殺伐とした別世界に、突如として変態なる国家が並行世界より来たる

ELDIAN

文字の大きさ
上 下
55 / 63
大陸の覇者の没落 ー辺境の地の帝国の来訪編ー

第57話:赤 v0.0

しおりを挟む
_第二帝国海軍


 「……敵船が……燃えているッ!」

 第二帝国海軍を指揮するヴェルティは、先ほどから目に入る光景に愕然とする。
 彼の目に入っているのは、数隻のヴァルティーア帝国海軍のものと思われる軍船。そして、それら数隻は例外なく、艦体中央部からモウモウと黒煙を吐き出している。初めは何かの冗談だと思ったが、何度見直してもそれは現実。加えて、消火は一向に進んでいるようには見えない。火事にしても消化が行われないのはおかしい。彼は直感で判断する。

 「総員に通達!直ちに戦闘配置だ!……幾ら何でも、戦闘をする前から燃えてるのはおかしい……。魔式大砲の射程圏内に入り次第敵艦に向けて撃ち放て!」

 『『了解!』』

 乗組員達はヴェルティの指示を耳にした瞬間から、訓練通りテキパキと自分のすべきことを行う。ある者は大砲の射撃用意を行い、またある者はその燃える船への監視を怠ることなく実施してゆく。

 「船長!各員戦闘準備完了、いつでもいけます!」

 「よろしい。新型推進用魔石の起動準備は?」

 「そろそろ終わることかと……」

 「わかった。新型推進用魔石の起動準備が完了次第、すぐに起動。最大船速であの燃えている船に向かえ。警戒は怠るなよ」

 「了解」


 _一方その頃、対峙する所属不明の艦隊


 「いよいよ海戦か……」

 ヴァルティーア帝国海軍第一艦隊所属、第一水雷戦隊の指揮をとる低身長が特徴的なドワーフ族のニコライ中佐は緊張した顔で、水平線の先に見える複数の戦列艦を見つめていた。

 「魔波反射装置の調子はどうだね?」

 「はい、ニコライ中佐。魔波反射装置はテスト通り順調に稼働、既に敵艦隊は主砲射程圏内に侵入しているので、いつでも任意のタイミングで魔波反射装置を駆使した精密射撃が可能です」

 「そうか……数年前の戦争では痛み分けに終わった我々海軍だが……どうやら敵国、神の乗る船が訪れていないようだな。艦の見た目的に……多少技術が進歩したようだが、神より授かった新技術を応用し、生まれ変わった我々には勝てない」

 彼は帆を目一杯に貼り、こちらへと接近してくるダーダネルス帝国海軍の戦列艦を哀れみの目で見つめる。
 2年前、我が国にも遂に神の乗る浮舟が到来、複数の恵みものを授けてくださった。その中には、我々からしてみれば未知の物体……『魔式蒸気機関』と呼ばれる『黒の魔石』を使用し、無風であっても船を動かすことができる機関や、『巡洋艦』と呼ばれる巨大な鉄でできた兵器。そしてその設計図や製造するための器機とそれを設計するための技術が、国内に存在した少数の造船関係・兵器関係の優秀な技術者に気付けばインプットされていた。
 どうやら神話は本当だったらしい。神より授かった物体は、どんなものであろうとそれに触れた瞬間、使用方法を習得する魔法が付与されていた。これによりわざわざその兵器の運用方法を一切学ぶ必要はなく、ローコストで乗員が養成できた。
 それでも造船費用自体はかかるので、現在我が海軍に配備されている『巡洋艦』は数が少ない。
 その日を境に軍は海軍や陸軍、そして新設の空軍を作り上げ、軍備を強化。広大な、資源が豊富にある土地。土地南下政策の元日々この日のため訓練を重ねてきた。そして今日、こうして唯一神種リベリア人により戦う機会は与えられたのだ。この機会を逃しはしない。

 「全艦に通達。巡航速度を維持し各自射撃を開始せよ、とな」

 「了解」

 ニコライ中佐は艦帽を手に取ると、頭に深く被り、艦尾で大きくたなびく赤一色、そして資本主義からの解放を表す鎖を断ち切る女神の描かれた国旗を見つめ、こう呟く。

 「同志ヨフタリ・シスーンの為に」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

劣悪だと言われたハズレ加護の『空間魔法』を、便利だと思っているのは僕だけなのだろうか?

はらくろ
ファンタジー
海と交易で栄えた国を支える貴族家のひとつに、 強くて聡明な父と、優しくて活動的な母の間に生まれ育った少年がいた。 母親似に育った賢く可愛らしい少年は優秀で、将来が楽しみだと言われていたが、 その少年に、突然の困難が立ちはだかる。 理由は、貴族の跡取りとしては公言できないほどの、劣悪な加護を洗礼で授かってしまったから。 一生外へ出られないかもしれない幽閉のような生活を続けるよりも、少年は屋敷を出て行く選択をする。 それでも持ち前の強く非常識なほどの魔力の多さと、負けず嫌いな性格でその困難を乗り越えていく。 そんな少年の物語。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学
ファンタジー
 死因は神様の当て逃げです!  地震による事故で死亡したのだが、原因は神社の扁額が当たっての即死。問題の神様は気まずさから俺を輪廻の輪から外し、異世界の神に俺をゆだねた。異世界への移住を渋る俺に、神様特典付きで異世界へ招待されたが・・・ この神様が超適当な健忘症タイプときた。

『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?

釈 余白(しやく)
ファンタジー
HOT 1位!ファンタジー 3位! ありがとうございます!  父親が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。  その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。  最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。 その他、多数投稿しています! https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394

日本列島、時震により転移す!

黄昏人
ファンタジー
2023年(現在)、日本列島が後に時震と呼ばれる現象により、500年以上の時を超え1492年(過去)の世界に転移した。移転したのは本州、四国、九州とその周辺の島々であり、現在の日本は過去の時代に飛ばされ、過去の日本は現在の世界に飛ばされた。飛ばされた現在の日本はその文明を支え、国民を食わせるためには早急に莫大な資源と食料が必要である。過去の日本は現在の世界を意識できないが、取り残された北海道と沖縄は国富の大部分を失い、戦国日本を抱え途方にくれる。人々は、政府は何を思いどうふるまうのか。

超文明日本

点P
ファンタジー
2030年の日本は、憲法改正により国防軍を保有していた。海軍は艦名を漢字表記に変更し、正規空母、原子力潜水艦を保有した。空軍はステルス爆撃機を保有。さらにアメリカからの要求で核兵器も保有していた。世界で1、2を争うほどの軍事力を有する。 そんな日本はある日、列島全域が突如として謎の光に包まれる。光が消えると他国と連絡が取れなくなっていた。 異世界転移ネタなんて何番煎じかわかりませんがとりあえず書きます。この話はフィクションです。実在の人物、団体、地名等とは一切関係ありません。

老女召喚〜聖女はまさかの80歳?!〜城を追い出されちゃったけど、何か若返ってるし、元気に異世界で生き抜きます!〜

二階堂吉乃
ファンタジー
 瘴気に脅かされる王国があった。それを祓うことが出来るのは異世界人の乙女だけ。王国の幹部は伝説の『聖女召喚』の儀を行う。だが現れたのは1人の老婆だった。「召喚は失敗だ!」聖女を娶るつもりだった王子は激怒した。そこら辺の平民だと思われた老女は金貨1枚を与えられると、城から追い出されてしまう。実はこの老婆こそが召喚された女性だった。  白石きよ子・80歳。寝ていた布団の中から異世界に連れてこられてしまった。始めは「ドッキリじゃないかしら」と疑っていた。頼れる知り合いも家族もいない。持病の関節痛と高血圧の薬もない。しかし生来の逞しさで異世界で生き抜いていく。  後日、召喚が成功していたと分かる。王や重臣たちは慌てて老女の行方を探し始めるが、一向に見つからない。それもそのはず、きよ子はどんどん若返っていた。行方不明の老聖女を探す副団長は、黒髪黒目の不思議な美女と出会うが…。  人の名前が何故か映画スターの名になっちゃう天然系若返り聖女の冒険。全14話+間話8話。

処理中です...