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十七歳童貞彼女なし 最後にキャバクラに行きたかったです

チート自堕落生活①

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 異世界転移か! 飛んだテンプレ展開だぜ! しかもチート有り! 
 碌でもない死に方だったけど、結果オーライだな。
 だが、爆笑してたこの女神はテート貰った瞬間張り倒して埋めてやる!
 
 俺がそんな決意をしていると、女神が咳払い一つして話し始めた。

「さて、時間も掛けちゃったし、本格的な説明に入るわよ」

「おう」

「まず、貴方の行く世界だけど、想像通り中世ファンタジーな魔法ありスキルありの世界よ」

「おおう! やっぱりか! それだよそれ!」

「わかってるなら詳しい説明はいらないわね」

「言葉とかは自動でわかるようになるのか?」

「いえ、それは違うわ。楽してできるようなる程人生甘く無いのよ!」

「は? じゃあ自分で覚えろと⁉︎」

「それも違うわ。ある程度のリスクは考慮しておいてちょうだいってことよ」

「おい、今とんでもない事を言ったな。何をするつもりだ⁉︎」

「ちょっと脳に負荷をかけて強引に覚えさせるだけよ。電子レンジみたいなものだから安心して頂戴」

「全く! これっぽちも! 安心できないんだが! 他の方法はないのか⁉︎」

 電子レンジって……沸騰するわ! リスクしかない! 今までの二百三十人は大丈夫だったのかな⁉︎ 半分近くは絶対異世界に降り立った瞬間に廃人になってるわ!

 俺の必死さが伝わったのかは知らないが、とんでもなくイラつくことに女神が心底呆れたように息を吐いた。

「わがままね。親の顔をみてみたいわね」

「うっさいわ!」

「まぁ良いわ。チートを与える応用でスキルとして埋め込むわ。本当に我儘ね!」

「それができるなら最初からそう言えよ! ほとんどない信用が崩れ去るところだったぞ!」

「な、なんですって! それはまずいわ。すぐに名誉挽回しないと!」

「ああ、そうしてくれ。具体的には他の奴らにもあげたことがないようなとびっきりのチートで手を打ってやる」

 ふふふ! アホで助かったぜ! これで俺の異世界チート生活は保証されたようなもの!  

 俺は決めたことがあるんだ。
 異世界では働かないって! いや、それは語弊があるな。チートで楽して生きようって!
 もう懲り懲りなんだ。意味なく働いて搾取され続ける日々は! 俺は! 異世界で! チートでのんびりダラダラと生きてやる!
 さあ女神! 俺にさいっこうのチートをくれ!

「ええ! 任せなさい! とびっきりの奴を用意するわ! ここから選んでちょうだい!」

 女神がタブレットを差し出す。流し見していくが………。
 この『どんなに食べても太らない』って確かに凄いけど全然ベクトルが違うし。そんなのばっかりだ。

「……参考までに他のやつはどんなの貰ったんだ?」

 ダメだ。素直に先人たちのを参考にしよう。そして先人を出し抜くのは諦めよう。この女神相手じゃ無理だ。

「ええと、直近の百年前の二百三十回大会の優勝者か覚えてないけど良いかしら?」

 やっぱりこの女神バカだ。やっぱりこいつただ単にパラメータを筋力に全振りしてるだけだろ。
 つまり落ちこぼれ。
 
 女神を変えて欲しい。いっそさっきのオッサンでもいい!

「サモン、天使なオッサン!」

「な! あんな禿げ散らかしたオッサンにこの麗しい私の何が劣ると⁉︎ 訂正しなさい! さも無いと殴るわよ!」

「黙れ! このままじゃ碌なチートがない! なんだこの『異常なほどペンキ塗りが上手くなる』って! 俺が望む凄さじゃない!」

「良いこと⁉︎ 貴方みたい軟弱な男にあの世界で冒険者なんてできるわけないでしょうが!良いから大人しく手に職つけなさい!」

「余計なお世話だわ! そもそもそんな危ないことするわけ無いだろ! いいか! 俺は異世界でテートを使って自堕落スローライフを送るんだ! だからとっとと相応しいチートをよこせ!」

「……びっくりするほど欲望に素直ね」

「うるさい。ほら、もう覚えてるのでいいから教えろよ」

「……わかったわよ」

 さて、一体どんなチートを貰ったんだか。
 血生臭いのは嫌だが、誰もがそんなのを望んでるわけじゃない。もしそうでもどれくらいのを貰えるのかっていう指針になる。
 この女神が出すのはダメだ。

「前回の優勝者は逆バンジーをした際に強烈な上昇気流に乗せられてゴムが切れたせいで、そのまま宇宙空間に飛んで行ったのが死因だったわ」

「そんな事ある⁉︎」

「そしてその男は賢かったわ。マイナークイズアプリで日本一を取るくらいは」

「それ絶対覚えただけだぞ」

「そんな彼が選んだチートは望んだ人になれる、力も頭脳もそのまま、記憶だけが本人の物、というものだったわ」

「……なんか微妙だな」

 元の世界のやつを選んでもどんなにすごいやつでもやっていけるとは思えない。例えオリンピック選手を選んでも一つに特化してる上に、魔法があるなら簡単に覆せれる物だろうな。
 
 ハズレだな。

 と、思ったのだが、女神はドヤ顔でビシッと指を突き付けてきた。

「そんなことはないわ! だって彼が選んだのは、ゲームの中の人だったからよ!」

「っ⁉︎」

 な、なるほど! その手があったか! 異世界だから例え有名キャラになっても知ってる奴はいない! 転移者も直近が百年って言ってたし、前回も似たようなものだろう!
 日本一は伊達じゃない!

「そ、それで一体どんなっ⁉︎」

「ふふ、それはね––––」

 例えばRPG物ならレベルMAXで指定すれば大抵、凄まじいものになる。
 
 これは俺のチートも決まったか⁉︎ スローライフに適したキャラ、何かいたか? 捻り出せ!

「髭を生やしたオーバオールのおっさんよ」

「おい、それってまさか……よりにもよってマ○オかよ!」

「いえ、ワルイ○ジよ」

「何の拘りだよ⁉︎」

 ヒップドロップと壁キックくらいしかできないぞ⁉︎
 いやむしろワル○ージを選んだ弊害で、車にしか乗れなかったかも知れないぞ⁉︎ しかも二百人以上転移したなら誰かが車くらい伝えただろ!
 所詮は碌なシステムが無いマイナークイズアプリでしか威張れない男だ。

「そいつ、早死しただろうな」

「いえ、今も生きてるわよ」

「は⁉︎ 」

「ほら、マ○オって年取らないじゃない」

「……それ採用されるんかい」

 なら悪くない、か? ……って騙されるな! 一生おっさんは嫌だ! 
 俺はもっとましなキャラに……。

「さて、参考になったかしら?」

「ああ、俺もそれにしようかな」

「あ、ダメよ。同じやつは」

「え?」

「そういう設定だから」

「……」

 いきなり頓挫とんざした。
 あと明け透けも無いことを言うな。

 でも、そう言うことならしょうがないか。駄々をこねても仕方がない。切り替えていこう。

「ならせめてマシなやつを持って来てくれよ」

「し、仕方がないわね」

 何やら女神が頬を赤らめて期待するような顔で別のタブレットを俺に差出した。
 ……俺フラグ建てたっけ。
 なまじ顔はいいから、俺もドキッとしそうになる。
 けど、こいつはゴメンだ。例え女神を連れて行くなんてのがあっても嫌だ。
 恋人なんてもっての外だ!
 
 ラノベで怒りに身をまかせた奴がこいつと似た様な女神を連れて行く展開があった。あれはあれで楽しそうだが、俺は嫌だ。何度も言うが、自堕落生活––––は⁉︎

「あ、あのね。それが今回のおすすめよ。選んだら女神の加護が……」

「アホ! 女神そのものじゃねーか!」

 何と驚くことにタブレットにはデカデカと『麗しき特別製女神』の文字が。
 地雷だ。まさか本当に提案してくるとは。
 
 死んでも嫌だ。いや、死んでるけど。
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