私の幸せな結婚生活

吏人

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番外編

アレクside

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天使だと思った。

「ほらアレクこの子の名前はアイリスよ。」

母に連れられ行った屋敷のベットで座っている綺麗な女性に抱かれて居たのがアイリスだった。

「はじめまして、ボク、アレクだよ。」
「アー キャキャッ」
「まあ。アイリスはアレクのことが好きみたいね」
「ほんとね。アリア体調はどうなの?」
「ええ。何とか大丈夫よ。」

僕達の母は学園時代からの親友同士で姉妹のように仲が良かった。そんな母2人は何やら深刻な感じで話をしていたが5歳の僕には分からなかった。だからずっとアイリスを見てた。可愛らしく笑うアイリスはホントに天使のようで僕が守ってあげなきゃと思った。 アイリスのことを夢中で見ている僕を見てアイリスの母アリアおばさんが微笑みながら

「アレク、アイリスのこと沢山可愛がってあげてね!」
「うん!」

それから毎日アイリスに会いに行った。そうして過ごし僕が8歳アイリスが3歳の時アリアおばさんが亡くなってしまった。元々病弱でアイリスが産まれてからはほとんどをベッドの上で過ごしていた。

「おかーたまは?」
「アイリスちゃん」

母がアイリスを抱きしめている。アイリスの父であるトーマスおじさんは、茫然自失としていてお葬式などの指示も僕の母と父が行った。その間僕はアイリスの傍にいた。あまり状況が理解出来ていないようで母親がいないことで少し寂しそうだ。

「アー君おかあたまどこ行ったの?」
「アイリス…アリアおばさんはお星様になったんだ。」
「おほしさま?」
「そうだよ。おそらの上からずっとアイリスを守ってくれるんだ。」
「じゃあもうギュッてしてくれないの?」
「…僕が沢山ギュッてしてあげる。それじゃダメ?」
「ううん。いいよ!アー君ギュッてしてね!」
「うん!」

アリアおばさんが亡くなってから、トーマスおじさんは完全に自暴自棄になってしまい、アイリスのことも忘れているかのごとく騎士団の仕事に打ち込んでいた。父や母が何度忠告してもダメだった。母はこれではダメだとアイリスを我が家に引き取った。おじさんはアイリスが家に来ることが決まっても我関せずといったかんじだった。アイリスは父親が好きだからかなり泣いていた。泣き疲れて眠ってしまったアイリスを母は優しい顔で頭を撫でていた。
アイリスが来てから我が家は明るくなった。可愛くてよく笑うアイリスは使用人たちからも人気で皆がアイリスが好きだった。

「おかえり、アイリス」
「ただいま!アレク兄様」

私が20歳アイリスが15歳になりアイリスは学園に通い始めた。おじさんはあの後突然姿を消し今でも消息不明だ。書斎の机に 「アイリス愛してる」という手紙だけ残して。アイリスはその手紙を抱きしめて泣いていた。 私は彼女を抱きしめることしか出来なかった。 
それからはいつも元気で笑顔が絶えないアイリスに戻ったが心のどこかでは寂しかったのかもしれない。学園に入り私の呼び方も兄様とつけるようになった。この頃から恋心を抱いていた私は複雑ではあったが、アイリスの特別ならまだ兄様でもいいだろうと思っていた。

「アレク兄様またお手紙貰ったの校舎裏にこいだなんてなんだか怖いと思って。」

アイリスはモテる。毎日と言っていいほどラブレターを貰って帰ってくる。鈍感すぎる彼女は校舎裏が告白スポットなのを知らない。私はそれをいいことに、アイリスに近づく男達を排除した。そして徐々に私のことを男として意識するようアプローチし、彼女が学園を卒業する18歳の時に告白した。

「アイリス。君のことを愛してる。」
「アレク兄様。嬉しい…」
「受け入れてくれるの?ありがとうアイリス…これからは兄様はいらないんじゃないかな?」
「はい。アレク」

告白を受け入れてくれた時は天にも登る気持ちで彼女を抱きしめた。それから2年後プロポーズし無事結婚した。両親、特に母はものすごく喜んでいた。
結婚生活は毎日が幸せだった。帰ってくればアイリスにハグとキスをし、休みの日にはデートにも出かけた。子供がなかなかできないことをアイリスは気にしていたが、正直子供が居なくても親戚から養子を貰えばいいと思っていた。
結婚10年目アイリスが玄関先でのキスを恥ずかしいから辞めてくれと言い始めたのだ。 物凄く嫌だったが、アイリスのお願いだから聞いた。最近アイリスが構ってくれない。 そう父に愚痴をこぼした時父がこう言ったのだ。

「押してダメなら引いてみろだぞアレク」

この言葉が全ての始まりだった...


それから父の助言通りアイリスに素っ気ない態度を取った。ホントは抱きしめたい。キスしたい。と自分との理性と葛藤しながら。彼女の寂しそうな顔を見る度罪悪感で押しつぶされそうだった。こんなの間違っているのではと思い始めた頃、公爵家の娘が入団してきた。仕事はできない、訓練もまともにしない。何故こんな奴が寄りにもよって第1騎士団に入ったんだと抗議に父の元に向かうと公爵の汚職の話になり、その娘が私に好意を抱いているから情報を引き出せと言われてしまった。
冗談じゃない。アイリス以外の女となんてと思ったが大臣からの命令となってしまったので仕方なくあの女とお茶をしたりわざわざ見回りを一緒にするなどした。勿論2人っきりではなくお茶の時も他の騎士団のメンバーもいた。見回りは基本4人1組のためそもそも2人っきりにはならない。
そんな状況が半年ほど続いただろうかある日アイリスと久しぶりに朝食を食べているとアイリスから信じられない言葉が出てきた。
「旦那様はお付き合いされてる方がいるんですか?」



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長くなってしまったので次に行きます

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