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学院初等部 2学年生
お見舞いと義兄の嫉妬
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王都の侯爵邸に着くと、ローレンスお義兄様が待っていた。
「おかえり、キャシー」
「ただいま戻りました」
お義兄様の手を借りて馬車から降りると、そのまま抱き締められた。
「何か進展は?」
「昨日よりは話が出来ました。ここから気を付けないといけませんけど」
「どうしてだい?」
「お義兄様、とりあえず入りましょう?サミュエル先生もお降りになっていただかないとなりませんでしょう?」
「もう少し」
なんだか去年もあった気がする。あの時はララ様だったなぁ。
「お義兄様?分かっておられますわよね?」
「もう少しだけ」
「ここでもう少しと家の中でたっぷり、どっちが良いですか?たっぷりといっても節度はお守りくださいね」
「どこまでなら良い?」
「どこまででしょう?お膝だっこは無しですわね」
「え?」
「際限がありませんでしょう?」
お義兄様の腕の力が緩んだ所で馬車から少し離れる。サミュエル先生が降りてきた。
「先生、申し訳ございません」
「いやいや。大丈夫だよ。キャシーちゃんを待ってたんでしょ?愛されてるねぇ」
「キャシー、中に入ろう」
ローレンスお義兄様が私の肩に手を回して、邸内に入らせようとする。いやいや、お義兄様が入口で動かなかったんですよね?
「キャシーちゃん、詳しく聞いても良いかい?」
応接室に入って話をする。
「エンヴィーオ様の事ですよね?エンヴィーオ様のあの状態は、おそらくうつ病だと思うんです。うつ病って治りかけが1番自死の危険が高くて、周りも良くなったと見ているし、本人も良くなってきたと感じているんです。でも、ふとした時に 厭世を覚える事があるそうです」
「厭世って、世の中を嫌なもの、人生を価値のないものと思う事だよね?」
「はい。治療中は自死を選んで行動する事すら、億劫なんだそうです」
「治りかけだと、そうか。行動出来るんだね」
「衝動的にって事は少ないそうですけど、気を付けなきゃいけないんですよ。違和感に気付くとか。先生、エンヴィーオ様の治療はいつからかお分かりですか?」
「1カ月程前だと記憶しているよ」
「キャシー、うつ病っていうのはすぐに治るものじゃないのかい?」
「人によって様々です。あそこには精神安定のブレシングアクアがありましたよね?」
「うん。必要だと医者から言われたらしくてね。フランシス・エンヴィーオに飲ませている」
「それなら少しは安心かな?」
不意にぎゅっとローレンスお義兄様に抱き締められた。お膝だっこはされてないけど、ぴったりと隣に座っているんだよね。
「どうなされたんですか?ローレンスお義兄様」
「分かっているんだけどね。キャシーが他の男の心配をしているのがちょっと……」
「心配というか、うつ病って本当に厄介なんです。甘えだなんて誤解する方もいるんですよね。甘えとは違うのに」
「分かる気もするけどね。それで?明日も行くのかい?」
「私はそうしたいのですけどね。なんとなくエンヴィーオ様も待っている気がしますし。お話になりたかった事をすべて吐き出せば、心の負担も軽くなるのではないかと思うのです」
「許可したくないね」
お義兄様がボソリと言った。
「お義兄様が行かせたくないのは、重々承知しております。ですが、これは私がやらねばならぬ事だと思うのです。どうかお許しください」
お義兄様の顔を見つめて言うと、はぁぁぁ……。とため息を吐かれた。
「分かってはいるんだ。この状況に対してというか、フランシス・エンヴィーオに対してキャシーの知識が今現在、最も必要なのであろう事は。でも感情がそれを理解させてくれていない。フランシス・エンヴィーオに会いに行くキャシーを閉じ込めておきたくなる」
ちょっとヤンデレとかいうのが入ってません?お義兄様。
「あくまでもお見舞いですわ。わざわざ好き好んで彼に会いに行っているわけではございません」
「分かってるよ。分かってはいるんだ。他の男に会いに行っている訳じゃないって。でも……」
「お珍しいですわね。お義兄様がこんな風に仰るのは。お疲れではありませんか?」
極々弱く治癒魔法をかける。
「ありがとう。キャシーは優しいね」
「どういたしまして」
優しくはないと思う。家族が疲れていて自分がそれを軽減する手段を持っているなら、誰だって使うと思う。
「それでどうするんだい?行くなら付き合えるよ。明後日は無理だけど、ダニエルを付けようか?」
様子を見ていたサミュエル先生が言った。
「明日行った都合ですわね。お話が伺えれば良いのですけど」
「分かった。ダニエルに連絡を取っておくよ」
「あ、でも、ダニエル様って、その……」
「ん?仕事が気になる?」
「はい」
確かダニエル様は王家の影とかだったはず。個人的な用事に付き合わせても良いんだろうか?
「アイツは今は、私の部下だからね。大丈夫だよ」
「サミュエル先生の?」
今更ながら気になる。サミュエル先生って何者? ブランジット公爵の弟だという事は知っている。学院で光魔法の教師をしている事も知っている。だけどそれだけじゃない気がするんだよね。学院にはサミュエル先生の執務室まであるし。
「サミュエル先生っておいくつでしたっけ?」
「私?38歳だよ。急にどうしたんだい?」
「光魔法を教えていただいているのに、私はサミュエル先生の事を何も知らないと思って」
「何が知りたいの?差し支えのない事なら答えるけど」
「あ、大丈夫です。一般的なブランジット公爵家の事は貴族年鑑で調べますから。知っておかないといけない事は無いですよね?」
「まぁ、特には。それにキャシーちゃんには、今のまま接してほしいかな。畏まられたりとか苦手なんだよ」
「分かりました」
サミュエル先生と話していると、ローレンスお義兄様が私の手をきゅっと握ってきた。
「お義兄様、どうなさいましたの?」
「キャシーを信じ切れない自分が嫌になるよ」
「いつも信じてくださっているではありませんか。私が好きな事を好きなように出来ているのは、お義兄様達が私を、信じてくださっているからですわよ?」
「そうなんだけどね」
たぶん言いたいのは別の事だよね。それは分かっているんだけどね。私が自分で言うのは、ちょっと違う気がするんだよね。
「お義兄様、心配してくださってありがとうございます。ですが、申し訳ございません。こればかりは私が焦っても、どうにもならないのです」
メイドが呼びに来て、夕食になった。
夕食後、サミュエル先生はお義父様と話があったらしく、執務室に行ってしまった。
「キャシーちゃん、お見舞いに行っている子って、どんな子なの?」
ホワイエでお義母様に聞かれた。たぶん報告は受けているよね?
「フランシス・エンヴィーオ様といって、4学年生の方です。少し前に迷惑をかけられたのですが、その後薬草研究会に来て「話がしたい」って仰られて。その時はものすごく忙しくて聞いている時間も無かったし、なにより先輩方が警戒して追い払ってくれたんですけど、毎日のように押し掛けてきて、サミュエル先生にも注意してもらったんですけど内容も私じゃないと言えないって……」
「キャシーちゃんじゃないと言えない?」
「はい。夏期休暇直前までそんな様子だったんですけど、いきなりパッタリと来なくなって調べてもらったら学院に居ないって言われて、サミュエル先生を説得して状態を教えてもらったんです。そうしたら」
「入院してるって言われたのね?」
「はい。最後の方はなんだか必死で、それも気になってて。忙しい時間帯じゃなかったら話も聞けたんですけど」
「あちらのご両親は?」
「見ていません。サミュエル先生によると、1度も面会に来ていらっしゃらないそうです」
「そう。エンヴィーオ領も大変ですものね」
「おかえり、キャシー」
「ただいま戻りました」
お義兄様の手を借りて馬車から降りると、そのまま抱き締められた。
「何か進展は?」
「昨日よりは話が出来ました。ここから気を付けないといけませんけど」
「どうしてだい?」
「お義兄様、とりあえず入りましょう?サミュエル先生もお降りになっていただかないとなりませんでしょう?」
「もう少し」
なんだか去年もあった気がする。あの時はララ様だったなぁ。
「お義兄様?分かっておられますわよね?」
「もう少しだけ」
「ここでもう少しと家の中でたっぷり、どっちが良いですか?たっぷりといっても節度はお守りくださいね」
「どこまでなら良い?」
「どこまででしょう?お膝だっこは無しですわね」
「え?」
「際限がありませんでしょう?」
お義兄様の腕の力が緩んだ所で馬車から少し離れる。サミュエル先生が降りてきた。
「先生、申し訳ございません」
「いやいや。大丈夫だよ。キャシーちゃんを待ってたんでしょ?愛されてるねぇ」
「キャシー、中に入ろう」
ローレンスお義兄様が私の肩に手を回して、邸内に入らせようとする。いやいや、お義兄様が入口で動かなかったんですよね?
「キャシーちゃん、詳しく聞いても良いかい?」
応接室に入って話をする。
「エンヴィーオ様の事ですよね?エンヴィーオ様のあの状態は、おそらくうつ病だと思うんです。うつ病って治りかけが1番自死の危険が高くて、周りも良くなったと見ているし、本人も良くなってきたと感じているんです。でも、ふとした時に 厭世を覚える事があるそうです」
「厭世って、世の中を嫌なもの、人生を価値のないものと思う事だよね?」
「はい。治療中は自死を選んで行動する事すら、億劫なんだそうです」
「治りかけだと、そうか。行動出来るんだね」
「衝動的にって事は少ないそうですけど、気を付けなきゃいけないんですよ。違和感に気付くとか。先生、エンヴィーオ様の治療はいつからかお分かりですか?」
「1カ月程前だと記憶しているよ」
「キャシー、うつ病っていうのはすぐに治るものじゃないのかい?」
「人によって様々です。あそこには精神安定のブレシングアクアがありましたよね?」
「うん。必要だと医者から言われたらしくてね。フランシス・エンヴィーオに飲ませている」
「それなら少しは安心かな?」
不意にぎゅっとローレンスお義兄様に抱き締められた。お膝だっこはされてないけど、ぴったりと隣に座っているんだよね。
「どうなされたんですか?ローレンスお義兄様」
「分かっているんだけどね。キャシーが他の男の心配をしているのがちょっと……」
「心配というか、うつ病って本当に厄介なんです。甘えだなんて誤解する方もいるんですよね。甘えとは違うのに」
「分かる気もするけどね。それで?明日も行くのかい?」
「私はそうしたいのですけどね。なんとなくエンヴィーオ様も待っている気がしますし。お話になりたかった事をすべて吐き出せば、心の負担も軽くなるのではないかと思うのです」
「許可したくないね」
お義兄様がボソリと言った。
「お義兄様が行かせたくないのは、重々承知しております。ですが、これは私がやらねばならぬ事だと思うのです。どうかお許しください」
お義兄様の顔を見つめて言うと、はぁぁぁ……。とため息を吐かれた。
「分かってはいるんだ。この状況に対してというか、フランシス・エンヴィーオに対してキャシーの知識が今現在、最も必要なのであろう事は。でも感情がそれを理解させてくれていない。フランシス・エンヴィーオに会いに行くキャシーを閉じ込めておきたくなる」
ちょっとヤンデレとかいうのが入ってません?お義兄様。
「あくまでもお見舞いですわ。わざわざ好き好んで彼に会いに行っているわけではございません」
「分かってるよ。分かってはいるんだ。他の男に会いに行っている訳じゃないって。でも……」
「お珍しいですわね。お義兄様がこんな風に仰るのは。お疲れではありませんか?」
極々弱く治癒魔法をかける。
「ありがとう。キャシーは優しいね」
「どういたしまして」
優しくはないと思う。家族が疲れていて自分がそれを軽減する手段を持っているなら、誰だって使うと思う。
「それでどうするんだい?行くなら付き合えるよ。明後日は無理だけど、ダニエルを付けようか?」
様子を見ていたサミュエル先生が言った。
「明日行った都合ですわね。お話が伺えれば良いのですけど」
「分かった。ダニエルに連絡を取っておくよ」
「あ、でも、ダニエル様って、その……」
「ん?仕事が気になる?」
「はい」
確かダニエル様は王家の影とかだったはず。個人的な用事に付き合わせても良いんだろうか?
「アイツは今は、私の部下だからね。大丈夫だよ」
「サミュエル先生の?」
今更ながら気になる。サミュエル先生って何者? ブランジット公爵の弟だという事は知っている。学院で光魔法の教師をしている事も知っている。だけどそれだけじゃない気がするんだよね。学院にはサミュエル先生の執務室まであるし。
「サミュエル先生っておいくつでしたっけ?」
「私?38歳だよ。急にどうしたんだい?」
「光魔法を教えていただいているのに、私はサミュエル先生の事を何も知らないと思って」
「何が知りたいの?差し支えのない事なら答えるけど」
「あ、大丈夫です。一般的なブランジット公爵家の事は貴族年鑑で調べますから。知っておかないといけない事は無いですよね?」
「まぁ、特には。それにキャシーちゃんには、今のまま接してほしいかな。畏まられたりとか苦手なんだよ」
「分かりました」
サミュエル先生と話していると、ローレンスお義兄様が私の手をきゅっと握ってきた。
「お義兄様、どうなさいましたの?」
「キャシーを信じ切れない自分が嫌になるよ」
「いつも信じてくださっているではありませんか。私が好きな事を好きなように出来ているのは、お義兄様達が私を、信じてくださっているからですわよ?」
「そうなんだけどね」
たぶん言いたいのは別の事だよね。それは分かっているんだけどね。私が自分で言うのは、ちょっと違う気がするんだよね。
「お義兄様、心配してくださってありがとうございます。ですが、申し訳ございません。こればかりは私が焦っても、どうにもならないのです」
メイドが呼びに来て、夕食になった。
夕食後、サミュエル先生はお義父様と話があったらしく、執務室に行ってしまった。
「キャシーちゃん、お見舞いに行っている子って、どんな子なの?」
ホワイエでお義母様に聞かれた。たぶん報告は受けているよね?
「フランシス・エンヴィーオ様といって、4学年生の方です。少し前に迷惑をかけられたのですが、その後薬草研究会に来て「話がしたい」って仰られて。その時はものすごく忙しくて聞いている時間も無かったし、なにより先輩方が警戒して追い払ってくれたんですけど、毎日のように押し掛けてきて、サミュエル先生にも注意してもらったんですけど内容も私じゃないと言えないって……」
「キャシーちゃんじゃないと言えない?」
「はい。夏期休暇直前までそんな様子だったんですけど、いきなりパッタリと来なくなって調べてもらったら学院に居ないって言われて、サミュエル先生を説得して状態を教えてもらったんです。そうしたら」
「入院してるって言われたのね?」
「はい。最後の方はなんだか必死で、それも気になってて。忙しい時間帯じゃなかったら話も聞けたんですけど」
「あちらのご両親は?」
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