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その仄暗い目に
無理です
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「昨日の放送を聞いていたのなら分かると思うけど、この部は廃部にするから。この部屋から速やかに退室する事。会長命令。」
「えー…廃部?無理です。」
「無理じゃない。」
「無理です。」
あまりにも一方的な要求に、はいそうですか、とはいかない。
「特に部として活動しているわけでは無いようだし無理じゃないだろう。聞くところによると、この部は萱島先生が贔屓して作った部らしいじゃないか。僕の理想とする公平な学校生活に相応しくない。本来であれば萱島先生にお伝えしてからの通達が筋だけど、職員室にも美術教務室にも先生はいらっしゃらなかったので、明日にでも生徒会室に来て頂いて伝えておくよ。」
萱島先生は最近年度末という事もあって多忙中の多忙だ。
部員の俺たちでも何度か連絡しないと捕まらないほど校舎の中を常にウロウロしていて、生徒からは勿論だが先生からも事務員からも系列校からも教育委員会からも、色々な所から引っ張りだこ状態。
そんな先生に簡単にアポが取れるなんて、考えが甘いな。
ましてや忙しい中、厄介事の匂いがする生徒会長に呼ばれて、のこのこ出向くわけがない。
「それから柚木くん。話では君は地味だと聞いていたんだけど…。まあ、ちゃらんぽらんな本性が今になって外見に現れたってことかな。チャラチャラとして…やっぱり君は浮ついた生活をしているようだね。好ましくないな。そのうち風紀に取り締まらせるから覚悟しておくように。」
俺の頭から足元までをジロリと観察するように眺めた会長さんは、そう言って部室を去っていった。
やれやれ。
放送で感じた通り、だいぶ乱暴な人だ。
「困ったなぁ。萱島先生に連絡してみるかな。ね、斗羽ちゃん。…あらぁ、とっても怒ってらっしゃる。」
ドアを施錠し振り返ると、ソファーに座っている斗羽が怒りをあらわにしていた。
眉間の皺が凄い事になっている。
「部室の事も勿論だけど、意味わかんねえ事言いながら陽太の事を馬鹿にしたような目で見やがったのが一番腹立つ。」
「斗羽ちゃん、大好き。…ほら、シュークリームあげる。」
鼻息を荒くしていた斗羽に、勉強の合間に食べようと用意していたシュークリームを差し出すと凄い勢いで貪り食べた。
口を大きくモゴモゴし鼻息が荒い斗羽は、さながらゴリラのようで思わず笑ってしまう。
「うまい。」
「ね。美味しい。」
「陽太、ゴリラみたいだな。」
「斗羽ちゃんに釣られたんだウホ。」
「ウホ。」
「ウホウホ。」
「ウホホ。」
思わず釣られて俺まで鼻息が荒くなってしまった。
そのまま何故かゴリラの真似の応戦になって笑い転げた。
部室での時間がどれだけ俺たちに必要なものなのか、分かってもらえるようにしないと。
この部室が無くなるなんて。
本当に無理な話だ。
「えー…廃部?無理です。」
「無理じゃない。」
「無理です。」
あまりにも一方的な要求に、はいそうですか、とはいかない。
「特に部として活動しているわけでは無いようだし無理じゃないだろう。聞くところによると、この部は萱島先生が贔屓して作った部らしいじゃないか。僕の理想とする公平な学校生活に相応しくない。本来であれば萱島先生にお伝えしてからの通達が筋だけど、職員室にも美術教務室にも先生はいらっしゃらなかったので、明日にでも生徒会室に来て頂いて伝えておくよ。」
萱島先生は最近年度末という事もあって多忙中の多忙だ。
部員の俺たちでも何度か連絡しないと捕まらないほど校舎の中を常にウロウロしていて、生徒からは勿論だが先生からも事務員からも系列校からも教育委員会からも、色々な所から引っ張りだこ状態。
そんな先生に簡単にアポが取れるなんて、考えが甘いな。
ましてや忙しい中、厄介事の匂いがする生徒会長に呼ばれて、のこのこ出向くわけがない。
「それから柚木くん。話では君は地味だと聞いていたんだけど…。まあ、ちゃらんぽらんな本性が今になって外見に現れたってことかな。チャラチャラとして…やっぱり君は浮ついた生活をしているようだね。好ましくないな。そのうち風紀に取り締まらせるから覚悟しておくように。」
俺の頭から足元までをジロリと観察するように眺めた会長さんは、そう言って部室を去っていった。
やれやれ。
放送で感じた通り、だいぶ乱暴な人だ。
「困ったなぁ。萱島先生に連絡してみるかな。ね、斗羽ちゃん。…あらぁ、とっても怒ってらっしゃる。」
ドアを施錠し振り返ると、ソファーに座っている斗羽が怒りをあらわにしていた。
眉間の皺が凄い事になっている。
「部室の事も勿論だけど、意味わかんねえ事言いながら陽太の事を馬鹿にしたような目で見やがったのが一番腹立つ。」
「斗羽ちゃん、大好き。…ほら、シュークリームあげる。」
鼻息を荒くしていた斗羽に、勉強の合間に食べようと用意していたシュークリームを差し出すと凄い勢いで貪り食べた。
口を大きくモゴモゴし鼻息が荒い斗羽は、さながらゴリラのようで思わず笑ってしまう。
「うまい。」
「ね。美味しい。」
「陽太、ゴリラみたいだな。」
「斗羽ちゃんに釣られたんだウホ。」
「ウホ。」
「ウホウホ。」
「ウホホ。」
思わず釣られて俺まで鼻息が荒くなってしまった。
そのまま何故かゴリラの真似の応戦になって笑い転げた。
部室での時間がどれだけ俺たちに必要なものなのか、分かってもらえるようにしないと。
この部室が無くなるなんて。
本当に無理な話だ。
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