細胞がはじけた時が噛み頃です。

その仄暗い目に

※確かめようか

「本当の事言って。怒らないから。」


優しく追い詰められる。
朝日さんが怒らない事は知ってる。
違うんだ。


「……幻滅するよ。」
「ん？」
「朝日さん、本当の俺見たら幻滅する。きっと呆れて俺の事嫌いになるｯ…」


だめだ。
泣くまいと我慢していたのに涙が出てきた。


「本当の陽太見たら、俺が陽太の事を嫌いになるって？」
「うん…。だから帰るｯ…」


この前の車内での行為。
あの時は、ただ朝日さんに欲望を煽られ翻弄された。
今は違う。
自分から凄く求めてしまっている。
今だって流れる涙を拭って貰ってるだけなのに、もう噛みたい衝動が暴れ爆発しそうで本当に辛い。
こんな状態で朝日さんから痛みを貰ったら、とてもじゃないが自分を取り繕えない。


「でも見ないで欲しいとは言わないんだな。言ったら止めるって決めたよな。」
「それは…」


例の決めた合図の事だ。
言ったら止めてくれるはずなのに。
見ないでとは言えなかった。
合図が出せない。


「…なんで…俺…」


自分が分からない。
本当の俺を見て欲しくないのに、口に出せない。
見ないでって言えば離してくれるのに。
どうしても言えなかった。


「も、わかんないｯ…」


分からないと子供のように泣きじゃくってしまう。
朝日さんは見下ろしたまま俺の目を見つめて、絶対に離さない。


あ…まずい。


いつの間にか、朝日さんの目が獰猛な物に変わっている。
捕食されると瞬間的に悟ってしまい全身に鳥肌が立った。
服を脱がされる。
抵抗したけれど、あっという間に真っ裸になってしまった。


「やだっ…朝日さん、俺、帰りたいｯ」
「確かめようか。」
「え？」
「俺が本当の陽太を見たら幻滅するのかどうか。」
「な、なに…」
「見ないでって言ったらすぐに止める。ただし、他に何を言っても止めないから。」


完全にスイッチが入った顔で、そんな事を言う。
酷い人だ。
朝日さんは俺の腕を押さえ込んだまま、器用にベッドサイドの引き出しから何かを取り出した。
取り出した物が以前購入した麻縄だという事を理解した時には、もう遅かった。
仰向けになっていた身体を軽々と転がされ、うつ伏せにされる。


「やだｯ…帰るっ、朝日さん、もお、ほんとに、やだ……」
「大丈夫、手入れして綺麗に鞣なめしてる。」
「そうじゃなくて…ｯ」
「動くな。怪我するぞ。」


身体が動かせないくらいに強く押さえ込まれ、手首には縄の感触。
腰の辺りに手首を固定されるようだ。
しゅるしゅると手首に擦れる縄は、この前より滑らかで肌触りが良くなっている。


だめだ…縄が身体に沿うだけで気持ちがよい。
肌が過敏になってる。
腕の疼きが全身に広がってしまって辛い。


「…んっ」



ぎゅうっと締め上げられると、じんわりと広がる圧迫感と窮屈感。
肌に擦れる縄が、ほんの少しだけ痛くて気持ちが良い。
縄は手首から二の腕に伸びて胸を回って、再び背中に戻った。
なんだろう、縄に抱き締められているような感覚に陥る。
手首を縛られるというよりは、上半身全体で固定されている。
もう、何をされても逃げられない。
そう気づいたら身体の底にある何かが沸騰した。



だめだ。
こんなの。
おかしくなる。


「…はぁｯ…っ」


もう既に息が熱い。