細胞がはじけた時が噛み頃です。

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その仄暗い目に

嫌な感じ

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「…部室、無くなるの嫌だな。」
「萱島が許可しない限り無くならないだろ。」
「そうだとは思うんですけど…。なんか、あの会長さん、嫌な感じがする…。」
「どんな?」
「…わかんない。」


俺を置いて出て行った家族と同じ苗字なのだとは言えなかった。
母は小宮という人と再婚したと聞いている。
考えすぎだとは思うが気になってしまう。
それに、会長は昔の俺を知っているような口ぶりだった。


「俺が地味だって誰かから聞いてたみたい。俺、昔から姉ちゃんの着せ替え人形だったから地味な方では無かったと思うんだけど…。今になって、ちゃらんぽらんな感じが外見に現れたって言われた。」


それこそ小学校高学年の時には毎日着せ替え人形だった。
派手な柄のシャツを着たり、はたまた日によってはスポーティーな格好だったり。
髪を真っ赤に染められそうになった時は流石に拒否した。
会長は一体いつの時代の俺の話を聞いたのだろう。
昔の俺を知っているのだろうか。


「陽太は素直で真面目だよ。」
「そうかな?」
「だいたい碌に話もせずに判断するのは偏見だ。真面目そうな外見で内面適当な奴なんて学校の外に出たら沢山居る。まあ明らかにヤバそうな見た目で内面もヤバイ奴も大勢居るけどな。見る目を養わないと。」
「見る目かあ…」
「陽太は素直で真面目で可愛い。」
「可愛いが追加された!」
「俺の見る目は確かだ。陽太は素直で真面目で可愛い。絶対に可愛い。」


自信満々な朝日さんに笑ってしまった。
いつの間にか、俺が可愛いという話にすり替わっている。
考え過ぎないように敢えて話を逸らしてくれたのだろう。
可愛いからキスしてと真顔で要求してくる朝日さんに笑いながら軽く口付ける。


「全然足りない。」


そして、口の中をグチャグチャにされた。
とても満たされる。
この人が居れば俺は大抵の事は大丈夫な気がした。








予想通り会長は萱島先生を捕まえられないようで、廃部宣告を受けた日から一週間が経っても何も音沙汰がない。
宣告を受けた次の日に萱島先生からは電話があり「勉強しろ。」と一言だけ。
心配するなという事だろう。
そのため試験期間中は俺も斗羽も心配する事なく勉強に集中出来た。


各教科の試験結果は既に返却され、思ったよりも点数が取れていた事に驚いた。
苦手な英語の減点が、どう総合点に響いただろう。
今日は総合得点での順位結果がわかる。
廊下に成績順に名前が張り出されている。


「陽太すげーじゃん。5位。」
「斗羽ちゃんも凄いよ。良かった!」


1位を取るために毎日勉強をしている事を知っているため斗羽の努力が報われて嬉しい。
俺自身は、いつもは8位~10位くらいをウロウロしているのだが、今回は5位だ。
いつもより良い成績で安堵する。
上位はいつもの顔ぶれのようだ。
因みに犬飼は勉強嫌いのため結果は芳しく無い。
だが補習によって読書の時間が削られるのは我慢ならないようで、いつも補習ギリギリのラインを守っている。


「斗羽ちゃん、試験お疲れ様会しよう。部室でプリン食べよ。」
「賛成。」


そういって部室に向かおうと方向転換した時だった。
ああ、会いたく無い人に会ってしまったなあ。


「マグレで喜んでて良いのかな。」

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