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第1章 楽園は希望を駆逐する
第3話 崖っぷちの平穏(3日目) その3
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織田流水、葉高山蝶夏、西嶽春人、狗神新月、峰隅進の5名がC棟に残り9基の監視カメラを仕掛けることになった。
監視カメラを仕掛ける場所は峰隅進から指示され、彼らはそれに従いつつ時々生まれる疑問を峰隅進にぶつけては、南北雪花の『予知』により先回りで用意されていた回答を受け納得する。
仕掛ける場所は、各フロアの階段を上りきった場所と、下りきった場所に合わせて2か所ずつ。階段の踊り場を上からと下からの2方向から映す形だ。
[エントランスホール]分を合わせると、計9個。残り1個は予備機となった。
C棟1階から上階に向かいながら、監視カメラを仕掛けていく。非常にスムーズに事が進んでいく。
C棟3階で設置を行うところで、思いがけない彼らを目撃する。
「――じゃあさー、“むい”たちはさー、どうして“ここ”を選んだの? 他の再現施設じゃなくて、どうして“ここ”を襲ったのー? 僕にだけ、教えてよー。誰にも言わないからさっ♪」と、矢那蔵連蔵が“むい”に上からのしかかるように腕を乗せている。
「そうだぞーッ、素直に吐けば楽になるぞーッ、お天道様は見ているぞーッ」と、風間太郎は彼の周囲をチョコマカと動き回り、手に持ったメガホンで“むい”に浴びせる。
『もうッ! だから、何度聞かれても知らないってばッ! “むい”はただ後ろからついて行っただけなんだからッ! 知らないのッ!』と、“むい”は窓を全開にした窓枠に乗っかって、プルプルと震えている。
「…………」と、鬼之崎電龍は少し離れたところからその様子を眺めている。
3名と1匹(?)を遠目に見つけた織田流水たちは踊り場で身を屈め、身を潜める。
峰隅進が苦虫を嚙み潰したような表情をする。
「げっ!? 最悪な連中がいるよ……ったく、葉高山がいるから今日は中止なのかと思っていたのに」
織田流水が峰隅進の傍で座り込む。
「……あんな感じなんだ。なんというか……想像よりも全然フランクに話してるんだね。もっとシリアスな空気が流れてるものかと、てっきり」
葉高山蝶夏は段ボールを抱えてるため、喉を鳴らして反論する。
「……っ! ……っ……っ!」
西嶽春人が抱えていた段ボールを足元に置く。
「ああ、織田クンは“クレーム”の様子を見学するのは初めてなんだね。あれは、矢那蔵クンだからマイルドなんだよ。葉高山クンの時は、もっと激しいさ」
狗神新月が警戒気味に“むい”たちの様子を見る。
「同感だ。だが、それは当の本人たちも同じだろう。だから風間も同行させたのだ。矢那蔵が言っていたぞ。風間は音量担当で、2人でようやく葉高山1人分だとな…………そこの当事者、褒めてないから照れるな。お前はあと2段階くらい声を小さくしていい」
狗神新月に窘められた葉高山蝶夏は、エヘンッと威張っていた。五月蠅さを指摘されていることに気づいていないのか、それとも誉れに感じているのか。
「でも、どうしようか? さすがに彼らの近くてカメラを仕掛けるのは……」
「……そりゃ、良くないでしょ。肝心の宿敵である“むい”がいるし」
織田流水と峰隅進が身を屈めた隣同士で相談を始める。
小声で話す最中でも、遠くにいる3名と1匹(?)は賑やかに会話をしている。階段の踊り場で身を潜めている彼らにも、風間太郎の声が聞こえてくる。
「ここで待機する? さすがに1ヶ所に留まって立ち話をし続けているわけじゃないだろうし、彼らが移動するまで待とうか?」
西嶽春人の提案を狗神新月が否定する。
「否、いつになったら動き出すか分からん以上、悪戯に時間が過ぎる。それに、彼らの移動する先がこちらであった場合、我々と鉢合わせになる」
――と、なると、
「――誰かが囮になるしかないわけね」
峰隅進が辛そうな顔をする。
「お、囮ッ!」
織田流水がゴクリと唾を飲み込む。
“むい”が目の前にいる以上、矢那倉連蔵や風間太郎、鬼之崎電龍に事情を説明するわけにはいかない。そのため、誘導する相手は“むい”だけでは済まないのだ。
仲間たちにも怪しまれずに、階段から離れるように誘導しなければならないのだ。
――重責である。
「い、いったい、誰が囮を……ッ」と、織田流水。
「登場するタイミングはいっそのこと気にしない方がいいだろうな。自然さが一番だ」と、狗神新月。
「無理しないでいいからね。引き際を見極めることも大切だよ」と、西嶽春人。
「一番大事なのは心意気だから。“心”で負けちゃダメだよ……ぷぷ」と、峰隅進。
織田流水は首を傾げる。
「…………あれ? なんか僕以外の発言がおかしくない? なんか、既に“誰か”を想定しているような………?」
――ポンッ。
織田流水の肩に置かれる4名の手。
「…………え?」
「「「いってらっしゃい」」」「…………っ!」
固まる織田流水。そんな彼を見る4名。
「え、え~~~ッッ?? な、なんで僕がッ!?」
織田流水が4名の顔を交互に見る。
「はあ? <外交官>でしょ? アンタの肩書きは飾りなの?」「正直、口下手な私には荷が重い。力不足で済まない」「辛くなったら、すぐにボクを呼んでねッ。颯爽と駆け付けるからッ」「……っ……っ!」
4名から畳みかけるようにエールを送られる織田流水。
「――わかったよ。そこまで言うなら、ハァ…………ふっ! あとは頼んだからねッ!」
織田流水は溜め息を吐いたあと、ペチッと両頬を叩く。
織田流水は後ろ髪を引かれつつ階段を上り切り、誰かに止めてほしそうな重い足取りで向かった。その姿は、まるで戦場へと赴く戦士のようであった。
「背中で語る織田クンも格好いいよね。その雄姿、忘れないよ」と、西嶽春人が惚れ惚れした目で見ていた。
「……骨は拾うぞ」と、狗神新月が寂し気に言う。
「ハッ……骨は拾わないけど、墓はキレイに建ててあげる」と、峰隅進が計画通りと云わんばかりに悪い顔で笑う。
葉高山蝶夏は敬礼をして織田流水を見送っていた。
――さて。
そんなやり取りの末、隠密の活動グループから外れ、前線に立つことになった織田流水。
突如現れた彼に、“むい”も、矢那蔵連蔵も、風間太郎も、鬼之崎電龍も、当然関心を向けるのであった。
「おやぁ? これはこれは、珍しいゲストが現れたねぇ~」と、矢那蔵連蔵は言葉とは裏腹に怪しむ表情だ。
「おっ! 心強い味方が現れたなッ!」と、風間太郎は素直に喜ぶ。
『あれ? 久しぶり! 元気にしてた?』と、“むい”は気の良い仲間に掛けるように気軽に挨拶してくる。
「…………」と、鬼之崎電龍は訝しげに織田流水を見る。
「あ、あはは……み、みんな精が出るね」
織田流水は頭を掻き、冷や汗をかき、愛想笑いを浮かべる。
監視カメラを仕掛けるところを見られないように、少しでも遠いところに移動させなければならない。それも、新たに人が来ないうちに。
織田流水は思案する。
早めのお昼ご飯に行こうとは言えないし、加えて、相手側にも言わせてはいけない。階段側に行かせないためにも、階を跨いだ移動にならないように誘導しないといけない。
「…………どうしてここにいるの?」
織田流水は言葉を選びながら、慎重に探り探り問いかける。
「それはもちろん、“愛しの君”に会いたくて追いかけていたらここに来たのさ」
矢那蔵連蔵は冗談を言いながら、“むい”を見る。
『あれ~、“むい”のせいにしてる~? イヤだな~、“むい”もお尻を追いかけられなければこんなに逃げないよ~』
“むい”は窓枠でプルプルと震える。
「お前、お尻ないだろッ!?」
風間太郎がどうでもいいことにツッコミを入れる。
『頭があるなら、お尻があってもいいじゃない』
「うんうん、哲学的だよねぇ。肛門をお尻と呼ぶのか、頭の反対側をお尻と呼ぶのか」
「哲学ではないだろッ!? 哲学バカにすんなよッ!?」
“むい”と矢那蔵連蔵と風間太郎がじゃれ合うように台詞を交わす。
3人(?)が喋っている間、織田流水はどう切り込むか考える。
『お尻を追いかけるのが得意な専門家に、詳しく話を聞いてみたいね』
「どんな専門家だよッ!?」
「ほら、コメント求められてますよ、専門家さん?♪」
「しかも、オレのことかよッ!?」
3人(?)がくっちゃべっている間に、鬼之崎電龍が織田流水に忍び寄る。
「……なにかあったのか?」
顔を近づけ小声で話しかける鬼之崎電龍は、織田流水が誰かの伝令役でここに遣わされたのだ、と判断したようだった。
「あっ、いや、特に何があったわけではないけど……」
既に裏があると思われていることに動揺した織田流水が、しどろもどろに答える。
「…………」
鬼之崎電龍は覆面越しのため視線を感じるはずがないのに、ジッと見つめられる気配がある。
「えっと、あの……う~ん、と」
織田流水は“むい”と仲間たちを交互に見る。
既に織田流水を怪しんでいる矢那蔵連蔵と鬼之崎電龍に、まだ思考力や洞察力の底が見えない“むい”、そして一度気づかれると拡声器の如く騒ぎ立てる風間太郎。厄介な状況に放り込まれたと、今更ながら織田流水は焦りに焦る。
「…………わかった。理由はわからんが、どこかに移動すればいいんだな?」
「――えっ!?」
鬼之崎電龍は落ち着きのない織田流水の様子から、その気持ちを察した。
ここで彼の行動の真意を問うよりも、ひとまずは彼の思惑を優先したようだ。鬼之崎電龍の織田流水――ひいては、裏で織田流水を遣わせた仲間に対する信頼の厚さが伺える。
「う、うんっ、少しだけ階段からはな……できるだけ奥に行きたいんだッ」
思わぬ助け舟に織田流水はつい口を滑らしたが、寸でのところで止まった。
「うむ、承知した。矢那蔵――」
鬼之崎電龍が矢那蔵連蔵に話しかける。
――と、同時に。
「ずいぶん楽しそうだな。私も混ぜてくれよ」
――と、笑顔を浮かべる和泉忍がその場に現れた。
監視カメラを仕掛ける場所は峰隅進から指示され、彼らはそれに従いつつ時々生まれる疑問を峰隅進にぶつけては、南北雪花の『予知』により先回りで用意されていた回答を受け納得する。
仕掛ける場所は、各フロアの階段を上りきった場所と、下りきった場所に合わせて2か所ずつ。階段の踊り場を上からと下からの2方向から映す形だ。
[エントランスホール]分を合わせると、計9個。残り1個は予備機となった。
C棟1階から上階に向かいながら、監視カメラを仕掛けていく。非常にスムーズに事が進んでいく。
C棟3階で設置を行うところで、思いがけない彼らを目撃する。
「――じゃあさー、“むい”たちはさー、どうして“ここ”を選んだの? 他の再現施設じゃなくて、どうして“ここ”を襲ったのー? 僕にだけ、教えてよー。誰にも言わないからさっ♪」と、矢那蔵連蔵が“むい”に上からのしかかるように腕を乗せている。
「そうだぞーッ、素直に吐けば楽になるぞーッ、お天道様は見ているぞーッ」と、風間太郎は彼の周囲をチョコマカと動き回り、手に持ったメガホンで“むい”に浴びせる。
『もうッ! だから、何度聞かれても知らないってばッ! “むい”はただ後ろからついて行っただけなんだからッ! 知らないのッ!』と、“むい”は窓を全開にした窓枠に乗っかって、プルプルと震えている。
「…………」と、鬼之崎電龍は少し離れたところからその様子を眺めている。
3名と1匹(?)を遠目に見つけた織田流水たちは踊り場で身を屈め、身を潜める。
峰隅進が苦虫を嚙み潰したような表情をする。
「げっ!? 最悪な連中がいるよ……ったく、葉高山がいるから今日は中止なのかと思っていたのに」
織田流水が峰隅進の傍で座り込む。
「……あんな感じなんだ。なんというか……想像よりも全然フランクに話してるんだね。もっとシリアスな空気が流れてるものかと、てっきり」
葉高山蝶夏は段ボールを抱えてるため、喉を鳴らして反論する。
「……っ! ……っ……っ!」
西嶽春人が抱えていた段ボールを足元に置く。
「ああ、織田クンは“クレーム”の様子を見学するのは初めてなんだね。あれは、矢那蔵クンだからマイルドなんだよ。葉高山クンの時は、もっと激しいさ」
狗神新月が警戒気味に“むい”たちの様子を見る。
「同感だ。だが、それは当の本人たちも同じだろう。だから風間も同行させたのだ。矢那蔵が言っていたぞ。風間は音量担当で、2人でようやく葉高山1人分だとな…………そこの当事者、褒めてないから照れるな。お前はあと2段階くらい声を小さくしていい」
狗神新月に窘められた葉高山蝶夏は、エヘンッと威張っていた。五月蠅さを指摘されていることに気づいていないのか、それとも誉れに感じているのか。
「でも、どうしようか? さすがに彼らの近くてカメラを仕掛けるのは……」
「……そりゃ、良くないでしょ。肝心の宿敵である“むい”がいるし」
織田流水と峰隅進が身を屈めた隣同士で相談を始める。
小声で話す最中でも、遠くにいる3名と1匹(?)は賑やかに会話をしている。階段の踊り場で身を潜めている彼らにも、風間太郎の声が聞こえてくる。
「ここで待機する? さすがに1ヶ所に留まって立ち話をし続けているわけじゃないだろうし、彼らが移動するまで待とうか?」
西嶽春人の提案を狗神新月が否定する。
「否、いつになったら動き出すか分からん以上、悪戯に時間が過ぎる。それに、彼らの移動する先がこちらであった場合、我々と鉢合わせになる」
――と、なると、
「――誰かが囮になるしかないわけね」
峰隅進が辛そうな顔をする。
「お、囮ッ!」
織田流水がゴクリと唾を飲み込む。
“むい”が目の前にいる以上、矢那倉連蔵や風間太郎、鬼之崎電龍に事情を説明するわけにはいかない。そのため、誘導する相手は“むい”だけでは済まないのだ。
仲間たちにも怪しまれずに、階段から離れるように誘導しなければならないのだ。
――重責である。
「い、いったい、誰が囮を……ッ」と、織田流水。
「登場するタイミングはいっそのこと気にしない方がいいだろうな。自然さが一番だ」と、狗神新月。
「無理しないでいいからね。引き際を見極めることも大切だよ」と、西嶽春人。
「一番大事なのは心意気だから。“心”で負けちゃダメだよ……ぷぷ」と、峰隅進。
織田流水は首を傾げる。
「…………あれ? なんか僕以外の発言がおかしくない? なんか、既に“誰か”を想定しているような………?」
――ポンッ。
織田流水の肩に置かれる4名の手。
「…………え?」
「「「いってらっしゃい」」」「…………っ!」
固まる織田流水。そんな彼を見る4名。
「え、え~~~ッッ?? な、なんで僕がッ!?」
織田流水が4名の顔を交互に見る。
「はあ? <外交官>でしょ? アンタの肩書きは飾りなの?」「正直、口下手な私には荷が重い。力不足で済まない」「辛くなったら、すぐにボクを呼んでねッ。颯爽と駆け付けるからッ」「……っ……っ!」
4名から畳みかけるようにエールを送られる織田流水。
「――わかったよ。そこまで言うなら、ハァ…………ふっ! あとは頼んだからねッ!」
織田流水は溜め息を吐いたあと、ペチッと両頬を叩く。
織田流水は後ろ髪を引かれつつ階段を上り切り、誰かに止めてほしそうな重い足取りで向かった。その姿は、まるで戦場へと赴く戦士のようであった。
「背中で語る織田クンも格好いいよね。その雄姿、忘れないよ」と、西嶽春人が惚れ惚れした目で見ていた。
「……骨は拾うぞ」と、狗神新月が寂し気に言う。
「ハッ……骨は拾わないけど、墓はキレイに建ててあげる」と、峰隅進が計画通りと云わんばかりに悪い顔で笑う。
葉高山蝶夏は敬礼をして織田流水を見送っていた。
――さて。
そんなやり取りの末、隠密の活動グループから外れ、前線に立つことになった織田流水。
突如現れた彼に、“むい”も、矢那蔵連蔵も、風間太郎も、鬼之崎電龍も、当然関心を向けるのであった。
「おやぁ? これはこれは、珍しいゲストが現れたねぇ~」と、矢那蔵連蔵は言葉とは裏腹に怪しむ表情だ。
「おっ! 心強い味方が現れたなッ!」と、風間太郎は素直に喜ぶ。
『あれ? 久しぶり! 元気にしてた?』と、“むい”は気の良い仲間に掛けるように気軽に挨拶してくる。
「…………」と、鬼之崎電龍は訝しげに織田流水を見る。
「あ、あはは……み、みんな精が出るね」
織田流水は頭を掻き、冷や汗をかき、愛想笑いを浮かべる。
監視カメラを仕掛けるところを見られないように、少しでも遠いところに移動させなければならない。それも、新たに人が来ないうちに。
織田流水は思案する。
早めのお昼ご飯に行こうとは言えないし、加えて、相手側にも言わせてはいけない。階段側に行かせないためにも、階を跨いだ移動にならないように誘導しないといけない。
「…………どうしてここにいるの?」
織田流水は言葉を選びながら、慎重に探り探り問いかける。
「それはもちろん、“愛しの君”に会いたくて追いかけていたらここに来たのさ」
矢那蔵連蔵は冗談を言いながら、“むい”を見る。
『あれ~、“むい”のせいにしてる~? イヤだな~、“むい”もお尻を追いかけられなければこんなに逃げないよ~』
“むい”は窓枠でプルプルと震える。
「お前、お尻ないだろッ!?」
風間太郎がどうでもいいことにツッコミを入れる。
『頭があるなら、お尻があってもいいじゃない』
「うんうん、哲学的だよねぇ。肛門をお尻と呼ぶのか、頭の反対側をお尻と呼ぶのか」
「哲学ではないだろッ!? 哲学バカにすんなよッ!?」
“むい”と矢那蔵連蔵と風間太郎がじゃれ合うように台詞を交わす。
3人(?)が喋っている間、織田流水はどう切り込むか考える。
『お尻を追いかけるのが得意な専門家に、詳しく話を聞いてみたいね』
「どんな専門家だよッ!?」
「ほら、コメント求められてますよ、専門家さん?♪」
「しかも、オレのことかよッ!?」
3人(?)がくっちゃべっている間に、鬼之崎電龍が織田流水に忍び寄る。
「……なにかあったのか?」
顔を近づけ小声で話しかける鬼之崎電龍は、織田流水が誰かの伝令役でここに遣わされたのだ、と判断したようだった。
「あっ、いや、特に何があったわけではないけど……」
既に裏があると思われていることに動揺した織田流水が、しどろもどろに答える。
「…………」
鬼之崎電龍は覆面越しのため視線を感じるはずがないのに、ジッと見つめられる気配がある。
「えっと、あの……う~ん、と」
織田流水は“むい”と仲間たちを交互に見る。
既に織田流水を怪しんでいる矢那蔵連蔵と鬼之崎電龍に、まだ思考力や洞察力の底が見えない“むい”、そして一度気づかれると拡声器の如く騒ぎ立てる風間太郎。厄介な状況に放り込まれたと、今更ながら織田流水は焦りに焦る。
「…………わかった。理由はわからんが、どこかに移動すればいいんだな?」
「――えっ!?」
鬼之崎電龍は落ち着きのない織田流水の様子から、その気持ちを察した。
ここで彼の行動の真意を問うよりも、ひとまずは彼の思惑を優先したようだ。鬼之崎電龍の織田流水――ひいては、裏で織田流水を遣わせた仲間に対する信頼の厚さが伺える。
「う、うんっ、少しだけ階段からはな……できるだけ奥に行きたいんだッ」
思わぬ助け舟に織田流水はつい口を滑らしたが、寸でのところで止まった。
「うむ、承知した。矢那蔵――」
鬼之崎電龍が矢那蔵連蔵に話しかける。
――と、同時に。
「ずいぶん楽しそうだな。私も混ぜてくれよ」
――と、笑顔を浮かべる和泉忍がその場に現れた。
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