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ハゲ王
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扉を開けると、まず目に飛び込んできたのは、玉座に座ったフードの男と傍らで蹲っている王様の姿だった。
「王様!」
ヴァルが声を掛けると、王様は倒れたまま顔をこちらに向けた。
「お、おぬしは、ヴァル=ブルーイット!」
「助けにきてやったぜ、王様」
ヒーローの登場……のはずだったのだが。
「えっ? なんで、おぬしなの?」
「な、なんでって言われても、一応勇者だから?」
「やだやだやだー、ワシ、アメリアちゃんが良かった! 助けに来てくれるなら、アメリアちゃんが良かった! というわけで、チェンジじゃ!」
どいつもこいつも緊迫したシーンだというのにふざけやがって……とヴァルは思う。
「我侭言ってんじゃねえよ! お前の頭髪並みにやばい状況だろうが!」
「あ、あ、またワシの髪を馬鹿にした! そういう身体的特徴をあげつらうのは、人として最もやってはいけないことなんじゃよ。それに、ワシの生え際はまだ言うほどやばくないわ」
「嘘つけよ。完全に全軍後退の勢いじゃねえか!」
「ば、馬鹿者! これは後退ではない! 鶴翼の陣へ移行しておるだけじゃ!」
「M字ハゲってことじゃねえか……」
自分の頭髪で戦のシュミレーションをするなんて王様の鑑だ。
「お喋りは済んだか?」
だが、そんなふざけたやりとりを聞いていたフードの男がゆっくりと玉座から立ち上がる。
そして、フードを取った。
歴戦の勇者に相応しい精悍な顔つき。命がけの戦闘を経験してきたであろう大きな傷が、頬に横切っている。迸るオーラが、数多の死線を潜り抜けてきたことを証明していた。
だが、その瞳だけは、勇者に似つかわしくない強い憎悪に支配されている。
どうやら、いよいよシリアスパートに突入らしい。
「王様!」
ヴァルが声を掛けると、王様は倒れたまま顔をこちらに向けた。
「お、おぬしは、ヴァル=ブルーイット!」
「助けにきてやったぜ、王様」
ヒーローの登場……のはずだったのだが。
「えっ? なんで、おぬしなの?」
「な、なんでって言われても、一応勇者だから?」
「やだやだやだー、ワシ、アメリアちゃんが良かった! 助けに来てくれるなら、アメリアちゃんが良かった! というわけで、チェンジじゃ!」
どいつもこいつも緊迫したシーンだというのにふざけやがって……とヴァルは思う。
「我侭言ってんじゃねえよ! お前の頭髪並みにやばい状況だろうが!」
「あ、あ、またワシの髪を馬鹿にした! そういう身体的特徴をあげつらうのは、人として最もやってはいけないことなんじゃよ。それに、ワシの生え際はまだ言うほどやばくないわ」
「嘘つけよ。完全に全軍後退の勢いじゃねえか!」
「ば、馬鹿者! これは後退ではない! 鶴翼の陣へ移行しておるだけじゃ!」
「M字ハゲってことじゃねえか……」
自分の頭髪で戦のシュミレーションをするなんて王様の鑑だ。
「お喋りは済んだか?」
だが、そんなふざけたやりとりを聞いていたフードの男がゆっくりと玉座から立ち上がる。
そして、フードを取った。
歴戦の勇者に相応しい精悍な顔つき。命がけの戦闘を経験してきたであろう大きな傷が、頬に横切っている。迸るオーラが、数多の死線を潜り抜けてきたことを証明していた。
だが、その瞳だけは、勇者に似つかわしくない強い憎悪に支配されている。
どうやら、いよいよシリアスパートに突入らしい。
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