9 / 37
1-8 朝
しおりを挟む
これといって特に何も起こらず──寝相の悪いラティアナに桔梗が頭を蹴られる事はあったが──迎えた翌日。
特にアラームなどが鳴ったりはしていないが、早起きが習慣付いているからか、いつも通りの時間に桔梗は目を覚ました。
ラティアナの睡眠を邪魔しないようゆっくりと身体を起こすと、グッと背伸びをし、ベッドから降りる。
次いでしっかりとした足取りで歩き、窓へと寄る。日の光が入らないようカーテンを潜り窓を開けると、湿ったしかし心地の良いそよ風が桔梗の頬を撫でた。
「……良い天気だ」
その風に導かれるように、空へと目を向けると、目に入る一面の青。
所々に雲が散見されるが、雲量を考えるに快晴と言っても差し支えない天気である。
気持ちの良い天気に、気持ちの良いそよ風。
何か良い事が起きそうな気候に思わず目を細めながら、続いて眼下へと目を向ける。
すると、昨晩雨でも降ったのだろうか、水に濡れ、キラリと太陽の光を輝かせている、庭の草木やいつからか咲いていた紫陽花が目に入った。
桔梗は美しい景色に思わず感嘆の息を漏らす。
と同時に、二階である自室から、雨粒の輝きを捉えてしまう程、現在の自身の視力が高いという事実を改めて実感し、超人になったなぁと何とも言えない感慨に身を包む。
何となく体感的予感はあったが、やはり魔法だけでなく異世界で鍛え得た身体能力もそのままにこの世界へと戻ってきたようだ。
……こちらとしては非常に助かるけど。
桔梗は思う。当然の事ではあるが、身体能力が高いに越した事はないのだ。
しかし、理由がわからなかった。
──何故、魔法や身体能力そのままに地球へと帰還したのか。
以前、女神は言っていた。
異世界に桔梗達が居続けては世界のバランスが崩壊してしまう、だから永住は不可能であると。
しかしそれならば、魔法や、地球では有り得ない程の身体能力を有したまま地球へと帰還する事は世界バランスの崩壊には繋がらないのか?
──それだけではない。
もしも、ラティアナ達を地球へと送ったのが女神だとするのならば、その理由は? 彼女達が地球に存在する事で世界バランスは崩壊してしまわないのか?
女神が無策だとは思えない。
──何か、力を有したまま帰還させた、ラティアナ達を地球へと連れてきた理由がある?
「…………」
じっと考えた後、桔梗は小さく息を吐く。
そして思う。これこそまさに『神のみぞ知る』だな……と。
「……っと、そろそろ」
どうやら思いの外長考してしまったようだ。
仮にこれが何の予定もない休日ならば問題はないが、今日は違う。
彩姫の母親と会う必要があるのだ。
桔梗はそう考えると、ラティアナを起こさないようにそっと部屋を出た。
すると、ほぼ同時に少しだけ眠そうにしたルミアが向かいの部屋から出てくる。
「……お、ルミア」
まさかのタイミングに、小さく目を見開く桔梗。
「……! 桔梗様。おはようございます」
眠たげな表情が一転。口に手を当て驚いたような様子の後、ルミアは柔らかく微笑む。
「おはよう、ルミア。流石こっちの世界でも早起きだね」
「お互い様ですわ」
言ってクスリと笑った後、首を傾げる。
「桔梗様は今から朝食を?」
「うん、そのつもり」
「お手伝い致しますわ」
「ありがと、助かるよ」
言って桔梗は微笑む。
ルミアが朝食の手伝いを申し出るのは何も今日が初めてではない。
異世界に居た時も、ルミアが王城ではなく桔梗の家に泊まった際は、いつも手伝ってくれていたのである。
──世界は変わっても人は変わらないな。
相変わらずのルミアの家庭的な姿に桔梗は小さく笑った。
「では行きましょうか」
ルミアの声の後、2人は並んで歩く。
そしてそのまま階段を降りようとした所で、桔梗は何かに気づいたかのように声を上げ、
「あ、ルミア」
そしてルミアへと手を伸ばす。
「き、桔梗様!?」
突然の行動に驚くルミア。
……こ、これはまさか壁ドン!? いや、まさかそれ以上の……ききき、キスとか!?
止まらない妄想。
その間にも桔梗の手はゆっくりと近づいてくる。
アワアワとするルミア。しかし遂に耐えきれなくなったのだろう、何かを期待するような表情と共にグッと目を瞑り──そんな彼女の髪をフワリと何かが撫でた。
「…………?」
しかし、その後は何も起きない。
疑問に思ったルミアは恐る恐る片目を開ける。
すると目前には優しげな笑みを浮かべる桔梗が居て、何かを終えたのか満足そうに頷いている。
ポカンとするルミア。そんな彼女へと桔梗は笑顔のまま声を上げた。
「寝癖、ついてたよ」
「ね、寝癖?」
「そ。ピョコンって」
「あ、そうでしたの。ありがとうございます」
期待した自分への恥ずかしさと、何も無かった事への落ち込みからルミアはガクリとした。
そんな彼女の様子に首を傾げる桔梗。
原因を考えるが、結局よくわからなかった為、
「さて、作るか」
と改めてルミアへ声を掛ける。
その声を受けたルミアは気を取り直し、
「はいですわ!」
と元気良く頷いた。
特にアラームなどが鳴ったりはしていないが、早起きが習慣付いているからか、いつも通りの時間に桔梗は目を覚ました。
ラティアナの睡眠を邪魔しないようゆっくりと身体を起こすと、グッと背伸びをし、ベッドから降りる。
次いでしっかりとした足取りで歩き、窓へと寄る。日の光が入らないようカーテンを潜り窓を開けると、湿ったしかし心地の良いそよ風が桔梗の頬を撫でた。
「……良い天気だ」
その風に導かれるように、空へと目を向けると、目に入る一面の青。
所々に雲が散見されるが、雲量を考えるに快晴と言っても差し支えない天気である。
気持ちの良い天気に、気持ちの良いそよ風。
何か良い事が起きそうな気候に思わず目を細めながら、続いて眼下へと目を向ける。
すると、昨晩雨でも降ったのだろうか、水に濡れ、キラリと太陽の光を輝かせている、庭の草木やいつからか咲いていた紫陽花が目に入った。
桔梗は美しい景色に思わず感嘆の息を漏らす。
と同時に、二階である自室から、雨粒の輝きを捉えてしまう程、現在の自身の視力が高いという事実を改めて実感し、超人になったなぁと何とも言えない感慨に身を包む。
何となく体感的予感はあったが、やはり魔法だけでなく異世界で鍛え得た身体能力もそのままにこの世界へと戻ってきたようだ。
……こちらとしては非常に助かるけど。
桔梗は思う。当然の事ではあるが、身体能力が高いに越した事はないのだ。
しかし、理由がわからなかった。
──何故、魔法や身体能力そのままに地球へと帰還したのか。
以前、女神は言っていた。
異世界に桔梗達が居続けては世界のバランスが崩壊してしまう、だから永住は不可能であると。
しかしそれならば、魔法や、地球では有り得ない程の身体能力を有したまま地球へと帰還する事は世界バランスの崩壊には繋がらないのか?
──それだけではない。
もしも、ラティアナ達を地球へと送ったのが女神だとするのならば、その理由は? 彼女達が地球に存在する事で世界バランスは崩壊してしまわないのか?
女神が無策だとは思えない。
──何か、力を有したまま帰還させた、ラティアナ達を地球へと連れてきた理由がある?
「…………」
じっと考えた後、桔梗は小さく息を吐く。
そして思う。これこそまさに『神のみぞ知る』だな……と。
「……っと、そろそろ」
どうやら思いの外長考してしまったようだ。
仮にこれが何の予定もない休日ならば問題はないが、今日は違う。
彩姫の母親と会う必要があるのだ。
桔梗はそう考えると、ラティアナを起こさないようにそっと部屋を出た。
すると、ほぼ同時に少しだけ眠そうにしたルミアが向かいの部屋から出てくる。
「……お、ルミア」
まさかのタイミングに、小さく目を見開く桔梗。
「……! 桔梗様。おはようございます」
眠たげな表情が一転。口に手を当て驚いたような様子の後、ルミアは柔らかく微笑む。
「おはよう、ルミア。流石こっちの世界でも早起きだね」
「お互い様ですわ」
言ってクスリと笑った後、首を傾げる。
「桔梗様は今から朝食を?」
「うん、そのつもり」
「お手伝い致しますわ」
「ありがと、助かるよ」
言って桔梗は微笑む。
ルミアが朝食の手伝いを申し出るのは何も今日が初めてではない。
異世界に居た時も、ルミアが王城ではなく桔梗の家に泊まった際は、いつも手伝ってくれていたのである。
──世界は変わっても人は変わらないな。
相変わらずのルミアの家庭的な姿に桔梗は小さく笑った。
「では行きましょうか」
ルミアの声の後、2人は並んで歩く。
そしてそのまま階段を降りようとした所で、桔梗は何かに気づいたかのように声を上げ、
「あ、ルミア」
そしてルミアへと手を伸ばす。
「き、桔梗様!?」
突然の行動に驚くルミア。
……こ、これはまさか壁ドン!? いや、まさかそれ以上の……ききき、キスとか!?
止まらない妄想。
その間にも桔梗の手はゆっくりと近づいてくる。
アワアワとするルミア。しかし遂に耐えきれなくなったのだろう、何かを期待するような表情と共にグッと目を瞑り──そんな彼女の髪をフワリと何かが撫でた。
「…………?」
しかし、その後は何も起きない。
疑問に思ったルミアは恐る恐る片目を開ける。
すると目前には優しげな笑みを浮かべる桔梗が居て、何かを終えたのか満足そうに頷いている。
ポカンとするルミア。そんな彼女へと桔梗は笑顔のまま声を上げた。
「寝癖、ついてたよ」
「ね、寝癖?」
「そ。ピョコンって」
「あ、そうでしたの。ありがとうございます」
期待した自分への恥ずかしさと、何も無かった事への落ち込みからルミアはガクリとした。
そんな彼女の様子に首を傾げる桔梗。
原因を考えるが、結局よくわからなかった為、
「さて、作るか」
と改めてルミアへ声を掛ける。
その声を受けたルミアは気を取り直し、
「はいですわ!」
と元気良く頷いた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる
名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。
男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)
大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。
この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人)
そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ!
この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。
前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。
顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。
どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね!
そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる!
主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。
外はその限りではありません。
カクヨムでも投稿しております。
美醜逆転世界の学園に戻ったおっさんは気付かない
仙道
ファンタジー
柴田宏(しばたひろし)は学生時代から不細工といじめられ、ニートになった。
トラックにはねられ転移した先は美醜が逆転した現実世界。
しかも体は学生に戻っていたため、仕方なく学校に行くことに。
先輩、同級生、後輩でハーレムを作ってしまう。
戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件
さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。
数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、
今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、
わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。
彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。
それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。
今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。
「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」
「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」
「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」
「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」
命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!?
順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場――
ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。
これは――
【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と
【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、
“甘くて逃げ場のない生活”の物語。
――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。
※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる