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婿に来るはずだった第五王子と婚約破棄します! その後にお見合いさせられた副騎士団長と結婚することになりましたが、溺愛されて幸せです。
中編
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私の領地は北にあり、標高も高くて王都に比べると随分と気温が低い。
「ローザ、寒くはないか?」
「私は慣れていますから」
そう言ったにもかかわらず、ベネディクトさんはコートごと私を後ろから包んでくれた。
少し恥ずかしくて顔が熱くなってしまうけれど、嬉しくて口角が自然と上がってしまう。
「ベネディクトさん、これでは私の仕事ができませんから……」
「鉱山の視察ならば、私に任せておけばいいというのに」
「そういうわけには……私はここの責任者でもありますから」
「あちらに行くなら、危険なので抱いていきます」
「え? きゃっ」
あっという間にベネディクトさんに抱き上げられて、私は彼の首元に手を回した。
こんなに密着している姿を鉱夫に見られてしまうなんて、嬉し恥ずかしなんですよ、ベネディクトさん!
「あの、慣れているので自分で歩けます……!」
「なにかあったときには私の責任になります。おとなしく抱かれていてください」
にっこりと微笑まれてしまうとなにも言えなくなるわ。その笑顔は反則よと思いながら、私はそのまま密着を続ける。
「ローザ様! そちらの方は?」
この鉱山の親方さんが私に話しかけてきて、慌てて降りようともがいたけど、逆にぎゅうっと抱きしめられてしまう。降ろしてください、本当に!
「私はベネディクト・ガードナーと申します。ローザの婚約者で、近々ランドルフ家に婿入りするため、こちらにも頻繁にお邪魔することと思います」
「ローザ様のお婿さん?! そいつはめでてぇ!! こりゃあ、今まで以上に頑張って働かないといけねぇなぁ!」
「いえ、そんな! もう皆さん十分に頑張ってくれてますよ!」
私はそう声をあげて降りようとするけど、やっぱりベネディクトさんにがっちりとロックされたまま降りられない。
「そ、そろそろ降ろしてください、ベネディクトさん!」
「いえ、心配なのでこのままで」
「ははは! こんな婿さんが来てくれるなら、将来安泰だなぁ! よかったなぁ、ローザ様!」
「は、はい」
恥ずかしすぎて困るんだけど、祝福してもらえるのは嬉しい。
ふと顔を上げるとベネディクトさんと目が合って、ふっと微笑んでくれる。
その笑顔、眩しすぎます。嬉しそうなんだから、もう……大好き。
「ローザ様、婿さんにメロメロだなぁ!」
「本当ですか?」
親方さんの言葉にベネディクトさんは目を輝かせて期待している。そんな期待されてしまうと、誤魔化せないじゃないの!
「ええと……本当です……その……ベネディクトさんに、メロメロです……っ」
私は今間違いなく、世界で一番真っ赤な顔をしているに違いないわ。頭が沸騰しそうですもの!
ベネディクトさんはようやく私を降ろしてくれたかと思ったら、そのままぎゅうっと力の限り抱きしめられた。
「嬉しいです。ずっとローザを愛していきますから。今すぐにでも結婚しましょう」
「ベネディクトさん、あの、ここ、鉱山ですから……っ」
こんなに溺愛されるなんて、聞いてないです! ベネディクトさんは恥ずかしくないのかしら?
「ずっとこうしていたいですが、仕事もしなければいけませんね。ではもう一度抱き上げて……」
「お、お、お、親方ぁぁああ! 大変だ、大変だぁ!!」
ベネディクトさんに抱き上げられる寸前、遠くから鉱夫が声を上げながら走ってきた。
「なんでぃ、ローザ様がいらっしゃるのに騒々しい!」
「へ? あ、ローザ様!! 今、鉱山でこれを発見したんです!! 見てください!!」
そう言って鉱夫の差し出した手を見た。そこには黄色く透き通る美しい石が、手のひらにドンと乗っている。
「これは……」
「トパーズですね。それもすごく大きい」
ベネディクトさんの言葉に、私は目を見張った。ここは石炭しか取れない鉱山だと思っていたけど、まさかトパーズが眠っていただなんて!
「これの鉱脈を発見したんですよ!! もう、どこもかしかも黄色だらけ!!」
「ほ、本当か!! やりましたよローザ様!! ようやくローザ様にも、流行のドレスを着ていただけます!!」
親方さんが、涙ながらにそう言ってくれた。まさか、そんなことを思ってくれていただなんて……私の方が泣けてきてしまう。
「ありがとう……みんなが頑張ってくれたからよ……これでようやく我が領地も潤うわ」
「ローザ様、トパーズは真実の友人や愛する人を手に入れるパワーがあると言われているんですよ。この石は、きっと二人の愛する気持ちが引き寄せたに違いないです!」
親方さんに力一杯そう言われて、私はベネディクトさんを見上げた。
このタイミングでトパーズが出てきたのは、偶然なのかもしれない。でも、偶然とは思えない力を、彼は持っているような気がした。
「ローザも領民も、今まで耐えて頑張ってきたからですよ。でも、私たちの愛する気持ちがトパーズと巡り合わせてくれたなら、これからもずっと愛し合いましょう。私たちと、領民の幸せのためにも」
「はい……ベネディクトさん」
真実の愛する人を手に入れた私たちはそう誓うと、お互いに手を取って微笑み合う。
鉱夫たちがいつの間にか私たちの周りにやってきて、みんなで喜びの声をあげて笑った。
私たちはそのあとすぐに結婚式を挙げた。
結婚しても変わらず、ベネディクトさんは私を溺愛し続けてくれて──
私は誰よりも幸せに、幸せに過ごした。
「ローザ、寒くはないか?」
「私は慣れていますから」
そう言ったにもかかわらず、ベネディクトさんはコートごと私を後ろから包んでくれた。
少し恥ずかしくて顔が熱くなってしまうけれど、嬉しくて口角が自然と上がってしまう。
「ベネディクトさん、これでは私の仕事ができませんから……」
「鉱山の視察ならば、私に任せておけばいいというのに」
「そういうわけには……私はここの責任者でもありますから」
「あちらに行くなら、危険なので抱いていきます」
「え? きゃっ」
あっという間にベネディクトさんに抱き上げられて、私は彼の首元に手を回した。
こんなに密着している姿を鉱夫に見られてしまうなんて、嬉し恥ずかしなんですよ、ベネディクトさん!
「あの、慣れているので自分で歩けます……!」
「なにかあったときには私の責任になります。おとなしく抱かれていてください」
にっこりと微笑まれてしまうとなにも言えなくなるわ。その笑顔は反則よと思いながら、私はそのまま密着を続ける。
「ローザ様! そちらの方は?」
この鉱山の親方さんが私に話しかけてきて、慌てて降りようともがいたけど、逆にぎゅうっと抱きしめられてしまう。降ろしてください、本当に!
「私はベネディクト・ガードナーと申します。ローザの婚約者で、近々ランドルフ家に婿入りするため、こちらにも頻繁にお邪魔することと思います」
「ローザ様のお婿さん?! そいつはめでてぇ!! こりゃあ、今まで以上に頑張って働かないといけねぇなぁ!」
「いえ、そんな! もう皆さん十分に頑張ってくれてますよ!」
私はそう声をあげて降りようとするけど、やっぱりベネディクトさんにがっちりとロックされたまま降りられない。
「そ、そろそろ降ろしてください、ベネディクトさん!」
「いえ、心配なのでこのままで」
「ははは! こんな婿さんが来てくれるなら、将来安泰だなぁ! よかったなぁ、ローザ様!」
「は、はい」
恥ずかしすぎて困るんだけど、祝福してもらえるのは嬉しい。
ふと顔を上げるとベネディクトさんと目が合って、ふっと微笑んでくれる。
その笑顔、眩しすぎます。嬉しそうなんだから、もう……大好き。
「ローザ様、婿さんにメロメロだなぁ!」
「本当ですか?」
親方さんの言葉にベネディクトさんは目を輝かせて期待している。そんな期待されてしまうと、誤魔化せないじゃないの!
「ええと……本当です……その……ベネディクトさんに、メロメロです……っ」
私は今間違いなく、世界で一番真っ赤な顔をしているに違いないわ。頭が沸騰しそうですもの!
ベネディクトさんはようやく私を降ろしてくれたかと思ったら、そのままぎゅうっと力の限り抱きしめられた。
「嬉しいです。ずっとローザを愛していきますから。今すぐにでも結婚しましょう」
「ベネディクトさん、あの、ここ、鉱山ですから……っ」
こんなに溺愛されるなんて、聞いてないです! ベネディクトさんは恥ずかしくないのかしら?
「ずっとこうしていたいですが、仕事もしなければいけませんね。ではもう一度抱き上げて……」
「お、お、お、親方ぁぁああ! 大変だ、大変だぁ!!」
ベネディクトさんに抱き上げられる寸前、遠くから鉱夫が声を上げながら走ってきた。
「なんでぃ、ローザ様がいらっしゃるのに騒々しい!」
「へ? あ、ローザ様!! 今、鉱山でこれを発見したんです!! 見てください!!」
そう言って鉱夫の差し出した手を見た。そこには黄色く透き通る美しい石が、手のひらにドンと乗っている。
「これは……」
「トパーズですね。それもすごく大きい」
ベネディクトさんの言葉に、私は目を見張った。ここは石炭しか取れない鉱山だと思っていたけど、まさかトパーズが眠っていただなんて!
「これの鉱脈を発見したんですよ!! もう、どこもかしかも黄色だらけ!!」
「ほ、本当か!! やりましたよローザ様!! ようやくローザ様にも、流行のドレスを着ていただけます!!」
親方さんが、涙ながらにそう言ってくれた。まさか、そんなことを思ってくれていただなんて……私の方が泣けてきてしまう。
「ありがとう……みんなが頑張ってくれたからよ……これでようやく我が領地も潤うわ」
「ローザ様、トパーズは真実の友人や愛する人を手に入れるパワーがあると言われているんですよ。この石は、きっと二人の愛する気持ちが引き寄せたに違いないです!」
親方さんに力一杯そう言われて、私はベネディクトさんを見上げた。
このタイミングでトパーズが出てきたのは、偶然なのかもしれない。でも、偶然とは思えない力を、彼は持っているような気がした。
「ローザも領民も、今まで耐えて頑張ってきたからですよ。でも、私たちの愛する気持ちがトパーズと巡り合わせてくれたなら、これからもずっと愛し合いましょう。私たちと、領民の幸せのためにも」
「はい……ベネディクトさん」
真実の愛する人を手に入れた私たちはそう誓うと、お互いに手を取って微笑み合う。
鉱夫たちがいつの間にか私たちの周りにやってきて、みんなで喜びの声をあげて笑った。
私たちはそのあとすぐに結婚式を挙げた。
結婚しても変わらず、ベネディクトさんは私を溺愛し続けてくれて──
私は誰よりも幸せに、幸せに過ごした。
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