77 / 78
プリジュドルート
続々々々々・メムロの章:続・報告編
しおりを挟む
「他にもうなにか変わった事はなかったか?」
ロキさんがオオカさんを問い詰めている感じがある。
「さすがに今回はあらへん、打ち止めや」
「本当か?」
「あらへんあらへん」
どうやらオオカさんは嘘はつかないが大事な内容を隠す事が多いようだ。
続々々々々・メムロの章:続・報告編
「ふむ・・・ではセイド、ワニナの報告を頼む」
「だらだらと話しても仕方がないので、結論からいうとワニナまでは行ってない」
「どういう事だ?」
「いや、正確に言えば行けなかった」
「セイドはんとドンちゃんならリクドとかでも追い払うのんは、でけるんちゃうのん」
さすがのサーカさんもオオカさん相手と違いこの2人の実力はちゃんと認めているので素直な意見を出した。
「それが・・・」
セイドさんは何か言いづらそうな雰囲気だ。
『それについてはオレが話そう』
ドンリンさんが話し出したが、僕には何を言っているのか理解できない。
「で、ドンリンいったい何があったのだ?」
ロキさんはわかるらしい、さすがギルドマスターだ。
『ヨサトまでは問題なくいけた。もちろん敵との遭遇はあったが、セイドも腕の立つ男だ』
「そらそうや、セイドはんはうちのギルマスやからなぁ」
「サーカ、口を挟むな」
珍しくセイドさんがサーカさんが止めに入った。
もっとも止めに入らなければオオカさんに叩かれていただろう。
「それで、ヨサトから先はどうだった?」
ロキさんが続きを話すよう促した。
『・・・そう、異変があったのはヨサトを出てからだ』
何を言っているのかは僕にはわからないが、ドンリンさんの表情が強張った。
『何故か森の方からこちらに向けて殺気が迫ってきた』
「殺気?セイドとドンちゃんが揃ってたら・・・今はブクドがおるんかな、でもなんとかなるんちゃうんかいな」
オオカさんが返した。
「ブクドたちが相手ならな・・・」
セイドさんが振り絞るように話し出した。
「ほんなら、ブクドとちゃうかったら誰やっちゅーねん」
オオカさんが急かすように合いの手を入れる。
「オオカちょっと落ち着け。セイド、何があったかわからないが話しづらいならドンリンに任せてもいいんだぞ」
ロキさんがセイドさんを気遣った。
「すまん、大丈夫だ。殺気を感じていたが相手にせずにワニナに向っていく事にしたのだが、その殺気がどんどんこっちに近づいてくるので、ドンリンと話し合って迎え撃つ事にした」
『あそこまでわかりやすく殺気を出されるとさすがに無視はできないからな』
「ワニナにいけんかったんは、その相手が問題っちゅーことやな」
「あぁ、オオカは会ってると思うが・・・」
「おー、おー、あの戦闘バカか」
そういいながらもなんだかオオカさんは嬉しそうな顔をしている。
まさか!
「そいつはゆっくりとこっちに向って歩いて来るのを感じる事はできたが、森の中からなのでしばらくは姿を見る事はできなかった」
『殺気は出していたが、たぶんこっちの反応をうかがう感じだったな』
「確かに本気で戦うつもりは無かったのかもしれないな」
「それで、姿は見れたのか?」
「あぁ・・・」
そういうと、またセイドさんが口ごもった。
『セイド、ここから先はオレがいう』
「すまない」
ドンリンさんがセイドさんの肩を優しく叩いた。
『森から出てきた相手を見た時にセイドが震えだしたのだ』
「セイドが?なぜだ?」
『恐怖とかそういう感情ではないようだが、セイドの目が若干潤んでいる感じにも見えた』
「ドンリン、余計な事をいうな」
ドンリンさんが何を言ったのかはわからないが、セイドさんはそう言うと完全に顔を下に向けてしまった。
『すまない、とにかくその相手の姿を見るなりセイドは「ガイア」という名を言った』
「それで?」
『そいつは「誰の事を言っている?」と言うなり、こっちに向って攻撃を仕掛けてきた』
「やっぱり好戦的なやっちゃなー、森に引き篭もってたんとちゃうんかいな」
セイドさんがガイアさんと見間違えるという事はやっぱりプリファイか。
でもオオカさんの言う通り、森から出ないと言ってたはずなのに何故だろう。
「ドンリン、戦う事になったのはわかるが、その割にはたいした怪我はないようだが?」
ロキさんが質問した。
たしかに、プリファイと戦う事になったら無事ではすまないはずだが、セイドさんもドンリンさんもかすり傷はあるものの、怪我というほどの物はない。
『それが、オレにもよくわからんのだが・・・』
「わからない?どいうことだ?」
ロキさんがドンリンさんを問い詰める。
「プリファイっちゅーたかな、アイツ。戦えたんか、えぇなぁ」
オオカさんらしいといえばらしい発言だが、なんだか話がかみ合っていない気がする。
「あのー、今の話だとプリファイがセイドさんに向って攻撃をしかけてきたみたいですけど、セイドさんはその時どうしたのですか?」
「ハッハッハ、メムロちゃんも待ちきれんみたいやでー」
そういいながらオオカさんに頭をポンポンとされた。
何かの覚悟を決めたのかセイドさんが重い口を開いた。
「油断していたわけではないが、思った以上にガイア、いやプリファイの動きが早く、あっという間に間合いを詰められた」
「おー、おー、やるやんアイツ」
オオカさんだけが嬉しそうな反応を取っている。
「守る事も避ける事もできないので、もうダメかと思ったがドンリンが守ってくれたのだ」
「ドンちゃん、やるやん」
オオカさんがドンリンさんに向けて手を叩いている。
「でも、ドンちゃんなんで無事なん?」
確かにそうだ。
守ったということはプリファイの攻撃をセイドさんの代わりに喰らったはずだが?
『オオカ、無事と言ったが無事ではない』
「なんやそれ、新しいトンチか?」
ドンリンさんが何を言っているのかはわからないが、オオカさんの納得のいく回答ではないようだ。
「ドンリンはオレをかばってプリファイの攻撃を喰らった・・・がドンリンの腕の方が堅かったのでプリファイの剣が折れた」
「アイツの剣を折るって、ドンちゃんやるやん・・・ってやっぱり無事なんやん」
「剣が折れた後、また森に引き返したので本気ではなかったと思っていた」
「でも、ドンちゃんは無事とちゃうってゆーてるで」
「それに関してはオレにも良くわからない」
『アイツの剣を腕でなぎ払ったはずだったし、実際に剣も折った』
「そこまではセイドと同じやな、ほんでほんで?」
オオカさんが前のめりになって聞いている。
『そこからオレの腕の感覚が無いのだ』
「はぁ?どういうこっちゃ」
ルーナさんと僕は何を言っているのかわからなかったが、ドンリンさんの言う事がわかっているみんなも理解できていないようだ。
「セイド、もう一度聞くが、プリファイがオマエを攻撃してきたのをドンリンが腕でなぎ払ってプリファイの剣を折った、間違いないか?」
ロキさんがそう尋ねるとセイドさんは頷いた。
「それなのにドンリンは腕の感覚が無いと言っている、どういうことだ?」
「ドンちゃんはサーカみたいにしょーもない事言うわけないんやろうけど、ドンちゃんの腕あるやん、冗談きっついでー」
『オオカ、オレはプリファイの剣をなぎ払って折った。しかし、折ったはずの刃がオレの腕を斬ったのだ』
ドンリンさんが必死の形相で何かを訴えている。
その内容をロキさんがルーナさんと僕に伝えてくれた。
・・・
沈黙に耐え切れずに聞いてみた。
「ドンリンさんが斬られた方の腕は動くのですか?」
伝言ゲームのように僕の質問を伝えてくれて返事が返ってきたが、どうやら動かないらしい。
「ロキさんの身体を治したように、ボルカシなら治す方法を知っているのでは?」
僕が思わずそういうと、みんながこっちをみてなんだかモゴモゴしている。
しまった、ボルカシはもう居ないんだった。
「メムロちゃん、ボルカシはなー、おらんねん」
オオカさんが僕にそう言ってきた。
「オレがプリジュドを見たっちゅーのはさっきゆーたやろ」
「はい、それと居ない事とどういう繋がりが?」
もちろん居ない事は知っているが、そう言わざるを得なかった。
パサッ。
オオカさんは何かをギルドの机の上に置いた。
それを見たロキさんが尋ねた。
「オオカ、これは一体どこで?」
置いたもの・・・ボルカシが着ていた服だ。
「プリジュドがオレに向って投げてきた、なんかゆーてたけど何ゆーてたんかはさっぱりわからんけど」
「これが答えという事か・・・」
ロキさんが肩を落とした。
一番状況を把握しているのは僕だ。
それにしても服をちゃんと持っていたとは、変なところで律儀なヤツだ。
ボルカシとプリジュドは合体というか、プリジュドに吸収された。
あれ?
ということは・・・
「あのー、もしかしてなんですけど、治す方法をプリジュドならわかるのではないでしょうか?」
・・・
僕の突拍子も無い発言にみんなが絶句してしまった。
「メムロちゃん・・・アカンでアカン。発想はおもろいけど、プリジュドが教えてくれると思うか?」
もっともな回答だが可能性は0ではないはずだ。
ロキさんが少し考えたのち、1つの可能性を示した。
「ふむ・・・ボルカシの知識もプリジュドが得ているのであれば可能性は否定できないな」
「え、ロキはん、メムロちゃんの冗談を真に受けてるんか?」
サーカさんはあまり賛同できないようだ。
知っているかどうかもわからないし、教えてくれるかどうかもわからない。
「少しでも可能性があるのなら、試してみる価値はあると思います!」
根拠は無いが可能性は0でもない。
「そうだな、メムロくんの言う通り、可能性が少しでもあるのなら試す必要はあるな」
ロキさんは理解してもらえたみたいだ。
「ふむ、ではプリジュドとの交渉役にはメムロくんに任せた」
「え、僕がですか?」
「ロキはん、なんでメムロちゃんやねん、危ないやんけ」
サーカさんが僕の身を案じてか疑問を投げかけた。
「サーカ、オマエはプリジュドと会話できるのか?」
「でけへんけど、メムロちゃんならでけるのはなんでや」
「ボルカシと会話できるからだ」
「ロキはんもでけるようになってたやん」
ボルカシがロキさんの世話をしている間に話せるようになっていたのか。
なるほど、だから結界を張る準備もできたと。
「サーカ、ロキはここのギルドマスターだ、安易に動けない事をわかってやれ」
セイドさんがサーカさんを抑えた。
「とはいえ、メムロくんだけで行かせるわけにはいかないので、オオカ一緒に行ってやってくれ」
「えぇよ。プリジュドが向ってたのも見てたしな」
「よろしくお願いします」
オオカさんと一緒だと心強い。
「でも交渉決裂した場合はどないすんねん」
「別の方法も探るようにするが、まずはプリジュドのところへ急いでくれ」
僕とオオカさんは頷いてギルドを出た。
「オオカさん、プリジュドはどこに向ったのでしょうか?」
「洞窟の方に行っとったなぁ、あっこが住処かどうかはしらんけど」
オオカさんの予想は間違いないだろう。
僕とオオカさんはプリジュドのいる洞窟に向った。
続々々々々・メムロの章つづく
ロキさんがオオカさんを問い詰めている感じがある。
「さすがに今回はあらへん、打ち止めや」
「本当か?」
「あらへんあらへん」
どうやらオオカさんは嘘はつかないが大事な内容を隠す事が多いようだ。
続々々々々・メムロの章:続・報告編
「ふむ・・・ではセイド、ワニナの報告を頼む」
「だらだらと話しても仕方がないので、結論からいうとワニナまでは行ってない」
「どういう事だ?」
「いや、正確に言えば行けなかった」
「セイドはんとドンちゃんならリクドとかでも追い払うのんは、でけるんちゃうのん」
さすがのサーカさんもオオカさん相手と違いこの2人の実力はちゃんと認めているので素直な意見を出した。
「それが・・・」
セイドさんは何か言いづらそうな雰囲気だ。
『それについてはオレが話そう』
ドンリンさんが話し出したが、僕には何を言っているのか理解できない。
「で、ドンリンいったい何があったのだ?」
ロキさんはわかるらしい、さすがギルドマスターだ。
『ヨサトまでは問題なくいけた。もちろん敵との遭遇はあったが、セイドも腕の立つ男だ』
「そらそうや、セイドはんはうちのギルマスやからなぁ」
「サーカ、口を挟むな」
珍しくセイドさんがサーカさんが止めに入った。
もっとも止めに入らなければオオカさんに叩かれていただろう。
「それで、ヨサトから先はどうだった?」
ロキさんが続きを話すよう促した。
『・・・そう、異変があったのはヨサトを出てからだ』
何を言っているのかは僕にはわからないが、ドンリンさんの表情が強張った。
『何故か森の方からこちらに向けて殺気が迫ってきた』
「殺気?セイドとドンちゃんが揃ってたら・・・今はブクドがおるんかな、でもなんとかなるんちゃうんかいな」
オオカさんが返した。
「ブクドたちが相手ならな・・・」
セイドさんが振り絞るように話し出した。
「ほんなら、ブクドとちゃうかったら誰やっちゅーねん」
オオカさんが急かすように合いの手を入れる。
「オオカちょっと落ち着け。セイド、何があったかわからないが話しづらいならドンリンに任せてもいいんだぞ」
ロキさんがセイドさんを気遣った。
「すまん、大丈夫だ。殺気を感じていたが相手にせずにワニナに向っていく事にしたのだが、その殺気がどんどんこっちに近づいてくるので、ドンリンと話し合って迎え撃つ事にした」
『あそこまでわかりやすく殺気を出されるとさすがに無視はできないからな』
「ワニナにいけんかったんは、その相手が問題っちゅーことやな」
「あぁ、オオカは会ってると思うが・・・」
「おー、おー、あの戦闘バカか」
そういいながらもなんだかオオカさんは嬉しそうな顔をしている。
まさか!
「そいつはゆっくりとこっちに向って歩いて来るのを感じる事はできたが、森の中からなのでしばらくは姿を見る事はできなかった」
『殺気は出していたが、たぶんこっちの反応をうかがう感じだったな』
「確かに本気で戦うつもりは無かったのかもしれないな」
「それで、姿は見れたのか?」
「あぁ・・・」
そういうと、またセイドさんが口ごもった。
『セイド、ここから先はオレがいう』
「すまない」
ドンリンさんがセイドさんの肩を優しく叩いた。
『森から出てきた相手を見た時にセイドが震えだしたのだ』
「セイドが?なぜだ?」
『恐怖とかそういう感情ではないようだが、セイドの目が若干潤んでいる感じにも見えた』
「ドンリン、余計な事をいうな」
ドンリンさんが何を言ったのかはわからないが、セイドさんはそう言うと完全に顔を下に向けてしまった。
『すまない、とにかくその相手の姿を見るなりセイドは「ガイア」という名を言った』
「それで?」
『そいつは「誰の事を言っている?」と言うなり、こっちに向って攻撃を仕掛けてきた』
「やっぱり好戦的なやっちゃなー、森に引き篭もってたんとちゃうんかいな」
セイドさんがガイアさんと見間違えるという事はやっぱりプリファイか。
でもオオカさんの言う通り、森から出ないと言ってたはずなのに何故だろう。
「ドンリン、戦う事になったのはわかるが、その割にはたいした怪我はないようだが?」
ロキさんが質問した。
たしかに、プリファイと戦う事になったら無事ではすまないはずだが、セイドさんもドンリンさんもかすり傷はあるものの、怪我というほどの物はない。
『それが、オレにもよくわからんのだが・・・』
「わからない?どいうことだ?」
ロキさんがドンリンさんを問い詰める。
「プリファイっちゅーたかな、アイツ。戦えたんか、えぇなぁ」
オオカさんらしいといえばらしい発言だが、なんだか話がかみ合っていない気がする。
「あのー、今の話だとプリファイがセイドさんに向って攻撃をしかけてきたみたいですけど、セイドさんはその時どうしたのですか?」
「ハッハッハ、メムロちゃんも待ちきれんみたいやでー」
そういいながらオオカさんに頭をポンポンとされた。
何かの覚悟を決めたのかセイドさんが重い口を開いた。
「油断していたわけではないが、思った以上にガイア、いやプリファイの動きが早く、あっという間に間合いを詰められた」
「おー、おー、やるやんアイツ」
オオカさんだけが嬉しそうな反応を取っている。
「守る事も避ける事もできないので、もうダメかと思ったがドンリンが守ってくれたのだ」
「ドンちゃん、やるやん」
オオカさんがドンリンさんに向けて手を叩いている。
「でも、ドンちゃんなんで無事なん?」
確かにそうだ。
守ったということはプリファイの攻撃をセイドさんの代わりに喰らったはずだが?
『オオカ、無事と言ったが無事ではない』
「なんやそれ、新しいトンチか?」
ドンリンさんが何を言っているのかはわからないが、オオカさんの納得のいく回答ではないようだ。
「ドンリンはオレをかばってプリファイの攻撃を喰らった・・・がドンリンの腕の方が堅かったのでプリファイの剣が折れた」
「アイツの剣を折るって、ドンちゃんやるやん・・・ってやっぱり無事なんやん」
「剣が折れた後、また森に引き返したので本気ではなかったと思っていた」
「でも、ドンちゃんは無事とちゃうってゆーてるで」
「それに関してはオレにも良くわからない」
『アイツの剣を腕でなぎ払ったはずだったし、実際に剣も折った』
「そこまではセイドと同じやな、ほんでほんで?」
オオカさんが前のめりになって聞いている。
『そこからオレの腕の感覚が無いのだ』
「はぁ?どういうこっちゃ」
ルーナさんと僕は何を言っているのかわからなかったが、ドンリンさんの言う事がわかっているみんなも理解できていないようだ。
「セイド、もう一度聞くが、プリファイがオマエを攻撃してきたのをドンリンが腕でなぎ払ってプリファイの剣を折った、間違いないか?」
ロキさんがそう尋ねるとセイドさんは頷いた。
「それなのにドンリンは腕の感覚が無いと言っている、どういうことだ?」
「ドンちゃんはサーカみたいにしょーもない事言うわけないんやろうけど、ドンちゃんの腕あるやん、冗談きっついでー」
『オオカ、オレはプリファイの剣をなぎ払って折った。しかし、折ったはずの刃がオレの腕を斬ったのだ』
ドンリンさんが必死の形相で何かを訴えている。
その内容をロキさんがルーナさんと僕に伝えてくれた。
・・・
沈黙に耐え切れずに聞いてみた。
「ドンリンさんが斬られた方の腕は動くのですか?」
伝言ゲームのように僕の質問を伝えてくれて返事が返ってきたが、どうやら動かないらしい。
「ロキさんの身体を治したように、ボルカシなら治す方法を知っているのでは?」
僕が思わずそういうと、みんながこっちをみてなんだかモゴモゴしている。
しまった、ボルカシはもう居ないんだった。
「メムロちゃん、ボルカシはなー、おらんねん」
オオカさんが僕にそう言ってきた。
「オレがプリジュドを見たっちゅーのはさっきゆーたやろ」
「はい、それと居ない事とどういう繋がりが?」
もちろん居ない事は知っているが、そう言わざるを得なかった。
パサッ。
オオカさんは何かをギルドの机の上に置いた。
それを見たロキさんが尋ねた。
「オオカ、これは一体どこで?」
置いたもの・・・ボルカシが着ていた服だ。
「プリジュドがオレに向って投げてきた、なんかゆーてたけど何ゆーてたんかはさっぱりわからんけど」
「これが答えという事か・・・」
ロキさんが肩を落とした。
一番状況を把握しているのは僕だ。
それにしても服をちゃんと持っていたとは、変なところで律儀なヤツだ。
ボルカシとプリジュドは合体というか、プリジュドに吸収された。
あれ?
ということは・・・
「あのー、もしかしてなんですけど、治す方法をプリジュドならわかるのではないでしょうか?」
・・・
僕の突拍子も無い発言にみんなが絶句してしまった。
「メムロちゃん・・・アカンでアカン。発想はおもろいけど、プリジュドが教えてくれると思うか?」
もっともな回答だが可能性は0ではないはずだ。
ロキさんが少し考えたのち、1つの可能性を示した。
「ふむ・・・ボルカシの知識もプリジュドが得ているのであれば可能性は否定できないな」
「え、ロキはん、メムロちゃんの冗談を真に受けてるんか?」
サーカさんはあまり賛同できないようだ。
知っているかどうかもわからないし、教えてくれるかどうかもわからない。
「少しでも可能性があるのなら、試してみる価値はあると思います!」
根拠は無いが可能性は0でもない。
「そうだな、メムロくんの言う通り、可能性が少しでもあるのなら試す必要はあるな」
ロキさんは理解してもらえたみたいだ。
「ふむ、ではプリジュドとの交渉役にはメムロくんに任せた」
「え、僕がですか?」
「ロキはん、なんでメムロちゃんやねん、危ないやんけ」
サーカさんが僕の身を案じてか疑問を投げかけた。
「サーカ、オマエはプリジュドと会話できるのか?」
「でけへんけど、メムロちゃんならでけるのはなんでや」
「ボルカシと会話できるからだ」
「ロキはんもでけるようになってたやん」
ボルカシがロキさんの世話をしている間に話せるようになっていたのか。
なるほど、だから結界を張る準備もできたと。
「サーカ、ロキはここのギルドマスターだ、安易に動けない事をわかってやれ」
セイドさんがサーカさんを抑えた。
「とはいえ、メムロくんだけで行かせるわけにはいかないので、オオカ一緒に行ってやってくれ」
「えぇよ。プリジュドが向ってたのも見てたしな」
「よろしくお願いします」
オオカさんと一緒だと心強い。
「でも交渉決裂した場合はどないすんねん」
「別の方法も探るようにするが、まずはプリジュドのところへ急いでくれ」
僕とオオカさんは頷いてギルドを出た。
「オオカさん、プリジュドはどこに向ったのでしょうか?」
「洞窟の方に行っとったなぁ、あっこが住処かどうかはしらんけど」
オオカさんの予想は間違いないだろう。
僕とオオカさんはプリジュドのいる洞窟に向った。
続々々々々・メムロの章つづく
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした
新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。
「もうオマエはいらん」
勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。
ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。
転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。
勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
ギャルい女神と超絶チート同盟〜女神に贔屓されまくった結果、主人公クラスなチート持ち達の同盟リーダーとなってしまったんだが〜
平明神
ファンタジー
ユーゴ・タカトー。
それは、女神の「推し」になった男。
見た目ギャルな女神ユーラウリアの色仕掛けに負け、何度も異世界を救ってきた彼に新たに下った女神のお願いは、転生や転移した者達を探すこと。
彼が出会っていく者たちは、アニメやラノベの主人公を張れるほど強くて魅力的。だけど、みんなチート的な能力や武器を持つ濃いキャラで、なかなか一筋縄ではいかない者ばかり。
彼らと仲間になって同盟を組んだユーゴは、やがて彼らと共に様々な異世界を巻き込む大きな事件に関わっていく。
その過程で、彼はリーダーシップを発揮し、新たな力を開花させていくのだった!
女神から貰ったバラエティー豊かなチート能力とチートアイテムを駆使するユーゴは、どこへ行ってもみんなの度肝を抜きまくる!
さらに、彼にはもともと特殊な能力があるようで……?
英雄、聖女、魔王、人魚、侍、巫女、お嬢様、変身ヒーロー、巨大ロボット、歌姫、メイド、追放、ざまあ───
なんでもありの異世界アベンジャーズ!
女神の使徒と異世界チートな英雄たちとの絆が紡ぐ、運命の物語、ここに開幕!
※不定期更新。最低週1回は投稿出来るように頑張ります。
※感想やお気に入り登録をして頂けますと、作者のモチベーションがあがり、エタることなくもっと面白い話が作れます。
軽トラの荷台にダンジョンができました★車ごと【非破壊オブジェクト化】して移動要塞になったので快適探索者生活を始めたいと思います
こげ丸
ファンタジー
===運べるプライベートダンジョンで自由気ままな快適最強探索者生活!===
ダンジョンが出来て三〇年。平凡なエンジニアとして過ごしていた主人公だが、ある日突然軽トラの荷台にダンジョンゲートが発生したことをきっかけに、遅咲きながら探索者デビューすることを決意する。
でも別に最強なんて目指さない。
それなりに強くなって、それなりに稼げるようになれれば十分と思っていたのだが……。
フィールドボス化した愛犬(パグ)に非破壊オブジェクト化して移動要塞と化した軽トラ。ユニークスキル「ダンジョンアドミニストレーター」を得てダンジョンの管理者となった主人公が「それなり」ですむわけがなかった。
これは、プライベートダンジョンを利用した快適生活を送りつつ、最強探索者へと駆け上がっていく一人と一匹……とその他大勢の配下たちの物語。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる