R ―再現計画―

夢野 深夜

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第1章 楽園は希望を駆逐する

第4話 玉兎会(6日目) その2

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「おうッ! お前、生き返ったんだなぁッ!」「おかえりぃ! 本当におかえりッ!」「オメーってやつは、本当にしぶといヤツだなッ!」「恥ずかしながら、帰ってまいりましたってか? お勤め、ご苦労様ですッ」
 花盛清華、臼潮薫子、風間太郎、空狐が口々に大浜新右衛門の復活を喜ぶ。

「ちょっと、意識が回復したからって勝手に立ち上がったら……」
「ふっ、問題ない。長いこと眠っていたようだしな。快眠快便だ」
 深木絵梨の制止を手で押さえる大浜新右衛門。

 大浜新右衛門は仲間の祝福を受けつつ、葉高山蝶夏と矢那蔵連蔵の2人を見る。
「我輩もいい頃合いだと思う。ここらで景気づけにやってもいいんじゃないか?」

「――そのセリフを言うってことは、話の流れが分かってるんだよな?」
 割り込んだ和泉忍に問い質される。
「無論……と、言いたいところだが、[食堂]前で立ち聞きしていた程度だ。だが、彼らは何の考えも持たずに提案するような愚か者ではない」
 大浜新右衛門が真正面から和泉忍を見返す。

「誠意には誠意で返すものだ。特に“仲間”からの誠意にはな」
「あっそう」
 和泉忍はスンと真顔になった。反論しないところを見るに、彼女自身、この提案には否定しないつもりだったのだろうか。
 <政治家>の<再現子>と、≪政治家≫志望者。気まずい間柄が和泉忍の微妙な反応を生んだのだろう。

 大浜新右衛門が同意したことで、他の面々も渋々同意する。
「“むい”からは既に22時以降の道楽をする許可を貰った! 今日は気にせず、楽しんでくれッ!」
 葉高山蝶夏の宣言にポツポツと喜ぶ声や、会話が飛び交った。
 この殺伐とした空気で、なんだかんだ楽しいイベントがあるだけで喜ばしいものなのだ。

 ――人質として自由を制限されながら、敵に占拠された施設の中で決起集会を行う。
 これが如何に”異常”なのか、もう<再現子>たちも自覚できないくらい、彼らの感覚は麻痺していた。

『“むい”も参加したいなぁ』
 “むい”が羨ましそうに言うのを聞いた矢那蔵連蔵が、悪戯っ子な笑みを浮かべる。
「あっ、僕たち皆で[カジノ]にいるから[食堂]を使ってもいいよ」
『ワーイ、[食堂]独り占めだーって……それ、ボッチじゃんッ!? 参加してないじゃんッ!?』

 空狐が同じように、悪戯っ子の笑みを浮かべていた。
「悪いな、“むい”。[カジノ]は19人定員なんだ」
『なにその中途半端な人数制限ッ!? あと“1”くらい足してよッ!?』
 殺し合いを迫られたばかりとは思えないくらい緩い空気になる。

 一方的に襲われた初日と異なり、という信頼関係が成せる雰囲気だろう。

「――南北さん? どうしたの?」
 織田流水がふと外の景色を眺めている南北雪花に声を掛ける。
「……雲行きが怪しいんだ。今晩は悪天候になるかも」
 南北雪花の大きい左目が潤んだ気がした。



 さて、最後に南北雪花の紹介をしよう。
 既に何度か触れている通り、彼女は<超能力者>の<再現子>で、≪プログラマー≫志望者だ。
 体格は<再現子>内で最小の128㎝。とても成人女性とは思えない。これは、彼女が〈遅老症〉に侵されているせいだ。(肉体の老化が年齢と比して遅い。)
 彼女の体格に合わせた服は子供用が多く、それを好まない彼女はXLの無地のTシャツを着るのみで、靴はサンダルと、非常にシンプルだ。曰く、暑がりなので、これでいいらしい。

 特筆すべき点としては、顔に酷い火傷を負っていることだ。右の頬から右の後頭部まで通った痛々しい火傷痕が、非常に目立つ。右目は失明しているため、眼帯で隠している。火傷痕を少しでも隠そうと、左頭部の髪を右側に少し持ってきている形で人目を避けている。
 ちなみに、火傷についての詳細は南北雪花の口が固く、もっとも仲の良い峰隅進も知らないらしい。ただ、ひねくれた彼女のことだから、嘘を吐いている可能性もあるが。



 ――先の集会は無事に終わり、少し時間が経過した現在。
「――ぶぅ」
 峰隅進がこれ見よがしに不機嫌ぶりをアピールしている。

 既に“むい”は立ち去り、<再現子>たちは朝食を終え、今晩の決起集会の準備を行うことになった。
 大浜新右衛門は[医務室]に戻り、メディカル三姉妹に診察を受けている。
 各<再現子>には準備の役割を振られて各々別れ、[食堂]から離れていた。
 そんな状況で冒頭に戻る。

「――ぶぅ」
 峰隅進が不満そうに膨れっ面をしている。
 遠目に眺めていた織田流水は巻き込まれないように見て見ぬふりをする。
「どうしたの、そんな膨れっ面をして」
 面倒見の良い臼潮薫子がほっとけずに話しかけていた。

「……皆、頭お花畑みたいだから冷水を浴びせるようで気が引けるんだけど、[カジノ]で一ヶ所に集まって酒なんて飲んでいたら危険じゃないの? 現実が見えていないのか、現実逃避しているのか分からないけど、ここはもう敵地のど真ん中なんだよ?」
 峰隅進が唇を尖らせて言う。

「…………」
 臼潮薫子は悲し気に目を伏せる。
「なっ、ちょッ!? そんな表情されたらアタシが虐めてるみたいじゃんッ!」
 峰隅進が困惑気味に慌てる。

「――みたいじゃなくて、虐めてるんでしょ? まったく」
「感心しないなッ! 君の言動は目に余るぞッ!」
 矢那蔵連蔵と葉高山蝶夏の2人が近寄ってくる。
「げっ!? ”うるさくてしつこい人”と、”静かにしつこい人”が来たよ……ッ」
 峰隅進のウンザリした顔を気にせず葉高山蝶夏が話す。

「君の懸念ももっともだッ! だが安心してくれッ! 今晩、僕たちはお酒を飲まないからなッ! 決死の思いで皆を見守るからッ! もし疑うのならキミ自身の目で僕たちを監視してくれてもいいッ! もちろん、僕たちに非があれば、非難は甘んじて受け入れるともッ! しかしながら僕たちの熱意は――――ウンヌンカンヌンウンチクカンチク」
「あ~ッ! うるさいうるさいうるさいッ! アタシの疑問の回答になっていないし、騒音に頭が割れそうだよッ!」
 峰隅進が両手で自分の両耳を抑える――が、その両手を矢那蔵連蔵が無理やり剥がす。

「君の心配はもっともだ。でも、冷静に考えれば分かるよ。“むい”たちにとって、。酒を飲んでいようが、カジノで遊んでいようが、勝手に暇を潰して大人しくしてくれる分には、彼らも手が掛からず嬉しいだろう。邪魔もしてこないはずだ。むしろ……ヘンに暴れるよりも安全かもしれない」
「……むぅ」
 峰隅進はひとまず納得したのか、口を閉ざす。

 これまででも、“むい”が露骨に嫌がったのは葉高山蝶夏を中心とした“付き纏い”行為のみだ。勝手に飲み食いしている分には絡まれた覚えがないことも確か。

「さぁ、明日から僕たちも脱出について真面目に考えないといけなくなるんだ。今日だけは羽目を外しても天罰は下るまいよ」と、矢那蔵連蔵が峰隅進を解放する。
「はーい。まっ、いざとなったらアンタたちを盾にすればいいだけだしねぇ~♪」と、峰隅進が反省していないように笑みを浮かべる。
「進ちゃん、偽悪ぶるのも良くないよッ。私たちは進ちゃんがイイ子だって知っているからいいものの、誤解を生むんだからねッ――」と、臼潮薫子が子供を叱るように怒る。
「うううるさいわッ。そーゆー反応が一番腹立つしぃッ!」と、峰隅進が声を荒げる。
「ところで、今晩の決起集会を〈玉兎会〉と名付けようと思うんだが、どうだろうか?」と、葉高山蝶夏が出し抜けに言う。
「いいじゃない。看板でも作ってみるかい? 電さんに一筆頼もうか」と、矢那蔵連蔵が嬉しそうに肯定する。
 やいのやいのと騒ぐ仲間たちを観察する織田流水。
 彼の口には自然と笑みがこぼれた。束の間の平和を実感した。



 織田流水は自分の持ち場に向かおうとすると――、
「ねぇ」
 ――と、南北雪花に話しかけられる。彼女は真面目な顔をしていた。

「どうかした?」
「役割、私と交代してくれない? 私の代わりに[備品室]に向かって会場の掃除と飾り付けをする準備をしてほしいの」
「うん、いいよ。でもなんで?」
「――な ん で も」
 南北雪花の有無を言わせぬ口調と視線を向けられ、織田流水が怯むと背後から声を掛けられる。

「おいッ雪花ッ! 一昨日お前に言われた通りに”改造”してきてやったぜッ! オレ様の頭脳と腕が加われば百人力だなぁッ?」
「ありがとーッ! 清華お姉ちゃんッ!」
 花盛清華が手提げカバンに”カメラ”を入れて持ってきた。その”カメラ”はいつぞやに設置した監視カメラに似ていた。
 南北雪花が一転、大喜びでクルリクルリと回転し、花盛清華に抱き着く。相変わらずテンションの高低差が激しい。

「あっおいッ! 危ねぇから抱き着くなッ!?」
「清華お姉ちゃん、好きーッ!」
 南北雪花が花盛清華に抱き着く間、織田流水がチラリと手提げカバンのカメラを見る。

 彼が以前、C棟1階[エントランスホール]に設置した動体検知センサー付き監視カメラに、非常に似ていた――否、ソックリだった。

 ――そういえば、予備機があったっけ? でも1台だけのはずじゃ?
 手提げカバンの中には数台入っている。
 織田流水がそんなことを思うと。

「――予備機が手元にあったおかげで、清華お姉ちゃんとの連携が取りやすかったよ。量産や改良をするにあたって、サンプルがあるとしやすいよね?」

 織田流水がギクリとする。南北雪花が『テレパシー』で織田流水の心の声を読んだのだ。
 南北雪花が左目を織田流水に向ける。織田流水に向ける顔はひどく真面目だ。どういう意図の表情かが分からない。

「あん? なんの話をしているんだ?」
「なんでもないよー、清華お姉ちゃん。じゃあ、これを〈玉兎会〉が始まるまでに仕掛けようッ」
「は? ぎょく……なんだって?」
「あっ、まだ皆に発表していないもんね。だよー」
「ふぅん、縁起が良さそうでイイじゃねぇかッ! 名付け親に誉め言葉を送っておいてくれやッ!」
 花盛清華は峰隅進と比肩するくらい、南北雪花と深い付き合いがある。そのため、南北雪花の突拍子もない会話にはもうすっかり慣れた様子だった。

「流水お兄ちゃんはやることがあるから、別の人を誘おうッ!」
「ほぉ? 当てがあるんならソイツらを勧誘しにいくかッ!」
 南北雪花と花盛清華はそう言って、[食堂]から立ち去ろうとする。

「あっ、ちょっ」
 織田流水が呼び止めようと声を出すと。

 ――BDの[エントランスホール]、BCDの屋上に繋がるドアにもカメラとセンサーを設置するから。

「――ッ!?」
 南北雪花の『以心伝心』で頭に直接話しかけられた織田流水は久しぶりの感覚に眩暈を覚える。
「……がぁッ、げぇっ!?」
 脳への“異物”のはずなのに、吐き気を催す気持ち悪さという、不思議な感覚。

 織田流水が呼吸を整えると、南北雪花と花盛清華はもういなかった。

 南北雪花は織田流水との会話をする時間を惜しんだのだろうか?
「えぇと……B,C、D棟の[エントランスホール]と屋上に、動体検知センサー付きと監視カメラが設置されるわけか……うぅん、頭が重たいや……ハァ」
 織田流水は独り言ちで、[食堂]を去る。



「よう。って、顔色悪そうだな、大丈夫か?」
 織田流水が[食堂]を出たところの廊下で、美ヶ島秋比呂と出くわす。
「あ、うん、大丈夫、ちょっとね。あ……美ヶ島くん、なんだか元気になったね?」
 美ヶ島秋比呂は前より表情が柔らかくなった気がする。

「あぁ? そんなことはねぇけど……いや、悪ぃ、嘘だな。新右衛門と話せたからかもな。肩の荷が下りたっつーか」
 美ヶ島秋比呂が頭を掻く。その時も、心なしか口角が上がっているようだった。

「なんて言えばいいのか分からないけど……良かったね」
「――ああ、そうだな」
 織田流水の素直さに美ヶ島秋比呂も珍しく素直に返した。
 自身の行動が原因で瀕死の重傷を負った大浜新右衛門に対して、負い目を感じていた美ヶ島秋比呂は漸く大浜新右衛門に対してケジメを取れたようだった。

 美ヶ島秋比呂が大浜新右衛門の容態を織田流水に説明してくれた。
 急に動いたことも問題なかったようで、怪我の悪化は起こらなかった。手術も成功しておりほぼ完全に怪我は治ったが、今晩の〈玉兎会〉は欠席して[医務室]で安静にすることが伝えられた。怪我人がいると気を遣わせてしまうという大浜新右衛門の配慮だった。
 そして――、

「――あ、香澄ちゃんも欠席なの?」と、織田流水。
「ああ。まあ……さっき“むい”への見張りを自分から名乗り出たんだ。葉高山にも伝えて改めて皆には連絡される」と、美ヶ島秋比呂。
 時時雨香澄は虚弱体質のため飲酒や喫煙はできない。加えて、高揚感を多く得ると気絶してしまうこともある。こうした催しは時々行っていたが、時時雨香澄は欠席が遠巻きに参加することが常だった。

 織田流水も驚きはしたが、彼は”そのことをよく知っていた”ため腑に落ちる。
「そっか……まあ、誰かがしないといけないことだよね」
「『損な役回りをさせる、だなんて思うなよ』って言ってたぜ。本人はむしろそうした方が落ち着くし、嫌じゃないらしい」
「あー、それはそうだね。狗神さんと似てて、ずっと気を張っているのが素の人だから……」
「なんだか、知った風な口を利くなぁ? そういえば……お前ら、たしかに初対面の頃から仲良かったよな?」

「あ、うん、まあ、ね…………もう共同生活も終わりが近いから言うけど、僕と香澄ちゃんは以前、2回同じ施設で過ごしたことがあるから。その2回目で香澄ちゃんは今以上に浮いていて僕が一番仲良かったから、それが口ぶりに出ちゃったのかも」

「お前ら”同窓”だったのか!」
「うん、でも皆には内緒ね? 一応、香澄ちゃんから口止めされているから」
「それでずっと内緒だったのか。隠すほどでもないとは思うが……」

 <再現子>たちは5歳から21歳まで共同生活を行う。世代での人数は約400名前後。何回か俗に言うクラス替えが行われるが、時々同じ施設に割り振られ、再び顔を合わせて過ごすことがある。
 それを『同窓』と呼ぶ。
 積極的に『同窓』関係を公言する者もいれば、逆に隠す者もいる。このあたりは本人同士の関係性であったり、思春期特有の繊細かつ複雑な感情ゆえであったり、様々だ。

「そうか、分かった。“誰にも言わない”と誓うぜ」
 美ヶ島秋比呂は硬派な性格、仲間からの頼みやお願いには応えるタイプだった。



 廊下で美ヶ島秋比呂と別れた織田流水は[備品室]に向かった。
 [備品室]には、南北雪花と同じ担当だった西嶽春人がいた。
「おや、織田クン? あれ? 南北サンが担当だったような?」と、困惑する西嶽春人。
「うん、役割を交代してと頼まれて、代理で来たの」と、説明する織田流水。
 西嶽春人はここで画用紙や色紙、そして雑巾や箒を仕分けていた。会場の掃除と飾りつけを行うためだ。

 ここ[備品室]には日用品類が備蓄されている。役目としては倉庫に近い。
 箒や掃除機といった清掃道具類、色紙を代表とする小物類以外にも、トイレットペーパーやボックスティッシュの予備、各種乾電池、鉛筆などの筆記具類なども備蓄されている。

「会場設営をする深木サンや鬼之崎クン、空狐サンと合流して連携する予定だよ」
「了解ッ」
 西嶽春人と織田流水は[備品室]で時折雑談を交わしながら準備を進める。

「――そういえば、葉高山さんたちが看板を作ろうと意気込んでいたよ? 会場である[カジノ]で鉢合わせするかもね」
「看板、かぁ。また面白いものを思いつくねぇ。こういう危機的状況でも平常心でいられるように、遊び心を取り入れて心の余裕を得ようとしているのかな? <冒険家>なりの心配りが垣間見えるね。折角のイベントだし、素晴らしいアイデアだよッ」
「今頃3階の『工具室』で看板に使う木材とか、ノコギリとか物色しているかもね」
「さすがの行動力だね。昨日の今日で飲み会――っと、決起集会か、を始めようなんて提案も驚いたけど、やっぱりボクみたいな”ヒトデナシ”とは、頭の出来から違うなぁッ」
「そんなこと言って、自分を傷つけないのッ」
「…………優しいなぁ、織田クンは。これが”愛”だねッ」
「愛って。友情って言ってほしいけど……まあ、やっぱり、息苦しさというか、重い雰囲気があったもんね。葉高山くんと矢那蔵くんのおかげで、少しでも皆が元気でいられるようになるといいな」

 時折笑いが生まれる会話が淀みなく続くも、手は止めずに作業を続ける2人。
 久しぶり、と云うべきか和やかな空気が流れる。

「あっ、織田クン、そこにチリトリがあるから取ってくれないかな?」
「分かった」
 西嶽春人に指された場所で探す織田流水。
「えーと、どの辺って言った?」
「もう少し奥かな。あっ、その奥だよ」
 織田流水は身を乗り出すように探す。
「んーと……あれ? 西嶽くん、無さそうだけど、本当にここにあr――」
 ――ドガッ!

「――ッ!? ガッ――アッ!?」
 織田流水が衝撃に身体を弾ませ、膝から崩れ落ちて、気を失った。




 その背後に、西嶽春人が立っていた。
 そのゴミ箱でのだった。


「――ダメだよ、織田クン…………こんな状況なのに、。でもまあ、そんなキミの鈍感なところもカワイイし、床に倒れ伏す姿もまたキレイだよ……」


 西嶽春人は、凶器に使ったゴミ箱に付着した織田流水の髪の毛を、大事そうに手に取ると――その髪の毛に丁寧なキスをした。


「織田クン。これが、ボクにとっての――”ヒトデナシ”にとってのなんだ……理解してくれるよね?」
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