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夜のカフェテラス
もうすぐクリスマス
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図書委員に配られている当番表を見たところ、彼はどうやら今日は第二図書室のカウンターの受付当番らしい。
昨日貰ったチケットを握りしめて、第二図書室に来てみた。
第二図書室は広くて利用者も多い第一図書室と違って、主に専門書を集めているため小規模で落ち着いている。
利用者もまばらだ。
居た。
くりくりの大きな目とピンクの唇。
美少年なのか美少女なのか。
初見では見分けがつかないくらいに可憐な彼は、受付カウンターで図書室に飾るクリスマスツリー用のサンタクロースを折り紙で作っているようだ。
図書室のため小声で話しかける。
「犬飼君。」
「死にてえのか。失せろ。」
手元から目線を外さずに暴言を吐かれた。
この狂暴さ。今日も彼は元気なようだ。
今のように、見た目と口の悪さのギャップから彼には狂犬姫とあだ名がついている。
彼は集中している時に話しかけられるのが、あまり好きではないらしい。
「犬飼君。」
負けじと声をかける。負けたら終わりなのだ。
ようやく此方に目線をくれた。
やっと俺の事を認識してくれたのか、長い睫毛をパシパシと動かした。
「なんだ陽太かよ。昼休みに来るなんて珍しいな。」
「うん、あ、俺もサンタさん作る。」
「おお、助かるわ。」
カウンターに入り込み、犬飼の隣でサンタクロースを一緒に作る。
今週末はクリスマス。
急いで飾りを作っているところだそうで、歓迎された。
「ふんふんふーん。ふんふんふーん。」
クリスマスは良い。
思わず鼻唄を歌ってしまうくらい好きだ。
折り紙サンタ。
見よう見まねだが、なかなか可愛く作れた気がする。
「出来た!サンタクロース。」
「まだ髭が無くね?」
「サンタさんって髭あるっけ?そんなにワイルド系だったっけ?」
マジックで髭をポツポツと付け加える。
「きっもっ!ちげーよ、どっちかっつーとオールド系だわ。ジョリジョリ感丸出しのワイルドサンタはこの世から消え去れ。」
図書室に居る全員が我慢出来ずに吹き出す。
「い、犬飼君、皆に聞こえてたよ…恥ずかしい…。」
「俺はお前が恥ずかしい。」
そんな…酷い…
犬飼は折り紙で作ったサンタに綿の髭をくっつけていた。
なるほど確かにオールド系だ。
作業しながら今日の本題を切り出し、一緒にゴッホ展に行かないかと誘ってみる。
断られたら、もう後がない。
なぜなら友達が居ないから。
「あー、興味はあるけどなあ。週末クリスマスだから実家に帰って婆ちゃんとケーキ食う約束してんだよ。わりぃな。」
なんてこった。
なんて心暖まる予定なんだ。
一緒に行けないことはショックだったが、犬飼の予定があまりに平和な内容だったため和んでしまった。
犬飼はお婆ちゃん子。
素敵な情報を知れて、ちょっと嬉しい。
「そっかー…じゃあしょうがないよね。」
「なんだよ、お前そんなに俺と行きたかったのかよ。」
「だって他に友達居ないもん。」
「確かに。」
「そんなこと無いよとか言ってくれてもいいんだよ。」
「事実だろ?」
「うっ。」
大袈裟に心臓が傷付いた動作をする俺を見てケタケタ笑っている犬飼。
下手なフォローをしない裏表の無い彼が俺は好きだ。
「もう1人で行くしかないかなあ…」
しょんぼり呟いた時。
カウンターに人がやってきた。
話に夢中になって気づくのが遅れてしまった。
「あ、すみません。どうぞ。」
「ありがとう、邪魔して悪いな。」
昨日貰ったチケットを握りしめて、第二図書室に来てみた。
第二図書室は広くて利用者も多い第一図書室と違って、主に専門書を集めているため小規模で落ち着いている。
利用者もまばらだ。
居た。
くりくりの大きな目とピンクの唇。
美少年なのか美少女なのか。
初見では見分けがつかないくらいに可憐な彼は、受付カウンターで図書室に飾るクリスマスツリー用のサンタクロースを折り紙で作っているようだ。
図書室のため小声で話しかける。
「犬飼君。」
「死にてえのか。失せろ。」
手元から目線を外さずに暴言を吐かれた。
この狂暴さ。今日も彼は元気なようだ。
今のように、見た目と口の悪さのギャップから彼には狂犬姫とあだ名がついている。
彼は集中している時に話しかけられるのが、あまり好きではないらしい。
「犬飼君。」
負けじと声をかける。負けたら終わりなのだ。
ようやく此方に目線をくれた。
やっと俺の事を認識してくれたのか、長い睫毛をパシパシと動かした。
「なんだ陽太かよ。昼休みに来るなんて珍しいな。」
「うん、あ、俺もサンタさん作る。」
「おお、助かるわ。」
カウンターに入り込み、犬飼の隣でサンタクロースを一緒に作る。
今週末はクリスマス。
急いで飾りを作っているところだそうで、歓迎された。
「ふんふんふーん。ふんふんふーん。」
クリスマスは良い。
思わず鼻唄を歌ってしまうくらい好きだ。
折り紙サンタ。
見よう見まねだが、なかなか可愛く作れた気がする。
「出来た!サンタクロース。」
「まだ髭が無くね?」
「サンタさんって髭あるっけ?そんなにワイルド系だったっけ?」
マジックで髭をポツポツと付け加える。
「きっもっ!ちげーよ、どっちかっつーとオールド系だわ。ジョリジョリ感丸出しのワイルドサンタはこの世から消え去れ。」
図書室に居る全員が我慢出来ずに吹き出す。
「い、犬飼君、皆に聞こえてたよ…恥ずかしい…。」
「俺はお前が恥ずかしい。」
そんな…酷い…
犬飼は折り紙で作ったサンタに綿の髭をくっつけていた。
なるほど確かにオールド系だ。
作業しながら今日の本題を切り出し、一緒にゴッホ展に行かないかと誘ってみる。
断られたら、もう後がない。
なぜなら友達が居ないから。
「あー、興味はあるけどなあ。週末クリスマスだから実家に帰って婆ちゃんとケーキ食う約束してんだよ。わりぃな。」
なんてこった。
なんて心暖まる予定なんだ。
一緒に行けないことはショックだったが、犬飼の予定があまりに平和な内容だったため和んでしまった。
犬飼はお婆ちゃん子。
素敵な情報を知れて、ちょっと嬉しい。
「そっかー…じゃあしょうがないよね。」
「なんだよ、お前そんなに俺と行きたかったのかよ。」
「だって他に友達居ないもん。」
「確かに。」
「そんなこと無いよとか言ってくれてもいいんだよ。」
「事実だろ?」
「うっ。」
大袈裟に心臓が傷付いた動作をする俺を見てケタケタ笑っている犬飼。
下手なフォローをしない裏表の無い彼が俺は好きだ。
「もう1人で行くしかないかなあ…」
しょんぼり呟いた時。
カウンターに人がやってきた。
話に夢中になって気づくのが遅れてしまった。
「あ、すみません。どうぞ。」
「ありがとう、邪魔して悪いな。」
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