無敵少女の意のままに

CHABO

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2.The Meaning of Life

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【previously on 無敵少女の意のままに】
傭兵ソフィーは壊滅した村で謎の少女に出会い、そのまま家まで付いてこられる。
その少女は強靭999という謎のアビリティ値をもった頭の若干弱そうな子であったw

「じいちゃんうまいぞこのアップルパイ!!」
「そうかそうか、おかわりもあるぞ、たくさんお食べ」
全く、何てガキだ。
完全にじいちゃんに気に入られやがって。。
「無理矢理付いてきて勝手に弟子入りしてちゃっかり食ってるアップルパイはうまいか?」
「おう、めちゃくちゃうまいぞ!いいじいちゃんだな」
ダメだ、こいつには攻撃も口撃も効かないらしい。
強靭999だもんな...
「あっ、そうだじいちゃん。この子のアビリティ値見てよ」
「アビリティ値?あぁ、じゃあエメリーちゃん、おでこ借りるよ」
「うん、いいぞ」
じいちゃんがアビリティ値をチェックする。
「ふむ、特にそこら辺の子供と大差ない数値じゃが...」
「いや、じいちゃん、1ページ目の最下段見てよ」
「んっ?最下段か...むむ、これは!!」
「強靭って何?しかも999なんて数値初めて見たし。カンストで99が一般的な常識のはずだけど」
「な、なんということだ。あの伝説の勇者の再来か!?」
はっ?伝説?勇者??
じいちゃんももう年だ...妄想癖のひとつふたつは多めに見ないとw
「今よりはるか昔にな、世界中が今とは比べ物にならないほどの魔物が巣食ってた時代があってな...」
「比べ物にならないって...どれくらい?」
「この辺りにも今で言う神話級の魔物が跋扈してたくらいの時代じゃ」
現在のこの周辺は下級レベルの魔物しかいない。
神話級の魔物は1体で堅牢な城を陥落させてしまうほどの能力を持つ化け物だ。

「今では誰も信じず、おとぎ話だと思われておるがの…」
「ど、どうやって当時の人類は耐え抜いたの?」
「もちろんほとんどの人類は蹂躙されて絶滅の危機まで追い込まれたそうじゃ」
今の時代でも神話級の魔物1匹相手するにも超エリート級のパーティで対抗するのが常識だ。
そんな連中がウロウロしてれば今なら数か月で人類など全滅だろう。
「そんな危機にな、少年少女で構成されたパーティがどこからとなく現れ、あっという間に魔王を討ち取った、とされておる」
馬鹿な...神話級の魔物の親玉だぞ...年端もいかない連中がいくら徒党を組んだってかなうはずがない。。
「その中の1人に、強靭999の少年がいた、という記録が残っておる。もちろん今では捏造だとか言われて誰も信じておらんがな」
勇者...じいちゃんと話してる隙にわたしのアップルパイまで食べているこのガキが??(おいっ!!)
「おっと、日が暮れ始めてるな。斡旋所に依頼の報酬を受け取りがてら、エメリーちゃんの服や必要な物を買ってくるといい」
やっぱり家で引き取るんかい!!w
「まぁ、じいちゃんがそう言うなら...。おい、行くぞ!!」
「買い物だな!!うち、エレメントライフルが欲しいぞ!!」
エレメントライフルは5つある伝説の魔器の1つだ、そんなもんこの片田舎の店に売ってるか!!w
「エメリーちゃん行っておいで。わしは君の部屋を作っておくからな」
「ベッドはクイーンで頼むぞ!!」
「はぁ…じゃあじいちゃん、行ってくる」
わたし達は依頼の報告に斡旋所に向かった。

「おっ、ソフィーさん妹いたんすか!?」
「あらソフィーちゃんかわいい子ねぇ、知り合いの子?」
町を歩くとひっきりなしに話しかけられる。
「姉ちゃん思ったより人気者だな、みんなも姉ちゃんがいい奴だってわかってるんだな」
何を分かったような事を。。
「近所付き合いは大事だ、お前もこれからは面倒を起こすなよ」
「前向きに検討する」
それは約束出来ん時に言うセリフだw
「姉ちゃんは何で傭兵なんてやってんだ?」
「金を稼ぐために決まってるだろ」
「ならどっかに雇ってもらう方がいいんじゃないか?」
「じいちゃんの唯一の頼みなんだ。絶対にどこかに所属はするな、って」
「そうか、所属すると色々面倒だからな~」
「お前、意外と賢いのか?その通りだ。所属先がおかしな方向に行って流されるくらいなら自分の信念を貫いてほしい、ってな」
「じゃあ姉ちゃん自身で『生きる意味』は見つけてないんだな。うちと変わらんな」
こいつ、本当に8歳か?
「お前と禅問答するつもりはない、ほら着いたぞ、斡旋所だ」
わたしは仕事の依頼を報告しつつ、報酬を受け取ったが、さきほどの話が引っかかり続けていた。。
「お前の服を買ったら少し書物を読むのに寄り道したい」
「おぉ、図書館行くのか、マンガはあるか?」
マンガ?初めて聞くジャンルだ。
「知らん、読みたければ自分で探せ」
生きる意味、か。考えたこともなかったな。
わたしは何かに迷ったら必ず書物を読むようにしている。
そうして知性のアビリティ値を上げ、レアな能力ペネトレイトを習得したのだ。
ペネトレイトは知性と命中と平穏の値が25以上、経験値は80万必要だ。
書物を読み漁り、投擲の訓練を欠かさず、座禅を毎日行い3年でようやく到達できた。
「そういえばじいちゃんの言ってたおとぎ話はわたしでも知らなかったな。それも調べてみよう」

「あらいらっしゃいソフィーちゃん、えっと...その子は?」
「姉ちゃんの弟子のエメリーだ、よろしくな」
「コラッ、勝手に...」
「かわいいお弟子さんね~、よろしくねエメリーちゃん。わたしは図書館館長のモリーよ」
「モリーさんごめん。騒々しかったら即座につまみ出してくれていいから...」
「大丈夫よ~、お客さん1人もいないし~」
「モリーのお姉さん、マンガはあるか?」
「マンガ?聞いたことないわね...子供向けの書物はあっちにあるわよ」
エメリーは走って子供向けコーナーに向かった。
「ソフィーちゃん、ちょっといい?」
モリーさんに呼ばれて席に着く。
「あの子、さっきマンガって言ったわよね」
「えぇ、わたしも初めて聞くジャンル、知ってるの?モリーさん」
「詳しくは知らないけど、5年前くらいに来館した人もマンガを探していたわ」
「珍しい書物なのかな?」
「興味が湧いたからどんな書物なの?って聞いてもちんぷんかんぷんで...それ以来気になって気になって」
モリーさんはまだ20代中盤で物静かな人だが、書物のこととなると性格が変わるほど貪欲になる。

「わかったよ、何か分かったらまた報告にくる」
「ありがとう~。聞き出したヒントは『コマ割り』と『ふぁんたじぃ』よ」
ふぁんたじぃ?聞いたことの無い単語だ。
「ついでに聞きたいんだけど、昔の勇者の冒険記録みたいなおとぎ話の書物ってある?」
「多分『ちーとくえすと』のことね、残念だけどここにはないわ~、もう古文書レベルの古い本なの」
そんな大昔の書物だったのか、仕方ない、どこかの町に出向いた時にでも探そう。
ていうかじいちゃんの話、妄言じゃなかったんだな、ごめんじいちゃんw

それから数時間、書物を読みふけっていたらいつの間にか日が暮れてしまっていた。
「いかん、もうすっかり夜だ...」
エメリーはどこだ?やけに静かだが。
「ソフィーちゃん、こっちこっち」
モリーさんが小声でわたしを手招きしている。
そこには書物を抱えたまま眠るエメリーがいた。
「子供の寝顔ってかわいいわよね、天使ちゃんみたい」
まぁ、確かに...。
防御力は悪魔みたいだがなw
わたしはエメリーをおぶって帰る事にした。
「モリーさん遅くまでお邪魔してごめん、また来るね」
「今度は子供向けの書物を充実させておくわ~、またエメリーちゃん連れてきてね」
わたしは一礼して図書館を出た。

エメリーをおぶりながら帰路に着く。
「生きる意味...か。こいつと生活してれば何か分かるかな...」
今思えば戦って明日を生きる事しか考えてなかったわたしの転機となる日だった。
次の日、アビリティ値を見ると『慈愛』の値が2P上昇していた。
ついでに『憤怒』の値も1P増えていたw
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