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穏やかな日常

大好きな場所

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お決まりの俺たちのやり取りに飽き飽きしているらしい萱島先生が向かいのソファにどかっと座る。 
先生は今日もしっかりと、くたびれている。
庶務部に入ってまず分かった事は萱島先生がとんでもなく忙しいという事実だ。
この庶務部は、そんな萱島先生専用の部活で先生の雑用を代わりに請け負っている。
頼まれる雑用は書類の整理やプリントのホチキス留めといった簡単なもので、全く苦ではない。


「先生、今日はなんか雑用ないですか?」 
「今日は特に無えな。」


頼まれるのは本当に忙しい時のみで、普段はあまり雑用はない。


「最近調子はどうよ、庶務部のお二人さん。」 
「俺は良い感じだよ。斗羽ちゃんはね、こんな感じですねー。」 


チラリと隣を伺うと一心不乱に円周率を書き続けてる。 


「あ、円周率そこ違うよ。」 
「まじか。」 


円周率を訂正してあげる。
萱島先生から呆れたような、ため息が聞こえた。


「お前らは、すぐ無理ばっかしやがるからな。ここは庶務部じゃなくて、保護部だな。」 


庶務部。
この居心地が良い場所の名前。 
あの悪どい閃き顔をした次の日に、萱島先生は庶務部を作ってくれた。
安全な場所を提供してもらっているのだ。
精神的に参った時、体調が悪い時、授業中でも、何もなくても、いつでも使っていい場所。 
学園内でも存在を知られており、いつも斗羽がこもっているため「白猫ハウス」とも呼ばれてる。
今のところ部員は俺と天使の2人。 
顧問の萱島先生が許可した人のみ入部が出来る、鍵のかかった安全な場所。 
学園内にある安全地帯。  
俺は腕の傷を気にせず、ドM発言をしても引かれない、優しい親友が居る、そんなこの場所が大好きになっていた。 


「先生クッキーとか、その他諸々ありがと。」
「ありがとう。」


二人で礼を述べると萱島先生は何とも照れ臭そうに手をヒラヒラさせ、悪さするんじゃねーぞ!と部室から出て行った。
多忙にも関わらず、ただ様子を確認するためだけに部室まで来てくれたのだろう。
口は悪いけど俺たちのことを考えてくれて、部員数も足りないのに無理矢理申請して部を作ってくれた先生に、とても感謝している。
いつか恩を返せたら良いのだか。


「陽太。本当にセーブ出来てるのか?」


やっぱり心配させてしまったか。
正直なところ、あまり良くはない。
萱島先生には誤魔化したが、近々鬼束先生に見せないといけない、そんな状態だ。

 
「んー…最近ね、人肌恋しくなるからさあ。鈍痛が欲しくなっちゃうのですよ。」 
「まじか。あんま無茶すんなよ。」 


俺は痛いの無理だわと顔をしかめて、カーディガンの上から腕をソッと摩ってくれる斗羽ちゃんの優しい手。 
その手は今日も火照っていて熱い。 


「斗羽ちゃんも我慢のし過ぎは良くないよ。やっぱり気持ち良いことが好きな体質の方が健全で良いと思うよ。」 
「何が健全だ。ただの淫乱じゃねーか、こんなの。陽太の方がずっと健全だ。」 
「えー?そうかなあ。あ、じゃあ、もう2人とも変態って事にしようか。」 
「変態部か。いいな。」 

ぶはっと2人で笑う。 
この穏やかな日常がずっと続いて行けばいいと思う。 





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