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「僕が望んだのは、あなたではありません」と婚約破棄をされたのに、どうしてそんなに大切にするのでしょう。
前編
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「リヴェリーネ。僕が望んだのは、あなたではありません」
ええ知っています、カイオス王子。
あなたが望んでいたのは私ではなく、私の従姉だったのだから。
側近と侍女を従えた四人だけのカイオス様のお部屋は、うっすらと温度が下がったように感じた。
私を見据えたままの、澄んだ淡い青色のカイオス様の瞳。少し潤んで見えたのは、気のせいかしら。
カイオス様の初恋の人は、侯爵令嬢であった従姉のスティアお姉様だった。
私とカイオス様は同い年で現在二十歳。スティアお姉様は九歳年上の二十九歳だ。
今より十二年も前の、カイオス様が八歳の時のこと。
王家主催のパーティに出席していたスティアお姉様に、カイオス様は一目惚れしたと聞いている。その場でお姉様にプロポーズをし、周りを驚かせたというのは、超がつくほど有名な話。
当時十七歳という年頃だったお姉様は、まだ八歳のカイオス様との話は進められぬまま、二年後に別の人と結婚をさせられた。ずっとスティアお姉様を思い続けるカイオス様を諦めさせるための、王家の策略によって。
お姉様は家柄も人柄も申し分なかったけれど、年齢差があるために王家に受け入れられなかっただけだった。
そこで白羽の矢が立ったのが、この私。リヴェリーネ。
スティアお姉様の従妹ではあるけれど、プロポーズ事件があった八歳の時に侯爵家の養女となったので、一応侯爵家の人間ではある。
私はスティアお姉様の代わりになるかもしれないと連れられただけの、ただの身代わりだった。
そうして私たちは、十六歳の時に婚約した……いいえ、婚約をさせられた。カイオス様がいつまでもスティアお姉様を忘れられずにいたから、強行されただけの婚約だった。
私はなんとかカイオス様にお姉様のことを忘れもらおうと頑張っていたけど、結局は徒労に終わっていた。
それも当然のこと。私とスティアお姉様とでは、美しさが違うもの。
だからカイオス様に、『僕が望んだのは、あなたではありません』と言われるのは必然だった。
「申し訳ないが、婚約は破棄させてください。それ相応の慰謝料は用意します」
婚約して、四年。
とうとうこの日が来てしまったのだなと、乾いた息が漏れそうになる。
カイオス様がいきなりこんなことを言い出したのは、お姉様が一週間前に子どもを連れて出戻ってきたからに違いなかった。きっとチャンスがあると思ったに違いない。
嫌です……なんて言って、なんになるだろう。
この四年で、カイオス様の優しさは身に沁みてわかっている。
夜会で緊張する私に、大丈夫だと手を差し伸べてくれた。
寒がりの私が震えていると、マントを外してそっと掛けてくれた。
誕生日には必ず贈り物をしてくれて。
刺繍したハンカチをプレゼントすると、目を細めて喜んでくれた。
私の体調が良くない時には真っ先に気づいてくれたし。
困った時には、必ず助け船を出してくれたのだ。
『心配しなくていいですよ』と極上の笑みを見せて。
だから私は、勘違いをした。
カイオス様はもう、スティアお姉様のことは忘れているって。私だけを見てくれているはずだって。
そう、思い込もうとしてた。
好きだった。
一緒に過ごすうちに、少しずつ好きになってしまっていたのだ。
私は身代わりでしかないと理解していたはずなのに。
カイオス様が憂いの瞳を見せれば、それはお姉様のことを考えている時だとわかっていていたのに。
きっと、私が嫌だと言えば婚約破棄をされることはないだろう。
周りだって王子のわがままを許しはしないもの。
でも、カイオス様は心の底から破棄したいと願ってらっしゃる。止めなければいけないはずの王子の側近が、黙って見ているのがその証拠。
私が承諾……いいえ、快諾すれば、カイオス様は私から解放される。お姉様との未来を紡ぐことができる。
私は一度ぐっと目を瞑ると、カイオス様をまっすぐに見上げた。
「もちろんですわ、カイオス様。いいえ、王子殿下。ようやくこの時が来ましたのね。私も待ち望んでおりましたわ。このリヴェリーネ、喜んで婚約破棄を受け入れたく存じます」
「……ありがとう、リーヴェ。いえ、リヴェリーネ侯爵令嬢」
カイオス様の側近と私の侍女の、四人しかいない部屋での婚約破棄。
それでも私は晴れ晴れとした顔を作って笑顔を見せる。
きっとこのことは王子の側近が陛下へと伝えてくれるはず。双方望んでの婚約破棄ならば、陛下も受け入れるしかないだろうから。
「お嬢様……っ」
ずっと一緒にいる侍女のメリアが焦ったように声を上げる。でも私は動じずに毅然としていた。
「メリア、侯爵家に戻りましょう。王子殿下、長い間お世話になりました。息苦しかったこの婚約からようやく解放されて、私は幸せですわ」
「そうですか。長く縛り付けてしまい、申し訳ありませんでした」
「殿下もどうぞ、幸せをお掴みくださいませ」
「……ええ」
私は悪の令嬢を演じるように、傲慢にそう言ってみせた。
好きだったなんて知られてはいけない。幸い、私はそういう言葉をカイオス様に伝えたことはなかった。
自分の気持ちを伝えて、『あなたはただの身代わりだ』と言われるのが怖かったから。
現実に目を瞑って、甘い夢を見ていたかった。だからずっと黙っていたけど。
もう、その夢は儚くも消えてしまった。
カイオス様の顔を見ていては景色が滲んでしまいそうで、私はすぐさま王宮を出ると、メリアと共に馬車へと飛び乗る。
家に着いても、すぐにお義父様に事情を話す元気はなく、自室へと引き篭もった。
メリアが温かい紅茶を持ってきてくれても、目の端に入れるだけで手を伸ばす気力も起こらない。
「お嬢様……」
「ごめんなさい。せっかく淹れてくれたのに……あとでいただくわ」
「お嬢様、どうか我慢なさらないでくださいませ」
「……え?」
メリアは床に膝をついて、椅子に座る私の手をぎゅっと握った。
「このメリアにはわかっております。お嬢様は……王子殿下のことが、お好きだったのでしょう?」
メリアが覗き込むようにして、私に問いかける。
私が侯爵家に来た時からずっとそばにいて、見守ってくれているメリア。
彼女のまっすぐな、でも優しい瞳が視界に入るだけで、私はたまらなくなって──
「メリア……っ!」
我慢していた涙が、ぽろりと滑り落ちる。
ずっとずっと心の内に秘めていた、この熱い思いが。
もうカイオス様と私を繋ぐものはなにもないのだと思うと、絶望感が一気に押し寄せた。
「メリア。私……私、ずっとカイオス様のことが……っ」
「お嬢様……お嬢様は、お優しすぎます……」
姉のような存在のメリアの言葉に、私はさらに涙腺を決壊させた。
カイオス様と一緒になれると思っていたのに。
たとえ、お気持ちがスティアお姉様にあったとしても。
身代わりでいいから、カイオス様のおそばに居させてほしかった──。
「うあ、うぁあ……っ!! メリア、メリアぁあああ……っ」
「大変、ご立派でございました……っ! お嬢様、わたくしはわかっておりますから……!」
メリアの優しさに私が抱きつくと、彼女も私をぎゅっと強く抱きしめてくれて。
私は悲しみを吐き出すかのように、メリアに縋り付いて泣いた。
カイオス様。
カイオス様──。
どうして私ではダメだったのでしょうか。
私ならばカイオス様を一生愛し続けたのに──。
『リヴェリーネ。僕が望んだのは、あなたではありません』
その言葉を思い出すと、苦しくて悲しくて。
涙は、眠るまでずっと流れ続けていた。
ええ知っています、カイオス王子。
あなたが望んでいたのは私ではなく、私の従姉だったのだから。
側近と侍女を従えた四人だけのカイオス様のお部屋は、うっすらと温度が下がったように感じた。
私を見据えたままの、澄んだ淡い青色のカイオス様の瞳。少し潤んで見えたのは、気のせいかしら。
カイオス様の初恋の人は、侯爵令嬢であった従姉のスティアお姉様だった。
私とカイオス様は同い年で現在二十歳。スティアお姉様は九歳年上の二十九歳だ。
今より十二年も前の、カイオス様が八歳の時のこと。
王家主催のパーティに出席していたスティアお姉様に、カイオス様は一目惚れしたと聞いている。その場でお姉様にプロポーズをし、周りを驚かせたというのは、超がつくほど有名な話。
当時十七歳という年頃だったお姉様は、まだ八歳のカイオス様との話は進められぬまま、二年後に別の人と結婚をさせられた。ずっとスティアお姉様を思い続けるカイオス様を諦めさせるための、王家の策略によって。
お姉様は家柄も人柄も申し分なかったけれど、年齢差があるために王家に受け入れられなかっただけだった。
そこで白羽の矢が立ったのが、この私。リヴェリーネ。
スティアお姉様の従妹ではあるけれど、プロポーズ事件があった八歳の時に侯爵家の養女となったので、一応侯爵家の人間ではある。
私はスティアお姉様の代わりになるかもしれないと連れられただけの、ただの身代わりだった。
そうして私たちは、十六歳の時に婚約した……いいえ、婚約をさせられた。カイオス様がいつまでもスティアお姉様を忘れられずにいたから、強行されただけの婚約だった。
私はなんとかカイオス様にお姉様のことを忘れもらおうと頑張っていたけど、結局は徒労に終わっていた。
それも当然のこと。私とスティアお姉様とでは、美しさが違うもの。
だからカイオス様に、『僕が望んだのは、あなたではありません』と言われるのは必然だった。
「申し訳ないが、婚約は破棄させてください。それ相応の慰謝料は用意します」
婚約して、四年。
とうとうこの日が来てしまったのだなと、乾いた息が漏れそうになる。
カイオス様がいきなりこんなことを言い出したのは、お姉様が一週間前に子どもを連れて出戻ってきたからに違いなかった。きっとチャンスがあると思ったに違いない。
嫌です……なんて言って、なんになるだろう。
この四年で、カイオス様の優しさは身に沁みてわかっている。
夜会で緊張する私に、大丈夫だと手を差し伸べてくれた。
寒がりの私が震えていると、マントを外してそっと掛けてくれた。
誕生日には必ず贈り物をしてくれて。
刺繍したハンカチをプレゼントすると、目を細めて喜んでくれた。
私の体調が良くない時には真っ先に気づいてくれたし。
困った時には、必ず助け船を出してくれたのだ。
『心配しなくていいですよ』と極上の笑みを見せて。
だから私は、勘違いをした。
カイオス様はもう、スティアお姉様のことは忘れているって。私だけを見てくれているはずだって。
そう、思い込もうとしてた。
好きだった。
一緒に過ごすうちに、少しずつ好きになってしまっていたのだ。
私は身代わりでしかないと理解していたはずなのに。
カイオス様が憂いの瞳を見せれば、それはお姉様のことを考えている時だとわかっていていたのに。
きっと、私が嫌だと言えば婚約破棄をされることはないだろう。
周りだって王子のわがままを許しはしないもの。
でも、カイオス様は心の底から破棄したいと願ってらっしゃる。止めなければいけないはずの王子の側近が、黙って見ているのがその証拠。
私が承諾……いいえ、快諾すれば、カイオス様は私から解放される。お姉様との未来を紡ぐことができる。
私は一度ぐっと目を瞑ると、カイオス様をまっすぐに見上げた。
「もちろんですわ、カイオス様。いいえ、王子殿下。ようやくこの時が来ましたのね。私も待ち望んでおりましたわ。このリヴェリーネ、喜んで婚約破棄を受け入れたく存じます」
「……ありがとう、リーヴェ。いえ、リヴェリーネ侯爵令嬢」
カイオス様の側近と私の侍女の、四人しかいない部屋での婚約破棄。
それでも私は晴れ晴れとした顔を作って笑顔を見せる。
きっとこのことは王子の側近が陛下へと伝えてくれるはず。双方望んでの婚約破棄ならば、陛下も受け入れるしかないだろうから。
「お嬢様……っ」
ずっと一緒にいる侍女のメリアが焦ったように声を上げる。でも私は動じずに毅然としていた。
「メリア、侯爵家に戻りましょう。王子殿下、長い間お世話になりました。息苦しかったこの婚約からようやく解放されて、私は幸せですわ」
「そうですか。長く縛り付けてしまい、申し訳ありませんでした」
「殿下もどうぞ、幸せをお掴みくださいませ」
「……ええ」
私は悪の令嬢を演じるように、傲慢にそう言ってみせた。
好きだったなんて知られてはいけない。幸い、私はそういう言葉をカイオス様に伝えたことはなかった。
自分の気持ちを伝えて、『あなたはただの身代わりだ』と言われるのが怖かったから。
現実に目を瞑って、甘い夢を見ていたかった。だからずっと黙っていたけど。
もう、その夢は儚くも消えてしまった。
カイオス様の顔を見ていては景色が滲んでしまいそうで、私はすぐさま王宮を出ると、メリアと共に馬車へと飛び乗る。
家に着いても、すぐにお義父様に事情を話す元気はなく、自室へと引き篭もった。
メリアが温かい紅茶を持ってきてくれても、目の端に入れるだけで手を伸ばす気力も起こらない。
「お嬢様……」
「ごめんなさい。せっかく淹れてくれたのに……あとでいただくわ」
「お嬢様、どうか我慢なさらないでくださいませ」
「……え?」
メリアは床に膝をついて、椅子に座る私の手をぎゅっと握った。
「このメリアにはわかっております。お嬢様は……王子殿下のことが、お好きだったのでしょう?」
メリアが覗き込むようにして、私に問いかける。
私が侯爵家に来た時からずっとそばにいて、見守ってくれているメリア。
彼女のまっすぐな、でも優しい瞳が視界に入るだけで、私はたまらなくなって──
「メリア……っ!」
我慢していた涙が、ぽろりと滑り落ちる。
ずっとずっと心の内に秘めていた、この熱い思いが。
もうカイオス様と私を繋ぐものはなにもないのだと思うと、絶望感が一気に押し寄せた。
「メリア。私……私、ずっとカイオス様のことが……っ」
「お嬢様……お嬢様は、お優しすぎます……」
姉のような存在のメリアの言葉に、私はさらに涙腺を決壊させた。
カイオス様と一緒になれると思っていたのに。
たとえ、お気持ちがスティアお姉様にあったとしても。
身代わりでいいから、カイオス様のおそばに居させてほしかった──。
「うあ、うぁあ……っ!! メリア、メリアぁあああ……っ」
「大変、ご立派でございました……っ! お嬢様、わたくしはわかっておりますから……!」
メリアの優しさに私が抱きつくと、彼女も私をぎゅっと強く抱きしめてくれて。
私は悲しみを吐き出すかのように、メリアに縋り付いて泣いた。
カイオス様。
カイオス様──。
どうして私ではダメだったのでしょうか。
私ならばカイオス様を一生愛し続けたのに──。
『リヴェリーネ。僕が望んだのは、あなたではありません』
その言葉を思い出すと、苦しくて悲しくて。
涙は、眠るまでずっと流れ続けていた。
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