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第1章 発端 ──1──
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(注:文中では、本編と同じく蘭丸は全て乱法師《らんほうし》と記載、信長からの書状には乱法師と記述されている。本人の署名は森乱成利)
「真に畏れ多き事なれど、頭痛がして起き上がる事すら……」
脇息に凭れ掛かり弱々しく返答した者は、顔立ちに幼さが残る十代前半と覚しき少年だった。
「上様はそなたの事を、それは案じておられる」
まだ若い、二十代前半と覚しき武士は諭すように切り出した。
「斯様な有り様では出仕したとてお役には立てませぬと、お伝え下さいませ」
「なれど──」
若き武士、織田信長近習の青山虎松忠元は、続く言葉を辛うじて呑み込んだ。
その言葉とは『嘘を吐くな。邸にいなかったであろう』である。
青山は昨日も今いる邸を訪れていた。
その時、少年の家臣達が話しているのを耳にしてしまったのだ。
「若様が何処かへ行ってしまわれた」と。
何故、明らかに格下に見える少年に言いたい事も言えずにいるのかというと、主君信長の命令であったからだ。
ともかく『優しく申せ』と。
青山は心中の憤りを溜め息と共に吐き出し、少年をつくづくと眺めた。
所謂、類い稀な美少年である。
色白く、形の良い眉に鼻筋の通った繊細で大人びた顔立ちは、極めて品が良く賢そうに見える。
と同時に、奥二重の切れ長の瞳は優しげで、愁いを含むと蠱惑的な色を帯び、長い睫毛と紅唇を震わせて見詰めれば忽ち男心は蕩けるだろう。
今回の事は少年にそうした自覚がなく、見た目よりも幼稚であるが故に起きてしまった事態と言えた。
そこで青山虎が、その後始末をさせられているという訳なのだ。
それは、先月小姓として出仕したばかりの目の前の美少年、森乱法師を信長が見初め、手を付けてしまった事に因る。
時代を遡れば奈良時代にも見られる男色(同性愛)の風習は連綿と続き、武士や公家、僧侶といった特権階級の男達は側仕えとして美童を置き、愛でる事を公然と好んだ。
信長は美しい乱法師に惹かれ、当然の事として褥に押し倒した。
少年とはいえ、この時代では結婚している者とている年齢である。
既に母になっている少女達と比ぶべくもないが、性に対する意識に差が生じやすい年頃ではあった。
森乱法師は美濃の金山城主、森武蔵守長可のすぐ下の弟に当たる。
森家は始め美濃の斎藤道三に仕えていたが、乱法師の父可成が織田信長に臣従して以来重く用いられ、金山城主に任じられたのが永禄八年、乱法師がちょうど生まれた年であった。
家中でも逸早く城主となった森可成だったが、元亀元年(1570年)に浅井長政、朝倉義景連合軍が近江の宇佐山城に押し寄せ、大軍に囲まれ既に討ち死にしている。
信長は遺児を憐れみ、乱法師の兄長可に家督を許し、信長の『長』の字を与え嫡男信忠の腹心の部下としていた。
漸く幼かった弟の乱法師も年頃になったので小姓として召し出されたという訳なのだ。
側に置き訓育してやろうという純粋な思いからだった。
だが其処に『純粋な』助平心も加わってしまったのだ。
「頭が痛いと申されるのであれば、天下の名医曲直瀬道三も遣わそうとまで上様は仰せじゃ。一度診て貰い、出仕して顔だけでも見せて欲しいと仰っておられる。斯様に伏せっておると聞けば、却って上様が御心を病んでしまわれないかと皆が案じている次第なのじゃ」
「……曲直瀬道三」
思わず声が震えてしまう。
曲直瀬道三は様々な医術書を著し、帝にも拝謁を許された評判の名医である。
彼が診察したのは帝だけではなく、将軍足利義輝、三好長慶、細川晴元、毛利元就、松永久秀、織田信長等、著名な武将ばかりだった。
名医が見立てれば「大した事はございませぬ。すぐにでも出仕出来まする」と言うに決まっている。
青山虎は彼の動揺を見逃さず、畳み掛けるように言葉を繋ぎ追い込みに掛かった。
「道三殿に良く診て貰い、それでも回復せぬようであれば、恐らく上様は邸にまで御見舞いにこられるであろうな。何と勿体無い事じゃ! 」
「上様が……こちらに? 」
乱法師の顔は真の重病に罹かったかのように青褪め、ふらりとよろめいた。
「左様!では直ちに上様にそなたの容態を御伝えし、曲直瀬道三殿に診て頂くという事で宜しいか? 」
乱法師の視線が右に左に暫く泳ぎ、とうとう屈服した。
「いいえ.....いいえ、それには及びませぬ。恐らく明日には出仕出来ますと、上様に御伝え下さりませ」
分かりやすい反応に青山は笑いを噛み殺す。
「では、そのように御伝え致そう」
青山が退出した後脱力し、真に気分が優れなくなり脇息に凭れ掛かる。
仮病と言えば仮病だが、初夜の翌朝は意気消沈し本当に頭痛がして夜具から起き上がる気力もなかった。
衾を被り、どのような顔で信長の前に出て、この先仕えていけば良いのかと悩み、溜め息ばかり吐いては涙を流していた。
男女共に同衾の経験が無いにも関わらず、しかも相手は天下人信長という恐ろしい初夜の記憶は動揺し過ぎて途切れ途切れではあったが、時折印象強い行為の数々が甦ると今でも身体が震えてくる。
金山で耳にした噂とは異なり、優しい御方じゃと親しみ始めていた矢先の荒々しい振る舞いに、すっかり心は萎え萎み、手酷い罰を受けたかのような心持ちで落ち込んでしまった。
曲直瀬道三の名前と信長自ら見舞いに訪れるという、勿体無いような半ば脅しのような言葉に、明日出仕すると返答してしまったものの、考えると気分が滅入り、また溜め息を吐いた。
「はあ...…」
「ん? 」
溜め息が心無しか己の声とは違うように感じたので、もう一度吐いてみる。
「はあ......」
「うっふふあっは、はーーあぁひい……ははははあーー可愛い! 」
凄い笑い声が天井から降って来た。
上を向き見慣れた顔と目が合うと、乱法師はうんざりした表情になる。
「射干《しゃが》、またお前か……何故いつもそんな所から顔を出す?襖を開けて普通に入って来れぬのか? 」
「くく、しょうがないだろう?くの一なんだからさ」
射干《しゃが》と呼ばれた女は、組天井と書院の長押《なげし》や鴨居に器用に足や手を引っ掛け、悪びれずに笑いながら下に飛び下りた。
「忍びが皆そうな訳ではないだろう。いつも妙な所から顔を出すのはお前くらいじゃ!さっきの話しも聞いていたのか? 」
女は甲賀忍び五十三家の一つ、伴家のくの一で射干《しゃが》と言う。
森家と伴家は非常に親密な仲で、父の可成の生前に余程恩義を感じるような出来事でもあったのか、まるで家臣のように度々力を貸してくれている。
通常、忍びとは金で雇われて働く謂わば傭兵なので、何処かの大名に属している訳ではない。
但し能力を買われ、家臣として取り立てられ、結果として大名にまで出世する者もいる事はいた。
よって伴家は森家の家臣ではないが、織田家の今や御抱え忍びとして諜報活動を行っている。
森家が臣従を誓う織田家に力を貸す事は、自然な成り行きであった。
射干とは別名檜扇と呼ばれ、夏に咲く橙色の鮮やかな花だ。
真に色っぽい女である。
名前の通り、射干の種子、烏羽玉《ぬばたま》の如き黒髪を高々と結い上げ、白い脚を惜し気も無く太股の辺りまで露にしている。
紅梅色の裾の短い帷子の下には何も身に付けていないのではないかと思う程扇情的な出で立ちだが、勿論そこに穿くべき物は穿いていた。
歳の頃は一見、二十歳を越えた辺り。
くの一というだけあって、着物や髪型、化粧や振る舞いで、それこそ乱法師と同じ年頃の未通娘《おぼこ》に化けて見せる事も出来る、当に変幻自在の女性《にょしょう》なのだ。
という事は逆に、無害な老婆に化ける場合もある為、実際いくつなのかというのは謎だった。
いずれにせよ露な太股だけでなく、滑々とした紅唇に、少し吊り上がった目は常に妖しく物憂げで、簡素な帷子に覆われた身体は実に旨そうな肉付きをしていた。
特に胸の豊かな膨らみに男達の視線は大抵釘付けになってしまう。
並みの男で射干に目を引かれぬ者は恐らくいないであろう。
故に己の魅力を存分に役立ててきたのは言うまでもない。
「明日からまた出仕する気になったって事だろ?話しを聞いてた限りじゃさ!あっはは! 」
「う……やはり聞いていたのか。人の話しを盗み聞きするなど何と下賎な! 」
乱法師は顔を赤らめ、眉をしかめて詰った。
男というには明らかに未熟な彼が、色香より圧倒されるのは、人生経験豊富な大人の女性の言動や振る舞いに対してなのだ。
「下賎って言われたって、第一母親なんかいたのは確かってだけで、父親《てておや》なんざ、何処の誰だか分かりゃあしないあたしに言ってんのかい? 」
伴家の忍びと言ったところで正確には血族な訳ではない。
くの一として育てられる女にまともな出自の者がいよう筈もなく、身に危険が迫れば武器や火器も用いるが、専ら使うのは女の武器と相場が決まっている。
それ故くの一は孤児ばかりで、幼い頃の記憶では、大和の国の武家であった父が戦で討死し、残された母親は遠い縁戚を頼りに近江に移り住んだものの、結局生計の為には遊女紛いの生業で何とか凌ぐ他なかった。
子供を育てながら、やっとの日々の暮らしで心身が疲弊し、床に伏せってから亡くなるまでは、朧気な記憶によるとあっという間だった。
幼い兄弟達と道端で物乞いや、商売のような事をしていたような覚えもあるが、そんな時に伴家の者に拾われたのだ。
と、このような本人ですら曖昧な卑しい生い立ちを乱法師に自ら語った事は無い。
無邪気な顔で聞いてくるのを適当にあしらい嘘ばかり吐いていたら、父は天狗、母は狐だと未だに信じている世間知らずな鷹揚さに時々呆れてしまう。
数々の男達を手玉に取ってきた彼女からすれば、乱法師の悩みも彼自身もまるでひよっ子で、弟、いや男ですらなく、姫君のようにか弱い存在に思え、全くどっちが男か分かったものではなかった。
「ずっと伏せっていたから心配してやっていたのさ。第一何で臥せっているのか、あたしにはとんと理解出来ないがねぇ」
無礼な言い様だが、森家に恩があるからと力を貸してくれる伴家の者に、今度は息子である自分も恩義を感じてしまい、強い態度が中々取れない。
口は悪いが姉のように心配してくれているのは確かなようだった。
「…………」
一体どう答えるべきか。
明日は信長と顔を合わせなければならない。
説明し難い思いを吐き出すべきか。
「若は信長公が嫌いなのかい? 」
「嫌いな訳がない! 」
思いの他はっきりと答えられた事に自分で驚く。
「だったら!嫌いな主なら悩む気持ちも分かるけど。どんと身を任せれば益々可愛がられて寵臣として出世出来るんじゃないのかい? 」
「そんな……上様は大恩ある御主君。好きとか嫌いとか身を任せるとか……儂は上様を畏れ敬い、武士としてお役に立ちたいのじゃ。単純に好き嫌いでは片付かないのじゃ」
射干は顎に指を当てて首を傾げる。
「信長公は単純に愛しいなあという気持ちで抱いたんだろうに。向こうが求めてるのは一先ず若が自分を慕ってくれる事だけだろうと思うがねぇ」
「そんな事があるか!御主君を好きだのお慕いするなど!それに、あの上様が儂を愛しいなど思われる訳がない!御主君は御主君じゃ! 」
顔を真っ赤にして怒鳴り返す姿は子供丸出しである。
「でも、ご近習を遣わされてるくらいだから一夜限りには到底思えないけどねぇ。嫌だから、あたしに変わってくれって言われてもこればっかりは出来ないよ」
当に彼の悩みの核心を突く発言は、虐めている訳ではなく素朴な疑問を投げ掛けているだけに過ぎない。
「う.......儂は儂は、心で上様にお仕えしたいのじゃ。身体を求められたら......うう……」
奥手な彼からすれば身体を差し出すのは大層な一大事で、心を捧げるという言葉はさぞかし清く正しく感じられるのだろう。
それに、まるで心と身体は別物のように乱法師は言うが、肌を合わせた者に心動かされるのも人であり、 身体だけ心だけの繋がりなど実際には無いと思っている。
男と寝て情報を手に入れるくの一ですら、肌を重ね共に過ごす時間が長ければ長い程、相手に情が移ってしまうのだから。
それにしても正直男として見るのは難しいが、後一二年もしたら性の手解きをしてやっても良いと思っていたところだったのに──
いずれにせよ、余程相手に問題があるのでなければ、色事に関しては言い寄って来た相手に案外靡いていくものだ。
力を持つ一握りの者達は、世の中の様々な物を自らの手で選び取る事が出来るが、弱者は皆、運命を受け入れ生きる他無い。
射干など、その最たる者だった。
相手が信長では逃れようはなく、観念して精々飽きられない努力をした方が良いのにと少し意地悪く思ってしまう。
皆が平伏する権力者でも男は男。
閨房において流石に小難しい理屈や算術は必要ないだろう。
深窓の姫君とて書物で知識を与え、閨での心得を教え込んでおけば、こんなものかと特に動じず男に脚を開けるものだ。
「嫌なら仮病を使う、若しくは閨でどのような振る舞いをすべきかを書物でも読んでおけば、覚悟を決めて御相手が務められるんじゃあないのかい? 」
男性経験豊富な彼女でさえ男同士の交合だけは知識でしか語れない。
『身体ではなく心を捧げる』などと言ったところで、先日のように『心だけでなく身体を求められたら』抗いきれないのが現実と、乱法師は認めたくないが分かっている。
優しく抱き締められ、押し倒されてからは声さえ上げる間も無く行為が始まっていたのだから。
意外と親しみ易いと思い始めていた昼の顔とは全く異なり、やはり信長は恐ろしいと感じた。
『また、荒々しい振る舞いに及ばれたら...…』
到底、言葉だけで退けられるような相手ではない。
「もう良い!家臣ではないとは申せ、勝手に盗み聞きして勝手な事を申して、いい加減部屋から出て行け! 」
黒雲の如く沸き上がる明日への不安に対して、これ以上あれこれ言われたくないと、障子を開け出て行くように促す。
「はいはい! 」
あっさり射干が部屋を出て行った後、彼女の言葉がぐるぐると頭の中で回り、一つの言葉がぴたりと中央で止まった。
「書物、か」
───
白緑と女郎花(薄黄緑)、山吹色の三色の粗い斜縞模様の上に、雪輪が金糸で刺繍され、輪の中は鹿の子絞りと泳ぐ魚が辻が花で桜色や水色で染められた涼しげな小袖。
真夏であるので肩衣袴は着けずに、銀色の地に青海波模様が赤い糸や紺色、紫等で刺繍された帯を締め、その先を後ろに垂らす。
髪は襟足に髱《たぼ》を大きく作り、茶筅髷に平元結が愛らしく、擦れ違う侍達が思わず目を止める程、初々しい小姓姿の乱法師であった。
あくまでも夏らしく軽やかで華やかな装いとは対照的に、顔は緊張で強張り少し青褪めていた。
信長の住まう仮御殿に近付くにつれ、動揺を必死に隠そうと顔をきりりと引き締めてみるものの、向かう足取りも心も重かった。
安土への築城は織田家の重臣丹羽長秀を総普請奉行として、昨年の天正四年から始められた。
城の巨大な外郭や、安土に土地を賜った家臣達の邸の普請は随分進んでいるが、城自体の完成までは後数年は掛かりそうだ。
その為、岐阜城から茶道具だけを携えて安土に移ってきた信長は、始めは宿老の佐久間信盛の邸に居候していたが、今は仮御殿に住んでいるという訳だった。
先月奉公を始めたばかりの新参者である癖に、件《くだん》の理由で五日ぶりの出仕となる為、平静な顔を取り繕っていても、かなりの居心地の悪さを覚悟して来たつもりだった。
しかし小姓達の己に接する態度に以前と特に変わった様子は無く拍子抜けした。
「真に畏れ多き事なれど、頭痛がして起き上がる事すら……」
脇息に凭れ掛かり弱々しく返答した者は、顔立ちに幼さが残る十代前半と覚しき少年だった。
「上様はそなたの事を、それは案じておられる」
まだ若い、二十代前半と覚しき武士は諭すように切り出した。
「斯様な有り様では出仕したとてお役には立てませぬと、お伝え下さいませ」
「なれど──」
若き武士、織田信長近習の青山虎松忠元は、続く言葉を辛うじて呑み込んだ。
その言葉とは『嘘を吐くな。邸にいなかったであろう』である。
青山は昨日も今いる邸を訪れていた。
その時、少年の家臣達が話しているのを耳にしてしまったのだ。
「若様が何処かへ行ってしまわれた」と。
何故、明らかに格下に見える少年に言いたい事も言えずにいるのかというと、主君信長の命令であったからだ。
ともかく『優しく申せ』と。
青山は心中の憤りを溜め息と共に吐き出し、少年をつくづくと眺めた。
所謂、類い稀な美少年である。
色白く、形の良い眉に鼻筋の通った繊細で大人びた顔立ちは、極めて品が良く賢そうに見える。
と同時に、奥二重の切れ長の瞳は優しげで、愁いを含むと蠱惑的な色を帯び、長い睫毛と紅唇を震わせて見詰めれば忽ち男心は蕩けるだろう。
今回の事は少年にそうした自覚がなく、見た目よりも幼稚であるが故に起きてしまった事態と言えた。
そこで青山虎が、その後始末をさせられているという訳なのだ。
それは、先月小姓として出仕したばかりの目の前の美少年、森乱法師を信長が見初め、手を付けてしまった事に因る。
時代を遡れば奈良時代にも見られる男色(同性愛)の風習は連綿と続き、武士や公家、僧侶といった特権階級の男達は側仕えとして美童を置き、愛でる事を公然と好んだ。
信長は美しい乱法師に惹かれ、当然の事として褥に押し倒した。
少年とはいえ、この時代では結婚している者とている年齢である。
既に母になっている少女達と比ぶべくもないが、性に対する意識に差が生じやすい年頃ではあった。
森乱法師は美濃の金山城主、森武蔵守長可のすぐ下の弟に当たる。
森家は始め美濃の斎藤道三に仕えていたが、乱法師の父可成が織田信長に臣従して以来重く用いられ、金山城主に任じられたのが永禄八年、乱法師がちょうど生まれた年であった。
家中でも逸早く城主となった森可成だったが、元亀元年(1570年)に浅井長政、朝倉義景連合軍が近江の宇佐山城に押し寄せ、大軍に囲まれ既に討ち死にしている。
信長は遺児を憐れみ、乱法師の兄長可に家督を許し、信長の『長』の字を与え嫡男信忠の腹心の部下としていた。
漸く幼かった弟の乱法師も年頃になったので小姓として召し出されたという訳なのだ。
側に置き訓育してやろうという純粋な思いからだった。
だが其処に『純粋な』助平心も加わってしまったのだ。
「頭が痛いと申されるのであれば、天下の名医曲直瀬道三も遣わそうとまで上様は仰せじゃ。一度診て貰い、出仕して顔だけでも見せて欲しいと仰っておられる。斯様に伏せっておると聞けば、却って上様が御心を病んでしまわれないかと皆が案じている次第なのじゃ」
「……曲直瀬道三」
思わず声が震えてしまう。
曲直瀬道三は様々な医術書を著し、帝にも拝謁を許された評判の名医である。
彼が診察したのは帝だけではなく、将軍足利義輝、三好長慶、細川晴元、毛利元就、松永久秀、織田信長等、著名な武将ばかりだった。
名医が見立てれば「大した事はございませぬ。すぐにでも出仕出来まする」と言うに決まっている。
青山虎は彼の動揺を見逃さず、畳み掛けるように言葉を繋ぎ追い込みに掛かった。
「道三殿に良く診て貰い、それでも回復せぬようであれば、恐らく上様は邸にまで御見舞いにこられるであろうな。何と勿体無い事じゃ! 」
「上様が……こちらに? 」
乱法師の顔は真の重病に罹かったかのように青褪め、ふらりとよろめいた。
「左様!では直ちに上様にそなたの容態を御伝えし、曲直瀬道三殿に診て頂くという事で宜しいか? 」
乱法師の視線が右に左に暫く泳ぎ、とうとう屈服した。
「いいえ.....いいえ、それには及びませぬ。恐らく明日には出仕出来ますと、上様に御伝え下さりませ」
分かりやすい反応に青山は笑いを噛み殺す。
「では、そのように御伝え致そう」
青山が退出した後脱力し、真に気分が優れなくなり脇息に凭れ掛かる。
仮病と言えば仮病だが、初夜の翌朝は意気消沈し本当に頭痛がして夜具から起き上がる気力もなかった。
衾を被り、どのような顔で信長の前に出て、この先仕えていけば良いのかと悩み、溜め息ばかり吐いては涙を流していた。
男女共に同衾の経験が無いにも関わらず、しかも相手は天下人信長という恐ろしい初夜の記憶は動揺し過ぎて途切れ途切れではあったが、時折印象強い行為の数々が甦ると今でも身体が震えてくる。
金山で耳にした噂とは異なり、優しい御方じゃと親しみ始めていた矢先の荒々しい振る舞いに、すっかり心は萎え萎み、手酷い罰を受けたかのような心持ちで落ち込んでしまった。
曲直瀬道三の名前と信長自ら見舞いに訪れるという、勿体無いような半ば脅しのような言葉に、明日出仕すると返答してしまったものの、考えると気分が滅入り、また溜め息を吐いた。
「はあ...…」
「ん? 」
溜め息が心無しか己の声とは違うように感じたので、もう一度吐いてみる。
「はあ......」
「うっふふあっは、はーーあぁひい……ははははあーー可愛い! 」
凄い笑い声が天井から降って来た。
上を向き見慣れた顔と目が合うと、乱法師はうんざりした表情になる。
「射干《しゃが》、またお前か……何故いつもそんな所から顔を出す?襖を開けて普通に入って来れぬのか? 」
「くく、しょうがないだろう?くの一なんだからさ」
射干《しゃが》と呼ばれた女は、組天井と書院の長押《なげし》や鴨居に器用に足や手を引っ掛け、悪びれずに笑いながら下に飛び下りた。
「忍びが皆そうな訳ではないだろう。いつも妙な所から顔を出すのはお前くらいじゃ!さっきの話しも聞いていたのか? 」
女は甲賀忍び五十三家の一つ、伴家のくの一で射干《しゃが》と言う。
森家と伴家は非常に親密な仲で、父の可成の生前に余程恩義を感じるような出来事でもあったのか、まるで家臣のように度々力を貸してくれている。
通常、忍びとは金で雇われて働く謂わば傭兵なので、何処かの大名に属している訳ではない。
但し能力を買われ、家臣として取り立てられ、結果として大名にまで出世する者もいる事はいた。
よって伴家は森家の家臣ではないが、織田家の今や御抱え忍びとして諜報活動を行っている。
森家が臣従を誓う織田家に力を貸す事は、自然な成り行きであった。
射干とは別名檜扇と呼ばれ、夏に咲く橙色の鮮やかな花だ。
真に色っぽい女である。
名前の通り、射干の種子、烏羽玉《ぬばたま》の如き黒髪を高々と結い上げ、白い脚を惜し気も無く太股の辺りまで露にしている。
紅梅色の裾の短い帷子の下には何も身に付けていないのではないかと思う程扇情的な出で立ちだが、勿論そこに穿くべき物は穿いていた。
歳の頃は一見、二十歳を越えた辺り。
くの一というだけあって、着物や髪型、化粧や振る舞いで、それこそ乱法師と同じ年頃の未通娘《おぼこ》に化けて見せる事も出来る、当に変幻自在の女性《にょしょう》なのだ。
という事は逆に、無害な老婆に化ける場合もある為、実際いくつなのかというのは謎だった。
いずれにせよ露な太股だけでなく、滑々とした紅唇に、少し吊り上がった目は常に妖しく物憂げで、簡素な帷子に覆われた身体は実に旨そうな肉付きをしていた。
特に胸の豊かな膨らみに男達の視線は大抵釘付けになってしまう。
並みの男で射干に目を引かれぬ者は恐らくいないであろう。
故に己の魅力を存分に役立ててきたのは言うまでもない。
「明日からまた出仕する気になったって事だろ?話しを聞いてた限りじゃさ!あっはは! 」
「う……やはり聞いていたのか。人の話しを盗み聞きするなど何と下賎な! 」
乱法師は顔を赤らめ、眉をしかめて詰った。
男というには明らかに未熟な彼が、色香より圧倒されるのは、人生経験豊富な大人の女性の言動や振る舞いに対してなのだ。
「下賎って言われたって、第一母親なんかいたのは確かってだけで、父親《てておや》なんざ、何処の誰だか分かりゃあしないあたしに言ってんのかい? 」
伴家の忍びと言ったところで正確には血族な訳ではない。
くの一として育てられる女にまともな出自の者がいよう筈もなく、身に危険が迫れば武器や火器も用いるが、専ら使うのは女の武器と相場が決まっている。
それ故くの一は孤児ばかりで、幼い頃の記憶では、大和の国の武家であった父が戦で討死し、残された母親は遠い縁戚を頼りに近江に移り住んだものの、結局生計の為には遊女紛いの生業で何とか凌ぐ他なかった。
子供を育てながら、やっとの日々の暮らしで心身が疲弊し、床に伏せってから亡くなるまでは、朧気な記憶によるとあっという間だった。
幼い兄弟達と道端で物乞いや、商売のような事をしていたような覚えもあるが、そんな時に伴家の者に拾われたのだ。
と、このような本人ですら曖昧な卑しい生い立ちを乱法師に自ら語った事は無い。
無邪気な顔で聞いてくるのを適当にあしらい嘘ばかり吐いていたら、父は天狗、母は狐だと未だに信じている世間知らずな鷹揚さに時々呆れてしまう。
数々の男達を手玉に取ってきた彼女からすれば、乱法師の悩みも彼自身もまるでひよっ子で、弟、いや男ですらなく、姫君のようにか弱い存在に思え、全くどっちが男か分かったものではなかった。
「ずっと伏せっていたから心配してやっていたのさ。第一何で臥せっているのか、あたしにはとんと理解出来ないがねぇ」
無礼な言い様だが、森家に恩があるからと力を貸してくれる伴家の者に、今度は息子である自分も恩義を感じてしまい、強い態度が中々取れない。
口は悪いが姉のように心配してくれているのは確かなようだった。
「…………」
一体どう答えるべきか。
明日は信長と顔を合わせなければならない。
説明し難い思いを吐き出すべきか。
「若は信長公が嫌いなのかい? 」
「嫌いな訳がない! 」
思いの他はっきりと答えられた事に自分で驚く。
「だったら!嫌いな主なら悩む気持ちも分かるけど。どんと身を任せれば益々可愛がられて寵臣として出世出来るんじゃないのかい? 」
「そんな……上様は大恩ある御主君。好きとか嫌いとか身を任せるとか……儂は上様を畏れ敬い、武士としてお役に立ちたいのじゃ。単純に好き嫌いでは片付かないのじゃ」
射干は顎に指を当てて首を傾げる。
「信長公は単純に愛しいなあという気持ちで抱いたんだろうに。向こうが求めてるのは一先ず若が自分を慕ってくれる事だけだろうと思うがねぇ」
「そんな事があるか!御主君を好きだのお慕いするなど!それに、あの上様が儂を愛しいなど思われる訳がない!御主君は御主君じゃ! 」
顔を真っ赤にして怒鳴り返す姿は子供丸出しである。
「でも、ご近習を遣わされてるくらいだから一夜限りには到底思えないけどねぇ。嫌だから、あたしに変わってくれって言われてもこればっかりは出来ないよ」
当に彼の悩みの核心を突く発言は、虐めている訳ではなく素朴な疑問を投げ掛けているだけに過ぎない。
「う.......儂は儂は、心で上様にお仕えしたいのじゃ。身体を求められたら......うう……」
奥手な彼からすれば身体を差し出すのは大層な一大事で、心を捧げるという言葉はさぞかし清く正しく感じられるのだろう。
それに、まるで心と身体は別物のように乱法師は言うが、肌を合わせた者に心動かされるのも人であり、 身体だけ心だけの繋がりなど実際には無いと思っている。
男と寝て情報を手に入れるくの一ですら、肌を重ね共に過ごす時間が長ければ長い程、相手に情が移ってしまうのだから。
それにしても正直男として見るのは難しいが、後一二年もしたら性の手解きをしてやっても良いと思っていたところだったのに──
いずれにせよ、余程相手に問題があるのでなければ、色事に関しては言い寄って来た相手に案外靡いていくものだ。
力を持つ一握りの者達は、世の中の様々な物を自らの手で選び取る事が出来るが、弱者は皆、運命を受け入れ生きる他無い。
射干など、その最たる者だった。
相手が信長では逃れようはなく、観念して精々飽きられない努力をした方が良いのにと少し意地悪く思ってしまう。
皆が平伏する権力者でも男は男。
閨房において流石に小難しい理屈や算術は必要ないだろう。
深窓の姫君とて書物で知識を与え、閨での心得を教え込んでおけば、こんなものかと特に動じず男に脚を開けるものだ。
「嫌なら仮病を使う、若しくは閨でどのような振る舞いをすべきかを書物でも読んでおけば、覚悟を決めて御相手が務められるんじゃあないのかい? 」
男性経験豊富な彼女でさえ男同士の交合だけは知識でしか語れない。
『身体ではなく心を捧げる』などと言ったところで、先日のように『心だけでなく身体を求められたら』抗いきれないのが現実と、乱法師は認めたくないが分かっている。
優しく抱き締められ、押し倒されてからは声さえ上げる間も無く行為が始まっていたのだから。
意外と親しみ易いと思い始めていた昼の顔とは全く異なり、やはり信長は恐ろしいと感じた。
『また、荒々しい振る舞いに及ばれたら...…』
到底、言葉だけで退けられるような相手ではない。
「もう良い!家臣ではないとは申せ、勝手に盗み聞きして勝手な事を申して、いい加減部屋から出て行け! 」
黒雲の如く沸き上がる明日への不安に対して、これ以上あれこれ言われたくないと、障子を開け出て行くように促す。
「はいはい! 」
あっさり射干が部屋を出て行った後、彼女の言葉がぐるぐると頭の中で回り、一つの言葉がぴたりと中央で止まった。
「書物、か」
───
白緑と女郎花(薄黄緑)、山吹色の三色の粗い斜縞模様の上に、雪輪が金糸で刺繍され、輪の中は鹿の子絞りと泳ぐ魚が辻が花で桜色や水色で染められた涼しげな小袖。
真夏であるので肩衣袴は着けずに、銀色の地に青海波模様が赤い糸や紺色、紫等で刺繍された帯を締め、その先を後ろに垂らす。
髪は襟足に髱《たぼ》を大きく作り、茶筅髷に平元結が愛らしく、擦れ違う侍達が思わず目を止める程、初々しい小姓姿の乱法師であった。
あくまでも夏らしく軽やかで華やかな装いとは対照的に、顔は緊張で強張り少し青褪めていた。
信長の住まう仮御殿に近付くにつれ、動揺を必死に隠そうと顔をきりりと引き締めてみるものの、向かう足取りも心も重かった。
安土への築城は織田家の重臣丹羽長秀を総普請奉行として、昨年の天正四年から始められた。
城の巨大な外郭や、安土に土地を賜った家臣達の邸の普請は随分進んでいるが、城自体の完成までは後数年は掛かりそうだ。
その為、岐阜城から茶道具だけを携えて安土に移ってきた信長は、始めは宿老の佐久間信盛の邸に居候していたが、今は仮御殿に住んでいるという訳だった。
先月奉公を始めたばかりの新参者である癖に、件《くだん》の理由で五日ぶりの出仕となる為、平静な顔を取り繕っていても、かなりの居心地の悪さを覚悟して来たつもりだった。
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