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強さ

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足を止めて大声の方を見ると、小さな女の子に悪そうな男が怒鳴り付けている。

「お前が俺にぶつかったせいで、足が折れちまったかもしれねぇなあ!どう落とし前つけてくれるんだ?ああ?」
「ご、ごめ、なさ…」
「謝って済むなら警察はいらねぇんだよ!!慰謝料寄越せや!慰、謝、料!!」
「お、おかね、もってませ…ん…」
「なめたこと言ってんじゃねぇぞ!!ガキが!!」
「でも…」
「金がねぇんなら、身体で払ってもらうしかねぇな。…育ったら、それなりの金になりそうだしなあ!」
「ひっ…」

女の子が泣き出してしまった。

うわ…
何あれ、最悪だ。
凄い不快なんだけど。
どうみても裕福では無さそうな服を着た小さな女の子に、言いがかりが酷い。
周りの大人達は見て見ぬふり。
なんで?
考える前に足が動いた。


「大丈夫?怖かったね。ほら、今のうちに逃げて。」

女の子を男から隠すように割って入る。
買ったばかりのタオルでサッと涙を拭いてあげた。
そしてポンと背中を押して逃がす。
女の子は躊躇しながらも、僕がバイバイしたのを見て走って逃げていった。


「んだ、てめぇは!邪魔すんじゃねぇ!」


胸ぐらを捕まれ、睨み付けられる。


「うるさい。口臭い。近寄るな。」


そう言ったらカッとなった男が腕を振りかぶった。
ああ、殴られるなあ…
ラニーニ時代に、さんざん殴られたから慣れてる。
痛みを受け流せるように力を抜く。


ガンっ!!
ゴンっ!!

殴り飛ばされた。
俺じゃなくて、振りかぶった男が。


「あれ?」


振りかぶっていた筈の男が、突然飛び込んできた別の若い男に思いっきり殴り飛ばされ、近くの壁にぶつかり、そのまま気絶した。
殴られるかと思ったのに。
思わぬ形で助けられた。


「ばーか。弱い者いじめしてんじゃねぇよ。」


若い男は爽やかだ。
同じくらいの歳に見える。


「ありがとう。」
「いやさあ、堂々と助けに入ったから強いのかと思って見てたら、普通に殴られる感じだったからビビったわ。」
「強くないよ。ただ、見過ごせなかっただけ。」
「まじかよ。ある意味やばい奴だな。」
「へへ、ありがとう。」
「誉めてねぇよ。…げ、時間ないんだった。」


あんま無茶すんなよ。と爽やかな君は去って行ってしまった。
いいなあ、僕もあんな風に強くなりたいな。
そうしたら殴られないですむよね。
魔法を覚えたら悪い人を撃退出来るだろうか。


「勉強頑張ろ。」


そのためには勉強道具を揃えなきゃ。
殴られ倒れている男は放置して文房具店に向かう。


「あった、あそこだ。」


文房具店は街の中心部から少し離れた所にあった。
この辺りは人が少ない。
少し薄暗くて、あまり治安も良くは無さそうだなあ。

ん…?

大きい通りから細い路地が沢山あるんだけど…


「…子供?」


よく見たら子供が何人も座り込んでいる。
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