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好きだよ
虫も殺さぬ顔
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デレッとした顔になったんだろう。
鬼束先生にアホ面と笑われた。
暫く雑談していたら電話が終わったのだろう、朝日さんが保健室に戻ってきた。
「手当て終わったか?」
「はい。終わりました。」
「鬼束、どうだった?」
「軽い打ち身と擦り傷だな。問題ない。それよりも手首の圧迫痕の方が酷そうだ。しっかり冷やすしかないな。あとは、噛むなよ。圧迫痕の治りが遅くなる。」
「はーい。」
押し倒された時に出来たのだろう、手首に圧迫痕が残ってしまった。
暫く噛まないように気を付けよう。
「陽太には言ってない。」
「へ?」
「間抜けな顔したS野郎に言ってる。」
「俺か。」
俺かと、おどける朝日さんは、虫も殺さぬような顔をして笑った。
そんな時、物凄い勢いで保健室のドアが開き、物凄い勢いで人が入ってきた。
「陽太!!」
「叶羽ちゃん。え?どうしたの?」
涙目で息を切らした叶羽だった。
「萱島先生から電話あった。大丈夫か?襲われたって…怪我したのか?…唇切れてる…殴られたのか?…肘も怪我したのか、犯人殺す、絶対に殺す。痛そうだな…大丈夫か?酷いことされなかったか?俺が一緒に居たらよかったんだ…くそっ、犯人殺す…」
俺の身体の周りをウロウロしながら、心配してくれてる。
珍しく取り乱してるなあ。
鬼束先生と朝日さんがビックリしている。
普段落ち着いてるからなあ叶羽ちゃん。
「叶羽ちゃん、大丈夫だよ。落ち着いて。」
「落ち着いていられるかよ。」
「叶羽ちゃん、この口の傷、朝日さんにつけてもらったんだよ。」
「は?」
「朝日さんが、噛んでくれた。」
「え?」
「いいでしょ。」
あえて空気を読まずに明るく、羨ましいでしょう?と言うと、暫く考えた叶羽は気が抜けたように立ち止まり。
「大事にしないと許さない!!」
と朝日さんに怒鳴ったのでした。
あの騒動以降、物の紛失も無くなった。
やはり盗難もあの犯人の仕業だったようだ。
いつもの穏やかな日常に戻った。
ふんふんと鼻唄が弾む。
「うるせぇ。色ボケ野郎が。」
「んふふ。」
「鼻潰してぇ。」
今日も図書室で犬飼に怒られている。
何故俺がこんなに上機嫌なのかというと。
「陽太、今日はこれ。」
「はい。」
朝日さんが本を借りに来てくれたからだ。
仕事中に浮かれていると犬飼に肩パンされるため、キリッと顔を作って貸し出し手続きをする。
デレッとなりそうな顔を頑張って引き締める。
「どうぞ。1週間後が返却期限です。」
「ありがとう。」
はい、と本を渡す。
すると少し屈んだ朝日さんが俺の耳元で
「唇の傷、治ったな。」
と囁いて去っていった。
思わず顔が赤くなり、デレッとした顔になってしまった。
肩パンされた。
「すげぇうざい。けど良かったじゃん。」
「ありがとう、犬飼君のおかげだよ。」
「なんか奢れよ。」
「えぇっ…あ、じゃあ、明日ちょっと街に出掛ける予定あるから、お土産買ってくるよ。」
「まじか、言ってみるもんだな。…つーか、出掛けるって…」
「んふふ。」
「あー、うぜぇなぁ。」
鬼束先生にアホ面と笑われた。
暫く雑談していたら電話が終わったのだろう、朝日さんが保健室に戻ってきた。
「手当て終わったか?」
「はい。終わりました。」
「鬼束、どうだった?」
「軽い打ち身と擦り傷だな。問題ない。それよりも手首の圧迫痕の方が酷そうだ。しっかり冷やすしかないな。あとは、噛むなよ。圧迫痕の治りが遅くなる。」
「はーい。」
押し倒された時に出来たのだろう、手首に圧迫痕が残ってしまった。
暫く噛まないように気を付けよう。
「陽太には言ってない。」
「へ?」
「間抜けな顔したS野郎に言ってる。」
「俺か。」
俺かと、おどける朝日さんは、虫も殺さぬような顔をして笑った。
そんな時、物凄い勢いで保健室のドアが開き、物凄い勢いで人が入ってきた。
「陽太!!」
「叶羽ちゃん。え?どうしたの?」
涙目で息を切らした叶羽だった。
「萱島先生から電話あった。大丈夫か?襲われたって…怪我したのか?…唇切れてる…殴られたのか?…肘も怪我したのか、犯人殺す、絶対に殺す。痛そうだな…大丈夫か?酷いことされなかったか?俺が一緒に居たらよかったんだ…くそっ、犯人殺す…」
俺の身体の周りをウロウロしながら、心配してくれてる。
珍しく取り乱してるなあ。
鬼束先生と朝日さんがビックリしている。
普段落ち着いてるからなあ叶羽ちゃん。
「叶羽ちゃん、大丈夫だよ。落ち着いて。」
「落ち着いていられるかよ。」
「叶羽ちゃん、この口の傷、朝日さんにつけてもらったんだよ。」
「は?」
「朝日さんが、噛んでくれた。」
「え?」
「いいでしょ。」
あえて空気を読まずに明るく、羨ましいでしょう?と言うと、暫く考えた叶羽は気が抜けたように立ち止まり。
「大事にしないと許さない!!」
と朝日さんに怒鳴ったのでした。
あの騒動以降、物の紛失も無くなった。
やはり盗難もあの犯人の仕業だったようだ。
いつもの穏やかな日常に戻った。
ふんふんと鼻唄が弾む。
「うるせぇ。色ボケ野郎が。」
「んふふ。」
「鼻潰してぇ。」
今日も図書室で犬飼に怒られている。
何故俺がこんなに上機嫌なのかというと。
「陽太、今日はこれ。」
「はい。」
朝日さんが本を借りに来てくれたからだ。
仕事中に浮かれていると犬飼に肩パンされるため、キリッと顔を作って貸し出し手続きをする。
デレッとなりそうな顔を頑張って引き締める。
「どうぞ。1週間後が返却期限です。」
「ありがとう。」
はい、と本を渡す。
すると少し屈んだ朝日さんが俺の耳元で
「唇の傷、治ったな。」
と囁いて去っていった。
思わず顔が赤くなり、デレッとした顔になってしまった。
肩パンされた。
「すげぇうざい。けど良かったじゃん。」
「ありがとう、犬飼君のおかげだよ。」
「なんか奢れよ。」
「えぇっ…あ、じゃあ、明日ちょっと街に出掛ける予定あるから、お土産買ってくるよ。」
「まじか、言ってみるもんだな。…つーか、出掛けるって…」
「んふふ。」
「あー、うぜぇなぁ。」
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