3歳で捨てられた件

玲羅

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学院初等部 1学年生

転生者との交流

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「後発現したのが水だったよ。それまでは植物魔法だけだったんだ」

「俺も火魔法だけだったな。いつの間にか風魔法が使えるようになっていた」

「皆様、最初に使えた魔法って1種類ですか?」

「たいていはそうだろうね。たまに2種類なんてのもいるらしいけど、珍しいらしいよ」

 私って最初から2種類なんだけど。珍しかったんだ。

「キャシーちゃんは……」

 ララ様が言いかけて黙った。

わたくしは最初から2種類でした。光と水です」

「そりゃあ……」

「光魔法かい?希少魔法だね」

「転生者は10歳頃に後発現するらしいですけど、これって何か関係はないでしょうか?」

「興味深いけど、サンプルとしては数が少なすぎるね。転生者として認定されているのが19人だっけ?せめて30人は欲しいね」

「カミーユは研究者気質だからね。俺はそんな面倒な事はやりたくない」

「ラッセル様は何を?」

「僕は書記官だったんだよ。もう引退したけどね」

「スゴいですね」

「キャシーちゃん、書記官って?」

「裁判の記録とか税計算、徴税に関する事柄を取り扱うスペシャリスト専門家です」

「僕は税収関係の方だったね。各領から上げられる前年と前々年の領収から、税率が正しいか計算して、領から納められる税収に間違いがないかを地道に計算して。パソコンが欲しくなったよ」

「何か無かったでしたっけ?」

「アバカスに似た物はあるよ。でも扱いなれてないからね」

「アバカスって?」

 ララ様が聞いた。

「そろばんのような物です。家令が使っているのを見た事があります」

「キャスリーンさんって物知りだよね」

「見た事があったから知っているだけですよ。家令も子供扱いしないで教えてくれましたし」

 しばらく話をしていると、女の人の声が聞こえた。

「お客様?」

「あぁ、紹介しよう。俺の妻と子供達だ」

「お邪魔しております」

 朗らかな奥様と、私より少し年上に見える男の子と私と同じ位の女の子が顔を見せた。立ち上がって挨拶する。ララ様も私と一緒に挨拶をしていた。

「貸し切りのお客様?まぁまぁまぁまぁ。お若いお嬢様ですこと。お部屋は気に入っていただけました?」

「はい。素敵なお部屋ですね。暖かみがあってお人柄が表れていました」

「しっかりしたお嬢様ですこと。それではごゆっくりお過ごしください」

 奥様達は奥に行ってしまった。

「結婚していらしたのですね」

「妻も子供達も、俺が転生者だという事は知っている。客の情報は洩らしていないけどね」

「それよりキャスリーンさんが、スカートを摘まんで挨拶をしなくて驚いたよ」

「ここには貴族としてではなく転生者の仲間として来ております。貴族的な挨拶は一般的ではないと判断しました」

「もうちょっと年相応の考え方でも良いような気もするけどね」

「貴族としての考え方に慣れてしまったんですね。気を付けます」

 牧場に着いたのがお昼過ぎだったから、本格的な案内は明日してもらう事になった。

「そちらのララさんは乳搾り希望だったね。後やってみたい事はある?」

「馬には乗れますか?」

「乗馬?良いよ。ララさんなら十分乗れそうだしね。キャスリーンさんは……」

「乗馬には身長が足りなさそうですけど、出来ますか?」

「出来るよ。少し小さめの馬を用意出来るから。ただ、乗り降りに少し苦労するかもしれないね。乗馬用の服は持ってきているかな?」

「はい。お義父様が用意してくださいました」

「後は何が出来るんですか?」

「うーん。採蜜にはちょっと遅いし、そうだねぇ。牧草の収穫を手伝ってくれるかい?」

「はい」

「その後は妻とお菓子作りとかどうだい?」

「楽しそうです」

「お菓子ってどんな?」

「それは当日のお楽しみだよ」

 厩舎に案内してもらうと、息子さんが馬房で何かをしていた。

「あれは何を?」

「敷き藁の調整だね。あの馬は息子の馬で、息子の手で敷き藁を調整しないと寝てくれないんだ」

「ご家族それぞれの馬が居るんですか?」

「家族とカミーユの馬が居るよ。カミーユは1年の3分の1はここで過ごすから、自分の馬を持ってるんだ」

「父さん、お客様の案内?」

 息子さんが走ってきた。私達を見て頭を下げる。

「アルヴィン・オルブライトです」

「キャスリーン・フェルナーと申します」

「ララ・ノックスです」

「アルヴィン、ビアンカは?」

「母さんの手伝いをしている」

 ビアンカというのが妹さんらしい。

 アルヴィン君も交えて厩舎の次は牛舎に案内してもらう。

「詳しくは明日説明するけどね。ウチでは牛も放牧している」

「すると自然にこちらに帰ってくるのですか?」

「帰ってこないのもいるよ。明日か明後日には追い込みも体験する?」

「大変そうですわね」

「えっ?やってみたい」

「ララ様。どうやって追い込むのですか?」

 うっと言葉につまるララ様。オルブライトさんに救いを求めていた。

「もちろん馬に乗って。犬も使うけどね」

 オルブライトさんが笑いながら答える。牛舎から出て、母屋に帰った。

「犬って牧羊犬とか?あれは羊でしたか」

「牛追い犬というんだよ。ウェルシュコーギーに似た犬が居てね」

「会ってみたいです」

 お夕食は野菜たっぷりのスープとソーセージ、それにポテトサラダ、マヨネーズで和えた物じゃなくて、ブイヨンとビネガーで仕上げたのだそうだ。

「さっぱりしていて美味しいです」

「スープも優しい味で美味しい」

「田舎料理ですよ。珍しいんでしょう」

 奥様が一緒のテーブルで夕食を食べながら言う。本来だとゲストお客様が食べ終わってからなんだけど、人数も少ないし、テーブルに全員座れるとの事で、こちらからお誘いした。

「お姉さん達、どこから来たの?」

 ビアンカちゃんに聞かれた。

「王都からです。お義父さ……んが良い所だって言ってくれて。ララさんが一緒だから許可が出ました」

「王都かぁ。良いなぁ」

「私にはこちらの方が良いと思いますけど。王都にも欠点はありますし、こちらにも不満があったりするでしょう。こちらは空気が澄んでいる気がします」

「お店とかいっぱいあるんでしょ?」

「ありますけどねぇ」

「そうね。あるけどね。子供だけじゃ入れない所もあるし、路地なんかは危ないし」

「危ないの?」

「怖い人達が喧嘩してたりするもの。巻き込まれたら大変」

「怖いのね」

 ビアンカちゃんは6歳だそうだ。

「キャスリーンさんって貴族様?」

 夕食後にアルヴィン君に聞かれた。

「一応貴族ですわね」

「ビアンカがごめんなさい」

「何を謝られますの?」

「言葉遣いとか……」

「気にしませんわよ。それまで育ってきた言葉ですもの。それを咎めても楽しくありません。それにララ様も同様ですわ。気になっていたらビアンカさんより先にララ様に注意を促しています」

「キャスリーンさんって何歳?」

わたくしですか?8歳ですわ。アルヴィンさんはおいくつですの?」

「僕?僕は11歳」

わたくしよりお兄さんですのね」

 就寝時間となった為に、部屋に引き上げる。

「アルヴィン君と良い雰囲気だったじゃない」

 ララ様に揶揄からかわれた。

「アルヴィンさんにしてみればお客様ですもの。退屈しないようにと話しかけてくれただけですよ」

「キャシーちゃんって恋愛スキルがゼロだったわね、そういえば」

「ですから、可哀想な子を見る目をやめてくださいって」

「恋愛をおろそかにするなんて、人生の半分は損してるわ」

わたくし、まだ8歳なのですが?」

「やぁね、たとえじゃない。真面目に受け取らないで」

「はいはい。明日は早いのですから、もう寝ましょう」

「楽しみで眠れないわ」

「寝不足は美容の敵ですよ」

「おやすみなさい」

 ララ様の変わり身の早さに呆れながら、眠りに付いた。










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