上 下
2 / 13

episode.1

しおりを挟む



   昔昔、とある国の小さな村に1人の少女がおりましたとさ


彼女はこの世の綺麗な物を集めて出来た様なとても美しい少女でしたが、その少女の髪は夜空を写したような漆黒で、
瞳の色は日が沈む空のような紫でした。
黒い髪や紫の瞳はとてもとても魔力の強い証でした。

そんな彼女を人は「魔女」と妬み、嫌い、恐れました。

人々は彼女を迫害し、森の奥へと追いやったのでした。
父も母も居ない彼女は森の奥に自分の楽園を作ったのでした。
彼女のその膨大な魔力を使い、人には決して見つける事の出来ない大切な大切な我が家を作り上げ、ひっそりと生活していました。
そんなある日、彼女の住んでいる国と隣国が戦争を始めました。
人々は次々に殺されていきました。


森と村から数十km離れた所に都がありました。
都にある、とある伯爵家は民の為戦争を反対しておりましたが、
王国に逆らった罪で屋敷ごと燃やされてしまいました。
業火の炎の様に燃え続ける屋敷を見ながら涙を流した男の子が呆然と立ちすくみ叫んでいました。
「っお父様!お母様!!」
父も母も使用人も皆刺され、燃やされてしまいました。


燃え続けた屋敷も夜明けに降り始めた雨で鎮火されていきました。燃え残った金色のネックレスを瓦礫の中から見つけ、それを握り締めて彼は歩き出しました。

「ここに居ては殺される…」

彼は歩いて歩いて歩き続けました。
足取りもフラフラと、意識が朦朧とし始めた頃、
川を見つけました。そこに顔を突っ込み水を飲んでいると
後ろから頭を何かで殴られ意識を失いました。
…目が覚めると小さな檻の中に入れられていました。
これは国に捕まったのではない、人身売買だ。
そう気付いた彼は檻の側の壁に寄りかかって寝ている男の腰に見つけた鍵を、必死に手を伸ばして取りました。
しかしそれに気付いた男は、彼を檻から引きずり出し、
殴る、蹴るなどの暴行を加えました。
そこに集まって来た男の仲間達に憂さ晴らしに殴り続けられ、
彼は視力を失いました。
これでは商品にならないと男達は目を抉り、側の森に捨てました。



男の子は大量の血を目から流していたので自分の服を引き裂き目を覆いました。彼は目が見えないまま森をさまよい、
暴行を加えられた挙句、大量の血を失って衰弱していた男の子は倒れてしまいました。


彼は世界に絶望しました。
親を失い、家を失い、目を失い、これからどうやって生きていけばいいのか、どうやって生き延びるか、
途方に暮れていた時、



「坊や、こんな森でどうしたの」

魔女と呼ばれた少女と目を失った男の子の出会いでした。



                                                                                 。」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

僕の家族は母様と母様の子供の弟妹達と使い魔達だけだよ?

闇夜の現し人(ヤミヨノウツシビト)
ファンタジー
ー 母さんは、「絶世の美女」と呼ばれるほど美しく、国の中で最も権力の強い貴族と呼ばれる公爵様の寵姫だった。 しかし、それをよく思わない正妻やその親戚たちに毒を盛られてしまった。 幸い発熱だけですんだがお腹に子が出来てしまった以上ここにいては危険だと判断し、仲の良かった侍女数名に「ここを離れる」と言い残し公爵家を後にした。 お母さん大好きっ子な主人公は、毒を盛られるという失態をおかした父親や毒を盛った親戚たちを嫌悪するがお母さんが日々、「家族で暮らしたい」と話していたため、ある出来事をきっかけに一緒に暮らし始めた。 しかし、自分が家族だと認めた者がいれば初めて見た者は跪くと言われる程の華の顔(カンバセ)を綻ばせ笑うが、家族がいなければ心底どうでもいいというような表情をしていて、人形の方がまだ表情があると言われていた。 『無能で無価値の稚拙な愚父共が僕の家族を名乗る資格なんて無いんだよ?』 さぁ、ここに超絶チートを持つ自分が認めた家族以外の生き物全てを嫌う主人公の物語が始まる。 〈念の為〉 稚拙→ちせつ 愚父→ぐふ ⚠︎注意⚠︎ 不定期更新です。作者の妄想をつぎ込んだ作品です。

[R18] 激しめエロつめあわせ♡

ねねこ
恋愛
短編のエロを色々と。 激しくて濃厚なの多め♡ 苦手な人はお気をつけくださいませ♡

性欲排泄欲処理系メイド 〜三大欲求、全部満たします〜

mm
ファンタジー
私はメイドのさおり。今日からある男性のメイドをすることになったんだけど…業務内容は「全般のお世話」。トイレもお風呂も、性欲も!? ※スカトロ表現多数あり ※作者が描きたいことを書いてるだけなので同じような内容が続くことがあります

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

処理中です...