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1-17 彩姫の寝る場所と桔梗のベッド
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白熱したファリヲカートも終わり、時刻は23時。昨今の高校生が寝るには少々早いと言えなくもない時刻ではあるが、翌朝の事を考え桔梗達は寝る事とした。
しかし、ここで問題が発生する。
「あ……彩姫の寝る場所考えてなかった」
そう。あれよあれよと流されるままに彩姫の宿泊を許可した影響か、彼女の寝る場所を考えていなかったのである。
加えて現在桔梗の家に空いている部屋も無ければ、使える布団も無い。
その言葉を受け、彩姫はあっけらかんとした様子で、
「どこでも良いわよ。布団が無いなら……ほら、このソファとか」
「いや、それは流石に。……あ、そうだ」
桔梗はうんと頷くと、
「なら彩姫が僕のベッドを使ってよ。勿論、嫌じゃなければだけど」
その言葉に少女達がピクリと反応を示し、その視線が彩姫へと向く。
彩姫も同様にピクリと反応を示し、ほんの少し逡巡した様子を見せた後、どこか名残惜しくも申し訳無いといった表情を浮かべる。
「いやではないけど、それはダメよ。家主をソファで寝かせるなんて」
……うん、そう言うだろうと思ったよ。
彩姫は親しい間柄の者と関わる時には特に自分を下げ他人を慮る傾向にある。間違いなくそれは彩姫の優しさであり、尊重すべき点である。
しかし桔梗が『ベッドは彩姫に使って貰う』という考えを変える気が無い以上、今後生まれるのは深い深い泥沼状態。
……ならば彩姫の性格を利用し、何とか折れて貰うほかない。
桔梗は少しだけわざとらしく、
「でもなー、彩姫にベッドを貸さないと逆に罪悪感でぐっすりと眠れなくなっちゃうかもしれないなぁ」
「それを言われたら何も言い返せないじゃない」
言ってムムムという擬音が聞こえてきそうな表情になる彩姫。
そんな彩姫の表情に桔梗はニッと小さく笑った後、うんと頷き、
「んじゃ、彩姫がベッドを使うに決定──」
「──いや、やっぱりダメよ。私も罪悪感を感じちゃうわ」
桔梗の言葉を遮るように彩姫が声を上げた。
「「…………」」
一瞬の沈黙。しかしここで何か良い案でも思いついたのか、彩姫はハッとした後、呟くように声を漏らす。
「そ、そうよ。それなら──」
そして桔梗へと一瞬チラと視線を向けた後、少しだけ俯きがちに、
「ねぇ桔梗。お互いに譲れないのなら……妥協点を探るしか無いわよね」
「うん、それはまぁ」
「な、なら──」
頷く桔梗に、彩姫は意を決した様子で、
「……一緒に……のは……かしら」
「…………ん?」
「だから──」
グッと桔梗に近づき、彼の服の端を摘むと、潤んだ瞳のまま上目遣いで、
「……わ、私と一緒にベッドで──」
「──ちょ! それはズルイっす!」
堪らずシアが口を挟む。そんな彼女に、彩姫はあっけらかんとした様相で、
「……ズルイって、仕方がないじゃない。桔梗と私両方の意見を採用した結果よ」
「いーんや! 別にご主人と彩姫が一緒に寝る必要は無い筈っすよ!」
「な、なによ、何か他に方法があるのかしら」
「あるっすよー! ……それはズバリ──私とご主人が一緒に寝るっす!」
「結局シアが一緒に寝たいだけじゃないの!」
「彩姫も人の事言えないっすよ。さっきのご主人を見上げる眼は、どう考えても妥協から来る眼じゃなかったっす!」
「……うっ」
そこへリウが、
「……リウも……桔梗と……一緒がいい」
ルミアも続く様に、
「出来る事ならば、私も桔梗様と一夜を共にしたいですわ」
きっとルミアは純粋な気持ちで言っているのだろうけど、やはり言葉に何とも言えない艶があるなと桔梗は苦笑いした後、
「とりあえず一緒に寝るという選択肢は無しね。いくら家族の様な関係と言っても、流石に年頃の男女なんだし」
唇を尖らせ不満顔の4人。リウは首を傾げる。
「……なら……どうする……の?」
リウの言葉に桔梗が口を開こうとし、しかしそれよりも早く、これ以上の争いは不毛とでも思ったのか、彩姫がフーッと息を吐いた後声を上げた。
「……わかったわ。今回は、有り難く使わせていただく事にするわ」
「ありがとう彩姫!」
「いや、お礼を言われる事では無いんだけど……」
使わせて貰う立場なのにお礼を言われるというよくわからない状況に戸惑いつつ、彩姫はどう言う訳かソワソワとした様子を見せる。
その姿をじーっと目にしながら、シアはポツリと呟く様に、
「うぅ、ご主人のベッド……羨ましいっす……」
「シア、あんたね……」
「……たしかに……うらやましい……」
「リウまで」
「羨ましいですわ!」と視線で訴えかけるルミア。
「えっ、ルミアも?」
そう言う彩姫へと、ジーっと期待した様な視線が3人から向けられる。
その視線に晒されながら、しかし彩姫は顔を背けると、
「……変わらないわよ」
「あー! 絶対ご主人の布団に顔を埋めてクンカクンカするつもりっす!」
「そ、そんな事しないわよ!」
「詰まったっす! 図星っす!」
確かに図星であった。いや、クンカクンカなどはしたない事をするつもりは無かったが、少なくとも桔梗のベッドで寝れる事に下心の様なものはあったのだ。が、だからと言ってそれを認める事はできない。
という事で彩姫は半ばヤケクソ気味に、
「……あぁもう、わかったわよ! こうなったら桔梗のベッドをかけて勝負よ!」
「流石彩姫っす! のぞむ所っすよ!」
「……負けない」「負けませんわ!」
「勝負はアレで良いわよね?」
「勿論! こう言う決め事の時、私達の勝負は決まってアレ──」
シアは右手を前に出し、
「──じゃんけんだったっすから!」
……と、そんな謎に熱くなる4人の姿に、桔梗は異世界でよく見ていた光景が重なりほんわかとした気持ちなるのと同時に、その勝負の報酬が自身のベッドという部分で何とも言えない気持ちになるのであった。
しかし、ここで問題が発生する。
「あ……彩姫の寝る場所考えてなかった」
そう。あれよあれよと流されるままに彩姫の宿泊を許可した影響か、彼女の寝る場所を考えていなかったのである。
加えて現在桔梗の家に空いている部屋も無ければ、使える布団も無い。
その言葉を受け、彩姫はあっけらかんとした様子で、
「どこでも良いわよ。布団が無いなら……ほら、このソファとか」
「いや、それは流石に。……あ、そうだ」
桔梗はうんと頷くと、
「なら彩姫が僕のベッドを使ってよ。勿論、嫌じゃなければだけど」
その言葉に少女達がピクリと反応を示し、その視線が彩姫へと向く。
彩姫も同様にピクリと反応を示し、ほんの少し逡巡した様子を見せた後、どこか名残惜しくも申し訳無いといった表情を浮かべる。
「いやではないけど、それはダメよ。家主をソファで寝かせるなんて」
……うん、そう言うだろうと思ったよ。
彩姫は親しい間柄の者と関わる時には特に自分を下げ他人を慮る傾向にある。間違いなくそれは彩姫の優しさであり、尊重すべき点である。
しかし桔梗が『ベッドは彩姫に使って貰う』という考えを変える気が無い以上、今後生まれるのは深い深い泥沼状態。
……ならば彩姫の性格を利用し、何とか折れて貰うほかない。
桔梗は少しだけわざとらしく、
「でもなー、彩姫にベッドを貸さないと逆に罪悪感でぐっすりと眠れなくなっちゃうかもしれないなぁ」
「それを言われたら何も言い返せないじゃない」
言ってムムムという擬音が聞こえてきそうな表情になる彩姫。
そんな彩姫の表情に桔梗はニッと小さく笑った後、うんと頷き、
「んじゃ、彩姫がベッドを使うに決定──」
「──いや、やっぱりダメよ。私も罪悪感を感じちゃうわ」
桔梗の言葉を遮るように彩姫が声を上げた。
「「…………」」
一瞬の沈黙。しかしここで何か良い案でも思いついたのか、彩姫はハッとした後、呟くように声を漏らす。
「そ、そうよ。それなら──」
そして桔梗へと一瞬チラと視線を向けた後、少しだけ俯きがちに、
「ねぇ桔梗。お互いに譲れないのなら……妥協点を探るしか無いわよね」
「うん、それはまぁ」
「な、なら──」
頷く桔梗に、彩姫は意を決した様子で、
「……一緒に……のは……かしら」
「…………ん?」
「だから──」
グッと桔梗に近づき、彼の服の端を摘むと、潤んだ瞳のまま上目遣いで、
「……わ、私と一緒にベッドで──」
「──ちょ! それはズルイっす!」
堪らずシアが口を挟む。そんな彼女に、彩姫はあっけらかんとした様相で、
「……ズルイって、仕方がないじゃない。桔梗と私両方の意見を採用した結果よ」
「いーんや! 別にご主人と彩姫が一緒に寝る必要は無い筈っすよ!」
「な、なによ、何か他に方法があるのかしら」
「あるっすよー! ……それはズバリ──私とご主人が一緒に寝るっす!」
「結局シアが一緒に寝たいだけじゃないの!」
「彩姫も人の事言えないっすよ。さっきのご主人を見上げる眼は、どう考えても妥協から来る眼じゃなかったっす!」
「……うっ」
そこへリウが、
「……リウも……桔梗と……一緒がいい」
ルミアも続く様に、
「出来る事ならば、私も桔梗様と一夜を共にしたいですわ」
きっとルミアは純粋な気持ちで言っているのだろうけど、やはり言葉に何とも言えない艶があるなと桔梗は苦笑いした後、
「とりあえず一緒に寝るという選択肢は無しね。いくら家族の様な関係と言っても、流石に年頃の男女なんだし」
唇を尖らせ不満顔の4人。リウは首を傾げる。
「……なら……どうする……の?」
リウの言葉に桔梗が口を開こうとし、しかしそれよりも早く、これ以上の争いは不毛とでも思ったのか、彩姫がフーッと息を吐いた後声を上げた。
「……わかったわ。今回は、有り難く使わせていただく事にするわ」
「ありがとう彩姫!」
「いや、お礼を言われる事では無いんだけど……」
使わせて貰う立場なのにお礼を言われるというよくわからない状況に戸惑いつつ、彩姫はどう言う訳かソワソワとした様子を見せる。
その姿をじーっと目にしながら、シアはポツリと呟く様に、
「うぅ、ご主人のベッド……羨ましいっす……」
「シア、あんたね……」
「……たしかに……うらやましい……」
「リウまで」
「羨ましいですわ!」と視線で訴えかけるルミア。
「えっ、ルミアも?」
そう言う彩姫へと、ジーっと期待した様な視線が3人から向けられる。
その視線に晒されながら、しかし彩姫は顔を背けると、
「……変わらないわよ」
「あー! 絶対ご主人の布団に顔を埋めてクンカクンカするつもりっす!」
「そ、そんな事しないわよ!」
「詰まったっす! 図星っす!」
確かに図星であった。いや、クンカクンカなどはしたない事をするつもりは無かったが、少なくとも桔梗のベッドで寝れる事に下心の様なものはあったのだ。が、だからと言ってそれを認める事はできない。
という事で彩姫は半ばヤケクソ気味に、
「……あぁもう、わかったわよ! こうなったら桔梗のベッドをかけて勝負よ!」
「流石彩姫っす! のぞむ所っすよ!」
「……負けない」「負けませんわ!」
「勝負はアレで良いわよね?」
「勿論! こう言う決め事の時、私達の勝負は決まってアレ──」
シアは右手を前に出し、
「──じゃんけんだったっすから!」
……と、そんな謎に熱くなる4人の姿に、桔梗は異世界でよく見ていた光景が重なりほんわかとした気持ちなるのと同時に、その勝負の報酬が自身のベッドという部分で何とも言えない気持ちになるのであった。
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