襲われ、甘い部屋の空気が一変する。
信長の胸を押し退け、愛撫から逃れた。
「どうした──」
乱法師の顔は蒼白で額には汗の粒が浮かび目は見開かれ、がたがたと震えながら屏風を凝視していた。
「屏風が──屏風が──」
地獄の炎は憤怒しているかのように轟々と燃え盛り、血の玉が沸々と浮き出ては膨れ上がり流れ落ちていく。
特に彼を震え上がらせたのは、数多の鬼も亡者の目も爛々と輝き、その全ての視線が彼に注がれていた事だ。
ぎょろりぎょろりと動く目玉には、怒り、妬み、恨み、妄執、劣情、人のありとあらゆる負の感情が込められていた。
「屏風がどうした?ああ、怖がる事は無い。どのような仕掛けかは分からぬが日によって趣きが異なるのじゃ」
それにしても驚くべきは信長の豪胆さである。
「目が……鬼の目が、こちらを睨んで……」
主が全く動じていないのに己ばかりが怯え情けない限りだが、この手の現象に対する耐性には向き不向きがあるのだからやむを得ない。
けが……しい……うらぎった‥‥‥よくも……つなが…ておるのに……のぶながもそなたも……ゆる…さ…ぬ……
再び声が陰々と響き、頭骨を鷲掴みにされたように痛んだ。
「声が──」
「落ち着け!鬼の目は睨んでなどおらぬ。色合いは生き生きとしておるが、それだけじゃ。声?儂には何も聞こえぬ」
乱法師は漸く理解した。
信長は常人が気付かぬ事には勘が働く癖に、他の物事には鈍いのだという事を。
この感覚的な違いは大問題である。
他愛ない事を人と共有出来ない訳ではないが、霊魂や妖に関しては、信じてみようとか、もしかするとという考えすら沸かないようなのだ。
目の前で不可思議な現象が明確に起きたとしても、何か仕掛けがあるのではと満足いくまで徹底して調べる面倒臭い質である。
「そなたの前に屏風を広げるのは止めにしよう。確かに斯様な不気味な絵は好まぬであろうな。そなたは──」
「上様……」
有難い話しではあるが、根本的に言わんとする事が全く伝わっていないようだと感じ、どうすれば分かって貰えるかと悩んだ。
「どうか私の申す事を信じて下さいませ。果心とその屏風は未だに繋がっていて、上様を呪っているのではと心配でならぬのです。もし……もし上様の御身に良くない事が起こったらと思うと胸が苦し……」
そこで信長の指が優しく乱法師の唇に当てられ言葉を制した。
「そなたの気持ちは相分かった。なれど果心は死んだのじゃ。荒木はまだ見つかっておらぬが、果心が物言う事が出来たなら儂に対して怨み言の一つも言いたいやもしれぬ。だが恨まれる覚えは無い。乱、自身を責めるな。己は間違っていないという確固たる強い気持ちがあれば妖など恐れるに足りぬ。安土に来て間もない為、少し疲れているのであろう」
本来ならば涙が出る程嬉しい言葉であろう。
しかし手強い信長に打つ手は無いと悟り絶句する。
「休みが欲しくば遠慮無く申せ。戯れ言ではなく曲直瀬道三を遣わそう」
名医曲直瀬道三の名を再び出され、却って具合が悪くなりそうだった。
「この屏風の前で睦言を交わす気にはなれぬ気持ちは確かに分かるのう」
信長は、他の者に彼を盗られたくない一心で、初夜に強引な行為に及んでしまった事が、未だに彼を怯えさせているのではと内心案じていた。
信長が彼に異常な程甘いのは、美しく品があり利発で素直などの分かりやすい条件だけではない。
寧ろその愛を加速させているのは何よりも罪悪感である。
殊に性行為に関しては男性側の方が奪い、相手よりも多くを得ているという認識が強くあるからかも知れない。
況してや相手が若く美しく無垢であれば、男は大金を積んででもその初物を手に入れようとするものだ。
単なる性行為としてならば、男色における女性役の少年から奪うものは計り知れない。
欲情も愛も、禁忌であればある程燃え上がる。
忠臣、森可成の庇護すべき遺児を、私欲に負け抱いた事を正当化しようも無いし、信長の性格上言い訳しようとも思ってはいない。
父も奪い、彼の『初めて』をも奪った。
いずれにせよ、元々あった情けの気持ちが強引に抱いてしまった事で更に強まったのは確かである。
会話をしている最中に、乱法師ははたと気付いた。
屏風事態に心の臓があるかのように、どくどくと脈打っていたのが嘘のように鎮まっている。
息苦しさも、いつの間にか治まっていた。
漠然とだが、信長には此の世だけでなく、あの世の妖すら抑えつける力が備わっているのではないか。
天だけでなく、地獄の閻魔さえ信長に味方しているのではないか。
流石は天下の覇者たる者の強さ。
己の弱さとは何という違いだろう。
抱き締める腕には力が漲《みなぎ》り、怯懦な心を鼓舞してくれる。
屏風から発せられるのが陰の気ならば、信長からは、それを圧倒する陽の気が溢れていた。
自身の弱さを認め力強い腕に全てを委ねる事が出来たなら、さぞかし心地好いだろうと甘い誘惑に駆られそうになる。
信長の腕の中で、不安と恐れが霧散していくのを感じた。
───
「屏風の件、上様に御納得頂けたか? 」
単刀直入に切り出す万見を、どうにかして誤魔化せないかと悩んだ。
「はっ!上様には……申し上げました」
「して何と?処分されると?それとも祓いをなされるとか? 」
「その……屏風は広げぬと仰せ下さいました」
嘘は付いていないと心を強く持とうとした。
しかし信長流に納得しただけであって、皆が望む形での多分納得ではないのだろうと内心思ってもいた。
己といる時には広げぬと約束してくれたが、他の者達の前でもと確約された訳では無い。
「ふむ、やはり処分される御気持ちは無いのか。御側に置いておくだけで何れ毒気に中られてしまうやも知れぬ。呪いの類いでは曲直瀬道三殿ですら治せまい。何としてでも説得せねば」
万見はそこで言葉を切り、乱法師にちらりと視線を移した。
また己の口から言えと強いられるのではと、然り気無く視線を外す。
「自然な形でか。ふーむ、何かのついでという風を装い──そうじゃな、世間話の体で──うむ、よし!日向守殿に相談してみよう。筒井順慶殿も関わられているから話しは早い」
どうやら、乱法師を置き去りにして万見の考えはまとまった。
いくら寵愛されているからとて、いざというときの使い道が無くなってしまうと怜悧に頭を働かせる。
乱法師からすれば、他に伝《つて》があるなら始めからそちらを使えば良いのにと大いに不満だった。
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古の暦は月の動きを基本とし、太陽の動きにも拠る太陰太陽暦であった。
その為、天正五年の今年は七月が二回あった。
四年に一度、二月に一日増やす現代の暦とは異なり、同じ月を二回繰り返すという調整方法だったのである。
通常の七月が終われば閏七月となる。
今の暦に直せば八月頃の夏真っ盛りといったところだ。
その閏七月初旬に信長は上洛を予定していた。
宿泊所となる二条の新邸の改築が完了した事と、前関白近衛前久の息子明丸の烏帽子親を引き受けたからである。
近衛家といえば公家の頂点五摂家の中でも最高の名家。
公家社会は何かと伝統しきたりとうるさい故に、摂家ともなれば宮中での元服式が慣例との理由を付けて断ってきた。
にも関わらず引き受ける事にしたのは、近衛前久とウマが合い、朝廷との以前の繋ぎ役の二条晴良よりも遥かに使える男と判断したからでもある。
新邸の御披露目と前の関白近衛前久の子息の晴れの元服式。
豪華な祝いの品を携えた都の近隣諸国の大名、小名、公家衆ばかりか、豪商、名だたる社寺からも使者が列を成す事だろう。
故に単なる新築祝いの身軽さは無く、それなりの人数の供を揃え、隊列は華やかにと考えると気忙しい。
万見は既に手を打っていた。
上洛の準備ではなく屏風の件である。
ついでに屏風を都に持ち込み、自然な形で祓いを済ませてしまおうと考えていた。
修験者、陰陽師を自称する者達は数多くいるが、誰でも良い訳では無い。
扱う物が物だけに、本当に効いているかいないかが曖昧なのは現代と同じである。
それ故に信長のように合理性を好み、白黒はっきり付けたい者達には煙たがられる訳なのだが。
そうした人間は圧倒的に少ない時代であったから、出陣前にも病に掛かっても祈祷、敵将や政敵に対する呪詛の依頼も含めれば、結構需要があったようだ。
そんな怪しい世界にも様々な流派があった。
有名なのは陰陽師だが、厳しい修行により験力を得る修験者や、遥か古に衰退してしまったが、病を祓うのが主であった呪禁師、その名の通りの看病禅師や悪霊に強い密教僧、歩き巫女等多数ある。
伝統ある歴とした陰陽道であれば、調伏の方法も秘伝化され受け継がれていく。
その中に仏教と同じく力を持つ大樹から枝分かれし、独特の形式を成す流派もある。
一口に祈祷と言っても得意分野はそれぞれなのだが、素人には見分けがつかない。
実は筒井順慶は明智光秀の口利きで信長への臣従が叶ったという経緯があり、室は光秀の縁者から迎えている為親しい間柄だった。
昨年、天王寺砦を囲んだ本願寺勢一万五千に信長が三千の兵で突っ込み、辛くも光秀は救い出された。
九死に一生を得た光秀は、今度は過労の為に死の淵を彷徨う事態となってしまった。
その時、病の祈祷を行ったのが親友の吉田神社の神官、吉田兼和である。
本当に祈祷のお陰かは分からないが、ともかく病は回復した。
一応回復しているのだから、兼和の祈祷は効果があったと見るべきだろうが、平癒祈願と悪霊退散とでは人を苦しめる邪気の具体性が異なる。
果たして悪霊や呪詛を返す程に攻撃力があるかは疑問だった。
ただ、この時点では万見も話しを持ち掛けられた光秀も、取り敢えず祓だけでもという軽い気持ちで、その手の話しに乗り気でない信長を納得させただけで満足していた。
そのような中、果心の闇の能力を知る筒井順慶には懊悩があった。
荒木が行方知れずである事と、嫌われ者の果心の死を悼む者がいなかったのが幸いして、今のところ騒動の責任を追及されずに済んでいるが。
自ら口を挟み、波風を立てたくなかった。
───
白い湯気に包まれた湯殿に歌声が響く。
「お湯加減は如何がでございますか? 」
「うむ、ちょうど良い」
湯殿の入り口に控える武藤三郎の問い掛けに、乱法師が明るく返す。
思わず今様を口ずさんだのは、あの事件以来 、三郎が必ず側に控えていてくれる安心感からであろう。
乱法師から言い出した事では無い。
出仕が決まってからは若様暮らしを卒業し、身の回りの事は極力自分で済ませるようにしてきた。
故に湯殿の入り口に家臣や小姓を控えさせる事も久しく無かったのだ。
だが先日の一件があり、三郎から申し出た。
「暫くの間、此処に控えている事を御許し下さい」と。
勇敢さを求められる武家の少年が、「怖いから側にいて欲しい」などと言い出せる訳が無い。
三郎はそれを感じ取り、自ら願い出て主の体面を守ったのだ。
乱法師より三つ四つ年が上なだけなのに、かなり老成している。
「六助と藤吉郎は元気かのう」
そんな三郎の思いやりを知ってか知らずか、大人びた外見とは裏腹に、鷹揚とした乱法師が問い掛ける。
都で猿引きを見てから、そんなに日が経っていないというのに、また会いたいという気持ちが、そんな事を言わせるのだろうと三郎は思った。
「何か言伝てがあれば私が使いをして様子を見て参りましょうか? 」
「うむ、そうじゃのう。たった一度とはいえ楽しく語らい親しみを覚えた。何かの縁やも知れぬ。都と安土はそう遠くない故、気軽に訪ねて参れと伝えて欲しい」
「承知致しました」
湯殿から上がると、汗が引くまで縁側で寛ぐ事にした。
夏の夜の涼風に当たっているうちに無心になる。
小姓勤めは常に忙しく、気配りも求められる中々の体力仕事だ。
十代の少年達なら体力面では問題ないが、何しろあの信長の側仕えでは繊細で神経質な者達は疲弊してしまう。
その点、乱法師は大らかで鈍く、嫌な事は直ぐに忘れてしまう質で意外と鬱憤を溜めずに済んでいた。
直ぐに床に入るのも物足りないので冷酒を嗜む。
先程まで涼しいと思っていた風が何やら生温く感じたのは酔いのせいなのか。
明日も勤め故、程々にしておこうと土器《かわらけ》を置いた。
ほんの少し開けた障子の隙間から微風が入り、コオロギやキリギリスの鳴き声も耳に届く。
夏虫達の合唱を子守唄として瞼を閉じると、いつの間にか眠りに落ちてしまった。
コロロロロローリーコロロロロロローリー ジージジージ ジージーー
シュゥーーシューーシュゥーー
乱法師の瞼が微かに開いた。
だが、はっきりと覚醒した訳ではないので前後不覚夢現の状態であった。
何に依って目覚めたのか。
虫の声がぱたりと止んで、シューシューという奇妙な音に代わり五月蝿いと感じたからかも知れない。
寝返りを打とうとして、上に掛けていた筈の薄い夜具が無い事に気付いた。
それに身体も仰向けの儘何故か動かない。
自ずと瞼が開いた──
紅い……紅い……
あっあぁーーああ──さ、ぶろ
乱法師は叫んだ。
いや、叫んだつもりだった。
悲鳴は音にはならず、ひゅーひゅーと微かで苦し気な呼吸として発っせられただけだった。
深更を過ぎた真っ暗闇に、紅い二つの点だけが浮かび上がっている。
その血のような紅さ、禍々しく纏わりつく淫らな眼差し。
ひゅーーひゅっうーーひゅーー
己を縛る者の正体を悟り、必死に声を出そうと試みるが空気が抜けたような弱々しい音が洩れるだけ。
助けを求めて唯一動かせる眼が部屋中をさ迷う。
だが助けになりそうな何かは見付けられ無かった。
身体の自由と声を奪われ、視線は嫌でも紅い点に吸い寄せられる。
紅が三つに増えた。
三つ目の紅は三日月を横にしたような形で、暗闇にいきなり出現した。
それは耳まで裂けた真っ赤な口だった。
目が慣れてくるに従い、詳細まで明瞭になる。
自身の置かれた状況を見れないのが唯一の幸いだったかも知れない。
頭の上で重ねられた両手首にも、褥の上に投げ出された両足首にも、黒い紐が絡み付き彼の自由を奪っていたからだ。
目を凝らせば、其れ等は蠢く無数の黒い蛇である事が見て取れた。
時折、彼等を使役する主人と同じく口を大きく開け、先端が裂けた赤黒い舌をちろちろさせシューシューと威嚇音を鳴らしていた。
乱法師は必死に気持ちを奮い起たせた。
しかし恐怖と悔しさで目に涙が滲み、紅い虹彩を睨み付けるのがやっとだった。
『睨んでも無駄じゃ。可愛いい顔をして淫らな振る舞いを良くも儂の見ている前でしてくれたものじゃ──そなたを見初めたあの日以来、我等には特別な絆が出来たというのに。誰よりも強い絆じゃ。信長よりもずっとずっと──そなたは裏切ったのじゃ!許さぬ! 』
聞き覚えのある声が頭に響いた。
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