無敵少女の意のままに

CHABO

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Beloved

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【previously on 無敵少女の意のままに】
強敵をあっさり打ち破った一行。
だが、どうやらカギを開けるのを待っていた奴がいるようで...。

わたし達は温泉で疲れを癒し、久々に深い眠りについて朝を迎えた。
「ねっ、寝過ぎたみたいだな...もう昼前か」
珍しく他のみんなは先に起きたのか部屋には誰もいない。
「あっ、おはよ~、珍しくお寝坊さんね」
「村に何か変わったことはないか??」
「あったわよ、ソフィーちゃん起きるの待ってたの」
「何!?何があった?」
「お姉さま起きたのですわね。早速ですが宝蔵まで行きますわよ!!」
珍しくアンちゃんが急かしてくる。
「どうしたっての?まだわたしは朝飯も...わぶっ!!」
硬~いパンを口に放り込まれた、水分をくれw
「行けば分かりますわ、とにかくこの転移空間に早く入ってくださいまし!!」
わたしは半ば強引に転移させられた。

洞穴、宝蔵入口前。
「んっ!!扉が開いているぞ」
「えぇ、既に到着してたみたいですわね」
「どういうことだ?表の兵士は!!無事なのか?」
「無事も何も...顔パスですわ」
まだ訳が分からない...。
わたしは恐る恐る宝蔵に入る。
そこで見た物は...。

「おじいさまっ!!」

「げぇ~、アンちゃん!!しまったぁ、長居しすぎた!!」
またお前か、ケルビムww

「無形モンスターに宝蔵が開錠されたことを聞いたのですね」
「あ、あぁ。俺に取り入ろうと野良モンスターが情報を寄越したんだが...」
なるほど、あの長ったらしい名前の無形モンスターから切り離されたモンスターがケルビムに情報を流したんだな。
「おじいさま、ここには一体何がありますの?」
ケルビムはすくっと立ち上がる。
立ち昇る魔力はやはりその辺のモンスターとは比較にならないほど圧倒的だ!!
「くっ!!まさか、やる気か!?」
「すまないなアンちゃん。こればっかりは言うわけにいかない!!ここを通りたければ俺を倒して...」

『バキッッ!!』

ケルビムはアンちゃんの一撃で床にめり込んで足をピクピクさせているw

「おじいさま、な・に・を・お探しでしたの?」
ぶっ飛ばしてから言うなよw
「あれ?これって...」
「あぁ~~やめろ、見るなぁ~~~!!」
「ポエム??いや日記、か??」
ケルビムが落とした書物にはびっしりと詩が綴られていた。
「こ、これは...わたし??」
よく読むと、アンちゃんが生まれた事への喜びや成長日記を詩にしてあった。
「お、俺の古い日記だよ。一応、魔王聖歌隊の隊長だからな。歌詞に使おうと思って書いてたらいつの間にかここに鍵かけられてな...」
「ってことは、ここはお前の宝蔵なのか??」
「いや、昔からあった宝蔵を勝手に作業部屋として使ってただけだ。宝に興味はない。とにかくこれだけは人目に触れずに回収したかったんだよ...」
あれ?
アンちゃんが泣いてる…。
「うわぁぁぁ~、おじいさまぁ~~」
感極まったアンちゃんはケルビムに抱きついた。
ケルビムの自分に向けられた愛に感激したようだ。
「アンちゃん、いつまでも楽しく自由に生きてくれよ」
…暫く2人にしといてやろう。
「ぐすっ、おじいさま…」
「なんだい?アンちゃん。」
「誤字、脱字が酷すぎますわ。もっとお勉強なさってくださいまし」
やめんか、アン!!ww

「じゃあな、アンちゃんを宜しく頼むぞ、いてててて...。」
ケルビムは転移魔法で帰って行った。
殴られた所を冷やしながらw
「恥ずかしい所をお見せしましたわ。どうか忘れて下さいまし…」
「いいのよ~、子供が親に甘えるのなんてみんなやってる事なんだから、殴るのはどうかと思うけどw」
「...。」
「どうした?姉ちゃん」
「いや、何でもない...」
「ふ~~ん...」
「よし、わたしとマァナは宝蔵を物色する。2人は先に戻って遊んでいていいぞ、もう危険はないだろう」
「あら、お気遣い不要ですわよ」
「いや、アン、行こう!!」
「えっ、あっ、ちょっとエメリー」
エメリーはアンちゃんの腕を引っ張って走って戻っていった。
「よし、マァナ、宝蔵を物色して面白そうな物探そうか」
「そうね」

「どうしたんですの?エメリー」
「アン、1個お願いがあるんだ」
「珍しいですわね、何ですの?エメリーの頼みなら何だって応えますわよ」
「あのな...」

宝蔵物色して数時間。
「よし、面白そうな物はあらかた集まったな、戻ろうか」
「うん、わたしも満足!!」
宝蔵には主に書物ばかりだったが、わたしにとっては何よりの宝だ。
洞穴を出ると、エメリーが待っていた。
「あっ、出てきたな。こっち来て姉ちゃん」
「なんだなんだどうした??」
わたし達は温泉宿の方に戻る。
「なっ!?」
アンちゃんが見知らぬモンスターと一緒にいる。
「あぁ、戻られたのですね。心配しなくて大丈夫ですわよ、このモンスターはおじいさまの部下ですの」

「そ、そうか。で、何か用か?」
「みんなでここくぐるぞ~」
モンスターが転移魔法で空間を作っている、どこに連れていくつもりだ?
「さぁ、いいからいいから。入ってくださいまし」
わたしは2人に押されて転移空間に入る、すると...。

「こ、ここは!?」
ティ、ティップの町だ。
「ソフィーよ」
聞き覚えのある声が後ろから聞こえてきた。
「じ、じいちゃん!!」
「はっはっは、お帰り。エメリーちゃんとの悪だくみ、上手くいったのぅ」
はっ、出発の時の内緒話はこれの事だったのか!?(9話参照)
「ひっひっひ、大成功~だな!!」
「さすがエメリーですわ。わたしとおじいさまとのやりとりからお姉さまの心情を汲み取るなんて」
「じ、じいちゃ~~ん!!!」
「色々大変じゃったみたいだのう、ゆっくり聞かせておくれ」
「まぁまぁ、ソフィーちゃん。人目もはばからず泣いちゃって」
「わたしより泣いてますわ。お姉さまもまだまだ子供なんですわね」
「本当はメリアにやってもらう予定だったけどな。アンがいるからこれからいつでも帰れるぞ」
「で、でもソフィーちゃんとエメリーちゃんがここを旅立ってからまだ数日、よね?」
「う~んと、そうだな。姉ちゃんは甘えんぼだから許してやってくれ」
「ほんと、中身は誰よりも子供ね、全く」
その日は全員で旅の報告や世間話で夜通し盛り上がったのだった。
一方、ケルビムは孫に日記を読まれた恥ずかしさで数時間、自室に引きこもっていたw
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