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もういいよね?②
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教室とは違う出入口から周囲を窺いながらそっと出る。
「3時間後に」
「迷ってる人は連れてきて良いのよね?」
「良い……よな?」
K9の言葉に頷く。
別々の方向に隠れながら進む。100m程進むと、岩にカモフラージュされたテンキーと虫食いの計算式を見つけた。
「簡単だな」
「これが対応する先はどこだろうな?」
計算式を解き、テンキーで入力する。潜んでいた場所のすぐ側が横にスライドした。中には階段。
「降りてみるか」
階段を降りきると出入口が閉まり、周囲が明るくなる。少し下っている長い通路を進んでいくとマギ求で見た事のある廃屋に出た。
「ここって学校からかなり離れてるよな?」
「川を越えた先だと思う」
遠くで悲鳴が聞こえた。
「恐竜にでも襲われたかな?それとも人間かな?」
「K9の言う通りどちらかだろうけど、気分は良くないな」
「今日中にここの探索だけでも終えてしまいたいな」
隅々まで探索していく。マギ求でのレベルはリセットされてしまっているが、職業に応じたスキルは使えている。僕はスナイパー、K9は考古学者を選んでいた。
K9は考古学者という職業柄、探索を得意としている。銃の扱いも上手いが探索中は無防備になりやすい。僕が一緒に居るのも周囲の警戒の為だ。
「K9、アロサウルスだ」
「よし、逃げよう」
アロサウルスから逃げて地下に潜る。僕が警戒している間にK9が周囲の探索を始めた。
時間だけが過ぎていく。
「時間だ。戻ろう」
「何か見つけたか?」
「絵合わせかな?離れた場所の2つを同時に動かさないと正解出来ないパズルは見つけたよ。後は地下通路」
「また?」
「時間との兼ね合いと、サビ猫を置いていくわけにいかないから、奥まで行ってないけど、元から合った通路にしては新しい感じだった」
校舎に戻ると、ハンスとふぁにーはまだ戻ってきていなかった。校舎内の探索を行う事にする。外から見られないように校舎の壁に隠れながら進む。
「この教室にはギミックは無し」
「了解。次に進もう」
隣の教室にはダイアル式の金庫のようなドアがあった。
「こんなのあったか?」
「覚えがないな」
「ダイアル式か。スタキュレーの暗号のあの数字でも合わせてみるか?」
試しに数字を合わせてみたけど、ハンドルはびくともしなかった。
「早かったんだね」
その声に振り向くと怪我をしたらしいふぁにーと、ふぁにーを支えるハンスが立っていた。
「ふぁにー?怪我をしたの?」
「ミクロラプトルに襲われたのよ。ハンスが倒してくれたけど」
「倒したから分かった事だけど、マギ求と同じようにドロップするね。肉と羽毛が手に入ったよ」
「そっちは何かあった?」
「この扉とここから100m程離れた場所にある岩が偽装扉になってた。地下通路を通ると川を越えた所の廃墟に出る」
「川を越えた所の廃墟って、アロサウルスの生息地かい?よく無事だったね」
「戦略的撤退をしたからね」
「逃げたのね?」
「そうとも言う」
アロサウルスはチームで狩るものだ。少なくとも1人2人で挑むものじゃない。
地下室に戻って探索の報告を行う。
「その収納ベルトを作っていて気付いたんだけど、ステータスボードを下までスクロールしていくと、生存者が分かるわ。10人の名前があったもの」
「ステータスボード?」
試しに下までスクロールする。僕達の名前と黒く塗りつぶされた欄があった。ののとうさみの名前が消えていた。
「2人消えてる」
「恐竜に殺られたのか」
「それとも他の誰かに、だね」
ハンスの言葉に沈黙が落ちた。
「どこかにあった銃を見つけたとか?」
「銃とは限らないよ。棒でも良いんだし」
「そうね。スキルが使えるならいくらでも手段はあるわ」
置いてあった食料は、ハンスが美味しく調理してくれた。
「あら、美味しい」
「マギ求でもリアルでもやっていたからね」
「僕達はやった事がないや」
「買って来た方が早いし、美味しいし」
「あなた達は良いわよぉ。私はマギ求でもリアルでも向いてないのよね。仲間に止められちゃったわ」
「あぁ~……」
「納得しないでよぉ……」
ゲーム内でも食事と睡眠はとらなければならない。そうしないとリアルの身体が飢餓と不眠状態になり、最悪命に関わるのだそうだ。
食事と短い睡眠を取り、翌日も探索を続ける。
「サビ猫、悪い知らせだ」
廃屋で探索している時に、K9が言った。ステータスボードを開いてスキルを選択していた指が止まっている。
「どうした?K9」
「レイの名前が消えてる」
「後はヘッジホックとイウナリアとオロペサと僕達か」
「そうだね。こうやって名前が消えていくのを見るって淋しいよね」
どこかで銃声が聞こえた。
「ふぁにーかハンスかな?」
「銃があそこだけとは考えにくいけどね」
「K9、ミクロラプトルだ」
「狩れる?」
「当然」
狙いを定めてライフルの引き金を引く。倒れたミクロラプトルがチリになって消える。僕の手元に肉と羽根が残された。その後現れたヴェロキラプトルも倒し、肉と皮を手に入れた。
「K9、オロペサだ」
「どこ?」
「あそこ。木が2本立ってる側」
「ホントだ。こっちには気付いてないっぽいね。あっ」
オロペサが後ろから近付いたイウナリアに殴られた。倒れたオロペサの側にイウナリアがしゃがみこんで、何かしているのが見えた。
「帰ろう」
「だね」
音を立てないように気を付けて地下通路に潜る。拠点の地下室とは反対側の探索を行う。反対側は海の側の崖の下に出るようになってた。海岸線から見ると完璧に偽装されていた。海には海の恐竜がいる。モササウルスとかプレシオサウルスとか。当然のように大きすぎて1人では狩れない。2人でも無理だ。
海岸に居るヘッジホックを見かけた。何かを探している。
「何を探しているんだろうね?」
「僕達のように何かのギミックとか?」
ヘッジホックが顔をあげた。僕達と目が合う。
「あ」
「何をしてたの?」
「武器となるものを探してたのよ。私は薬剤師だったから恐竜とやりあった事はないし」
「みんなでリアルに帰るという選択肢は?」
「帰れるなら帰りたいわよ。でも無理だって言ってたじゃない、あの声が」
「僕達は諦めてないよ」
「そう。それならこれを預けるわ。家族に伝えてほしいの」
「ヘッジホックは諦めるの?」
「調薬師だもの。みんなみたいに戦う術を持ってないし。最初はみんなで帰るなんて甘いって思ってたけど、今は羨ましいわ。今更合流なんて虫が良すぎるしね」
自嘲気味に笑ったヘッジホックの手をK9が引く。
「おいでよ。ふぁにーもハンスもいる」
「で、でも……」
「食事は?」
「してないわ。食べられる草は食べたけど」
「それなら尚更だよ」
一応ギミックは隠して通路に招き入れる。
「ちょっと歩くけど」
「頑張るわ」
前を僕が、後ろをK9が進む。長い長い通路を歩いて拠点に着いた。
「こんな所に……」
「見付かったのは奇跡だよ」
地下室にはふぁにーとハンスがいた。
「ヘッジホック?」
訝しげにハンスが言う。
「あの、ごめんなさい。迷惑なら出ていくから」
ドギマギとしながら、ヘッジホックが言葉を返した。この2人、何かあるのかな?
「ちょうど良かったわ。ヘッジホックは何が出来るの?」
ハンスとヘッジホックの重い空気を吹き飛ばすように、ふぁにーが聞く。
「マギ求では調薬師だったわ。ふぁにー、怪我してるの?」
「昨日ね。ミクロラプトルにやられちゃったのよ。ハンスが助けてくれたの」
「薬草があれば薬は作れるけど」
「薬草?何がいるの?」
「アルテミシアとノトゥウィード。この2種があれば作れるわ。どちらも基本的な薬草だから、この辺にもあるわよ」
「採取してこよう」
「待って。ここって校舎跡よね?医務室があるんじゃない?」
「医務室、医務室ね」
「あったわね。あったけど……」
ハンスとふぁにーが顔を見合わせて苦笑する。
「なによ。どうしたの?」
「私とハンスで校舎内を探索してみたの。医務室っぽい部屋はあったわ」
「棚もベッドもメチャクチャに破壊されていた。中に入っていた薬瓶ごとね」
「何それ?」
「校舎内には恐竜は入ってこない。マギ求ではそうだったけど、ここではそうじゃないかもって事よ」
「ここは安心なのかしら?」
「地下室から出るのにギミックが2つ。扉の形状からみてここはシェルターだと思う。食料もあったから安心だと思うわ」
「3時間後に」
「迷ってる人は連れてきて良いのよね?」
「良い……よな?」
K9の言葉に頷く。
別々の方向に隠れながら進む。100m程進むと、岩にカモフラージュされたテンキーと虫食いの計算式を見つけた。
「簡単だな」
「これが対応する先はどこだろうな?」
計算式を解き、テンキーで入力する。潜んでいた場所のすぐ側が横にスライドした。中には階段。
「降りてみるか」
階段を降りきると出入口が閉まり、周囲が明るくなる。少し下っている長い通路を進んでいくとマギ求で見た事のある廃屋に出た。
「ここって学校からかなり離れてるよな?」
「川を越えた先だと思う」
遠くで悲鳴が聞こえた。
「恐竜にでも襲われたかな?それとも人間かな?」
「K9の言う通りどちらかだろうけど、気分は良くないな」
「今日中にここの探索だけでも終えてしまいたいな」
隅々まで探索していく。マギ求でのレベルはリセットされてしまっているが、職業に応じたスキルは使えている。僕はスナイパー、K9は考古学者を選んでいた。
K9は考古学者という職業柄、探索を得意としている。銃の扱いも上手いが探索中は無防備になりやすい。僕が一緒に居るのも周囲の警戒の為だ。
「K9、アロサウルスだ」
「よし、逃げよう」
アロサウルスから逃げて地下に潜る。僕が警戒している間にK9が周囲の探索を始めた。
時間だけが過ぎていく。
「時間だ。戻ろう」
「何か見つけたか?」
「絵合わせかな?離れた場所の2つを同時に動かさないと正解出来ないパズルは見つけたよ。後は地下通路」
「また?」
「時間との兼ね合いと、サビ猫を置いていくわけにいかないから、奥まで行ってないけど、元から合った通路にしては新しい感じだった」
校舎に戻ると、ハンスとふぁにーはまだ戻ってきていなかった。校舎内の探索を行う事にする。外から見られないように校舎の壁に隠れながら進む。
「この教室にはギミックは無し」
「了解。次に進もう」
隣の教室にはダイアル式の金庫のようなドアがあった。
「こんなのあったか?」
「覚えがないな」
「ダイアル式か。スタキュレーの暗号のあの数字でも合わせてみるか?」
試しに数字を合わせてみたけど、ハンドルはびくともしなかった。
「早かったんだね」
その声に振り向くと怪我をしたらしいふぁにーと、ふぁにーを支えるハンスが立っていた。
「ふぁにー?怪我をしたの?」
「ミクロラプトルに襲われたのよ。ハンスが倒してくれたけど」
「倒したから分かった事だけど、マギ求と同じようにドロップするね。肉と羽毛が手に入ったよ」
「そっちは何かあった?」
「この扉とここから100m程離れた場所にある岩が偽装扉になってた。地下通路を通ると川を越えた所の廃墟に出る」
「川を越えた所の廃墟って、アロサウルスの生息地かい?よく無事だったね」
「戦略的撤退をしたからね」
「逃げたのね?」
「そうとも言う」
アロサウルスはチームで狩るものだ。少なくとも1人2人で挑むものじゃない。
地下室に戻って探索の報告を行う。
「その収納ベルトを作っていて気付いたんだけど、ステータスボードを下までスクロールしていくと、生存者が分かるわ。10人の名前があったもの」
「ステータスボード?」
試しに下までスクロールする。僕達の名前と黒く塗りつぶされた欄があった。ののとうさみの名前が消えていた。
「2人消えてる」
「恐竜に殺られたのか」
「それとも他の誰かに、だね」
ハンスの言葉に沈黙が落ちた。
「どこかにあった銃を見つけたとか?」
「銃とは限らないよ。棒でも良いんだし」
「そうね。スキルが使えるならいくらでも手段はあるわ」
置いてあった食料は、ハンスが美味しく調理してくれた。
「あら、美味しい」
「マギ求でもリアルでもやっていたからね」
「僕達はやった事がないや」
「買って来た方が早いし、美味しいし」
「あなた達は良いわよぉ。私はマギ求でもリアルでも向いてないのよね。仲間に止められちゃったわ」
「あぁ~……」
「納得しないでよぉ……」
ゲーム内でも食事と睡眠はとらなければならない。そうしないとリアルの身体が飢餓と不眠状態になり、最悪命に関わるのだそうだ。
食事と短い睡眠を取り、翌日も探索を続ける。
「サビ猫、悪い知らせだ」
廃屋で探索している時に、K9が言った。ステータスボードを開いてスキルを選択していた指が止まっている。
「どうした?K9」
「レイの名前が消えてる」
「後はヘッジホックとイウナリアとオロペサと僕達か」
「そうだね。こうやって名前が消えていくのを見るって淋しいよね」
どこかで銃声が聞こえた。
「ふぁにーかハンスかな?」
「銃があそこだけとは考えにくいけどね」
「K9、ミクロラプトルだ」
「狩れる?」
「当然」
狙いを定めてライフルの引き金を引く。倒れたミクロラプトルがチリになって消える。僕の手元に肉と羽根が残された。その後現れたヴェロキラプトルも倒し、肉と皮を手に入れた。
「K9、オロペサだ」
「どこ?」
「あそこ。木が2本立ってる側」
「ホントだ。こっちには気付いてないっぽいね。あっ」
オロペサが後ろから近付いたイウナリアに殴られた。倒れたオロペサの側にイウナリアがしゃがみこんで、何かしているのが見えた。
「帰ろう」
「だね」
音を立てないように気を付けて地下通路に潜る。拠点の地下室とは反対側の探索を行う。反対側は海の側の崖の下に出るようになってた。海岸線から見ると完璧に偽装されていた。海には海の恐竜がいる。モササウルスとかプレシオサウルスとか。当然のように大きすぎて1人では狩れない。2人でも無理だ。
海岸に居るヘッジホックを見かけた。何かを探している。
「何を探しているんだろうね?」
「僕達のように何かのギミックとか?」
ヘッジホックが顔をあげた。僕達と目が合う。
「あ」
「何をしてたの?」
「武器となるものを探してたのよ。私は薬剤師だったから恐竜とやりあった事はないし」
「みんなでリアルに帰るという選択肢は?」
「帰れるなら帰りたいわよ。でも無理だって言ってたじゃない、あの声が」
「僕達は諦めてないよ」
「そう。それならこれを預けるわ。家族に伝えてほしいの」
「ヘッジホックは諦めるの?」
「調薬師だもの。みんなみたいに戦う術を持ってないし。最初はみんなで帰るなんて甘いって思ってたけど、今は羨ましいわ。今更合流なんて虫が良すぎるしね」
自嘲気味に笑ったヘッジホックの手をK9が引く。
「おいでよ。ふぁにーもハンスもいる」
「で、でも……」
「食事は?」
「してないわ。食べられる草は食べたけど」
「それなら尚更だよ」
一応ギミックは隠して通路に招き入れる。
「ちょっと歩くけど」
「頑張るわ」
前を僕が、後ろをK9が進む。長い長い通路を歩いて拠点に着いた。
「こんな所に……」
「見付かったのは奇跡だよ」
地下室にはふぁにーとハンスがいた。
「ヘッジホック?」
訝しげにハンスが言う。
「あの、ごめんなさい。迷惑なら出ていくから」
ドギマギとしながら、ヘッジホックが言葉を返した。この2人、何かあるのかな?
「ちょうど良かったわ。ヘッジホックは何が出来るの?」
ハンスとヘッジホックの重い空気を吹き飛ばすように、ふぁにーが聞く。
「マギ求では調薬師だったわ。ふぁにー、怪我してるの?」
「昨日ね。ミクロラプトルにやられちゃったのよ。ハンスが助けてくれたの」
「薬草があれば薬は作れるけど」
「薬草?何がいるの?」
「アルテミシアとノトゥウィード。この2種があれば作れるわ。どちらも基本的な薬草だから、この辺にもあるわよ」
「採取してこよう」
「待って。ここって校舎跡よね?医務室があるんじゃない?」
「医務室、医務室ね」
「あったわね。あったけど……」
ハンスとふぁにーが顔を見合わせて苦笑する。
「なによ。どうしたの?」
「私とハンスで校舎内を探索してみたの。医務室っぽい部屋はあったわ」
「棚もベッドもメチャクチャに破壊されていた。中に入っていた薬瓶ごとね」
「何それ?」
「校舎内には恐竜は入ってこない。マギ求ではそうだったけど、ここではそうじゃないかもって事よ」
「ここは安心なのかしら?」
「地下室から出るのにギミックが2つ。扉の形状からみてここはシェルターだと思う。食料もあったから安心だと思うわ」
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