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ウッドゴーレム
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白雲の群生地に、白雲の花の甘い香りに混ざって、ふんわりとスープの香りが広がる。
「「うま!」」
「そうだろうそうだろう」
コップに入ったスープを飲んだセイルとハイネルが目を輝かせると、ストレイは得意げに笑った。三人は今食事中である。
そんな三人の隣では、ウッドゴーレムが膝を抱えて座っていた。ウッドゴーレムは食事を必要とはしないので食べはしないが、一緒に食事を楽しんでいるかのようにそこにいた。
「いや、本当にストレイ料理上手ですね」
「まぁ冒険者生活も長いからな」
セイルが褒めると、ストレイは満更でもなさそうに笑った。
鶏肉のサンドイッチと白雲の花のサラダ、そしてスープ。サンドイッチ自体はライゼンデの屋台で購入したものだが、それ以外はストレイの手料理だった。
まずはこのサンドイッチだが、これは出発前にライゼンデの屋台で購入したものである。カリカリに焼かれた甘辛い鶏肉がレタスと一緒に少し硬めのパンでサンドされている。値段も安くボリュームもあるので、冒険者達に人気のメニューだった。
次いではこのサラダ。摘んだ白雲の花を適当に切って、オリーブオイルと混ぜたら、その上から塩とレモンの粉末を振りかける。白雲の花をサラダにして食べると聞いた時はセイルとハイネルは驚いたが、冒険者の間ではそれほど珍しい事でもないらしい。
白雲の花は、もともと薬にも使われる薬草だから、食べても問題がないのだそうだ。僅かに甘味のある白雲の花はシャキシャキとした歯ごたえで、味付けもさっぱりとしてセイルは気に入っていた。
最後にスープ。干したトマトとキノコ、タマネギを入れて、水と塩、胡椒で味付けをして鍋で煮込んである。野菜が柔らかくなったらサラダの余りの白雲の花をぱらぱらと上に振りかけて完成だ。このスープはまず香りがいい。ワクワクしながら口に入れると、野菜とキノコの旨みがじゅわりと口の中に広がって、ハイネルは至福そうに息を吐いた。
「ハイネル、ハイネル。次の依頼で報酬を貰ったら鍋買いましょう」
「いいですね、鍋。料理にも盾にも使えます」
セイルがそう提案すると、ハイネルも力強く頷いた。
「その前に、お前さん達は前衛職の仲間を探しとけ。傍から見てるとすげぇ心配」
「いやぁ」
「褒めてないぞ」
そんな賑やかな食事を終え、後片付けをした後。
セイルは満腹特有のまったりとした満足感を感じながら白雲の花畑の中に寝転んだ。
ストレイは先程の資料を鞄から出して興味深そうに読んでいる。
ハイネルはハイネルで、先程書いていたメモ帳を取りだし、ストレイに話しかけていた。
「ストレイ、少し良いですか? あの部屋の壁に書かれていた設計図に関してなのですが……」
「ああ、いいぞ。俺の方も見せて貰いたい所があったんだ」
どうやらウッドゴーレムの修理に関しての事らしい。
二人は資料を広げて、ハイネルのメモと見比べていた。
セイルが少しばかり疎外感を感じていると、ふと、座っているウッドゴーレムが何かをしている事に気が付いた。
ウッドゴーレムは大きな指で白雲の花を一輪ずつ器用に摘んでいる。
セイルは目を瞬くと、ごろりと転がって立ち上がると、ウッドゴーレムの所へと近寄った。
「おお、たくさん摘みましたねー」
セイルが話かけると、ウッドゴーレムは少し首を傾げ、その内の一輪をセイルへと差し出した。
セイルは目をぱちぱちとさせると、両手でその花を受け取って嬉しそうに胸に抱く。
「ありがとうございます。いやぁ、わたし、誰かから花を貰ったのって初めてです」
少し照れながらお礼を言うと、ウッドゴーレムは再び白雲の花摘みを再開した。
セイルはウッドゴーレムから貰った白雲の花を嬉しそうに見つめたあと、髪に挿した。
そうしてしゃがみこんでその様子をのんびりと眺めていると、ふとストレイに呼ばれた。
「そう言えばセイル」
「はいはい?」
「ここに来ていた冒険者っぽい奴のログって追えるのか?」
「そうですねー……うーん。遺跡の方のログは前に見たので限界だと思いますが。人のログを許可なく見るのって、基本的にNGなんですよ」
「ゴーレムはどうだ?」
「ギリギリ……ゴーちゃん、いかがです?」
セイルがうーんと唸ってウッドゴーレムに尋ねると、少し首を傾げた後「どうぞ」と言うように、セイルの方に体を向けて、膝を抱えて座った。
セイルはハイネルとストレイを見て頷いた後、水音の杖の底で地面を軽く叩いた。
ポーン、と澄んだ音の波が広がる。
セイルが目を閉じて集中すると、ウッドゴーレムから、さらさらと金色の砂のような光が現れ、セイルに吸い込まれていく。
ハイネルは、ほう、と息を吐き、ストレイは少しだけ目を張ってその光景を見つめる。
「ログとは綺麗なものですね」
「そうだな。俺もしっかりと見た事はなかったが……」
自分の中にログが吸い込む感覚を感じながら、セイルは自分の中に入って来るログを整理していく。
その中に目的のログがあった。
それを手繰り寄せるように意識を集中すると、セイルの瞼の裏にゆっくりとウッドゴーレムのログの光景が浮かび始めた。
「「うま!」」
「そうだろうそうだろう」
コップに入ったスープを飲んだセイルとハイネルが目を輝かせると、ストレイは得意げに笑った。三人は今食事中である。
そんな三人の隣では、ウッドゴーレムが膝を抱えて座っていた。ウッドゴーレムは食事を必要とはしないので食べはしないが、一緒に食事を楽しんでいるかのようにそこにいた。
「いや、本当にストレイ料理上手ですね」
「まぁ冒険者生活も長いからな」
セイルが褒めると、ストレイは満更でもなさそうに笑った。
鶏肉のサンドイッチと白雲の花のサラダ、そしてスープ。サンドイッチ自体はライゼンデの屋台で購入したものだが、それ以外はストレイの手料理だった。
まずはこのサンドイッチだが、これは出発前にライゼンデの屋台で購入したものである。カリカリに焼かれた甘辛い鶏肉がレタスと一緒に少し硬めのパンでサンドされている。値段も安くボリュームもあるので、冒険者達に人気のメニューだった。
次いではこのサラダ。摘んだ白雲の花を適当に切って、オリーブオイルと混ぜたら、その上から塩とレモンの粉末を振りかける。白雲の花をサラダにして食べると聞いた時はセイルとハイネルは驚いたが、冒険者の間ではそれほど珍しい事でもないらしい。
白雲の花は、もともと薬にも使われる薬草だから、食べても問題がないのだそうだ。僅かに甘味のある白雲の花はシャキシャキとした歯ごたえで、味付けもさっぱりとしてセイルは気に入っていた。
最後にスープ。干したトマトとキノコ、タマネギを入れて、水と塩、胡椒で味付けをして鍋で煮込んである。野菜が柔らかくなったらサラダの余りの白雲の花をぱらぱらと上に振りかけて完成だ。このスープはまず香りがいい。ワクワクしながら口に入れると、野菜とキノコの旨みがじゅわりと口の中に広がって、ハイネルは至福そうに息を吐いた。
「ハイネル、ハイネル。次の依頼で報酬を貰ったら鍋買いましょう」
「いいですね、鍋。料理にも盾にも使えます」
セイルがそう提案すると、ハイネルも力強く頷いた。
「その前に、お前さん達は前衛職の仲間を探しとけ。傍から見てるとすげぇ心配」
「いやぁ」
「褒めてないぞ」
そんな賑やかな食事を終え、後片付けをした後。
セイルは満腹特有のまったりとした満足感を感じながら白雲の花畑の中に寝転んだ。
ストレイは先程の資料を鞄から出して興味深そうに読んでいる。
ハイネルはハイネルで、先程書いていたメモ帳を取りだし、ストレイに話しかけていた。
「ストレイ、少し良いですか? あの部屋の壁に書かれていた設計図に関してなのですが……」
「ああ、いいぞ。俺の方も見せて貰いたい所があったんだ」
どうやらウッドゴーレムの修理に関しての事らしい。
二人は資料を広げて、ハイネルのメモと見比べていた。
セイルが少しばかり疎外感を感じていると、ふと、座っているウッドゴーレムが何かをしている事に気が付いた。
ウッドゴーレムは大きな指で白雲の花を一輪ずつ器用に摘んでいる。
セイルは目を瞬くと、ごろりと転がって立ち上がると、ウッドゴーレムの所へと近寄った。
「おお、たくさん摘みましたねー」
セイルが話かけると、ウッドゴーレムは少し首を傾げ、その内の一輪をセイルへと差し出した。
セイルは目をぱちぱちとさせると、両手でその花を受け取って嬉しそうに胸に抱く。
「ありがとうございます。いやぁ、わたし、誰かから花を貰ったのって初めてです」
少し照れながらお礼を言うと、ウッドゴーレムは再び白雲の花摘みを再開した。
セイルはウッドゴーレムから貰った白雲の花を嬉しそうに見つめたあと、髪に挿した。
そうしてしゃがみこんでその様子をのんびりと眺めていると、ふとストレイに呼ばれた。
「そう言えばセイル」
「はいはい?」
「ここに来ていた冒険者っぽい奴のログって追えるのか?」
「そうですねー……うーん。遺跡の方のログは前に見たので限界だと思いますが。人のログを許可なく見るのって、基本的にNGなんですよ」
「ゴーレムはどうだ?」
「ギリギリ……ゴーちゃん、いかがです?」
セイルがうーんと唸ってウッドゴーレムに尋ねると、少し首を傾げた後「どうぞ」と言うように、セイルの方に体を向けて、膝を抱えて座った。
セイルはハイネルとストレイを見て頷いた後、水音の杖の底で地面を軽く叩いた。
ポーン、と澄んだ音の波が広がる。
セイルが目を閉じて集中すると、ウッドゴーレムから、さらさらと金色の砂のような光が現れ、セイルに吸い込まれていく。
ハイネルは、ほう、と息を吐き、ストレイは少しだけ目を張ってその光景を見つめる。
「ログとは綺麗なものですね」
「そうだな。俺もしっかりと見た事はなかったが……」
自分の中にログが吸い込む感覚を感じながら、セイルは自分の中に入って来るログを整理していく。
その中に目的のログがあった。
それを手繰り寄せるように意識を集中すると、セイルの瞼の裏にゆっくりとウッドゴーレムのログの光景が浮かび始めた。
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