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沼に落ちた
溺愛
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佐野が目を覚まし陽太も落ち着いたため、風紀や各所に報告した後に管理人室に戻って来た。
そして、いつかと同じように頭を抱える。
「……天使か。」
陽太や佐野と居ると管理人としての顔と思考を保てるが、一人になり気が緩んだ時には犯人への怒りで頭が支配されるだろうと思っていた。
だが予想と違い俺の脳内は欲が渦巻いていた。
勿論腹立たしさはあるが、それを遥かに超えて俺の脳内を支配するあの愛らしさ。
まず誰よりも早く最初に俺に電話をしてくれたことに歓喜した。
唇を噛んでいる様子がいじらしい。
泣き顔が愛おしい。
落ち着いて我に返って恥ずかしくなったのだろう、泣き止みウロウロと忙しく視線を動かす動作は小動物のようだった。
何だあれは。
可愛すぎる。
いよいよ語彙も失ってきた。
「あー…ヤバいな。」
次、あんな様子を見てしまったら本当に腕に抱き込んでしまいそうだ。
理性が弾け飛びそうだ。
世間体はとうに捨てたが、けじめとして理性は保ちたい。
それに。
普段自分の屑加減を隠して過ごしているため、理性を捨てた顔を見せたら逃げられてしまうかもしれない。
落ち着いた大人を装い、親切なふりをし、優しさで本心を隠す。
そうやって社会に溶け込んだフリをしているうちに、自分の奥底を一番知ってほしい人に知られるのが恐ろしくなっている。
「人間が屑過ぎる。」
臆病になっている自分に幻滅した日だった。
臆病者のまま二週間ほどが過ぎた。
最近はジョギング中にまで陽太の事を考えてしまうほど重症化している。
先日コースを少し変更して走っていたら景色の良い高台を見つけた。
おそらく夜景が綺麗に見えるだろうし、人も少なく穴場のようだ。
通常なら景色や夜景を見に連れてきたいと思う所なのだろうが、俺の場合は違っている。
人が少ないと色々と都合が良い。
陽太にあの場所で何をしようか、そんな不埒な妄想をしていたらジョギングが捗ってしまった。
だが、こんな妄想が叶うのは随分と先になるかもしれない。
というのも、あの事件から俺に対する陽太の様子がおかしい。
管理人室に出向いてはくれるが何か言いたげな顔をした後すぐに去ってしまう。
携帯へ連絡すると返事はあるものの余所余所しい。
つい先日も犬飼とスーパーに行くため管理人室の前を通ったようだが素通りだった。
懐に入り込み過ぎて嫌われたか、もしくは警戒されたかと考えたが、それなら窓口に来ないだろう。
何にせよ、このまま陽太が離れていってしまっては困る。
これはいよいよ臆病者から脱出しないといけないかと考えている。
寮生たちが帰ってくる時間帯。
珍しく萱島から呼び出しがあり美術教務室で話していた。
「この前の同窓会お前なんで来なかった。」
「忙しくてな。」
「絶対嘘。俺より忙しい奴この学校に居ねぇ。」
「確かに。」
「同窓会なんて絶好の出会いの場だっつーのに。」
どうやら先日開催された同窓会に不参加だった事に対しての苦情らしい。
「それこそ必要ないな。」
「なんだよ彼女でも出来たか?」
「いや…」
萱島に陽太の事が好きだと伝えて色々と協力してもらうのも悪くないと考え、好きな奴は出来たと言おうとした所で携帯に電話がかかってきた。
そして、いつかと同じように頭を抱える。
「……天使か。」
陽太や佐野と居ると管理人としての顔と思考を保てるが、一人になり気が緩んだ時には犯人への怒りで頭が支配されるだろうと思っていた。
だが予想と違い俺の脳内は欲が渦巻いていた。
勿論腹立たしさはあるが、それを遥かに超えて俺の脳内を支配するあの愛らしさ。
まず誰よりも早く最初に俺に電話をしてくれたことに歓喜した。
唇を噛んでいる様子がいじらしい。
泣き顔が愛おしい。
落ち着いて我に返って恥ずかしくなったのだろう、泣き止みウロウロと忙しく視線を動かす動作は小動物のようだった。
何だあれは。
可愛すぎる。
いよいよ語彙も失ってきた。
「あー…ヤバいな。」
次、あんな様子を見てしまったら本当に腕に抱き込んでしまいそうだ。
理性が弾け飛びそうだ。
世間体はとうに捨てたが、けじめとして理性は保ちたい。
それに。
普段自分の屑加減を隠して過ごしているため、理性を捨てた顔を見せたら逃げられてしまうかもしれない。
落ち着いた大人を装い、親切なふりをし、優しさで本心を隠す。
そうやって社会に溶け込んだフリをしているうちに、自分の奥底を一番知ってほしい人に知られるのが恐ろしくなっている。
「人間が屑過ぎる。」
臆病になっている自分に幻滅した日だった。
臆病者のまま二週間ほどが過ぎた。
最近はジョギング中にまで陽太の事を考えてしまうほど重症化している。
先日コースを少し変更して走っていたら景色の良い高台を見つけた。
おそらく夜景が綺麗に見えるだろうし、人も少なく穴場のようだ。
通常なら景色や夜景を見に連れてきたいと思う所なのだろうが、俺の場合は違っている。
人が少ないと色々と都合が良い。
陽太にあの場所で何をしようか、そんな不埒な妄想をしていたらジョギングが捗ってしまった。
だが、こんな妄想が叶うのは随分と先になるかもしれない。
というのも、あの事件から俺に対する陽太の様子がおかしい。
管理人室に出向いてはくれるが何か言いたげな顔をした後すぐに去ってしまう。
携帯へ連絡すると返事はあるものの余所余所しい。
つい先日も犬飼とスーパーに行くため管理人室の前を通ったようだが素通りだった。
懐に入り込み過ぎて嫌われたか、もしくは警戒されたかと考えたが、それなら窓口に来ないだろう。
何にせよ、このまま陽太が離れていってしまっては困る。
これはいよいよ臆病者から脱出しないといけないかと考えている。
寮生たちが帰ってくる時間帯。
珍しく萱島から呼び出しがあり美術教務室で話していた。
「この前の同窓会お前なんで来なかった。」
「忙しくてな。」
「絶対嘘。俺より忙しい奴この学校に居ねぇ。」
「確かに。」
「同窓会なんて絶好の出会いの場だっつーのに。」
どうやら先日開催された同窓会に不参加だった事に対しての苦情らしい。
「それこそ必要ないな。」
「なんだよ彼女でも出来たか?」
「いや…」
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