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夜のカフェテラス

心浮く寒さ

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犬飼とでは無く朝日と行くことになったと叶羽に報告すると、あの人となら安心だと安堵したようだった。
警戒心の強い叶羽からの信頼も得ている朝日は、やはり人格者なのだろう。
叶羽に、気をつけて行ってこい、余所見して側溝に落ちたりするな、知らない人に着いていくなと念を押されたが、彼は俺の保護者なのかもしれない。
当日の今日の朝も、寒いから着込んで行けよとメールが入っていた。


「確かに寒い。」


寮の自室のある五階から一階に移動して、エレベーターを降りると急に寒い。
一階のエントランスは外とあまり気温が変わらないくらいに冷え込んでいる。
エントランスの出入口から吹き込む風が顔に触れると、とても痛い。
こらは本当に着込んできて良かった。


「うー、寒っ、さーむっ」


あまりの寒さに独り言が増える。
口から出る白い息が面白く、はふぅはふぅと無駄に息を吐いたり、んぱっと息を出して円に出来ないか試して遊んだ。
実に阿保っぽい遊びで人に見られたら呆れられそうだが、これが何とも楽しい。
ひとしきり寒さを楽しんだ所で我にかえった。
ベージュのマフラーをしっかりと巻き直し、深いネイビーのロングコートをモゾモゾと整える。
赤いリュックは先日姉から寮に送られてきた物だ。
姉に言わせると赤色ではなくボルドーらしい。昔から俺を着せ替えて遊ぶのが好きらしい姉は、寮に入った今でも色々な服や物を送ってくれる。
久しぶりに学園の外に出るため少々浮かれていて、コーディネートした姿を撮りメールで姉に変では無いかと確認するくらいには楽しみだ。


「よし。」


気持ちと身なりを整えた所で、さあ行こう。
管理人室に入るドアはあるが通常鍵が掛かっているため、そのドアの直ぐ横にある窓から声をかけるのが通例だ。
いつもは窓口から管理人室の中の様子が伺えるのだが、今日はシャッターが降りている。
シャッターには本日不在のため急を要する場合は学校内の事務所へ問い合わせて下さい、との張り紙されている。
メールでの打ち合わせ通りドアに備え付けられているインターホンを鳴らすと、朝日が出た。


「こんにちは。陽太です。」
「そっちのドアじゃなくて裏口から出て、外から回り込んで色々戸締まりしてくるから。悪いけど、ちょっとだけ其処で待ってて。」
「はい。待ってます。」


機械を通して朝日の声が聞こえ、一安心。
そのまま窓口で朝日を待っていると、エントランスを行き来している寮生達にガン見されている事に気がついた。
うろうろ目の前を通りながら此方を見てくる。
これ、エントランスに俺を見に来てないか。
いつもより人の往来が多い。


目線に戸惑っていると朝日が此方へ歩いてやってくる。
グレーのチェスターコートと黒のスキニーが良く似合っていて凛々しい。
その姿に一瞬本当に狼を見た。
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