細胞がはじけた時が噛み頃です。

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夜のカフェテラス

冬の戯れ

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校庭は銀世界。
今年初めての雪を観測した。
その景色は世界と部室を別世界のように隔てている錯覚を起こす。
それもこれも、この暖かい場所のおかげに違いない。


「こたつって最高だなあ。」


感じる最高級の温もりに思わずテーブルに頬ずりし突っ伏す。
ほぅっと口から擬音が零れた。
丁寧に蜜柑の皮を剥いている友人の顔を見やると、今しがた剥いていた蜜柑を差し出してくれる。
反射的にガバッと口を開けたら笑われた。
口に広がる甘酸っぱい柑橘の旨味。


「こたつって最高だなあ。」
「さっきも同じ事言った。」


また笑われた。
笑うたびに揺れる真っ白な髪と睫毛。


「天使がいる。俺の隣に優しい天使がいる。最高だよ。」
「陽太の方が天使じゃねーか。ゆるふわ堕天使。」


その珍妙なあだ名は本当に止めて欲しい。
思わず炬燵をひっくり返したくなる衝動に駆られるほどに嫌だ。
高校に入学してから数ヶ月経った頃、そのような名が出回っている事を知った。
黒髪の緩い天然パーマが堕天使の由来らしい。
説明されても理解に苦しむ由来だった。
柚木陽太といった名前がちゃんとあるのだが、あまり名前で呼ばれることは少ない。
アクセサリーデザイナーの姉が与えてくれる物を日々身に付けているためか、最近ではチャラふわ堕天使などいう、もはやよく分からない造語も使われ始めている。


「ほんとに止めて。恥ずかしいから。」


嫌がる俺を笑っている彼にも冷徹王子と言ったあだ名があるのだが、俺は全く気に入っていない。
この可愛い天使ちゃんに冷徹とは何事か。
確かに俺以外にはツンツンしているが、本当は可愛い天使ちゃんだ。
デレを垣間見た時は拝みたくなる程に神々しいというのに、冷徹王子なんて似合わない。


「白猫天使とか良いよね。」
「絶対に止めてくれ。」
「白猫天使ちゃん!蜜柑下さい!」


だから止めろと嫌がりながらも蜜柑を口に放り込んでくれる友人は、いつも、この上なく天使なのである。
ガチャガチャと部室のドアが空き、くたびれたスーツを着た、くたびれた顔の男が入ってきた。


「今日はもう絶対に頑張らねえ。絶対にだ。」


そう愚痴る男は、我らが顧問の萱島先生だ。


「お前ら部室に炬燵持ち込んで仲良く蜜柑とは良いご身分だなあ。よくやった。」


俺にも蜜柑くれと催促し炬燵の空いたスペースに潜り込み、おいおい炬燵やべぇなと顔を緩ませる。
緩ませた顔には変わらず疲労が見えた。
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