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44.報告
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「そーーのーーだぁーー」
翌日のよしちゃんは怖かった……真剣に怖かった!
昼休みに売店で弁当を買うと、デイリールームの端で顔を付き合わせる。
その隣には丸木田さんもいて、昨日の事を既によしちゃんから聞いてるみたい。
二人の刑事に尋問される容疑者の気分……。
「じゃ、どういう事か説明してもらおうか、園田」
「こ、怖いよ、よしちゃん……」
「私はあれから今まで、気になって気になって、居ても立っても居られなかったんだからね!」
「だ、だよね」
よしちゃんは頰を膨らませて、興味本位丸出しの丸木田さんはワクワクしてる。
うーん、どうやって話そうかなぁ。
悩んでたら、口を開いたのは丸木田さんだった。
「っていうかさ、拓真くんはただの虫垂炎なんでしょ? 地元の病院でも充分対処できる手術じゃない。なんでわざわざ医大に来てるの?」
「あ、それはね……拓真くん、今年の四月からトキ製菓専門学校に通ってて、白鳥市に住み始めたんだよ」
「へーえ。で、どうしてそれを園田が知ってるわけ?」
「それは……偶然! たまたま! あの……拓真くんが私の家の隣に引っ越して来て……」
「へー、そんな事あるんだー!」
「それ本当に偶然なの?」
素直に信じてくれる丸木田さんと、疑ってくるよしちゃん。
よしちゃん、鋭いよー。
「ご、ごめんなさい、嘘つきました。私が、隣の部屋を紹介してあげたの」
「園田ちゃんと拓真くんって、そんなに仲良かったんだ?」
「っていうか、付き合ってるっぽいよ。拓真くんは園田の事、名前で呼んでたし」
「つ、付き合ってない! 付き合ってなんかないよ?!」
これは嘘じゃない。付き合いたいけど付き合ってはないから、必死に弁解した。
よしちゃんはまだ疑いの眼を向けて来てるけど。
「まぁ普通は、患者のお兄さんとそんなに仲良くなる事はないよね。何がきっかけだったの?」
丸木田さん……その質問が一番答え辛いよ!!
「えーと、それはそのう……」
「ねぇ、今ふと思ったんだけど。拓真くんが骨髄液を取った時に見舞った人って、もしかして園田じゃないの?」
きゃー! よしちゃん、どうして一年以上も前の話を覚えてるのー?! 拓真くんの名前も覚えてなかったくせにー!
「あ、そういえばそんな事もあったよね! あれ、園田ちゃんだったの?! 言ってくれれば良かったのに!」
ああ……なんかもう、私だって確定した上で話してるよぉ……まぁ合ってるんだけど。
「だ、だって……なんか言えなくて……」
「それって、その時から園田が拓真くんの事好きだったって事だよね」
「え、そうなの?!」
きゃーー、もう何で拓真くんの事好きっていう前提で話して来るのー! 合ってるから、困るーー!!
よしちゃんは不敵な顔で、丸木田さんは興味津々で私を見てる。
「うう……うん……実は、その頃から……なの」
もう素直に言う事にした。いつかはよしちゃんには伝えたいって思ってた事だし。
厳密に言うと、拓真くんを見かけたその日から、なんだけど。
「やっぱり。言ってくれれば協力したのに」
「だ、だって六歳も年下の高校生だったんだよ?」
「良いんじゃない、別に。まぁ相手が小学生とかなら、一応反対はするけど」
え……別に良いんだ。私が考え過ぎてただけ、なのかな。
「でも園田、奥手だと思ってたけど、頑張ってたんだねー。拓真くんもまんざらじゃなさそうだったし、もう彼氏いない歴に終止符を打つのも、近いんじゃない?」
「そんな、全然近くない、無理だよ! 私、一度振られてるし……」
そう口に出したら惨めで、言葉が続けられなくなっちゃった。肩が落ちっちゃった私を見て、二人も少しの間黙ってしまった。
「そっか……でも諦めてないんでしょ?」
「うん……もうちょっと仲良くなってから告白して、それでも駄目だったら諦めるしかないと思ってるけど……」
「そっか。頑張れ、園田!」
「ありがとう、よしちゃん」
「いいなー、何だかんだと園田ちゃん楽しそう。私も好きな人くらいは欲しいなー」
丸木田さんはご飯を摘みながらそう言って、宙を眺めた。
いつも拓真くんの一言でテンションが上がったり下がったりするけど、それってもしかしてとても楽しい事なのかもしれない。
好きな人が近くにいて、少なくとも嫌われてはない状況って、幸せな事だよね。
ともあれ、いつかよしちゃんに伝えたいって思ってた事が言えて、ホッとした。思ってた形ではなかったけど。
っていうかこの話、三島さんに伝わらないよね?
職場の同僚の恋話なんか、恋人にわざわざ伝えたりしないよね?!
翌日のよしちゃんは怖かった……真剣に怖かった!
昼休みに売店で弁当を買うと、デイリールームの端で顔を付き合わせる。
その隣には丸木田さんもいて、昨日の事を既によしちゃんから聞いてるみたい。
二人の刑事に尋問される容疑者の気分……。
「じゃ、どういう事か説明してもらおうか、園田」
「こ、怖いよ、よしちゃん……」
「私はあれから今まで、気になって気になって、居ても立っても居られなかったんだからね!」
「だ、だよね」
よしちゃんは頰を膨らませて、興味本位丸出しの丸木田さんはワクワクしてる。
うーん、どうやって話そうかなぁ。
悩んでたら、口を開いたのは丸木田さんだった。
「っていうかさ、拓真くんはただの虫垂炎なんでしょ? 地元の病院でも充分対処できる手術じゃない。なんでわざわざ医大に来てるの?」
「あ、それはね……拓真くん、今年の四月からトキ製菓専門学校に通ってて、白鳥市に住み始めたんだよ」
「へーえ。で、どうしてそれを園田が知ってるわけ?」
「それは……偶然! たまたま! あの……拓真くんが私の家の隣に引っ越して来て……」
「へー、そんな事あるんだー!」
「それ本当に偶然なの?」
素直に信じてくれる丸木田さんと、疑ってくるよしちゃん。
よしちゃん、鋭いよー。
「ご、ごめんなさい、嘘つきました。私が、隣の部屋を紹介してあげたの」
「園田ちゃんと拓真くんって、そんなに仲良かったんだ?」
「っていうか、付き合ってるっぽいよ。拓真くんは園田の事、名前で呼んでたし」
「つ、付き合ってない! 付き合ってなんかないよ?!」
これは嘘じゃない。付き合いたいけど付き合ってはないから、必死に弁解した。
よしちゃんはまだ疑いの眼を向けて来てるけど。
「まぁ普通は、患者のお兄さんとそんなに仲良くなる事はないよね。何がきっかけだったの?」
丸木田さん……その質問が一番答え辛いよ!!
「えーと、それはそのう……」
「ねぇ、今ふと思ったんだけど。拓真くんが骨髄液を取った時に見舞った人って、もしかして園田じゃないの?」
きゃー! よしちゃん、どうして一年以上も前の話を覚えてるのー?! 拓真くんの名前も覚えてなかったくせにー!
「あ、そういえばそんな事もあったよね! あれ、園田ちゃんだったの?! 言ってくれれば良かったのに!」
ああ……なんかもう、私だって確定した上で話してるよぉ……まぁ合ってるんだけど。
「だ、だって……なんか言えなくて……」
「それって、その時から園田が拓真くんの事好きだったって事だよね」
「え、そうなの?!」
きゃーー、もう何で拓真くんの事好きっていう前提で話して来るのー! 合ってるから、困るーー!!
よしちゃんは不敵な顔で、丸木田さんは興味津々で私を見てる。
「うう……うん……実は、その頃から……なの」
もう素直に言う事にした。いつかはよしちゃんには伝えたいって思ってた事だし。
厳密に言うと、拓真くんを見かけたその日から、なんだけど。
「やっぱり。言ってくれれば協力したのに」
「だ、だって六歳も年下の高校生だったんだよ?」
「良いんじゃない、別に。まぁ相手が小学生とかなら、一応反対はするけど」
え……別に良いんだ。私が考え過ぎてただけ、なのかな。
「でも園田、奥手だと思ってたけど、頑張ってたんだねー。拓真くんもまんざらじゃなさそうだったし、もう彼氏いない歴に終止符を打つのも、近いんじゃない?」
「そんな、全然近くない、無理だよ! 私、一度振られてるし……」
そう口に出したら惨めで、言葉が続けられなくなっちゃった。肩が落ちっちゃった私を見て、二人も少しの間黙ってしまった。
「そっか……でも諦めてないんでしょ?」
「うん……もうちょっと仲良くなってから告白して、それでも駄目だったら諦めるしかないと思ってるけど……」
「そっか。頑張れ、園田!」
「ありがとう、よしちゃん」
「いいなー、何だかんだと園田ちゃん楽しそう。私も好きな人くらいは欲しいなー」
丸木田さんはご飯を摘みながらそう言って、宙を眺めた。
いつも拓真くんの一言でテンションが上がったり下がったりするけど、それってもしかしてとても楽しい事なのかもしれない。
好きな人が近くにいて、少なくとも嫌われてはない状況って、幸せな事だよね。
ともあれ、いつかよしちゃんに伝えたいって思ってた事が言えて、ホッとした。思ってた形ではなかったけど。
っていうかこの話、三島さんに伝わらないよね?
職場の同僚の恋話なんか、恋人にわざわざ伝えたりしないよね?!
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