細胞がはじけた時が噛み頃です。

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穏やかな日常

天使との戯れ

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蝉が煩かった季節も過ぎ、空気は冷え、凍えそうな風が指の間を通る季節にうつろった。
長袖を着込んでも違和感がなく、過ごしやすい。 
特別棟にある部室に向かう廊下から見える木々は紅葉も終わり、カサカサと葉が散っている。 


人肌が恋しくなる時期になってしまった。
自分の欲が増す時期なのは、経験上分かっている。
噛み過ぎないように気をつけたが、どうにもうまくいかない。 
傷跡は寒くなるにしたがって徐々に増えている。
これは皆んなに怒られてしまうだろう。
怒られるというよりは心配させてしまうと言った方が正しいか。
特に我が庶務部の唯一の部員、佐野叶羽。
彼はとても心配性だ。 
あの無理矢理吊り上げている切れ長なタレ目を思い出し、可愛いなと思いながら部室の鍵をあけた。 
ガチャっと心地の良い音を鳴らす。

庶務部

雑に書かれたプレートが貼ってある扉を開け、中に入ると再びしっかりと鍵をかける。 


「クッキーあるぞ。萱島先生から。」 


部室の奥に備え付けられているカーテンで仕切られたベッドから天使が起きてきた。 
少し寝癖のついた白い髪が白猫のように美しい。
白い陶器肌と唇の赤さがそれをより際立たせている。
よくよく見ると睫毛まで白いので、やはり彼は天使なのではないかと錯覚する。
あることが切っ掛けで後天的に体毛の色だけが白く変化したそうだった。
彼自身はあまり自分の色を気に入っていないようだが、凄く綺麗だと思う。


「クッキー!いただきます。」 


ソファに座りクッキーを漁って、柔らかいクッキーのため口から零れ落ちないよう慎重に食べ進める。
チョコレート生地の中に紅茶の茶葉が入っているようでとても上品な味だ。


「ああ…萱島先生、超ありがとう。」


隣に座った叶羽が紅茶を入れてくれた。
俺の天使が今日も優しすぎる。


「紅茶ありがと、叶羽ちゃんは今日も可愛いねえ。」
「いや、陽太の方が可愛い。今日はカーディガン脱がないで大丈夫かよ。調子は?」 


そう確認しながら突然おもむろに勉強をし始める斗羽。 
鬼気迫る勢いでノートに数列を書き出した。
今日はそういう日なのか。
という事は、あまり叶羽自身の調子は芳しくないらしい。
庶務部に叶羽が入部して3ヶ月ほどが過ぎたが、各々抱えている事情をお互い理解出来るようになってきた。
なので突然の数列書きなぐり行動は見慣れているし事情も分かる。
グリグリと凄い勢いでノートが埋まっていく。
大丈夫だろうか。

 
「うん、涼しいし俺は大丈夫。斗羽ちゃんは?クッキー食べる?大丈夫?」

 
クッキーを差し出し、少し意味を含ませて大丈夫かと聞いてみる。
クッキーを見つめた斗羽が、嬉しそうに微笑んだ。


「大丈夫だ。」 

 
いつも目を無理に吊り上げて周りを警戒している彼が、本当はこんなにフンワリ笑うタレ目の天使だという事は学園で俺だけしか知らないだろう。でもその方が彼にとっては安全だから良いんだと思う。


「あー可愛い!やっぱり斗羽ちゃんが可愛いよ。」 
「陽太の方が可愛い。」 
そうやって戯れていたら、萱島先生が部室に入ってきた。
それも構わず戯れる。 


「お前ら、相変わらず仲良過ぎ。」 





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