上 下
7 / 10

ファイルNo7.エンジン排気熱なんて……大っ嫌いだ!!

しおりを挟む


 同志テカ「やはり、資本主義者には我が大祖国ソヴィエトの素晴らしい兵器が理解できないようです、同志」

 中の人「そのようだな……」

 デェェェェェェェェェェェン!!

 Y・S「Доброе утроおはよう、同志。布教は順調かね?」

 中「ッ!!ど、我が同志ッ!?何故ここに!?」

 同テ「ど、同志ッ!!」

 Y「おやおや、一人こちら側・・・・に引き込むことができたのかね?」

 中「は、はい。ですが……」

 Y「噂は聞いているとも。我が大祖国ソヴィエトの布教が順調ではない……だろう?」

 中「その通りです……」

 Y「今回私直々に赴いた理由はそれだ」

 中「(ま……マズい……殺されるッ!!」

 Y「……このファイルを受け取りたまえ」クソデカファイルスッ

 中「は、はい……。っと……お、重いですね……。こ、これは、一体?」

 Y「我が国がかつて開発した傑作試作兵器を記載したファイルだ。存分に使ってくれたまえ」

 中「——ッ!!あ、ありがたき幸せッ!!」

 Y「だが……」中ノ人ノ耳元ニ近寄ル

 Y「これ以上の失敗は…………許さないぞ?死にたいなら話は別だが……」

 中「は、はいぃぃぃぃっ!!私、誠心誠意取り組ませていただきますッ!!!」

 Y「……うむ。それでは頑張りたまえ」

 デェェェェェェェェェェェン!!

 中「き、消えた……」

 同テ「まるで嵐のようなお方ですね……」

 中「あ、あぁ。逆らったら殺されるだろうな……間違いなく」

 同テ「はい……。ところで、そのファイルは一体?」

 中「我が大祖国が作り上げた数々の傑作兵器が記載されたファイル……らしい……。まぁまずは見てみよう」

 同テ「ですね」


——


 中「……やはり、我が国こそが世界の頂点に立つべきだな」

 同テ「はい!やはり共産主義は……我らが大祖国ソヴィエトは素晴らしいですッ!!」

 中「うむ……!大祖国万歳ッ!!」

 同テ「万歳ッ!!」

 中「さて、それでは再び我が国の素晴らしさを布教しようではないか!今回布教するのは……An-71だ!!
 同志テカ、よろしく頼むぞ!!」

 同テ「はいッ!!
 まずはスペックからです!」


 機名:アントノフ71(露:Ан-71、英:Antonov An-71)
    NATOコードネーム: Madcap
 製造国:ソ連
 動力:ZMKB イーフチェンコ=プロフレース D-436K 2基(主エンジン)
    RD-38A  1基(補助エンジン。胴体後下部に配置)
 規模:全長 23.50m
    全幅 31.89m
    高さ 9.20m
 速度:最大速度 650km/h
    巡航速度 530km/h
 乗員:6名(内3名はレーダー士)
搭載レーダー:Vega-M
空中待機可能時間:高度8000メートルにおいて巡航速度500-530km/hで飛行した場合4-5時間(1時間で予備燃料を消費)


 同テ「スペックは以上です!」

 中「うむ!……だが、何度見てもこのレーダー配置は……素晴らしいな」

 同テ「はい、やはりこのレーダー配置は素晴らしいですよね。垂直尾翼上部にレドームを配置・・・・・・・・・・・・・・するなんて発想、資本主義者じゃ思いつきもしないでしょう」

 中「あぁ。さて、それでは詳しい詳細を同志にも伝えてくれたまえ」

 同テ「承知しました、同志。
 本機、”Ан-71”の開発が始まった原因。それは、当時防空軍(PVO)*のみが運用していた早期警戒管制機AWACSのTu-126が、性能の不足や配備数の不足、機体の老朽化や旧式化などが影響したものでした。また、レバノン紛争似て行われた作戦の一つ、「ガラリアの平和作戦」において、偉大なるソヴィエト製戦闘機を装備するシリア軍が、イスラエル軍によりたった3日でヘリも含めれば80機以上(一方、イスラエルの損害はF-4が1機)撃破されました。この圧倒的戦果には、イスラエル空軍が導入したE-2Cによるレーダー能力と支援能力が戦闘機部隊の実質的戦闘能力を拡大したと分析していました。
 斯くして様々な要因などがありながらもソビエト空軍*でも使用する新型AWACS機として開発が開始。本計画ではブルジョア合衆国USAの運用方法であるE-3セントリーのような大型機とE-2Cのような比較的小型機との二系統装備を目標に開始。E-3の立場としてA-50が、E-2Cの立場としてAn-71が運用されることを目的とされます。これらの機体により、戦闘効率が従来の2.5~3倍引き上げられることを軍部は期待していました。
 さて、小型機という立場で開発されることとなったAn-71は、1970年代半ばに軽量戦術輸送機であるAn-26*2の後継として開発され、東側陣営へと輸出されたAn-72*3をベースに開発することが決定します。まずレドームを配置するため、主翼を左右に計6メートル延長。胴体も再設計されました。また、本機はコアンダ効果*4を発揮するために配置された高翼配置のエンジンによる排気熱を避けるため、わざわざ前進角をつけた全高9メートルにも及ぶ垂直尾翼上部にレドームを配置。故に、本機はどの国家でも類を見ない特徴的な機体へと変貌しました。
 では肝心のレーダー性能といきましょう。この機体が搭載するレーダーは前述の通り『Vega-M』。このレーダーは10秒で一回転するもので、探知距離350-370キロ、探知高度は0-30km、400目標を探知し、120目標を追尾することが可能です。このレーダーを運用するにあたって機内には2つあった発電機をさらに増設し、4つの発電機を機内に搭載しました。
 これら仕様のAn-71は各3機、その全てがAn-72の試作・量産機から改造されたものとして製造。内2号機は静的試験機(地上試験用)として、飛行できない状態でした。1号機は合計387回650時間、3号機は362回380時間の計649回1030時間の飛行を行い、様々な問題(短くなった全長、重量物であり揚力のバランスを崩す垂直尾翼上のレドーム、原型機では排気の影響を避けるために垂直尾翼上端に置かれたがレドームのために胴体後部に移設され振動問題を起こした水平尾翼など)があったものの、1988年4月には迎え角試験をパスし必要な飛行安定性を確保するに至ります。
 が、当時の大祖国ソヴィエトの経済はそれを許すことはなかったのです。資金不足で後続の機体の開発は不可能となり、この開発は凍結。以降、この機体は人知れず、ひっそりと永い眠りにつきました」

 中「……一言言おう」

 同テ「はい、同志」

 中「民主主義なんてクソ喰らえッ!!!!」


______
 今回はこれで終わりです。が、今回も例のごとく余談がありまして。
 本機体”An-71”。実は、海軍での運用も計画されていたんですね。それも、この機体を製作する前段階、研究段階で、です。この計画では仮の名称としてAn-75、もしくはAn-71Kなる名称が与えられました。この機体にはAn-71とは違い新規設計のレーダー『Kvant-M』を搭載予定で、この機体1番の特徴的な部位であるレドームの配置を改める(胴体背面へ移設、あるいは胴体下面にゴンドラ式等)予定でしたが、それでも本機は全重30t、全長30mと明らかに艦載機にするレベルのものではなかったので、結局中止されました。その後釜として採用されたのが、あろうことか航空機ではなくヘリであるKa-27ヘリックスのAEW型(のちのKa-31)です。
______
参考サイト
https://ja.wikipedia.org/wiki/An-71_(航空機)
https://ja.wikipedia.org/wiki/An-72_(航空機)
https://www.globalsecurity.org/military/world/russia/an-71.htm
https://ja.wikipedia.org/wiki/An-26_(航空機)
https://ja.wikipedia.org/wiki/コアンダ効果

* 防空軍(PVO)
 防空軍は独立した組織。空軍所属ではない。中の人も初めて知った。

*2 An-26
 ソ連・ウクライナ共和国のキエフ機械製作工場(KMZ;現ウクライナのANTK アントーノウ)で開発された小型双発多目的輸送機。NATOコードネームは「カール」。(Wikiより抜粋。

*3 An-72
 双発短距離離着陸ジェット輸送機である。NATOコードネームは「コーラー」(Coaler:石炭商)。正面から見るとエンジンが大きな耳のように見えることから、「チェブラーシカ」(ロシアの絵本・アニメのキャラクター)の愛称で呼ばれる。(Wikiより抜粋。

*4 コアンダ効果
 わたしにもわからん。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

実力を隠し「例え長男でも無能に家は継がせん。他家に養子に出す」と親父殿に言われたところまでは計算通りだったが、まさかハーレム生活になるとは

竹井ゴールド
ライト文芸
 日本国内トップ5に入る異能力者の名家、東条院。  その宗家本流の嫡子に生まれた東条院青夜は子供の頃に実母に「16歳までに東条院の家を出ないと命を落とす事になる」と予言され、無能を演じ続け、父親や後妻、異母弟や異母妹、親族や許嫁に馬鹿にされながらも、念願適って中学卒業の春休みに東条院家から田中家に養子に出された。  青夜は4月が誕生日なのでギリギリ16歳までに家を出た訳だが。  その後がよろしくない。  青夜を引き取った田中家の義父、一狼は53歳ながら若い妻を持ち、4人の娘の父親でもあったからだ。  妻、21歳、一狼の8人目の妻、愛。  長女、25歳、皇宮警察の異能力部隊所属、弥生。  次女、22歳、田中流空手道場の師範代、葉月。  三女、19歳、離婚したフランス系アメリカ人の3人目の妻が産んだハーフ、アンジェリカ。  四女、17歳、死別した4人目の妻が産んだ中国系ハーフ、シャンリー。  この5人とも青夜は家族となり、  ・・・何これ? 少し想定外なんだけど。  【2023/3/23、24hポイント26万4600pt突破】 【2023/7/11、累計ポイント550万pt突破】 【2023/6/5、お気に入り数2130突破】 【アルファポリスのみの投稿です】 【第6回ライト文芸大賞、22万7046pt、2位】 【2023/6/30、メールが来て出版申請、8/1、慰めメール】 【未完】

幽閉王子は最強皇子に包まれる

皇洵璃音
BL
魔法使いであるせいで幼少期に幽閉された第三王子のアレクセイ。それから年数が経過し、ある日祖国は滅ぼされてしまう。毛布に包まっていたら、敵の帝国第二皇子のレイナードにより連行されてしまう。処刑場にて皇帝から二つの選択肢を提示されたのだが、二つ目の内容は「レイナードの花嫁になること」だった。初めて人から求められたこともあり、花嫁になることを承諾する。素直で元気いっぱいなド直球第二皇子×愛されることに慣れていない治癒魔法使いの第三王子の恋愛物語。 表紙担当者:白す(しらす)様に描いて頂きました。

小さなことから〜露出〜えみ〜

サイコロ
恋愛
私の露出… 毎日更新していこうと思います よろしくおねがいします 感想等お待ちしております 取り入れて欲しい内容なども 書いてくださいね よりみなさんにお近く 考えやすく

精神科病棟への強制入院

えみ
エッセイ・ノンフィクション
私は双極性障害持ちです。躁鬱の波が激しくジェットコースターみたいな人生を送っています。そんな私が体験した地獄のような体験を書いていきたいと思います。よろしくお願いします。

特殊部隊の俺が転生すると、目の前で絶世の美人母娘が犯されそうで助けたら、とんでもないヤンデレ貴族だった

なるとし
ファンタジー
 鷹取晴翔(たかとりはると)は陸上自衛隊のとある特殊部隊に所属している。だが、ある日、訓練の途中、不慮の事故に遭い、異世界に転生することとなる。  特殊部隊で使っていた武器や防具などを召喚できる特殊能力を謎の存在から授かり、目を開けたら、絶世の美女とも呼ばれる母娘が男たちによって犯されそうになっていた。  武装状態の鷹取晴翔は、持ち前の優秀な身体能力と武器を使い、その母娘と敷地にいる使用人たちを救う。  だけど、その母と娘二人は、    とおおおおんでもないヤンデレだった…… 第3回次世代ファンタジーカップに出すために一部を修正して投稿したものです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...