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卒業後の裏切り

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『すみません、警察の者です』

 インターホンから聞こえてくるのは人々を一気に不安に貶める職につく人の声。南 佳子の家に警察官二人が訪ねてきたのは佳子かこの高校の卒業式が終わった二日後だった。

「はい、何でしょう?」

 佳恵よしえは恐る恐る玄関の戸を開けた。佳恵は犯罪などに手を染めた覚えは無いが、何かやったのではないかと過去を振り返った。だが、当然ながら思い当たる節は一つもない。

「南 佳子さんはいらっしゃいますか」

「えっ、か、佳子ですか」

 佳恵は予想外の名前が警察から出たことに頭が真っ白になり、めまいを起こした。後退りしながら倒れそうになる佳恵を一人の警察官は支えながら、哀れみの眼差しを注ぎ、言葉をかけた。

「そうなりますよね、娘さんに警察が訪ねて来たら…」

「失礼します」

 もう一人の警察官は佳恵を横目に遠慮すらなく家に侵入していく。それを制止する力は佳恵には少しも残っていなかった。


〈華のJKも終わりだね〉

〈そうだね、佳子はこれからJDになるけど、私はただの会社員だよ〉

〈会社員、頑張って! 私はこの小さな町から出るけどね〉

〈うるさいよ、JD!〉

 ガチャ、急に自分の部屋の扉が開き、警察の制服を着た人が入ってきたことに佳子は驚き、電話を反射的に切った。佳子の友達がかけ直した着信音が部屋に鳴り響いているが、佳子はじっと警察官を見ていた。その時、彼女は困惑と絶望だけが頭の中を占めていた。その後、佳子は素直に警察に連れて行かれ、泣き崩れる母に一礼して警察車両に乗り込んだ。警察車両内での佳子は泣きもせず警官にわけを聞く素振りも見せず、ただこの先の暗い将来に打ちひしがれていた。

 それもそのはずだ、彼女の人生がどん底を味わったことなど無いに等しかった。

 常に彼女の周りには男女関わらず多くの人がいた。同じ学校内だけでなく、他校や同じ町内の人も自然と人々の目線は彼女に注ぎ、口から滑るように挨拶の一言が出るような親しみやすい人だった。それに加え、彼女が持ち合わせているのは男女問わず見た人の足の爪先が彼女の方に自然と向いてしまうような美貌だ。その美貌は修学旅行で行った東京で何十社からもスカウトされるほどのものだ。

 そんな彼女は神に選ばれし者と表現するのに十全十美な人である。それが今では警察の厄介になっている。


取調室、

 しんみりとした閉鎖空間に連れてこられた少女は相変わらず死んだ魚の目で一点を見つめている。そんな佳子の前に座ったのはいかにもキャリアウーマンと言える奇麗にスーツを身に纏った女性警察官だった。

「今、何をしてここにいるのかわかっていますね」

「はい、、」

「それじゃあ、今までやってきたことを自分から言ってみて」

「はい、、」


 私の高校までの人生は恵まれていて本当に幸せな人生でした。そして私は親や友人によって色々なリスクから逃されていました。そんな人生を歩んでいるとスリルを味わいたくなってくるんです。この気持ちは皆さんには理解できないと思います、普通の人生を歩んでいる皆さんには、、こんな私の気持ちなんて、、。そこでその気持ちを満たすために最初に犯したのは友達のもう少しで無くなりそうな消しゴムを盗むことです。

 なぜ、消しゴムなんですか。

 なぜって言われても消しゴムってなくなったら結構困りません?普通、複数個持つものでもないですよね。あと、なくなってもあまりそこまで騒ぎにならないじゃないですか。無くなりそうな消しゴムって結構無くなりません?

 それでも、かなりの数の消しゴムが一定期間に無くなると流石に騒ぎになったりしませんか。

 なると思いますよ。だから私は5人の友達からそれぞれ1個の消しゴムを盗んで辞めました。でも、消しゴム如きじゃ、満たされませんでした、ハラハラやドキドキがあまりなかったので。でも、盗んだ消しゴムは小一時間位経ったら落ちていたと装って本人に返しました。その次に、私は初めて万引きをスーパーでしました。そのスーパーは広いし、ゲート式の万引き防止システムみたいなのが無いスーパーだったので万引きにはいい場所だと思ったのでそこを選びました。

 初めての万引きはどうでしたか。

 友達のものを盗むよりもハラハラとドキドキがかなりあったので初めのうちは良かったです。そこでは菓子パンやお菓子をよく盗みました。そこで万引きはバレないと薄々感じ始めたときにはもうそこのスーパーで万引きするのは辞めました。それに、そのスーパーで万引きを始めて一ヶ月が経った頃に店側も万引きが行われていることに気付き始め、ゲート式の万引き防止システムが設置されたのも辞める原因になりました。

 そのスーパー以外で万引きはやったことはありますか。

 隣の市内のコンビニで2、3回やったことがあります。そのコンビニは行くのが面倒臭くなってすぐに辞めましたけど。でも、コンビニはスーパーと違って死角があまり無いし、ゲート式の万引き防止システムがあったので、盗んでからトイレでバーコードを剥がしてから盗んでいました。それはスーパー以上に私の気持ちを満たしてくれました。

 その後も、佳子は自分の犯した犯罪を自慢するようにベラベラと話した。取り調べを始める前の様子とは真逆だった。これが本当の彼女の姿である。

「それじゃあ、そろそろ時間だから今日はこれで取り調べ終わりです、明日もお願いします」
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