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優しい先生
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あまりの事態に喉が詰まる。
跳ねた心臓は収まらない。
半袖だ。
今更気が付いた。
なんて間抜けだ。
腕を晒してしまった。
どうしよう。言葉も出ない。
思わず腕を隠すように、さする。
この腕は、抉れて化膿した皮膚と鬱血した歯形がひしめき合い、とても醜い。
「あんま乱暴に摩るな。皮膚の奥まで痛めてんだから。」
「あ…すみませ…」
こんな醜い腕を人に晒すことは出来ないから、真夏でも冬用のカーディガンを着込んでいたのに。
それが原因で熱中症になって、それだけじゃなく、結局この始末。
ああ、どうしよう、何と説明しよう。
「別に問い詰めようってわけじゃないから、そんなビビんな。猫かお前は。」
あまりに追い詰められた酷い顔をしていたのだろう、先生は落ち着かせるように笑って、そう言った。
拒絶されると思っていた。
気持ち悪いと嫌な顔をされるか、面倒な事に関わってしまったと顔をしかめられると思っていたのに。
目の前の先生は顔は怖いがとても穏やかだ。
ああ、きっと、とても優しい先生にちがいない。
そう思ったら体から力が抜けた。
脱力した腕をとり軟膏の塗り込みを再開した先生は、ゆっくり丁寧に大事そうに扱ってくれ、この痣の事は何も聞いてこない。
自分で自分を大事に扱えない俺は、なんと強欲で愚かなのだろう。
自身が卑しい人間だと自覚しているが、押さえ込んでも腹の底から際限なく湧いてくる。
湧いてくるものは自分でも本当に扱いづらいが、それが俺なのだと受け入れるより他ない。
どうしても優しいだけでは物足りないのだから。
「先生、本当にありがとうございます。」
感謝を伝えると、少し驚いた顔をする先生。
「見た目チャラついてるのに、この学校では珍しいほど素直だな。」
「そんなに言うほどチャラついてないですよ。…先生は、見た目ほど怖く無いですね。」
「うるせえな。ほっとけ。」
穏やかな空気と下らない会話が楽しい。
思わず自分のことを話したくなった。
「この傷、自分で付けたんです。」
跳ねた心臓は収まらない。
半袖だ。
今更気が付いた。
なんて間抜けだ。
腕を晒してしまった。
どうしよう。言葉も出ない。
思わず腕を隠すように、さする。
この腕は、抉れて化膿した皮膚と鬱血した歯形がひしめき合い、とても醜い。
「あんま乱暴に摩るな。皮膚の奥まで痛めてんだから。」
「あ…すみませ…」
こんな醜い腕を人に晒すことは出来ないから、真夏でも冬用のカーディガンを着込んでいたのに。
それが原因で熱中症になって、それだけじゃなく、結局この始末。
ああ、どうしよう、何と説明しよう。
「別に問い詰めようってわけじゃないから、そんなビビんな。猫かお前は。」
あまりに追い詰められた酷い顔をしていたのだろう、先生は落ち着かせるように笑って、そう言った。
拒絶されると思っていた。
気持ち悪いと嫌な顔をされるか、面倒な事に関わってしまったと顔をしかめられると思っていたのに。
目の前の先生は顔は怖いがとても穏やかだ。
ああ、きっと、とても優しい先生にちがいない。
そう思ったら体から力が抜けた。
脱力した腕をとり軟膏の塗り込みを再開した先生は、ゆっくり丁寧に大事そうに扱ってくれ、この痣の事は何も聞いてこない。
自分で自分を大事に扱えない俺は、なんと強欲で愚かなのだろう。
自身が卑しい人間だと自覚しているが、押さえ込んでも腹の底から際限なく湧いてくる。
湧いてくるものは自分でも本当に扱いづらいが、それが俺なのだと受け入れるより他ない。
どうしても優しいだけでは物足りないのだから。
「先生、本当にありがとうございます。」
感謝を伝えると、少し驚いた顔をする先生。
「見た目チャラついてるのに、この学校では珍しいほど素直だな。」
「そんなに言うほどチャラついてないですよ。…先生は、見た目ほど怖く無いですね。」
「うるせえな。ほっとけ。」
穏やかな空気と下らない会話が楽しい。
思わず自分のことを話したくなった。
「この傷、自分で付けたんです。」
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