細胞がはじけた時が噛み頃です。

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沼に落ちた

最優先事項

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携帯のディスプレイに少し驚く。
陽太からの電話は珍しい。
もしかしたら何かあったのかも知れないと電話に出る。


「おい、話しはまだ終わってねぇぞ。」
「悪い。俺の最優先事項からの電話だ。」
「は?」


陽太に関することは最優先で。
そう決めている。


「あ、陽太です。」


知っている。
だから電話に出たのだから。
仕事関係は別だが、陽太以外からの電話なら萱島との会話中には、ほぼ出ない。
声を聞く限り何かあった訳ではなさそうだ。
だが律儀に名乗った声は少々緊張しているようにも感じられる。


「あの、今何処ですか?」


萱島と美術教務室で話していることを伝え、もう話終わり寮に戻ろうかと思っていたと述べた。
本当は全く終わっていないのだが、もしかしたら陽太が会いに来てくれるのかもしれない。
俺の会話の内容を聞いていた萱島が「お前の優先事項、誰だよ。」と訝しげだ。


「あ、じゃあ、あとで管理人室に伺いますね。」


やはり出向いてくれるらしい。
久しぶりにゆっくり話が出来るかもしれない。
そう考えた時だった。
突然電話の向こうが騒がしくなる。
陽太が何かに驚いた声がしたと思ったら騒々しい音が響き電話が切れた。
音から察するに携帯を落としたのかもしれない。


「切れたのか?誰からだ?」
「陽太。」
「は?なんだよ最優先事項って陽太か?」
「変な電話の切れ方だった。」


何かあったのか、ただ携帯を落としただけなのか。
再び電話をかけるが通じない。
嫌な予感がする。


突然けたたましい音が鳴った。
萱島の携帯だ。


「陽太に持たせてた防犯ブザー通知だな…なんかあったな。場所何処だ。」


けたたましい音の通知は陽太の防犯ブザーが鳴ったことを知らせる物のようだ。
ブザーに内蔵されたGPS が場所を検索している。
もしかしたら例の犯人から何かアクションがあったのかもしれない。
早く行かないと手遅れになる。
時間にしたら1分程だっただろうが、体感としては日が昇って暮れるくらいのように感じた。


「分かった。ここだ。よりによって一番端かよ。俺は体力無ぇぞ。」
「行こう。」


地図に赤い点滅が見えた。
用務員室の近くの教室でGPS反応がある。
美術教務室を出て萱島と二人で校舎を走る。
走っても数分はかかる無駄に広い敷地が憎たらしい。


普段から走っている為、さして息も切れずGPSが示していた教室に到着する。
ドアは施錠されている。
考える前に、もう足が出ていた。
ドアを破りたく何度か蹴る。
ぜぇぜぇと息を切らし少し遅れた萱島が到着した時に、ようやくドアが倒れた。


陽太が床に押し倒されていた。


その光景を見た萱島がブチ切れ、犯人を罵倒し肩を蹴り上げて押し退ける。
犯人は萱島に任せよう。
あんな物の相手をするよりも、まずは陽太だ。


「大丈夫か?」
「あ…大丈夫…」


半裸で唖然としている陽太を起こし、破られたのだろう、ボロボロのシャツを取り敢えず羽織らせる。
萱島と犯人が問答しているが知ったことか。
争っている二人の様子を呆然と見ている陽太を観察する。
肘を擦りむいているようだが外傷は殆ど無いようで安心する。
精神的には唖然とし感情が追い付かないような状態だと見てとれた。


それから気になったのは。
陽太の腕。

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