細胞がはじけた時が噛み頃です。

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始まりの新学期

背徳の朝プリン

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なんで僕の事を見てくれないんだろう。

お母さん。

そう呼んでも無視される。
答えてくれたことはない。
家の中で、僕の存在は無い事になってるみたいだ。
風邪を引いてゴホゴホしている時でさえ、誰も僕を助けてはくれなかった。

勿論ご飯が出てくることはない。
夜中に色んなところを漁って、あまってた物をこっそり食べる。


僕は何でここに居るのかな。
僕の事を見てくれない。
会話なんてもってのほか。

そもそも僕の事、見えてないのかもしれない。
僕って、もしかしたら幽霊なのかな。
死んじゃってる幽霊なのかも。

ぎゅうっと頬っぺたをつねる。


痛い。

ということは僕は生きてるんだ。

いつかTVでやってた。
幽霊はスカスカで触れないんだって。

何度も頬っぺたをつねったり、腕をつねったり。

「痛い…」

僕は生きてる。
生きてるんだ。














「夢か…」


目が覚めた。
時計は23時を指している。
随分としっかり寝ていたようだ。
遠く昔の夢を見た。
今になっても尚、自分を蝕んでいる重く暗い昔の夢。
もう夢を見て動揺する事はないけれど、あまり気分が良いものではない。


「久しぶりに見た…うわ、びしょびしょ…」


酷く汗をかいている。
厚着して、毛布と羽毛布団をしっかりかけて寝たからだ。
着替えよう。
ベタベタになった服を着替えて、叶羽が作ってくれていたお粥を温めて食べた。
卵が入っていて、少しだけ塩気があって、とても美味しい。
食欲は無かったが、一口食べるとその後はスルスルと口に入っていた。
デザートにアイスも食べる。
しっかり水分を取って、薬も飲んで、また横になった。

「着替えてご飯食べるだけで疲れる…。」

疲れたが胃はポカポカして、アイスで口内はスッキリ。

「恵まれてるなあ…」

風邪なのに少しも寂しくはなかった。




翌日。
体温は平熱に落ちていた。
薬が効いてくれたんだろう。
念のため今日も学校は休むことにする。
朝から部屋に来てくれた叶羽が、今日の休みを学校に連絡してくれる。

なんと叶羽ちゃんも一緒に休むんだって。
なにそれ、最高に過保護で、最高に楽しいじゃん。


「叶羽ちゃん、背徳の朝プリン会しよ。」
「すげぇいいな、それ。」


プリンを朝から二人で食べる。
それが背徳の朝プリン会。
冷たくプルプルのプリンを二人で貪る。


「背徳感高まるー。美味しいー。」
「…なあ、陽太。俺が口挟むことじゃないから、お節介かと思って言うか迷ったんだけどさ。」
「え、なになに。怖い。」


少し言いにくそうに切り出す叶羽。
なんだろう。


「いや、別に悪い話じゃない。…このプリンも朝日さんが買ってきてくれたんだろ?」
「うん。」
「なんの確証もないけどさ、朝日さん陽太の事、好きなんじゃないかな。」
「え…」

思わず口からプリンが溢れた。
汚れた口をティッシュで拭きながら問う。

「え、え?なんで?」

叶羽がプリンを掬って食べながら、あくまでも俺の考えだからな、と前置きをして話してくれた。


「普通ただの寮の生徒に差し入れ持ってきたりしないと思う。しかも大量に。それに、頭も撫でないと思うし…陽太の事、好きだと思う…いや、まあ、確証は無いんだけどな…」
「そうかな?え?そうなの?ええ…?そうかな?」
「あくまでも俺の感じた印象だけどな。陽太と話す時、他とはちょっと違うよ。あの人。」
「うそぉ…全然分かんない。」


今までの事を色々と思い出すが、自分では分からない。
差し入れも、ただ、心配してくれただけなんだと思っている。
けど、そうなのかもしれない。
いや、そうじゃないのかもしれない。

「でもな、この前は彼女とかは暫く要らないって言ってたし確証無いから陽太に言うか迷った。」
「あー!分かんない!…叶羽ちゃん、頭がグルグルして熱が上がりそうだよ…」
「俺も。」

背徳の恋ばなプリン会になった。

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