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秘め事の決め事
意地が悪い
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ショッピングモールを出て、この辺りで一番広いホームセンターにやってきた。
何を買うのだろうか。
ホームセンターの入り口にある案内板を確認する朝日さんは、やけに楽しそうだ。
場所の目星が付いたのだろう。
店内を進んでいく。
「何買うんですか?」
「見てのお楽しみ。」
教えてくれない。
一体何だろう。
広い店内をキョロキョロと見ながら付いていく。
朝日さんが立ち止まった。
「思ったより種類が多いな。陽太はどれが良い?」
そこで何を売っているか分かった途端、喉がギュッと詰まった。
麻縄だ。
一気に如何わしい妄想が頭をよぎる。
「個人的には、染色していない物の方が似合うと思う。」
「ぇ、え?おれのこと…し、し、しばるの?」
そう問うたらキョトンとした顔をして、さぁどうだろうなと惚ける。
意地が悪い。
期待と不安とが入り混じり思わず涙目になってしまった。
そんな俺の事を見た彼は、今日初めて、ほんの一瞬、欲のある目付きを俺に向けた。
やっぱり縛るんだ。
どうしよう、もう泣きそう。
「今日は、しないよ。」
「何だよも~。」
今日するかと思ったじゃないか。
思わずヘナヘナとしゃがむ。
朝日さんはケタケタと笑っていた。
本当に意地が悪い。
ホームセンターから学校に帰る道中。
麻縄とブルーシートを購入した朝日さんは上機嫌で、色々と話してくれた。
どうやら麻縄は購入したばかりだとチクチクしていて、とてもじゃないが使用できるものでは無いらしい。
それを加工して俺専用の麻縄が出来たら縛ってくれるそうだ。
嫌ならやらないよ?と言われた。
そう言われたら嫌とは言えなくなるのが俺だ。
ブルーシートを何に使うかは怖くて聞けなかった。
「あれ?どこ行くんですか?」
学校に帰っているはずだが、道が違うようだ。
気づいたら学校を通り過ぎており、随分と山奥に入ってきた。
「ちょっとドライブ。」
そういって連れてこられたのは景色の良い高台。
夕方のため辺りは暗い。
崖に備え付けてある手すりの向こうは、とても煌びやかな景色が広がっている。
「うわっ!綺麗!」
「普段から人も居なくて穴場なんだ。たまに走りにくる。」
「そうなんですね。空気澄んでて気持ちいいなあ。」
さっきまで居た街中の夜景がキラキラと輝いている。
少し場所を変えるだけで、こんなに綺麗なんだなあ。
手すりを掴んでいる手に、朝日さんの手が重なった。
驚いて朝日さんを見ると、意地の悪い顔でもなく、欲の映った瞳でも無い。
とても真剣な顔。
「陽太、一つ決まりを作ろうか。」
「決まり?」
「そう。決まり。今日陽太、縄に驚いたろ?」
突然ホームセンターに出向き、自分を縛るために使用するであろう麻縄を買ったら誰でも驚く。
「別に陽太が本当に嫌なら俺はやらないよ。」
「うん。でも…」
「嫌かどうかも分からない?」
そうなのだ。
なにせ、経験がないのだから。
嫌なのかどうかさえ、判断ができない。
「うん。やったことないし…分からないです。」
「これから、陽太がやったことない事、沢山やるよ。」
「ぅ、ん。」
心臓が締まった。
したことない事を、朝日さんとするんだ。
そう考えただけで息が詰まる。
「だから、本当に無理で嫌で止めたいって時の合図を決めよう。」
「合図?」
「嫌だ、やめて、もう無理。そんな事言っても俺はやめない。それとは違う、明確な合図。陽太が使いやすい言葉、何かあるか?」
嫌だって言っても、やめないんだ。
本当にSなんだなあ。
正直、俺は朝日さんがしてくれる事なら何でも受け入れられる気がしている。
そんな合図は必要ないのではないだろうか。
でも、きっと、そういう問題ではないのだろう。
俺が俺を守るための最終兵器を備えて欲しいという話なのだ。
何を買うのだろうか。
ホームセンターの入り口にある案内板を確認する朝日さんは、やけに楽しそうだ。
場所の目星が付いたのだろう。
店内を進んでいく。
「何買うんですか?」
「見てのお楽しみ。」
教えてくれない。
一体何だろう。
広い店内をキョロキョロと見ながら付いていく。
朝日さんが立ち止まった。
「思ったより種類が多いな。陽太はどれが良い?」
そこで何を売っているか分かった途端、喉がギュッと詰まった。
麻縄だ。
一気に如何わしい妄想が頭をよぎる。
「個人的には、染色していない物の方が似合うと思う。」
「ぇ、え?おれのこと…し、し、しばるの?」
そう問うたらキョトンとした顔をして、さぁどうだろうなと惚ける。
意地が悪い。
期待と不安とが入り混じり思わず涙目になってしまった。
そんな俺の事を見た彼は、今日初めて、ほんの一瞬、欲のある目付きを俺に向けた。
やっぱり縛るんだ。
どうしよう、もう泣きそう。
「今日は、しないよ。」
「何だよも~。」
今日するかと思ったじゃないか。
思わずヘナヘナとしゃがむ。
朝日さんはケタケタと笑っていた。
本当に意地が悪い。
ホームセンターから学校に帰る道中。
麻縄とブルーシートを購入した朝日さんは上機嫌で、色々と話してくれた。
どうやら麻縄は購入したばかりだとチクチクしていて、とてもじゃないが使用できるものでは無いらしい。
それを加工して俺専用の麻縄が出来たら縛ってくれるそうだ。
嫌ならやらないよ?と言われた。
そう言われたら嫌とは言えなくなるのが俺だ。
ブルーシートを何に使うかは怖くて聞けなかった。
「あれ?どこ行くんですか?」
学校に帰っているはずだが、道が違うようだ。
気づいたら学校を通り過ぎており、随分と山奥に入ってきた。
「ちょっとドライブ。」
そういって連れてこられたのは景色の良い高台。
夕方のため辺りは暗い。
崖に備え付けてある手すりの向こうは、とても煌びやかな景色が広がっている。
「うわっ!綺麗!」
「普段から人も居なくて穴場なんだ。たまに走りにくる。」
「そうなんですね。空気澄んでて気持ちいいなあ。」
さっきまで居た街中の夜景がキラキラと輝いている。
少し場所を変えるだけで、こんなに綺麗なんだなあ。
手すりを掴んでいる手に、朝日さんの手が重なった。
驚いて朝日さんを見ると、意地の悪い顔でもなく、欲の映った瞳でも無い。
とても真剣な顔。
「陽太、一つ決まりを作ろうか。」
「決まり?」
「そう。決まり。今日陽太、縄に驚いたろ?」
突然ホームセンターに出向き、自分を縛るために使用するであろう麻縄を買ったら誰でも驚く。
「別に陽太が本当に嫌なら俺はやらないよ。」
「うん。でも…」
「嫌かどうかも分からない?」
そうなのだ。
なにせ、経験がないのだから。
嫌なのかどうかさえ、判断ができない。
「うん。やったことないし…分からないです。」
「これから、陽太がやったことない事、沢山やるよ。」
「ぅ、ん。」
心臓が締まった。
したことない事を、朝日さんとするんだ。
そう考えただけで息が詰まる。
「だから、本当に無理で嫌で止めたいって時の合図を決めよう。」
「合図?」
「嫌だ、やめて、もう無理。そんな事言っても俺はやめない。それとは違う、明確な合図。陽太が使いやすい言葉、何かあるか?」
嫌だって言っても、やめないんだ。
本当にSなんだなあ。
正直、俺は朝日さんがしてくれる事なら何でも受け入れられる気がしている。
そんな合図は必要ないのではないだろうか。
でも、きっと、そういう問題ではないのだろう。
俺が俺を守るための最終兵器を備えて欲しいという話なのだ。
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