81 / 84
まどろみと企み
おだやかに
しおりを挟む
シャワーを借り、昨日の激動で飽和していた頭がスッキリした。
「…うーわ…やば…」
鏡に映った自分の顔が酷過ぎて引く。
泣き過ぎた。
スッキリした脳味噌とは対照的に目が腫れぼったい。
こんなに目が腫れるまで泣いたのは初めてかもしれない。
夕方には斗羽が迎えに来るため、心配させないよう目の腫れを治めたい。
とにかく、まずは髪を乾かそう。
脱衣場で鏡を見ながら急いでドライヤーで髪を乾かしていると、徐に朝日さんがやってきた。
「俺にやらせて?」
そう言われドライヤーを渡すと、ダイニングに移動し、ソファーに座らされ、髪にブラシを通しながら丁寧に乾かしてくれる。
「あー…なんか、凄いサラサラ…」
「熱くないか?」
「うん。だいじょうぶ。」
ブラシ通しながら乾かすなんて手間かけてやった事無かったけど、これだけで全然違う。
サラサラになってる気がする。
髪に広がる少し熱めの風が気持ちが良い。
仕上げの地肌を乾かす時は冷風を使ってくれて、それはそれで冷たさが心地よかった。
「俺のシャンプーだと陽太の髪質に合わないな…俺とした事が…。まだヘアオイルも届いて無い。俺とした事が…。」
朝日さんが何かブツブツ言ってるけどドライヤーの音で良く聞こえなかった。
保冷剤とタオルを借りた。
包んで両目に当てる。
何も見えないが、朝日さんの楽しそうな声は聞こえる。
とてもご機嫌な声。
「やっと出来る。いやー、よく我慢したよ。俺は。」
ソファーに座ってオットマンに置いている俺の足を、念入りに何かを塗りながらマッサージしてる。
サラサラとヌルヌルの中間くらいの感触だ。
指先から太腿の付け根まで、少しだけ強い力で揉みほぐしてくれる。
その表情は見えないが、声はニッコニコだ。
「肌に良いマッサージオイルなんだけど、香り、嫌じゃないか?」
「良い匂い。柑橘系の香り好きです。」
あまり強い花の香りは苦手なのだけれど、これは柑橘系の好きな匂いだ。
鼻腔の奥から身体の隅々まで広がるよう。
癒される。
「グレープフルーツと杏仁の香りらしい。」
「あんにん…」
なんか、よく分からないけど、なんだか。
「高そう…」
「どうだったかな。忘れた。」
「えぇ…?」
高いんだな。多分。
まあ、いいか、何故だか凄くご機嫌だし、ありがたくマッサージされておこう。
それにしても気持ちが良い。
目は冷やされて揉みほぐされた足は暖かい。
良い匂いがして、おだやかで。
何だろう。
これ。
「幸せ過ぎる…」
「それは良かった。俺も幸せ。」
「えぇ…?」
何で?マッサージしてる事が?
「陽太を甘やかす事が俺の幸せなんだよ。」
「えぇ…?」
「さっきから、えぇ?しか言ってないな。」
ちょっと笑われた。
だって良く分からない事を言っているから。
困惑する。
「いいんだよ。俺の好きにさせてくれ。」
「…はぁい。」
朝日さんが良いなら、いいや。
大人しくしておこう。
穏やかな静寂が流れる。
保冷剤を当て目を閉じていると、何だか泣けてきた。
こんなに心穏やかに過ごせる日が来るなんて。
当てたタオルに、じんわり涙が沁みた。
それは、とても暖かく、沁みた。
「…うーわ…やば…」
鏡に映った自分の顔が酷過ぎて引く。
泣き過ぎた。
スッキリした脳味噌とは対照的に目が腫れぼったい。
こんなに目が腫れるまで泣いたのは初めてかもしれない。
夕方には斗羽が迎えに来るため、心配させないよう目の腫れを治めたい。
とにかく、まずは髪を乾かそう。
脱衣場で鏡を見ながら急いでドライヤーで髪を乾かしていると、徐に朝日さんがやってきた。
「俺にやらせて?」
そう言われドライヤーを渡すと、ダイニングに移動し、ソファーに座らされ、髪にブラシを通しながら丁寧に乾かしてくれる。
「あー…なんか、凄いサラサラ…」
「熱くないか?」
「うん。だいじょうぶ。」
ブラシ通しながら乾かすなんて手間かけてやった事無かったけど、これだけで全然違う。
サラサラになってる気がする。
髪に広がる少し熱めの風が気持ちが良い。
仕上げの地肌を乾かす時は冷風を使ってくれて、それはそれで冷たさが心地よかった。
「俺のシャンプーだと陽太の髪質に合わないな…俺とした事が…。まだヘアオイルも届いて無い。俺とした事が…。」
朝日さんが何かブツブツ言ってるけどドライヤーの音で良く聞こえなかった。
保冷剤とタオルを借りた。
包んで両目に当てる。
何も見えないが、朝日さんの楽しそうな声は聞こえる。
とてもご機嫌な声。
「やっと出来る。いやー、よく我慢したよ。俺は。」
ソファーに座ってオットマンに置いている俺の足を、念入りに何かを塗りながらマッサージしてる。
サラサラとヌルヌルの中間くらいの感触だ。
指先から太腿の付け根まで、少しだけ強い力で揉みほぐしてくれる。
その表情は見えないが、声はニッコニコだ。
「肌に良いマッサージオイルなんだけど、香り、嫌じゃないか?」
「良い匂い。柑橘系の香り好きです。」
あまり強い花の香りは苦手なのだけれど、これは柑橘系の好きな匂いだ。
鼻腔の奥から身体の隅々まで広がるよう。
癒される。
「グレープフルーツと杏仁の香りらしい。」
「あんにん…」
なんか、よく分からないけど、なんだか。
「高そう…」
「どうだったかな。忘れた。」
「えぇ…?」
高いんだな。多分。
まあ、いいか、何故だか凄くご機嫌だし、ありがたくマッサージされておこう。
それにしても気持ちが良い。
目は冷やされて揉みほぐされた足は暖かい。
良い匂いがして、おだやかで。
何だろう。
これ。
「幸せ過ぎる…」
「それは良かった。俺も幸せ。」
「えぇ…?」
何で?マッサージしてる事が?
「陽太を甘やかす事が俺の幸せなんだよ。」
「えぇ…?」
「さっきから、えぇ?しか言ってないな。」
ちょっと笑われた。
だって良く分からない事を言っているから。
困惑する。
「いいんだよ。俺の好きにさせてくれ。」
「…はぁい。」
朝日さんが良いなら、いいや。
大人しくしておこう。
穏やかな静寂が流れる。
保冷剤を当て目を閉じていると、何だか泣けてきた。
こんなに心穏やかに過ごせる日が来るなんて。
当てたタオルに、じんわり涙が沁みた。
それは、とても暖かく、沁みた。
0
お気に入りに追加
126
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
肌が白くて女の子みたいに綺麗な先輩。本当におしっこするのか気になり過ぎて…?
こじらせた処女
BL
槍本シュン(やりもとしゅん)の所属している部活、機器操作部は2つ上の先輩、白井瑞稀(しらいみずき)しか居ない。
自分より身長の高い大男のはずなのに、足の先まで綺麗な先輩。彼が近くに来ると、何故か落ち着かない槍本は、これが何なのか分からないでいた。
ある日の冬、大雪で帰れなくなった槍本は、一人暮らしをしている白井の家に泊まることになる。帰り道、おしっこしたいと呟く白井に、本当にトイレするのかと何故か疑問に思ってしまい…?
お嬢様、お仕置の時間です。
moa
恋愛
私は御門 凛(みかど りん)、御門財閥の長女として産まれた。
両親は跡継ぎの息子が欲しかったようで女として産まれた私のことをよく思っていなかった。
私の世話は執事とメイド達がしてくれていた。
私が2歳になったとき、弟の御門 新(みかど あらた)が産まれた。
両親は念願の息子が産まれたことで私を執事とメイド達に渡し、新を連れて家を出ていってしまった。
新しい屋敷を建ててそこで暮らしているそうだが、必要な費用を送ってくれている以外は何も教えてくれてくれなかった。
私が小さい頃から執事としてずっと一緒にいる氷川 海(ひかわ かい)が身の回りの世話や勉強など色々してくれていた。
海は普段は優しくなんでもこなしてしまう完璧な執事。
しかし厳しいときは厳しくて怒らせるとすごく怖い。
海は執事としてずっと一緒にいると思っていたのにある日、私の中で何か特別な感情がある事に気付く。
しかし、愛を知らずに育ってきた私が愛と知るのは、まだ先の話。
膀胱を虐められる男の子の話
煬帝
BL
常におしがま膀胱プレイ
男に監禁されアブノーマルなプレイにどんどんハマっていってしまうノーマルゲイの男の子の話
膀胱責め.尿道責め.おしっこ我慢.調教.SM.拘束.お仕置き.主従.首輪.軟禁(監禁含む)
部室強制監獄
裕光
BL
夜8時に毎日更新します!
高校2年生サッカー部所属の祐介。
先輩・後輩・同級生みんなから親しく人望がとても厚い。
ある日の夜。
剣道部の同級生 蓮と夜飯に行った所途中からプチッと記憶が途切れてしまう
気づいたら剣道部の部室に拘束されて身動きは取れなくなっていた
現れたのは蓮ともう1人。
1個上の剣道部蓮の先輩の大野だ。
そして大野は裕介に向かって言った。
大野「お前も肉便器に改造してやる」
大野は蓮に裕介のサッカーの練習着を渡すと中を開けて―…
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
「学校でトイレは1日2回まで」という校則がある女子校の話
赤髪命
大衆娯楽
とある地方の私立女子校、御清水学園には、ある変わった校則があった。
「校内のトイレを使うには、毎朝各個人に2枚ずつ配られるコインを使用しなければならない」
そんな校則の中で生活する少女たちの、おしがまと助け合いの物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる