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フローリアン編①
12.この国の歴史
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ツェツィーリアが、フローリアンの婚約者として城に移ってきた。
王位継承権第一位の婚約者は、王妃教育を受けなければならないことになっている。
結婚はまだ先の話だが、同じ城の中で暮らすこととなるのだ。ツェツィーリアの通っていた貴族専用の学校はこの時より行く必要はなくなった。つまり、イグナーツと会える機会がなくなったということでもある。
フローリアンとツェツィーリアはお互いの休憩時間を合わせて二人の時間を作るのだが、この日はラルスも輪の中にいた。
イグナーツとツェツィーリアの仲を取り持つことを説明すると、ツェツィーリアは目を見張ってその愛らしい唇を開いた。
「フローリアン様、それ……本気ですの?」
「本気だよ。ツェツィーはイグナーツと会ってくればいい」
「しかし、それは……」
「音楽祭を観に行きたいと言っていたよね」
「それは、言いましたが……」
「イグナーツが出ているからだろう?」
ツェツィーリアは一言だってイグナーツの名前を出してはいなかった。けれど、どんなに忘れようと思ったところで簡単に忘れられないものだということはわかる。
「申し訳、ございません……」
「なにを謝っているんだよ。僕だけ好きな人に毎日会えるのはずるいだろう? ツェツィーにだって会う権利はある。そりゃ堂々とは会えないし、遠くから見るだけになると思うけど……」
「ですがフロー様。これは許されることではございませんわ。音楽祭に行きたいと言ってしまった私が言える立場ではないことはわかっているのですが、フロー様に対する裏切りととられても仕方ありません」
「僕がいいと言っているんだから、いいんだよ」
「フロー様……」
可愛らしい顔が少し歪んだのを見て、フローリアンはツェツィーリアの背中をそっと押した。
「ほら、行っておいで。間に合わなくなるよ。ラルスを護衛につけるから」
「ですが……っ」
「いいから。ラルス、よろしく頼むよ」
「任せてください」
二人に変装の道具を持たせて追い出すと、フローリアンはほっと息を吐いた。
今はまだ、この程度しかできない。これ以上のことをして誰かの目につけば、その時点でツェツィーリアが非難の的となってしまう。
それを理由に婚約破棄ができるかもしれないが、ツェツィーリアに汚名を着せるのは本意ではないし、家のことを考えるとツェツィーリアも嫌がるだろう。
「なにか、いい案が出るといいんだけどな……」
ハッと息を吐いていると、代わりの護衛騎士がやってきた。肩口まである金色の髪をなびかせながら部屋に入ってきたのは、シャインだ。
「え? シャインが代わりの護衛騎士?」
ラルスが休みの時の代わりの騎士はさまざまだったが、シャインが代わりを務めるのは初めてだ。
まさか兄の護衛騎士が来るとは思っていなかったフローリアンは、目を丸めた。いくつになっても端正な顔立ちの騎士は、大きく表情を変えることはないが、少し嬉しそうにも見えた。
「はい。少しの間ですが、フローリアン様の護衛騎士兼、教師となります。近代史のね」
「近代史か。本当にシャインはなんでもできるね。えーと、近代史の本は……」
「本は使用いたしません。ディートフリート様の個人史とでも申しましょうか」
「兄さまの? そんな授業なら、大歓迎だよ!」
喜び勇んで椅子に座ると、シャインは目を細めた後、すぐに元の真面目な顔に戻った。
「まずは、ざっとわが国の歴史のおさらいをしましょう」
「ええ? そんなのわかってるよ。この地を初めて統一したのが初代ハウアドル王でしょ。それから勢力を広げて、建国から大体五百年で今と同じくらいの国土になったんだよね」
ハウアドルは周辺諸国に比べて、かなり大きな王国だ。建国から五百年は、なにかしらの戦争や小競り合いがあったという。
だが石造りの堅固なこの城は、火攻めも投石でさえも跳ね返してきた。大きな損傷もなく、修復されるたび、さらに頑強となっている。
そのため建国から九百年以上の間、ハウアドル王国は滅ぶことなく、時には武力で、時には外交で、形を変えながら勢力を拡大してきた。
「それからはなにがありましたか?」
「ハウアドル歴の五〇〇年代だね。この頃は統治時代と呼ばれて、他国との戦争はなかった。ただ、飢饉があったりして、国民はつらい暮らしを強いられたりもしていたね」
これくらいはこの国に住んでいれば常識だ。わざわざ復習するほどのものでもない。
それでもシャインはフローリアンの答えに満足したように頷き、「では六〇〇年代は」と次を促される。
「有名なのは、六四〇年の〝兄弟戦争〟だ。二人の王子が王位継承を狙って二大勢力に分かれ、大きな内乱が勃発した。六年もの争いで疲弊した結果、他国からも攻め込まれて多くの損害を出した」
「はい。しかも王子たちは互いの刺客に同時に倒され、お二方とも王位に就くことなく亡くなっています」
ハウアドル王国でも暗い歴史のひとつだ。結局は兄の方の男児が後を継ぐ形で王位の継承は続いている。
その後も、これほど大きな争いではないが、王位継承権を巡って、あるいは簒奪を狙って、争う歴史はいくつもあった。
「……兄さまのことを教えてくれるんじゃなかったの」
「はい、今からお話しいたします」
シャインはなぜか不穏なおさらいをしてから、ようやく本題に入ってくれた。
「第五十六代の現国王であるディートフリート陛下は、ハウアドル歴九三二年にお生まれになりました」
フローリアンとは十八もの年齢差があり、現在ディートフリートは三十三歳だ。
大好きな兄の歴史を知れるのは、ワクワクする。
「陛下にはかつて婚約者がいたことを、殿下はご存じですか?」
「うん、うっすらとは聞いたことがあるけど……えっと確か、ユリアーナだった?」
「はい、ユリアーナ・アンガーミュラー侯爵令嬢です。陛下が十歳の時に決められた、婚約者でした」
ディートフリートはこの話をあまりしたがらず、フローリアンも無理に聞くことはしなかった。そのため、家臣の噂話でしか耳に入れたことはない。
兄のいないところで聞いても良いものかとは思ったが、ただの噂話をするためにわざわざシャインが部屋に来ることはないだろう。
授業と称すからには、きっとなんらかの意図があるはずだと、フローリアンは真っ直ぐにシャインを見つめた。
王位継承権第一位の婚約者は、王妃教育を受けなければならないことになっている。
結婚はまだ先の話だが、同じ城の中で暮らすこととなるのだ。ツェツィーリアの通っていた貴族専用の学校はこの時より行く必要はなくなった。つまり、イグナーツと会える機会がなくなったということでもある。
フローリアンとツェツィーリアはお互いの休憩時間を合わせて二人の時間を作るのだが、この日はラルスも輪の中にいた。
イグナーツとツェツィーリアの仲を取り持つことを説明すると、ツェツィーリアは目を見張ってその愛らしい唇を開いた。
「フローリアン様、それ……本気ですの?」
「本気だよ。ツェツィーはイグナーツと会ってくればいい」
「しかし、それは……」
「音楽祭を観に行きたいと言っていたよね」
「それは、言いましたが……」
「イグナーツが出ているからだろう?」
ツェツィーリアは一言だってイグナーツの名前を出してはいなかった。けれど、どんなに忘れようと思ったところで簡単に忘れられないものだということはわかる。
「申し訳、ございません……」
「なにを謝っているんだよ。僕だけ好きな人に毎日会えるのはずるいだろう? ツェツィーにだって会う権利はある。そりゃ堂々とは会えないし、遠くから見るだけになると思うけど……」
「ですがフロー様。これは許されることではございませんわ。音楽祭に行きたいと言ってしまった私が言える立場ではないことはわかっているのですが、フロー様に対する裏切りととられても仕方ありません」
「僕がいいと言っているんだから、いいんだよ」
「フロー様……」
可愛らしい顔が少し歪んだのを見て、フローリアンはツェツィーリアの背中をそっと押した。
「ほら、行っておいで。間に合わなくなるよ。ラルスを護衛につけるから」
「ですが……っ」
「いいから。ラルス、よろしく頼むよ」
「任せてください」
二人に変装の道具を持たせて追い出すと、フローリアンはほっと息を吐いた。
今はまだ、この程度しかできない。これ以上のことをして誰かの目につけば、その時点でツェツィーリアが非難の的となってしまう。
それを理由に婚約破棄ができるかもしれないが、ツェツィーリアに汚名を着せるのは本意ではないし、家のことを考えるとツェツィーリアも嫌がるだろう。
「なにか、いい案が出るといいんだけどな……」
ハッと息を吐いていると、代わりの護衛騎士がやってきた。肩口まである金色の髪をなびかせながら部屋に入ってきたのは、シャインだ。
「え? シャインが代わりの護衛騎士?」
ラルスが休みの時の代わりの騎士はさまざまだったが、シャインが代わりを務めるのは初めてだ。
まさか兄の護衛騎士が来るとは思っていなかったフローリアンは、目を丸めた。いくつになっても端正な顔立ちの騎士は、大きく表情を変えることはないが、少し嬉しそうにも見えた。
「はい。少しの間ですが、フローリアン様の護衛騎士兼、教師となります。近代史のね」
「近代史か。本当にシャインはなんでもできるね。えーと、近代史の本は……」
「本は使用いたしません。ディートフリート様の個人史とでも申しましょうか」
「兄さまの? そんな授業なら、大歓迎だよ!」
喜び勇んで椅子に座ると、シャインは目を細めた後、すぐに元の真面目な顔に戻った。
「まずは、ざっとわが国の歴史のおさらいをしましょう」
「ええ? そんなのわかってるよ。この地を初めて統一したのが初代ハウアドル王でしょ。それから勢力を広げて、建国から大体五百年で今と同じくらいの国土になったんだよね」
ハウアドルは周辺諸国に比べて、かなり大きな王国だ。建国から五百年は、なにかしらの戦争や小競り合いがあったという。
だが石造りの堅固なこの城は、火攻めも投石でさえも跳ね返してきた。大きな損傷もなく、修復されるたび、さらに頑強となっている。
そのため建国から九百年以上の間、ハウアドル王国は滅ぶことなく、時には武力で、時には外交で、形を変えながら勢力を拡大してきた。
「それからはなにがありましたか?」
「ハウアドル歴の五〇〇年代だね。この頃は統治時代と呼ばれて、他国との戦争はなかった。ただ、飢饉があったりして、国民はつらい暮らしを強いられたりもしていたね」
これくらいはこの国に住んでいれば常識だ。わざわざ復習するほどのものでもない。
それでもシャインはフローリアンの答えに満足したように頷き、「では六〇〇年代は」と次を促される。
「有名なのは、六四〇年の〝兄弟戦争〟だ。二人の王子が王位継承を狙って二大勢力に分かれ、大きな内乱が勃発した。六年もの争いで疲弊した結果、他国からも攻め込まれて多くの損害を出した」
「はい。しかも王子たちは互いの刺客に同時に倒され、お二方とも王位に就くことなく亡くなっています」
ハウアドル王国でも暗い歴史のひとつだ。結局は兄の方の男児が後を継ぐ形で王位の継承は続いている。
その後も、これほど大きな争いではないが、王位継承権を巡って、あるいは簒奪を狙って、争う歴史はいくつもあった。
「……兄さまのことを教えてくれるんじゃなかったの」
「はい、今からお話しいたします」
シャインはなぜか不穏なおさらいをしてから、ようやく本題に入ってくれた。
「第五十六代の現国王であるディートフリート陛下は、ハウアドル歴九三二年にお生まれになりました」
フローリアンとは十八もの年齢差があり、現在ディートフリートは三十三歳だ。
大好きな兄の歴史を知れるのは、ワクワクする。
「陛下にはかつて婚約者がいたことを、殿下はご存じですか?」
「うん、うっすらとは聞いたことがあるけど……えっと確か、ユリアーナだった?」
「はい、ユリアーナ・アンガーミュラー侯爵令嬢です。陛下が十歳の時に決められた、婚約者でした」
ディートフリートはこの話をあまりしたがらず、フローリアンも無理に聞くことはしなかった。そのため、家臣の噂話でしか耳に入れたことはない。
兄のいないところで聞いても良いものかとは思ったが、ただの噂話をするためにわざわざシャインが部屋に来ることはないだろう。
授業と称すからには、きっとなんらかの意図があるはずだと、フローリアンは真っ直ぐにシャインを見つめた。
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