3歳で捨てられた件

玲羅

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学院初等部 4学年生

災害現場到着

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 バサリと鳥さんが翼を広げた。私とシェーン様が乗った鳥さんは真っ白で翼の先が黒色、ダニエル様とサミュエル先生が乗った鳥さんは背中と翼が緑っぽい青でお腹側がオレンジ色。鳥さんが私達を乗せてフワリと飛び立つ。グラリと揺れてシェーン様にもたれてしまった。

「申し訳ございません」

 身体を起こしながら謝ると、優しい眼差しで気遣われた。

「いいえ。大丈夫ですよ。固定具はありますが少々支えても?」

「お願いいたします」

 シェーン様の腕が私のお腹に回される。シェーン様の胸に抱かれる形になってしまって、ちょっと焦った。

 サミュエル先生とダニエル様の乗った鳥さんが先導する。慣れてくると上空からモクモクと白く噴き出す蒸気と、急峻な岩山が見えてきた。シェーン様が教えてくれたんだけど、あの蒸気の下で宝石の原石を荒く削っているのだそうだ。

「荒く削るというか、埋まっている原石を取り出しているのですよ」

「そうなんですね」

 抱き締められる形になっているから、シェーン様の低い声が耳元で聞こえてちょっとゾクゾクしてしまう。

 鳥さんが降下を始めた。広い場所に何羽もの鳥さんが留まっていた。少し離れた場所でたくさんの人が慌ただしく動いている。

「お嬢ちゃん、案内するよ」

「キャスリーン様だ。敬意を払え」

「払ってるってば。役得とばかりに触れていたお前に言われたくないね」

「安全確保の為だ」

 言葉の応酬を繰り広げる2人にちょっとため息を吐く。どうでもいいけど、早く案内してくれないかな。

「まったくあの2人は。仕方がないね」

 サミュエル先生がちょいちょいと手招きした。その後に付いていく。掘っ立て小屋のような場所に案内してもらった。

 中にはむき出しの地面に直接寝かされた多数の怪我人と、その間をせわしなく動く光魔法使いやお医者様とおもわしき人達。

「ここの責任者は?」

 サミュエル先生が声をかける。近くにいた年配の女性が顔をあげた。

「なんだい?冷やかしならあっちに行っとくれ。子供連れで何をしに来たんだい?」

「2人とも光魔法使いだよ」

「はぁぁぁぁ?」

「指示をくれないかな」

「本当に光魔法使い?じゃあこの人を頼むよ」

 ぞんざいに顎をしゃくって示された人は、両足が血に染まっていた。

「そこまでいってしまうと切り落とすしかないね」

 その言葉に胸が痛む。

「先生、良いですか?」

「頼むよ。無理はしないようにね」

 膝を付いて、キツく目を閉じている患者の手を握る。治癒を使うと患者の下半身を淡い光が包んだ。粉砕骨折している患者の足が、治っていく。近くにいたおじ様が目を丸くしていた。

「あんたっ!!」

「はい」

「ちょっとこっちに来な」

 最初に顔をあげて答えてくれた女性に奥に連れていかれた。奥に居たのは少し年配の男性。布が掛けられていて怪我の様子は分からないけど、苦しそうな呻き声が聞こえる。

「この方を治せるかい?」

「やってみます」

 患者の手を握る。治癒を使うと内臓が傷付いているのが分かった。傷付いているなんて優しい物じゃない。押し潰されている臓器が感じ取れる。

 患者の全身が輝いた。いつもより輝きが強い。魔力もいつもより使っているし、時間もいつもより掛かっている。

「お嬢さん、手を離しなっ」

「嫌、です。もう少しなんです」

「あんたが倒れちまう」

「倒れてもいいです」

「ダメだよっ。あんたに無理してほしい訳じゃないんだ」

「でも……」

「ある程度で良いんだよ。後は少しずつ治していきゃいいんだ」

 ソッと手を離された。

「見てごらん。呼吸が楽になっている。あんたがここまで治したんだ。後は他のに任せな」

「最後まで治したいです」

「駄目だよ。あんたが潰れちまう。魔力の配分を覚えな」

 そう言って女性がポンポンと私の肩を叩いた。

「無茶をさせたね。悪かった」

「いいえ」

「魔力は大丈夫かい?」

「大丈夫です」

「じゃあ、少し休んで次は軽傷の奴らを頼むよ」

「はい」

 女性が部屋を出ていった。

「あなたのお名前は」

 女性が出ていったとたん、眠っていた男性が呟いた。少し前から気が付いていたらしい。

「キャスリーンと申します」

「貴族か」

「一応は。ここにはいち光魔法使いとして来ています」

「そうか。あなたが治してくれたんだな」

「まだすべて治っていませんが」

「1度でここまで治ったのは奇跡みたいなもんさ。ありがとう」

「光魔法使いとして当然の事です」

「当然か。そうだな。だが無理はするんじゃない。いいね?」

「はい」

 少しだけ話をした。男性は光魔法使いの医師で、鉱山に常駐していたらしい。落盤事故の時の治療中に二次災害に巻き込まれたそうだ。その話を聞いて、少しだけ胸が痛んだ。

「申し訳ございません。治療に戻ります」

「すまないね。今は僕は役に立てない」

「今はお休みください」

 仕切りの幕を出ると、女性がこっちを見た。

「休めたかい?」

「はい。次はどの方を?」

「彼女を頼めるかい?」

「分かりました」

 次の患者は右腕に大きな切り傷があった。それを布で巻いて止血している。

「治療します」

「私は後で。それよりこっちの人を」

「あなたが先です。あなたが治ったら、その方を手当てしてあげてください」

「え?でも……」

 この人は女医さんだと思う。自分の腕を後回しにして他の方の応急処置をしている。

 女性の腕を手早く治して、次々に指示された人の治療に当たっていった。

「お嬢ちゃん、今日はここまででいいよ。交代が来たからね」

 最初の女性が声をかけてくれた。サミュエル先生もこちらに来てくれた。

「助かったよ。明日からも頼めるのかい?」

「良いですよね?」

「大丈夫だよ。納得できないでしょ?」

「はい」

 サミュエル先生と一緒に怪我人の収容場所を出る。ダニエル様とシェーン様が駆け寄ってきた。

「キャスリーン様、お疲れさまでした」

「お嬢ちゃん、疲れてないかい?食事をマリアが用意している」

「お2人も何かされていたのですか?」

 土で汚れている気がする。

「救助活動をね。中では護衛は必要ないと言われたから」

「ダニエルは土魔法を使えますからね。この程度は役に立ってもらわないと」

「シェーンは雷魔法で今回は役に立っていないけどな」

「五月蝿い」

 案内された先には立派な木製の小屋があった。あれ?こんな所にこんなのあったっけ?

「キャスリーン様、どうぞ中にお入りください」

 マリアさんが待っていてくれた。

「これって……」

「私が作りました」

「マリアさんが?」

「はい。私は植物魔法を使えますので」

 中に入ると2部屋に分かれていた。両方にベッドがしつらえてあったけど、マリアさんがドアを開けてくれたのは吊り下げられた大きなハンモックがある方。

「スゴい」

「お休みの際はお好きな方をお使いくださいませ」

「この部屋を私ひとりで?」

「はい。キャスリーン様の為の場所ですからね」

 夕食は乾燥肉と乾燥野菜で作ったショートパスタ入りスープ。コンソメパウダーっぽい物があるからそれを使ってマリアさんが作ってくれていた。

「美味しい」

「良かったです。おかわりもございますよ」

 食事を食べ終わるとサミュエル先生は、打ち合わせというか会議に行った。後から呼ぶかもしれないと言われたけど。

 片付けを終えて部屋に入る。

「マリアさん」

「はい」

「植物魔法を教えてください」

「キャスリーン様はある程度使えるとお伺いしましたが?」

「使うと花が咲いちゃうんです」

「はぁ、なるほど。香りを使うタイプのようですね」

聞けば、そういうタイプの植物魔法使いもいるらしい。一般的に知られていないのは数が少ないからで、他の植物魔法使いに学んで一般的な植物魔法を後から覚えていくらしい。そういえば教えてくれた神官も居ないわけではないと言っていたっけ。

その夜一晩かけて教えてもらったんだけど、普通の植物魔法を使う事は出来なかった。マリアさんも首を捻っていた。途中でサミュエル先生に「早く寝なさい」と怒られちゃったけどね。







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