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3歳の歳の差がもどかしいショタと意地悪な幼馴染の話

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3つ上の幼馴染みがいる。
親同士仲が良くて、物心ついた頃にはいつも隣にいた、みたいな定番のやつ。

別に自分の親の顔に対して思うことはないけど、その幼馴染の両親の顔は別格で、そりゃあ子供もそうなるよねってくらいのかっこよさ。
去年まで暗い茶色だった地毛を最近明るく染め、無造作にかき上げただけでかっこよくきまってて。


だて眼鏡を掛けてることを、2週間前に知った。



「似合わないよ。」

「“地味さと“にはわかんねんだよ。」

「……みさと、だもん。」


たった3つ。されど3つ。
少し前まではお互い知らないことなんか何一つなかったのに。
いつの間にか、遠くなっていた。


***


「美郷、いいこと教えてやろっか?」


久しぶりに来た麟太郎は、僕の部屋に来るなりベッドに寝転びそう言った。

やめてよ。匂い、移るのに。
眠れなくなるじゃないか。


「…なに、いいことって。」


絶対に、いいことじゃない。
でもムキになったり過剰に反応すると麟太郎を楽しませることになる。
だからべつに気になってなんかいない、そんな風を装って、椅子に腰かけ宿題を取り出す。


「彼女、できた。」




息が止まる。
顔が歪みそうになるのを必死でこらえた。
鼻の奥がツーンとするし、喉の奥が熱くなる。
指先がどんどん冷えていくし、心臓がうるさいくらい鳴り響いている。
最悪、最悪、最悪。


「……あ、そう、なんだ……。」

「羨ましいだろ。地味さとちゃんには無理だもんなー!」


絞り出した声は震えていた気がするけど、気づいていないのか、気づいていて楽しんでいるのか、麟太郎はにやにや笑いながら彼女のことを話し始める。


学年はひとつ上、胸が大きくて目もクリクリして。
SNSではすでに話題になるくらい美人でスタイルがいい。
背はスラっと高めでモデルさんみたい。告白は向こうから。


いろいろ、聞かされた。
知りたくないことまで。
全部、全部。


麟太郎は僕の顔を見ながら、始終にやにやしていた。
泣きそうになるのを必死で堪えていつも通りの顔をしていたつもりだったけど、麟太郎のあの感じだと、全然隠しきれてなかったのかも。


麟太郎が帰った後ももちろん宿題には取りかかれなくて、広げたノートの文字がどんどん滲んでいくのを、ただぼーっと眺めることしかできなかった。



次の日。
帰りに、麟太郎の中学の校門で待ち伏せすることにした。
小学校から家に帰る途中に、麟太郎の中学はある。


麟太郎が中1のときはしょっちゅう待ち伏せしてた。
麟太郎は部活に入ってないし、僕も学年が上がって下校時間が遅くなったから、少し待ってたらすぐ会うことができた。
そんで麟太郎と麟太郎の友達と一緒に帰ったりして。


でも、麟太郎は中2になったらめちゃくちゃかっこよくなってしまった。
髪も染めて、昔は男の子としか遊ばなかったのに、女の子たちとも仲良くするようになった。
そしたら次第に、待ち伏せしていると麟太郎のまわりの女子に睨まれるようになってしまった。


それから、麟太郎はにやにやしながら僕のことを“地味さと”って呼ぶようになった。



涙が滲む。
僕は麟太郎が好きなんだ。
昔は、意地悪だけどちゃんと美郷って呼んでくれたのに。
僕が泣きそうになるとすぐに頭を撫でて、しょうがねえなって笑ってくれたのに。
僕の学校の話だって聞いてくれて、一緒にたくさん遊んでくれて。


つらつらと考えながら待っていると、チャイムが鳴った。
昇降口を見つめていると、ポツポツと人が出てきた。

制服を着ている人達を見て、羨ましく思う。
僕からしたら中1の人なんて一歳しか違わないのに、それでも制服を着ているだけでとても大人っぽく見える。
そう思うと、ランドセルが急に恥ずかしくなって来た。
去年まではそんなこと全然思わなかったのにな。


だんだん昇降口から出てくる人が増えて、今度はだんだんと減っていっても。
麟太郎はなかなか出てこなかった。
いつもなら真っ先に出てくるのに。
また知らない麟太郎が増えていく。


「君、美郷くんだよね?」


これ以上惨めな思いをしたくなくて、もう帰ろうかと思って背を向けた瞬間、声をかけられた。
振り返ると、麟太郎が1年のときよく一緒にいた……


「矢野くん?」

「そうそう!おっきくなったねー!」


矢野くんは麟太郎とはちょっと違う種類のイケメンだ。
麟太郎が意地悪なかんじで、矢野くんは爽やかなかんじ。笑顔も、麟太郎のはにやにやだけど、矢野くんのは発電できそうなくらいペカー!って光ってる。



「麟太郎に用事?呼んで来よっか?確か先輩と話してたと思うし。」


先輩…もしかして彼女さん、かな。
学校終わったら真っ先に帰って遊ぶのが好きだったくせに。
放課後残って一緒に話すなんて。
どんどん麟太郎が遠くなっていく。


「え、あの、い、いいんだ!だいじょぶ……」

「そう……麟太郎となんかあったの?」



矢野くんの顔が曇り、一緒にいた友達にバイバイして、僕の前にしゃがみこんだ。
当たりだよ矢野くん。
でも、彼女ができた麟太郎に、つらいからもう家には来ないでほしいって言いに来ました、なんて言えないし。
よく考えたら、そんなの麟太郎のこと好きって言ってるようなもんだし、どっちにしろ言えなかったな。


僕が女の子ならまた違ったんだろうけど。
男の上に、ランドセル背負ったチビガキだし。
地味さと、だし。


俯きながら1人モヤモヤし出したら、矢野くんに手を握られた。


「美郷くんこの後時間ある?」

「え、あ、特にないけど、」

「ほんと?俺の親厳しくてさ、まだ2年なのに塾行かされて、今から受験勉強しろー!て言われて毎日ヘトヘトなんだよね。今日はたまたま休みだったから、気分転換つきあってくれない?」


そう言って僕にお願い、と頼み込む矢野くん。
ほんとはさっきの友達と一緒に遊びに行くはずだったんじゃないかな。
それか、塾がお休みも嘘かもしれない。
そもそもこんな年下の僕に頼み込まなくても、一緒に遊びに行ってくれる友達なんていくらでもいるだろうに。


矢野くんの気遣いに、少し泣いた。


***


「うぁー!」

「ここ、最近できたゲームセンター。結構大きいよね。」



矢野くんが連れてきてくれたのは、学校からちょっと離れたところにあるゲームセンターだった。
友達と行ったことはなかったし、ましてや麟太郎とは最近遊ばなくなってしまったから、初めての場所に馬鹿みたいにはしゃいだ。
大袈裟なほどの音や光も楽しくて、気になるもの片っ端から遊んで、そんな僕に矢野くんはずっとつきあってくれた。


「矢野くん、ほんとにありがとう。」

「こちらこそ!いい気分転換になったよ。」


言いながら、矢野くんは眩しいくらいの笑顔で優しく頭を撫でてくれた。
その瞬間、麟太郎だったらもっと乱暴に、髪の毛ぐしゃぐしゃにするくらい乱暴に頭撫でるのに。
そう思った自分に、少し落ち込んだ。




家に着いたのは18時。
部屋を開けると、麟太郎がベッドの上に座ってた。
僕の両親は共働きのため、麟太郎の家に合鍵を渡している。
夕飯を持ってきてくれたり、昔は僕ももっと小さかったから、僕に鍵を預けるより麟太郎が持っていて開けた方が安心と考えたんだと思う。
今では僕も5年生で、もちろん自分で鍵は持ってるけど、防犯上の理由とかで麟太郎の家に預けた鍵はそのままだ。



「よぅ。地味さと。」


美郷って、呼んでよ。



「勝手にあがんないでよ。用事ないでしょ。」

「今さらじゃん。」



にやにやにやにや。
ほんとにむかつく。
でも、好き。


「もう、来ないでよ。彼女いるんでしょ!」


つい、大声を出してしまう。
麟太郎のにやにやが増す。



「なーんで俺が地味さとの言うこと聞かなきゃなんねぇんだよ。」

「っ……」



なんだよ。やめてよ。
彼女いるくせに。
僕に構わないでよ。



「てゆかお前なにしてたんだよ。帰ってくんのおせーよ。あ、どうせ宿題やってなくて居残りさせられてたんだろ。だっせー。」



目の前が歪む。
悔しい。自分だけが好きで。
眼中にも入ってない。
帰りが遅くたって心配なんかされないし。


麟太郎なんか。


「矢野くんに、ゲームセンター連れてってもらったんだ。」



「……は?」


「帰りにたまたま会ったんだけど。矢野くん優しくてね、ぬいぐるみいっぱい取ってくれたし、ゲームもすごい強くて、あと、あ、頭も優しく撫でてくれて、」



麟太郎なんか嫌い。嫌い。
そう自分に言い聞かせたくて、矢野くんと遊んだことをいっぱい話す。



麟太郎の顔は見たくなかった。
どうせまたからかわれるんだ。小5にもなってぬいぐるみ好きなのかよ、とか、矢野にお守りしてもらってよかったな、とか。


でも悔しくて、苦しくて、喋らずにはいられなかった。


「あいつのこと、好きなの?」

「それで矢野くんが……え?」

「だから、矢野が好きかって聞いてんの。」


話を遮ったと思ったら勘違い。
そんなわけないじゃん。僕は麟太郎が……


そっか、麟太郎にはもう彼女がいるんだった。


「好き、だよ。」

「……。」

「前から好きだったし、久しぶりに会ったのにすごく優しくて、そうだ、明日もう一回会いに、っ!!」



勢いよく腕を掴まれ、ベッドへ放り投げられる。


「ったぁ……!なに、」

「矢野が好き?なに?ふざけてんの?」

「ふざけてなんか、」

「あいつと手繋ぐの?あいつとキスすんの?あいつに、」



足開くの?


耳元で囁かれ、同時に足首を掴まれ無理矢理開かされる。


「できないくせに。」


いつもにやにやしている麟太郎は、とても無表情で。



「おまえ、俺のこと好きだろ?知ってんだよ。俺が彼女できたって言ったら泣きそうになってさ。」



麟太郎の手に力がこもる。


「いたっ…!」

「おまえの泣き顔見て、何回犯そうと思ったか。」



ズボンを下ろされる。



「おまえのぐっちゃぐちゃな泣き顔見ながら突っ込みたいって、何度も思った。」



Tシャツを脱がされる。



「なのに、矢野のことが好き?ははっふざけんなよ。」



裸に、される。



「まぁいーや。美郷の泣きそうな顔見てんのも楽しいけど、もしほんとに矢野のこと好きで、矢野のもんになんかなったりしたら、ははっやべ、めっちゃむかつくわ。矢野殺してぇ。」

「り、りんた、」

「だから盗られる前にぐっちゃぐちゃに犯してやるよ………俺のことだけ考えて、泣くほど俺のこと愛してれば今まで通り自由にしてやれたのにな。可哀想な美郷。」




僕の知ってる麟太郎は、意地悪でいつもにやにやしてて。
こんな無表情でわけわかんないこと言って僕のお尻を撫でる麟太郎は知らない。



「り、りんたろ、彼女、は……?」


精一杯、それだけ絞り出す。



「彼女?あぁ。あいつ、もういらない。美郷の泣き顔見るためにつきあっただけだし。それに…なあ、美郷、今からおまえが俺の女になるんだよ。俺のために、ぐっちゃぐちゃに泣きまくって。」


麟太郎の手が僕の頭を乱暴に撫でる。

僕は涙を流しながら、笑った。

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