無敵少女の意のままに

CHABO

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15.Know your enemy

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【previously on 無敵少女の意のままに】
再びウルズに大量のモンスターが襲撃。
あり得ない侵攻にマァナは疑問を抱きつつ、現地に向かう。

「はぁ、はぁ、はぁ...」
わたし達3人は現地に急ぐ。
「お前のサポートはどのくらい期待できるんだ?」
「武器の強化、HPの回復、あとは最終手段の特殊弾ね」
「攻撃手段は?」
「通常の魔銃用の弾を30発くらい持ってきたけど、600体相手には焼け石に水ね」
「よし、分かった。作戦を考えてみた、聞いてくれ」
わたしは走りながら2人に作戦を伝えた。
いや、1人だ、エメリーは背中で寝てたw

現地到着。
既に自警団と傭兵が集まっている。
「みんな聞いて、今回の隊長はこのソフィーさんが務めるから指示に従って!!」
マァナがみんなに声を掛ける。
こんなよそ者の言う事に従ってくれるのか?
「あぁ、マァナちゃんが言うなら間違いないな」
「強いんだな姉ちゃん、頼りにしてるぜ!!」
マァナはアビリティ値を例の目薬で見る事が出来るから説得力があるようだ。
「よし、聞いてくれ。まずは前衛職の連中は散らばって敵を引き付けてくれ。なるべく1対1の状況を作り出すんだ」
隊列のど真ん中に全員で突っ込んでも囲まれてお終いだからな。
また、散らばることで魔法援護での味方誤射の失敗も減らせる。
「後衛職は2/3が後方から魔法で迎撃だ。1/3は最後方でバフと戦闘不能者の治療用に待機してくれ」
マァナが全員の武器を強化するアイテムを振りかけている。
「マァナ姉ちゃん、うちの杖にもそれふりかけてくれ」
「あら、トレースワンドじゃない。珍しい杖使ってるのね」
マァナが杖にバフをかける。
「正面はわたしとエメリーに任せろ、全員手筈通り頼むぞ!!」
「おぉ~~、ってこのちっこい嬢ちゃんも戦うのか?マァナ」
「大丈夫!わたしのお墨付きよ!!」
「そ、そうなのか...」
とにかく町の入り口兼砦まで進軍されたら終わりだ、何とか時間を稼がないと...。

「行くぞ~~!!」
わたし以外の前衛職の連中は四方に散らばり、数体のモンスターはそれを追いかける。
「おらぁ!!」
「しゃあ!!」
思ったより手練れだ、これならしばらくマァナの補助と合わせて持ちこたえてくれそうだ。
「エメリー行くぞ!!」
「おぅ、姉ちゃん!!」
わたし達2人は敵のど真ん中に突っ込む。
「ペネトレイトッ!!」
わたしのペネトレイトは貫通能力が高い、一気に10体は仕留められる。
「ていっ!!」
グシャ!!
「えっ!?」
エメリーに殴られたモンスターが跡形もなく消し飛ぶ。
「おぉ~~、スゴイ威力!!」
強靭の力が宿っているとはいえ、力は非力のはず...何が起こってるんだ?
いや、そんな事を考えている余裕はない!!
「エメリー、ガンガン行けっ!!」
「おうよ姉ちゃん!!」
スキを突かれ、わたしは背中から敵に切りつけられた。
『ギィィン!!』
「残念だったな、今のわたしも割と無敵だ!!」
エメリーに強靭を分けてもらっているお陰で攻撃は一切効かない。
「おいおいおい、あの姉ちゃん達化け物か??」
「しゃべってないで範囲魔法唱えて!!足止め系の魔法もお願い!!」
「マァナ!!10時の方向、ザックとカーリックが劣勢だ!!」
「任せて!!ここは頼んだわよ!!」
マァナは劣勢な戦況があれば立て直しに奔走している。
「敵にも魔法使える奴がいるぞ、バックファイヤー反射魔法の準備もしておけ」
個々の戦力はそれなりに高いが、チームとしての動きが稚拙だ。
ゲリラ戦の経験不足だろう、それも折り込んでおく必要があるな。

それから1時間ほど経過...。
「はぁ、はぁ、はぁ...」
「姉ちゃんもう疲れた~~」
エメリーは疲れて寝っ転がっている。
モンスターは必死に攻撃しているが、もちろん全部弾いている。
「はぁ、はぁ。こ、れは、想像以上にキツイ、な...」
幸い、死者はいない。
わたしもエメリーもダメージは一切受けていないが、スタミナがもたない...。
後方部隊もMP切れか、全く機能しなくなってきた...。
「くっ、仕方ないわね...みんな~~目をつむって~~!!」
マァナが大声で全員に目をつむるよう指示した、何をする気だ?
「タイムアウトフラッシュ!!」
マァナが打ち上げた弾丸が弾け、とんでもない光が放たれた。
「がぁぁ~~~!!」
モンスター全員がもがき苦しんでいる。
「今よ、全員一旦引いて!!」
目くらましか、助かった。
わたしはエメリーを担いで後方に引く。
小さくなったマァナが出迎える。
「はぁはぁはぁ、ダメだ、限界だ...」
エメリーは寝ている、こいつわたしの背中に乗ると絶対寝るなw
「万策尽きたわね...。他のみんなも余力なし、残りモンスターはまだ半分はいる。目くらましもあと数分で効果なくなるわ」
こうなったら、仕方ない...。
「起きろエメリー、起きてくれ」
「んぁ?何だ姉ちゃん、眠いぞ...」
「メリアに変わってくれないか?このまま行くと...全滅なんだ」
「でも...」
「分かってる、モンスター相手に使いたくないのは重々承知だ。お前の師匠として、友達として、姉として何とか頼む!!」
瞬間、エメリーの表情が緩む。
「へへへ、分かった、いいぞ!!ちぇんじ!!」
雰囲気が一気に変わる。
「ふふふ、ソフィーさん、さっきの口説き文句は100点満点ですよ。エメリーのあんなに喜んでる姿、初めて見ました」
「人聞き悪いな、メリア。さっきのは本心だぞ」
「エメリーは女の子ですからね。さっきみたいにたまには言葉で本心を伝えないと...そんなんだから女だったのか!なんて馬鹿にされるんですよ」
「そういうのは...性格上苦手だ」
「そういうところもエメリーは気に入ってるみたいですけどね」
「ちょっとちょっとちょっと~、のんきにお話してる場合じゃないのよ」
マァナが割って入る。
「あぁ、もう大丈夫なんだ。メリア自己紹介してやってくれ」
「初めまして皆様。メリアと申します。マァナさんには『制圧』の勇者、と名乗った方がすんなり飲み込めるかもしれません」
「制圧の...?エメリーちゃんどうしたの?ていうかエメリーちゃん、なの?」
「僕は副人格のメリアです。制圧の能力を有しています。ここはお任せを...」
マァナはぽか~んとしている。
「メリア、制圧の仕方を指示通りにしてくれないか?」
わたしは言圧の方法を指示する。
「なるほど、分かりました。ソフィーさんの指示通り実行しましょう」
「ねぇソフィーちゃん、説明してよ」
「あぁ、後でな。もうそこまでモンスター来てるから先にこっちの対処だ」
「では、行きましょうか」

進軍してくるモンスターの目の前にメリアが立ちふさがる。
「図が高いぞ、モンスター共!!」
メリアの言葉に呼応し、モンスター全員がひざまずく。
「なに...これ??ありえない...どうなってるの??」
マァナ含む他の連中全員驚愕している。
「今すぐお前たちのボスの所まで引き返せ!!」
モンスター共は立ち上がり、引き返していく。
「マァナ、お前はついてこい。後を追うぞ」
「えっ??あっ、うん」
ここで追い払うだけでは今後、後手に回りっぱなしだ。
拠点とこいつらを操っている黒幕を突き止める必要がある。
「では僕はこれで。ソフィーさんマァナさん、エメリーをよろしくお願いしますね」
「えっ!?あっ、はい、ご苦労様です...」
「チェンジ!!」
エメリーが戻ってくる。
「...おっちゃん達、ビビってたな...」
自警団の反応を気にしている。
そうか!モンスターに使いたくないんじゃない。
メリアを呼び出す事でみんなに怖がられるのが嫌なのか...。
「マァナ姉ちゃんはうちのこと...怖くないか?」
マズイ!!
マァナ、頼むから無神経な事言わないでくれ!!
「な~~に言ってるのよ~、最高よエメリーちゃん!!ありがとうね!!」
さすがダンカーで骨とう品屋の娘、珍しい物に対して不安より好奇心が勝つんだなw
「も~~、ますますエメリーちゃんの事好きになっちゃったわ!!」
「へへへ、そうか!!」
ここまで考えてマァナの仲間入りを歓迎したんだな、さすがメリアだ。
いや、さすがに買いかぶりすぎか?w
「疲れたろ?おぶってやるから寝てろ」
「そうする、あんなに動いたの久しぶりだ」
背中におぶるとエメリーはすぐに眠りについた。
「受け入れてくれてありがとうマァナ」
「刺激的な事が好きなだけよ、仲間になってよかったわ~♪」
マァナに副人格の事を説明しながら、わたし達はモンスターを追いかける。
この先、壮絶な状況になることをわたし達はまだ知らなかった。
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