殺伐とした別世界に、突如として変態なる国家が並行世界より来たる

ELDIAN

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始めようか、戦争を ー敵地侵攻編ー

第44話:歓迎されぬ訪問者達(4) v0.0

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_皇城内、第一陸戦隊


 「クリア!」

 「クリア!」

 等間隔で並べられた松明だけが石造りの幅4メートルほどの廊下を照らす中、兵士たちはPDWを構え足音を立てないよう疾走りで行動している。

 「静かだな・・・」

 隊員の一人が銃を構えて言う。実際彼らの前方はほとんどが暗闇に包まれており、時折現れる曲がり角や個室のドア以外は何も見当たらない。

 「きっとこの国の奴らはモグラなんじゃないか?」

 隊員の一人が冗談で言う。

 「ありえるな。なにせここは異世界だ」

 隊員がそれに反応し、納得したような顔で言う。

 「静かにしろ!モグラに殺されたいのか!?」

 先ほどから会話を耳にしていたのか、バラクラバをつけた隊員が小声で言う。

 「りょ、了解・・・」

 話し合っていた二人の隊員は静かに頷くと、任務に集中する。

 シュゥゥゥゥゥゥゥゥ...

 「!」

 先頭を歩いていた隊長がハンドサインで止まるように指示する。

 「銃構え!」

 それを確認した隊員たちは中腰になり、PDWを構える。

 「な、なんだ・・・?」

 隊員の一人が冷や汗をかき小声で言う。

 「ッ!来るぞ!」

 隊長が大声で叫ぶ。耳をすませると、ロケットの発射音のようなものが近づいてくるのがわかった。

 「あ、あれはッ!」

 タバコをくわえていた隊員の口からタバコがポロリと落ちる。廊下の向こう側から迫っていたのは大量のボビン状の物体・・・今回の作戦会議で司令官から警戒するように伝えられた敵軍の対歩兵・装甲車兵器だった。そんなものがきらびやかな虹色の煙を放ち高速でこちらに向かってきている。

 「て、撃ェッ!撃てェッ!」

 『了解!』

 「いぇぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!」

 ババババババババババババッ!

 先ほどまで明かりといえば松明の放つ少しの赤い光だった廊下に、隊員やトリガーハッピーの持つPDWから放たれた大量の射撃時に発生するフラッシュで瞬間的に明るくなる。まるで昼間かと思うような明るさが何度も続き、銃声が鳴り響くたびに迫り来るボビン状の対歩兵・装甲車兵器が爆散する。

 「よし、いいぞ!そのまま撃ち続けろ!」

 『了解!』

 兵士たちは射撃を継続し、迫り来るすべてのボビン状対歩兵・装甲車兵器を破壊し続けた。


 「敵対歩兵・装甲車兵器・・・残存数、ゼロ。殲滅完了しました」

 射撃を開始sてから数十秒は経過しただろうか。その頃にはボビン状の対歩兵・装甲車兵器は壊滅し、隊員とトリガーハッピー達の足元には大量の空薬莢が転がっている。

 「やったぞぉぉぉぉぉっ!」

 「この硝煙の匂い・・・だから戦争はやめらんねぇ!」

 兵士たちが口々に喋り合い、中にはハイタッチする者もいる。

 「浮かれるな!ここは敵地だぞ!」

 隊長は隊員たちに伝わる程度の声で言う。

 「えー・・・だって隊長!」

 「だってもクソもない!行くぞ!俺たちの目標はまだ達成していないんだからな!?」

 「・・・了解」

 隊員たちは気分を一新すると、銃を構えて前進を再開した。


_廊下の向こう、隠し扉


 「そ・・・そんな!あれが効かないなんて!」

 曲がり角に作られた隠し扉の小さな隙間。そこから戦闘の様子を見ていた皇城警備隊員は汗をどっぷりと書いた様子で呟く。

 「これだと・・・最悪例の『アレ』の使用許可を貰う必要があるな・・・」

 隣の隙間から双眼鏡で向こうの様子をじっと見ていた同僚は言う。

 「とにかく報告だ!すぐに塞げ!行くぞ!」

 「わ、わかりました!」

 警備隊員は隙間をすぐに塞ぐと、同僚とともに隠し通路を通って警備隊司令所まで駆け足で向かった。
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